Volume 238,
Issue 7,
2011
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あゆみ 薬疹の最先端―最新の概念・病態・治療
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 753-753 (2011);
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 755-760 (2011);
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これまでの薬疹の概念を大きく変えたのが薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)であった.著者らは,DIHS を介して薬疹とウイルスの深い関係についてめざめることになった.さらに,薬疹の特殊型である固定薬疹の詳細な解析結果から,薬疹が生じるにはその前にウイルス感染が前駆している可能性が明らかになりつつある.ウイルス特異的 T 細胞が薬剤により“たまたま”活性化されたのが薬疹だと考えると,固定薬疹の病変部でみられるさまざまな現象が理解しやすくなる.DIHS の治癒後に生じてくるさまざまな自己免疫疾患や GVHD との類似性も,ウイルス,とくにヘルペスウイルスの関与を強く考えさせる.薬疹は薬剤の投与によってのみ生じる疾患ではなく,ウイルス感染,自己免疫疾患,リンパ腫,GVHDなどと密接に関係した幅広い概念としてとらえていく必要がある.
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 761-768 (2011);
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最近,Stevens-Johnson 症候群(SJS),中毒性表皮壊死症(TEN),薬剤性過敏症症候群(DIHS)様の重症薬疹の発症率が,原因薬剤に対応して特定遺伝子の保有の有無により大きく異なるという知見があいついで報告され,あらかじめ遺伝子の解析を行うことにより重症薬疹の発症をすこしでも少なくすることができる時代が近づきつつある.しかし,原因薬剤と重症薬疹の病型によっては人種や民族によって,その発症を予知する遺伝子マーカーが異なる場合と同じ場合がある.Carbamazepin 誘発 SJS/TEN と HLA-B アリルの間に強い相関が認められ,台湾の漢人やタイ人などの南アジア人において本症の感度と特異性の高い遺伝子マーカーとして注目された HLA-B*1502 は,その発現頻度がきわめて低い欧米の白人,日本人,韓国人では検出されない.その代りに,HLA-B*1502 と同じ serotype の HLA-B*75 に属し,日本人である程度の発現頻度のある HLAB*1511 は芳香族アミンの抗痙攣薬による重症薬疹と中程度の有意な関連があることが日本の患者で提案されている.これに対して,SJS/TEN や DIHS のようなアロプリノール誘発重症薬疹の遺伝子マーカーとされる HLA B*5801 は,台湾の漢人などの南アジア人のみならず日本人や欧米の白人にも高率に検出される.これらの違いは,異なる民族集団の対立遺伝子頻度の違いによると考えられる.また,1990 年代半ばからトリクロールエチレン(TCE)の使用頻度の高いアジアの新興国,とくに経済発展の著しい中国南部の広東省において,TCE に曝露された労働者に高率に抗 HHV-6 血清 IgG 抗体価の上昇を伴って薬疹様の過敏性皮膚炎が発症し大きな問題になっているが,その発症も人種を問わず HLA-B*1301 のアリルを有するヒトに高率に生じることが判明し注目されている.さらに,こうした反応性の薬剤や化学物質に対する重篤な薬剤過敏症の遺伝子マーカーとされる HLA classⅠによりコードされる抗原ペプチド結合ポケットにおいて,ペプチドとの反応や T 細胞受容体との反応に関与するアミノ酸残基は過敏症の発症に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある.
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 769-773 (2011);
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薬疹の発症機序に関してはいまだ数々の謎がある.しかし近年の研究の進歩によって,その重症化に関与する事象が明らかとなりつつある.薬剤抗原認識機序にはハプテン抗原認識以外に,蛋白に結合しないで T 細胞を活性化する経路が発見されている.この経路は薬剤抗原による感作を要しないもので,この経路による爆発的な T 細胞活性化が薬疹の重症化に関与する可能性がある.また,活性化する T 細胞のフェノタイプは臨床像を反映することが検証されている.さらに,薬剤性過敏症症候群(DIHS)のように経過中内在性ウイルスの再活性化を生じ,重症化するものがある.この機序はいまだ不明であるが,著者らはひとつの仮説を提唱している.本稿では,これら薬疹の重症化に関するこれまでの知見をまとめて概説した.
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 775-778 (2011);
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固定薬疹(FDE)は限局性の薬疹の特殊型で,原因薬剤の中止により速やかな皮疹の消褪を認め色素沈着を残す.一方,Stevens-Johnson 症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)は致死にも至る最重症型の薬疹で,原因薬の中止のみでの治癒は望めない.両者の予後はまったく異なるものの,病初期には類似の多形紅斑様の皮疹を呈し,鑑別が困難な場合もしばしば経験される.両者はともに CD8+T 細胞が表皮傷害に関与していることが知られているが,抑制性の regulatory T(Treg)細胞の浸潤に明らかな差異があり,結果として予後が大きく異なると考えられた.
