医学のあゆみ
Volume 238, Issue 13, 2011
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あゆみ 医工学からみたヒト多能性幹細胞(iPS細胞,ES細胞)マテリアル戦略
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- [ヒトES細胞,iPS細胞の未分化増殖]
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ヒトES細胞,iPS細胞のフィーダーフリー培養用バイオマテリアル(1)―細胞外マトリックス固定化基板
238巻13号(2011);View Description Hide Description人工多能性幹細胞(iPS 細胞)ならびに胚性幹細胞(ES 細胞)は,今後の再生医療の発展には必要不可欠である.しかし,一般にマウス胎児性線維芽細胞(MEF 細胞,feeder layer)上で iPS 細胞ならびに ES 細胞を培養しており,マウス由来のウイルスなどの感染の可能性を否定できない.これらの幹細胞を臨床応用するためには,MEF 細胞を用いないヒト iPS 細胞ならびにヒト ES 細胞の培養法の確立が必須である.本稿ではフィーダーフリー培養(feeder layer-free culture)用バイオマテリアル,とくに細胞外マトリックス固定化基板を用いたヒト iPS 細胞ならびに ES 細胞の培養の現状と各問題点を概説する. -
ヒトES細胞,iPS細胞のフィーダーフリー培養用バイオマテリアル(2)―グリコサミノグリカンならびに合成高分子固定化基板
238巻13号(2011);View Description Hide Description人工多能性幹細胞(iPS 細胞)ならびに胚性幹細胞(ES 細胞)は,今後の再生医療の発展に必要不可欠である.しかし,一般にマウス胎児性線維芽細胞(MEF 細胞,feeder layer)上で iPS 細胞ならびに ES 細胞を培養しており,マウス由来のウイルスなどの感染の可能性を否定できない.これらの幹細胞を臨床応用するためにはMEF 細胞を用いないヒト iPS 細胞ならびにヒト ES 細胞の培養法の確立が必須である.本稿では,細胞外マトリックス以外の素材を用いたフィーダーフリー培養用バイオマテリアル,とくにグリコサミノグリカンならびに合成高分子固定化基板を用いたヒト iPS 細胞ならびにヒト ES 細胞の培養の現状と各問題点を記述する. -
培養面を利用した細胞骨格の制御と分化誘導
238巻13号(2011);View Description Hide Description培養容器内での細胞挙動は,足場への細胞接着・伸展,遊走,分裂などが挙げられ,増殖・分化に対し影響を及ぼすことが知られている.これらの細胞挙動を支配する細胞内骨格は細胞外からの刺激により変化し,表現型としての細胞形態変化および内因性のシグナリング変化が生じる.幹細胞研究において未分化維持,分化方向性の制御は最も重要な課題のひとつであり,細胞内骨格形成はその制御に深く関与している.骨格形成を変化させる方法は,培地中への因子添加による方法(液相)と足場による方法(固相)が挙げられる.本稿では骨格形成と細胞挙動,内在性シグナリング,細胞形態の関係を解説し,細胞骨格形成制御の重要性を述べる.また,足場(培養面)設計としてグルコース提示型培養面について紹介し,種々の細胞に対する形態変化と骨格形成の関係,さらには幹細胞研究における分化・未分化の制御への展開を示す. -
E-カドヘリンコート基板におけるES細胞,iPS細胞の大量培養
238巻13号(2011);View Description Hide Description胚性幹細胞(ES 細胞)と人工多能性幹細胞(iPS 細胞)の通常の培養方法として,コロニー形成培養方法が一般的に多く採用されている.これまでに,未分化な ES 細胞と iPS 細胞を支持細胞やゼラチン上に増殖させ,特定の細胞へ分化誘導を行い,一方実用化についても検討が行われてきた.しかし,コロニー形成培養法では細胞周辺の微小環境が大きく異なるために,サイトカインや刺激因子と細胞の相互作用が均一に働かず,分化誘導して得られた細胞群は不均一である.臨床応用をめざしている ES/iPS 細胞から分化誘導された特定の目的細胞は最終的に十分な“数”の機能的に均一な“純度”が高い細胞であることが期待されている.本稿では,遺伝子組替法で細胞間接着分子 E-カドヘリンを接着マトリックス(E-cad-Fc)に変換して,単一細胞レベルで未分化増殖から分化誘導までに実現できる新規大量培養方法の開発について概説する. -
ヒトES細胞のフィーダーフリーならびにXeno-フリー培養用合成ペプチドアクリレート表面
