医学のあゆみ
Volume 239, Issue 1, 2011
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【10月第1土曜特集】 ここまでわかった多発性筋炎・皮膚筋炎
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- 概論
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三科で診る多発性筋炎・皮膚筋炎
239巻1号(2011);View Description Hide Description多発性筋炎と皮膚筋炎に罹患した患者は,症状として筋力低下,皮疹,関節炎やRaynaud 症状をはじめとするリウマチ性疾患症状をモザイク状に合わせもつために,神経内科,皮膚科,膠原病内科のどの科をも訪れうる.診療側からは必然的に受けもつ患者群の臨床像が異なることになる.したがって,単独科のコホート研究は多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)患者の全体像を把握できていない可能性が強い.三科で診る方法の違いを反映したわけでもなかろうが,膠原病内科・皮膚科は多発性筋炎,神経内科は多発筋炎を一般的呼称としている.診断アプローチでも,筋病理所見を重視する傾向の強い神経内科と症候や臨床免疫学的所見を重視する傾向の強い膠原病内科,皮膚科で若干異なる.本特集は三科の結集をめざしたものであるが,今後このような学際的かつ集学的アプローチによって,本疾患病態の全容解明と特異的治療法開発がなされることを期待している. - 筋炎の臨床
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多発性筋炎・皮膚筋炎の記述疫学
239巻1号(2011);View Description Hide Description多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)は,厚生労働省が特定疾患(難病)に指定し,その対策にとくに力を入れている疾患のひとつである.患者の数とその特性の把握は疾病対策の基本であり,これについての“特定疾患の疫学に関する研究班”の研究結果を総覧した.最近30 年間のPM/DM による死亡数は一貫して増加しているが,患者調査による最近10 年間の総患者数(有病患者数)には大きな変化がない.医療受給者数は強皮症との合計であるが,最近25 年間一貫して増加している.強皮症を除いた受給者数は2003 年度約13,000 人と考えられる.受給者は50~60 歳代に多く,発病年齢の最頻はこれより5~10 歳ほど若い.今後も患者数やその基本的臨床特性の継続的把握は重要な課題である.これとともに患者の予後把握,原因究明などの分析疫学的研究の推進も期待される. -
多発筋炎と皮膚筋炎の診断基準とその問題点
239巻1号(2011);View Description Hide Description現在,多発筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)の診断基準は国際的には1975 年に発表されたBohan and Peter の診断基準が,また国内では1992 年に自己免疫疾患調査研究班が発表した診断基準が用いられている.いずれも良く考えられた診断基準であるが,20 年以上前に作成されたものであり,診察・検査法の進歩に対応していないことが問題にあげられる.具体的には多くの筋炎特異自己抗体の発見とMRI の進歩による骨格筋の画像診断に対応していないことがある.また,筋症状のない皮膚筋炎(amyopathic dermatomyositis:ADM)が認知され,ADM に合併する急速進行性で難治性の間質性肺炎が注目される一方,ADM は現行の診断基準では筋炎と診断できないことも問題となっている.また,PM/DM の診断基準はそれぞれの診療科で独自に作成されてきたため,内容がかなり異なっていた.そのため,複数の診療科が協力して炎症性筋疾患の国際診断基準作成が現在進められている. -
多発性筋炎・皮膚筋炎における病態と治療の進歩
239巻1号(2011);View Description Hide Description多発性筋炎(PM)および皮膚筋炎(DM)では近年,筋炎特異的自己抗体がつぎつぎと同定され,その自己抗体別に臨床像の特徴が明らかとなり,臨床経過を予測するうえで自己抗体の同定は重要である.筋炎の病態としてPM では筋線維のMHC—Ⅰ発現とCD8 陽性T 細胞の浸潤が,DM では補体活性化による筋内の血管内皮障害が関与しているほか,小胞体ストレス応答による非炎症性筋障害の病態も推測されている.筋炎の治療ではステロイドミオパチーなどのステロイドの副作用を懸念して,近年では免疫抑制剤の併用下でステロイドを比較的早く漸減することが行われている.筋炎の予後を規定する間質性肺病変のなかでも予後不良な筋症に乏しいDM に併発する急速進行性間質性肺病変の発症予測には,抗CADM—140 抗体とフェリチンの測定が有用である.筋・肺病変が進行する前に,ステロイドおよび免疫抑制薬の投与により積極的に治療介入することが重要である. -
