Volume 238,
Issue 4,
2011
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あゆみ 排尿障害―最新診療動向
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医学のあゆみ 238巻4号, 289-289 (2011);
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医学のあゆみ 238巻4号, 291-296 (2011);
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2002 年国際尿禁制学会において下部尿路機能障害(lower urinary tract dysfunction:LUTD)という概念が提唱された1,2).LUTD は,排尿困難や尿閉などを呈する“排尿障害”と,尿意切迫感,頻尿,尿失禁などを呈する“蓄尿障害”の総称であり,これらの病態と発症メカニズムは明確に区別されている.しかし,LUTD という呼称は泌尿器科領域でも十分に浸透しているとはいいがたく,現在も“排尿障害”と“蓄尿障害”を区別せず,従来どおり<排尿障害>とよぶことが一般的である.LUTD にかかわる自覚症状を下部尿路症状(lowerurinary tract symptoms:LUTS)とよび,このなかには蓄尿症状,排尿症状,排尿後症状などが含まれ,おもに LUTD によって生じているとされている.本稿では臨床現場で,内科医をはじめとする多くの泌尿器科非専門医の先生方が<排尿障害>を診療されている実態を鑑みて,①正常の排尿生理,②尿路上皮の役割,③膀胱血流との関係についてわかりやすく解説する.
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医学のあゆみ 238巻4号, 297-304 (2011);
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下部尿路症状とは尿の貯留や排出に関係する症状全般を指し,おもに,①蓄尿症状,②排尿症状,③排尿後症状の 3 つに分類されるが,ほかに膀胱痛,尿道痛などが含まれる.下部尿路症状はとくに中高齢者においてその頻度は高く,加齢に伴って増加し,QOL に与える影響も大きい.下部尿路症状は泌尿器科疾患だけではなく,多彩な病態・疾患で生じうる.症状の評価には一般的な問診による症状と病歴の聴取に加えて,国際前立腺症状スコア(I-PSS),過活動膀胱症状スコア(OABSS),主要下部尿路症状質問票(CLSS)などの症状質問票が有用である.また,頻尿や尿失禁といった蓄尿症状を訴える場合には,症状の客観的評価法として排尿時刻,1 回排尿量,飲水量,尿失禁の有無,尿意切迫感の有無などを記録する排尿日誌を積極的に活用すべきである.
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医学のあゆみ 238巻4号, 305-309 (2011);
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近年,下部尿路機能障害を有する患者の診療においては自覚症状の評価がもっとも重視されているが,適切な治療選択や治療効果判定を行うためには病態の把握が重要であり,病態評価のためには,身体所見・神経学的所見の評価,尿検査,残尿測定,排尿日誌などによる他覚的評価も必要となる.とくに,神経因性膀胱など,複雑な下部尿路機能障害が予測される症例においては,尿流動態検査や画像検査により,正確な下部尿路機能の評価,上部尿路機能の変化,病因を把握することが重要である.
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医学のあゆみ 238巻4号, 311-316 (2011);
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排尿障害は中枢神経疾患において高頻度に認められる症状のひとつであり,とくに脳血管障害(脳卒中など),神経変性疾患(Alzheimer 病,Parkinson 病など),脱髄疾患(多発性硬化症など)にしばしば合併してみられる.中枢神経疾患では運動障害が比較的めだつのと異なり,排尿障害は注意深く問診をとらなければ見すごされることも少なくない.一方,中枢神経疾患の初発症状として排尿障害をきたす場合もあることから,原因不明の排尿障害をみた場合,中枢神経疾患を念頭におきながら診察する必要がある.中枢神経障害による排尿障害の形式は,典型的には過活動膀胱(OAB)を呈することが知られている.本稿では,中枢神経疾患の代表的なものである脳卒中,認知症,Parkinson 病における排尿障害の概念,症状,病態生理,治療について述べる.
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医学のあゆみ 238巻4号, 317-323 (2011);
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小児の排尿障害は,自覚症状より他覚症状として表出される頻度が高く,単なる下部尿路症状にとどまらず,再発性尿路感染や腎機能障害を惹起することが多い.排尿機能が未成熟で正常排尿を未経験であるがゆえに,自覚症状による診断は困難であり,さまざまな他覚症状や画像所見,機能検査所見から病態診断することが重要である.本稿では小児専門の泌尿器科医の視点で,排尿機能発達過程を念頭におきつつ,非神経因性小児排尿障害の 3 群,すなわち過活動膀胱(OAB),機能的排尿異常,夜尿症について,成因,定義,治療法を概説する.
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医学のあゆみ 238巻4号, 324-328 (2011);
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女性の腹圧性尿失禁(SUI)には骨盤底筋訓練(PFMT)が有効で治療のファーストラインであり,専門的なプログラムで約 3 カ月継続するとより効果的とされ,肥満者では減量も有効である.一方,前立腺全摘出術後の SUI では,PFMT は術後 6 カ月までの早期回復にのみ有用との報告が多い.また,PFMT は女性の過活動膀胱(OAB)および切迫性尿失禁(UUI)に対して有効であるが,男性への効果は不明である.近年,PFMT によって骨盤臓器脱も改善すると報告された.OAB や UUI には膀胱訓練が有効で,抗コリン薬との併用で行われることが多い.抗コリン薬が無効の OAB には干渉低周波治療がある程度有効である.しかし,過剰な水分やカフェイン摂取下では効果を期待できないため,排尿日誌をもとにした水分コントロールが必要となる.夜間多尿では潜在性うっ血性心不全など他疾患の存在に留意しつつ,水分摂取時間の指導なども行う.間質性膀胱炎(IC)では食事療法と膀胱訓練が補助的治療として有効である.