238巻13号(2011);View Description Hide Description現在,ヒト胚性幹細胞(ヒト ES 細胞)はフィーダー細胞上あるいはマウス癌細胞より抽出された未知の蛋白質混合物上で培養されている1,2).ヒト ES 細胞より分化させた細胞を治療応用に用いるためには,大量培養が可能で,かつ化学組成が定義された動物由来を含まない培地ならびに材料を用いた細胞培養法の確立が必要である.CorningSynthemaxTMは,化学組成の定義された Xeno-フリー培地中で複数のヒト ES 細胞の長期的自己複製が可能な新規合成素材表面を有し,機能を有する心筋細胞へ分化誘導させることが可能である. - [ヒトES細胞,iPS細胞の分化制御]
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神経幹細胞の大量供給を可能にする培養基材
238巻13号(2011);View Description Hide Description中枢神経の再生医療に大きな期待が寄せられているが,これを一般の医療として普及させるには,移植細胞のソースとなる神経幹細胞を大量に製造するための技術が確立されなければならない.本稿で紹介するように,上皮増殖因子を表面に配向固定した培養基材を用いれば,ラット神経幹細胞の選択的な増殖が可能になり,高純度の神経幹細胞を大量に調製することができる.このような培養基材を作製するには,増殖因子の活性を高く維持し,しかも,その因子が培養環境下においても安定に固定化されることが重要である.これらの要件を達成するには,遺伝子組換え技術を用いて蛋白質分子を表面固定に適した形にデザインする方法が有効である. -
組織分化模倣型マトリックス材料による間葉系幹細胞の分化制御
238巻13号(2011);View Description Hide Description生体組織中の細胞は,細胞外マトリックスを介して周囲の細胞と情報交換をしながら生体恒常性を維持している.細胞外マトリックスは,幹細胞の機能を制御する幹細胞ニッチ(細胞外微小環境)の重要な組成である.細胞外マトリックスは幹細胞の組織分化の段階によりダイナミックに変化し,幹細胞の機能を制御する.このダイナミックな変化を生体外で模倣し,そして再構築する研究は幹細胞の分子生物学的研究および再生医療研究において重要である.本稿では,細胞培養技術と脱細胞化技術を利用した組織分化模倣型マトリックスの作製および作製したマトリックスの間葉系幹細胞の分化への影響について概説する. -
インスリン分泌細胞の機能維持をめざしたバイオ人工膵―細胞表面修飾
238巻13号(2011);View Description Hide Descriptionドナー不足は移植医療の解決することがきわめて困難な問題である.近年,ドナーを必要としない移植医療(再生医療)として,ES 細胞や iPS 細胞から機能性細胞を分化誘導して,それを移植する研究が盛んになってきた.インスリン分泌細胞を移植する 1 型糖尿病患者の治療は患者数も多く,再生医療としてもっとも期待されている.とくに患者由来の iPS 細胞を用いた場合には拒絶反応さえも心配ないといわれている.しかし,ここで注意すべきことは,1 型糖尿病は自己免疫反応により膵のβ細胞が破壊されて発症する病気であるということである.このため,患者自身のインスリン分泌細胞を移植すると,発症時と同じ自己免疫反応により移植細胞は殺されてしまう.したがって,免疫反応のコントロールは必須なのである.細胞表面修飾は副作用などの懸念がある免疫抑制剤を使用せず,インスリン分泌細胞に適した機能発揮環境を提供する試みであり,ゆえに,インスリン分泌細胞移植による 1 型糖尿病の治療において,その果たす役割は大きい. -
ES細胞の機能制御のための細胞親和型ポリマーハイドロゲル
238巻13号(2011);View Description Hide Description生体細胞の機能は周囲の環境に応じて時々刻々と変化する.これらの細胞機能を制御するうえで,細胞親和性に優れたバイオインターフェースの構築は必須の最重要課題である.側鎖に細胞膜同様のリン脂質極性基(ホスホリルコリン基)を有する 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を一成分とするフェニルボロン酸基を有する水溶性 MPC ポリマーは,ポリビニルアルコール水溶液との混和により常温,常圧,中性の条件下で自発的にハイドロゲルを形成し,かつ任意の時間に解離することができる.このような特徴を有する MPC ポリマーハイドロゲルを用いることで,細胞の機能を保持したまま一定の間,固定化することができる.細胞親和性に優れた三次元バイオインターフェースであるセルコンテナーは,次世代の細胞工学分野を切り拓くことが期待される. - [ayumi TOPICS]
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- 発生学・再生医学
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- 呼吸器内科学
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- 公衆衛生
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