無筋炎型皮膚筋炎
239巻1号(2011);View Description Hide Description無筋炎型皮膚筋炎(amyopathic DM)とは,典型的な皮膚症状を呈するものの筋症状を欠く例で,一般に皮膚症状出現から6 カ月以上筋症状が認められないものを指す.hypomyopathic DM と合わせてclinicallyamyopathic DM(CADM)とよばれ,現在ではひとつの病型として認められるようになっている.CADMはDM全体の10~20%を占めると推定されており,わが国ではきわめて予後の悪い急速進行性間質性肺炎を発症する頻度が高く,重要な病型として認識される必要がある. -
小児皮膚筋炎の最新知見
239巻1号(2011);View Description Hide Description皮膚筋炎(DM)の患者は小児期と成人期の二峰性分布を示すが,血管炎の関与がより強い小児DM(JDM)の臨床像は成人DM と比べて多彩で相違点も多い.たとえば,JDM では間質性肺炎の合併はまれであり,悪性疾患はみられない.したがってJDM の予後は良好で,約60%以上の症例は後遺症を残さず治癒する.一方,骨格筋量が小さく体重負荷が少ない小児では,血清CK 値の増加や筋力低下は顕在化しない.そのため,JDMでは先行する特異的な皮疹があっても診断が遅れがちである.診断の遅れは病態の難治化を招いて治療抵抗性となり,皮下・筋組織に石灰化沈着が発生し,筋の萎縮,関節拘縮が進行する.したがって,早期診断に有用なJDM 皮疹の理解は,予後の観点からも重要である.治療はステロイド療法が基本であるが,血管炎病態の重篤性や治療抵抗性に応じて免疫抑制薬,γ—グロブリン製剤が併用され,石灰沈着に対してはTNF 阻害薬なども試みられている. - 組織病理と病態
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皮膚筋炎,多発性筋炎の筋病理所見
239巻1号(2011);View Description Hide Description皮膚筋炎,多発性筋炎で認められる筋病理像として一般的に,筋線維自体の変化に加え,筋組織内への小型単核球の浸潤像を認めることが知られている.これらの筋病理所見のほかに,炎症性筋疾患に共通して非壊死筋線維の筋細胞膜に高頻度にMHC class Ⅰ抗原の発現亢進が認められ,さらに皮膚筋炎ではperifascicularatrophy,血管内皮細胞における小管状封入体,小血管破壊像,小血管内皮への補体複合体沈着像,血管密度減少などの所見が知られており,多発性筋炎ではCD8 陽性リンパ球がMHC class Ⅰを発現している非壊死筋線維を取り囲み,筋線維内に侵入する所見が知られている.これらの筋病理所見が観察されることから,皮膚筋炎の病態機序には,補体複合体による血管内皮細胞障害,虚血性変化が関与していると推測されてきた.一方で,多発性筋炎では細胞性免疫機序が局所的に働いている可能性が推測されている.このように,筋病理所見の特徴から炎症性筋疾患の病態機序が明らかになりつつある.今後も炎症性筋疾患の病態機序の解明には病理学的アプローチが大きな役割を担うであろう. -
皮膚筋炎の皮疹の病理組織学的特徴
239巻1号(2011);View Description Hide Description皮膚筋炎の皮疹の病理組織学的特徴として,表皮では萎縮,個細胞壊死,基底細胞の空胞変性,表皮基底膜部の液状変性がみられ,真皮では上層の浮腫,血管周囲のまばらな炎症細胞浸潤,毛細血管の拡張,コロイド小体,さらには真皮上層の間質のムチン沈着などの所見を認める.しかし,それぞれの所見は一般に皮膚筋炎以外のさまざまな疾患でもみられる非特異的な変化であるため,個々の病理所見のみから本症の確定診断をつけることは困難なことが多く,合致する所見をくまなくチェックし総合的に判断する必要がある.皮膚筋炎においてはヘリオトロープ疹やGottron 徴候などさまざまな皮疹がみられる.多彩な皮疹それぞれにおける病理組織の特徴を個別に解析することで,皮膚筋炎に真に特異的な変化を見出すことができる可能性がある.本稿ではそのような観点から,皮膚筋炎の皮膚組織病理所見についてのこれまでの知見をまとめ,今後の課題についての考察を行った. -
筋炎におけるサイトカイン