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医学のあゆみ 238巻4号, 329-334 (2011);
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下部尿路機能障害は,蓄尿障害と尿排出(排尿)障害の 2 つに分類される.両者を明確に区分して,薬物療法を計画する必要がある.今日の下部尿路機能障害の治療薬は,末梢の神経伝達物質あるいはその受容体に作用する薬剤が用いられており,薬物療法を理解するためには下部尿路の末梢神経支配機構を理解することが重要である.αブロッカー,抗コリン薬(抗ムスカリン薬),5α還元酵素阻害薬,コリン作動薬,α刺激薬などが病態に合わせて単独あるいは併用して使用される.過活動膀胱に対してはβ3アドレナリン受容体刺激薬,ボツリヌス毒素(壁内注射),バニロイド受容体刺激薬(膀胱内投与)などが臨床治験を積み上げているが,腹圧性尿失禁や低活動膀胱に対する治療薬の開発が今後期待される.
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医学のあゆみ 238巻4号, 335-339 (2011);
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2008 年に刊行された男性下部尿路症状診療ガイドライン,および 2009 年に刊行された夜間頻尿診療ガイドラインには,前立腺肥大症と関連した診療の記述を認めるが,その後,新規適応薬剤である 5α還元酵素阻害薬のデュタステリド(dutasteride)の登場や,既存の適応治療薬の新知見・再評価,前立腺肥大症に適応を有する薬剤どうしの併用治療,適応のない抗コリン薬などとの併用療法などの新知見が登場し,新前立腺肥大症診療ガイドラインが刊行予定となっている.本稿においては,新ガイドラインにおける記述のなかで一般臨床家にとって重要と思われる,疾患の定義,診療アルゴリズム,および薬物治療を中心として,前立腺肥大症における排尿障害の最新診療動向を概説する.
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連載
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本当は子どもに“使えない”薬の話―実際と,これをどう打開するか 11
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医学のあゆみ 238巻4号, 345-352 (2011);
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小児 ICU に特異的で事故も多い静脈内への微量持続注入にかかわる問題に関し,とくにできあがった薬剤を実際に投与する段階で関係する輸液ポンプの話題を中心に討論した.電子カルテ化されても静脈薬の処方に関しての安全性の担保にはあまり目が向けられず,また実際薬剤投与にかかわる輸液ポンプについても,機械的・電気的な問題を超えての安全性に関しては情報が共有されていない.圧倒的に静脈投与薬が多く,またベッドサイドでの希釈の機会が多い PICU での投薬投与に薬剤師がかかわることがほとんどない現状の改善が急務である.
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フォーラム
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切手・医学史をちこち 115
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医学のあゆみ 238巻4号, 353-353 (2011);
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逆システム学の窓 41
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医学のあゆみ 238巻4号, 355-360 (2011);
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福島原発事故は,膨大な量のセシウム 137 飛散を引き起こした.汚染は,飯館村など 30 km 以遠,福島,郡山など福島都市圏,我孫子,柏など東葛 6 市にも広がる.食品の汚染では,神奈川県の相模原市,山北,松田両町のお茶が出荷停止となり,静岡県産のお茶はパリの空港で汚染が検出されている.心配されるのは,東北,関東の 108 名の母乳を分析したところ,福島県内の 7 名の母乳から 2~13 ベクレル/L のセシウム 137 が検出されたことである. セシウム 137 は,核実験以前には地球上に存在しなかった.強いγ線を放出し,1987 年のゴイアニア被曝事故では死亡例も知られる.人体内では,腎臓から尿中に排泄される.日本バイオアッセイ研究センターの福島昭治所長は,チェルノブイリ現地の研究者と,膀胱癌の百万人あたりの発症が,86 年 26 人から 01 年 43 人に増加していることを発表し,その前癌状態として,増殖性の“チェルノブイリ膀胱炎”が広範に引き起こされていることを報告している. 前立腺肥大で手術を受けた際に切除された 164 名の膀胱病理像を,高いセシウム線量(5~30 Ci/km2),中間的線量(0.5~5 Ci/km2),非汚染地域の住民の 3 群にわけて検討して,そのメカニズムとして,NFκB と p38MAP キナーゼの活性化,NO 産生増加を介していることを示している.これら 3 群のヒトの尿中のセシウム 137 は,それぞれ,6.47,1.23 そして 0.29 ベクレル/L で,上記の福島県内の母乳と同じレベルであり,長期被曝が前癌状態を作り出すという報告は重要である. 今回のセシウム 137 汚染は 3 月 15 日に大半が,21 日から数日で一部が放出された一過性のものであり,除染でかなり除けるという特徴がある. 食品の汚染も一過性にピークを迎える.検出体制を急いで整備し,セシウム 137 で汚染された食品の摂取を避けることが緊急の課題となっている.現在,原発事故に従事している作業員や,飯館村など高汚染地区に住み続けている人は,セシウム 137 を吸着するペクチンなどの予防投与を検討する必要がある. 我々は子孫への責務を負っている.核実験による低レベル放射能を検出しアメリカでの公開実験を通じて核実験禁止の流れを生み出した,猿橋勝子博士に学ぶ必要がある.人間の生み出したものは,人間の努力で除去できないわけはない.現在の少量の高い線量の放射性物質を想定している法体系を,低線量のものが膨大に放出された福島原発事故に対応できるように変え,我が国の医学界も総力をあげ取り組む体制を整える必要がある.また損害賠償において被害者立証はいわば不可能であり,加害者(東電,政府)による被害全面賠償が必須であることを示している.
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医学のあゆみ 238巻4号, 362-363 (2011);
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医学のあゆみ 238巻4号, 364-369 (2011);
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TOPICS
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 238巻4号, 341-341 (2011);
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 238巻4号, 342-343 (2011);
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血液内科学
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医学のあゆみ 238巻4号, 343-344 (2011);
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