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 779-782 (2011);
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薬疹とウイルス感染症のかかわりは古くは EB ウイルスの初感染である伝染性単核球症で,アンピシリンによる薬疹の発症が多くみられたことからはじまる.これはウイルス感染に伴って薬疹を生じてくるという病態である.そして近年,薬剤性過敏症症候群(DIHS)が出現したが,これは薬疹に引き続いてウイルス感染を生じる病態であった.ウイルス性発疹症と薬疹とは臨床的に区別がつかない似通った発疹を生じ,深いつながりがあることを示唆している.ウイルス感染症が先なのか,薬疹が先なのか,あらたな議論がまき起こっている.
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 783-787 (2011);
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薬疹における原因薬剤同定法には皮内テストやパッチテスト,薬剤添加リンパ球刺激試験(DLST)などがあるが,当然ながらどの方法でも 100%の陽性率とはならず,これらの方法を組み合わせることや,その結果と患者の薬剤内服歴などから総合的に判断し,原因薬剤を同定することになる.薬剤性過敏性症候群(DIHS)ではパッチテストや DLST の陽性率が高く,Stevens-Johnson 症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)でもDLST は比較的高率で陽性となり有意義な検査法といえるが,検査を行う時期によっては正しい結果が得られないことがあり,施行時期がポイントとなる.また,これらの検査で陽性になりやすい薬剤,なりにくい薬剤,偽陽性となってしまう薬剤を知っておくことも必要である.薬疹の検査法をうまく利用して原因薬同定を行うことは,主治医にはもちろんであるが,医療を継続して受けていく患者にとっては非常に重要な問題となる.
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 788-792 (2011);
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近年,分子標的薬はさまざまな疾患において治療の新しい選択肢のひとつとして位置づけられてきている.分子標的薬は疾患形成にかかわる重要な分子をターゲットとして効果を発現するように創薬されてきているが,多彩な副作用を有することも知られている.副作用のなかで皮膚病変は高頻度に認められ,その大部分は薬剤が有する薬理作用によって引き起こされる.皮膚病変が軽症な場合には治療の継続が可能であるが,全身症状を伴い QOL を低下させるときには投与を中止せざるをえないこともある.一方,分子標的薬が一部の皮膚の悪性腫瘍や難治性疾患へ効果を示すことが指摘されてきており,今後,あらたな治療薬になりうる可能性が期待されている.皮膚科医は分子標的薬の作用を知るとともに,発現している皮膚病変を適切に評価することが必要である.
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 793-797 (2011);
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一般に重症薬疹である Stevens-Johnson 症候群(SJS),中毒性表皮壊死症(TEN)は薬疹のなかでも死亡率が高く,なかでも TEN は最重症の薬疹と考えられている.そのため近年になり,厚生労働科学特別研究事業の重症薬疹研究班により重症薬疹の診断基準が確立され,SJS や TEN は早期に診断できるようになってきた.それに加え,治療指針も示され,早期から適切な治療が行われるようになり,死亡率は改善してきている.一方,あらたな薬疹として注目を集めた薬剤性過敏症症候群(DIHS)の診断基準も確立され,治療法も検討されつつある.しかし,DIHS は SJS/TEN と異なり長期予後が問題であり,最近はそのような死亡症例を経験することも多くなってきた.実際,急性期のみならず回復期にも症状の悪化がみられ,結果として DIHSの死亡率は TEN と同等かそれ以上である可能性も指摘されている.そのためもあって DIHS の治療法はいまだ確立していない.本稿では SJS/TEN と DIHS は別に項目を設け,それぞれの治療法について解説を加えた.
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連載
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本当は子どもに“使えない”薬の話―実際と,これをどう打開するか 12
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 803-809 (2011);
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治験と臨床研究の違いを理解していない臨床医は多い.ミトコンドリア病(MELAS)に対する治療適応の拡大を目的とした臨床研究を行う過程で,臨床研究のデータを基盤とし,薬事法に規定された治験研究にグレードアップするにあたって多くの困難に直面した.治療適応薬剤がまだ世界で一剤もないミトコンドリア病に対する治療研究は,まったくの手探りの状態で進んでいった.本稿では,この試行錯誤の過程を赤裸々に記載することで,治験と臨床研究の制度上の差異,法規制の違い,それにかかわる医師がしてはいけないことを明確に理解していただく助けになれば幸いである.
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速報
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 811-812 (2011);
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フォーラム
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 813-815 (2011);
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TOPICS
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免疫学
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 799-800 (2011);
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癌・腫瘍学
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 800-801 (2011);
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皮膚科学
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医学のあゆみ 238巻7,8号, 801-802 (2011);
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