239巻1号(2011);View Description Hide Description皮膚筋炎(DM)・多発性筋炎(PM)は,骨格筋を病変の主座として緩徐に進行する近位筋優位の筋力低下や筋痛を認める全身性炎症性疾患であり,筋の破壊による血清の筋原性酵素(creatinine kinase:CK;アルドラーゼなど)の上昇,筋電図における筋原性変化,さらに,筋生検による病理組織学的検査において,筋組織にリンパ球の浸潤や筋線維の壊死・再生など炎症性病変を認める.以前から炎症局所におけるサイトカインに注目されていたが,最近の研究により,浸潤した免疫細胞のみならず,血管内皮細胞や筋細胞そのものも複数のサイトカイン・ケモカインを発現していることがわかってきた.本稿では筋炎におけるサイトカインの発現に注目して,病勢との相関性,筋炎発症のメカニズムにおける関与,あらたな治療法について,最近の知見を踏まえて概説する. -
血管内皮異常
239巻1号(2011);View Description Hide Description皮膚筋炎では筋内血管周囲の炎症細胞浸潤と筋束周囲萎縮がきわだった病理学的所見であり,筋内小血管を首座とした炎症と筋内微小循環の破綻が皮膚筋炎の病態形成のために重要であると考えられている.筋内小血管は筋内微小血管内皮細胞とペリサイトの二者から構成され,正常状態ではこれらが筋内の内部環境を調整している.皮膚筋炎では筋内小血管内皮細胞障害が生じることで,炎症細胞の筋内浸潤を誘導し,炎症性サイトカインを放出することで炎症を惹起し,皮膚筋炎の発症・増悪におおいにかかわる.これまでの皮膚筋炎での筋内小血管内皮障害の知見は筋組織の免疫組織学的検索により解明されてきたものが主流であるが,血管内皮をターゲットとした皮膚筋炎の新規治療法を開発するためには,筋内小血管由来内皮細胞やペリサイトの細胞生物学的・分子生物学的知見の理解が重要である.著者らの教室で開発中のヒト筋内小血管由来内皮細胞,ペリサイトからなる不死化細胞株は,皮膚筋炎研究の起爆剤となることが期待される. -
多発性筋炎モデルマウスによる研究
239巻1号(2011);View Description Hide Description免疫組織学的検索や末梢血中のT 細胞のクローン解析により,多発性筋炎(PM)の病態に細胞傷害性CD8 T細胞による筋傷害が重要な役割を果たしていると考えられてきた.また,IL—1,IL—6,TNF—αなどの炎症性サイトカインがPM の筋肉中に発現しており,炎症性サイトカインが筋炎に関与していると推測されてきた.近年,C57BL/6 マウスにPM モデルマウスであるC 蛋白誘導筋炎(CIM)を誘導できることが報告された.このことにより遺伝子改変マウスを使用した解析などが可能となり,マウスにおける炎症性筋疾患の病態についてあらたな知見が報告された.とくに細胞傷害性CD8 T 細胞による筋傷害が筋炎の発症に必須であること,IL—6 とIL—1 が筋炎の発症と悪化に重要な役割を果たしていることが明確となった.本稿では,これらの筋炎モデルマウスで行われた病態解析の結果についてまとめる. - 臨床病理
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抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体
239巻1号(2011);View Description Hide Description多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)では多彩な自己抗体がみられるが,自己抗体の違いにより臨床的特徴が異なるため,臨床上有用である.抗Jo—1 抗体を含む,約8 種類のアミノアシルtRNA 合成酵素(ARS)を認識する自己抗体が発見され,いずれの抗体の陽性例も間質性肺炎・関節炎・皮疹などの症状や,再燃性の経過などの臨床的特徴が共通することがわかった.この“抗ARS 抗体間での臨床的特徴の共通性”は,自己抗体と病態機序の関連を示唆する.PM/DM の診療および病因解明における抗ARS 抗体の役割について,今後に残された研究課題を掲げる. -
抗CADM—140抗体の臨床的・病因的意義
239巻1号(2011);View Description Hide Description多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)は,骨格筋の炎症に伴う近位筋の筋力低下・筋痛を主症状とする炎症性筋疾患であり,とくに,ヘリオトロープ疹やゴットロン徴候などの特徴的な皮膚症状を呈している場合には皮膚筋炎と診断される.これまで,DM に典型的な皮膚症状を呈しながら臨床的に筋症状がないかあるいはごく軽微な症例が,clinically amyopathic dermatomyositis(CADM)として知られている.近年,CADM 患者を中心に,DM 患者血清中に約140 kDa 蛋白を認識するあらたな自己抗体(抗CADM—140 抗体)が見出された.臨床的に同抗体陽性例は治療抵抗性で,予後不良の急速進行性間質性肺炎(rapidly progressive interstitial lungdisease:RP—ILD)を高頻度に併発していた.さらに,その対応抗原が自然免疫におけるウイルス感染防御に重要な役割を果たしているMDA5(melanoma differentiation—associated gene 5,別名interferon inducedwith helicase C domain 1:FIH1)であることが明らかになった.これらの新しい知見はDM の診断・治療や発症機序の解明に重要な進歩をもたらす可能性がある. -
抗Mi—2抗体と抗TIF1—γ抗体
239巻1号(2011);View Description Hide Description炎症性筋疾患のなかで多発性筋炎(PM)および皮膚筋炎(DM)に関しては,患者血清中の自己抗体の解析が近年飛躍的に進み,いわゆる疾患マーカー自己抗体がいくつも同定されてきた.そのなかでも抗Mi—2 抗体と抗TIF1—γ抗体はPM よりもDM との関連が強く,さらには前者は筋炎と皮膚症状を伴う,いわゆる古典的DM に検出され,一方,後者は悪性腫瘍を合併するDM との関係で注目されている.これら2 つの自己抗体の検査法,臨床的意義,対応抗原の機能構造について概説する. -
炎症性筋疾患の電気診断
239巻1号(2011);View Description Hide Description筋炎における電気生理検査の意義には鑑別診断,存在診断,生検筋の選択,治療中の評価があげられる.とくに鑑別診断において針筋電図が果たす役割は大きく,筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経原性疾患が重要な鑑別疾患である.筋炎の針筋電図では線維自発電位・陽性鋭波(fib/PSW)などの安静時活動が必発であり,筋力低下の明らかな筋でこれがなければ筋炎は否定的である.fib/PSW は筋炎の存在診断,生検部位の選択,治療中の筋炎の増悪とステロイドミオパチーとの鑑別にも役立つ.運動単位電位(MUP)形態については典型的な低振幅MUP ばかりでなく,慢性の筋炎,とくに封入体筋炎(IBM)では高振幅・巨大MUP がしばしばみられ,ALS などと誤診される原因となる.動員パターンに注目することでこのような誤診は避けられる.ALS では線維束自発電位を高率に認めるが,IBM を含む筋炎では認めないことも重要な鑑別点である.IBM では深指屈筋(FDP)の針筋電図も有用である. -
筋炎の核磁気共鳴画像―MRI撮像方法から筋生検部位の決定まで
239巻1号(2011);View Description Hide Description筋炎の核磁気共鳴画像(MRI)は,筋束内の筋障害パターンによる疾患の推定や,信号値の変化が強い筋を選択することで,筋生検部位の決定に役立つ.MRI でみられる特徴的所見には,①筋原性変化:外に凸の形を保つ筋束,雲状のT2WI 高信号域.②神経原性変化:内に凸の形となる筋束,楔状の筋萎縮,があげられる.撮像には集積型多列コイルなどを用いることが推奨される.撮像シーケンスは,構造画像にはT1WI を用いる.浮腫性変化を検出するためには,Spin Echo 法T2WI,STIR(TI=110~150 ms),または脂肪抑制T2WI を用いる.撮像に際し,30 分程度の安静が必要である.臨床所見や針筋電図,シンチグラフィやCT を併用し,筋炎が存在することが推定される部位のMRI を撮影する.脂肪置換が少なく,筋炎による炎症から生じた浮腫性変化が存在する部位を特定して筋生検を行い,正確な診断に結びつける必要がある. - 特殊・関連筋症の概念と治療
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封入体筋炎
239巻1号(2011);View Description Hide Description封入体筋炎(IBM)の封入体とは核内や胞体内に小管状線維様のmyxovirus に類似したもので,通常は電子顕微鏡でしか認めることができない.しかし,光学顕微鏡で縁取り空胞を認めれば,ほとんど確実に封入体が存在する.それゆえに,リンパ球などの強い炎症細胞浸潤があり,縁取り空胞があれば,IBM と診断されている.本症は中年以降の高齢者に多く,前腕の屈筋群,大腿四頭筋,前頸骨筋が好んで侵される.ステロイドや免疫抑制剤はほとんど効果がない.病気は進行性で発症から5~10 年で車椅子生活となる.さらに,病理学的に興味あることは,Alzheimer 病にみられるCongo—red に染まるアミロイド様物質,βAPP,リン酸化タウなどの抗体で染色される物質が筋細胞内に存在することである.多彩な病理学的所見が記載されているが,病因はまだよくわかっていない. -
抗SRP抗体陽性筋症―臨床病理像の特徴
239巻1号(2011);View Description Hide Description抗SRP 抗体陽性筋症は,血清中に筋炎自己抗体の抗SRP 抗体の出現を認める筋炎のサブグループである.1986 年に同定されて以来,現在まで数多くの報告がなされているが,多くの症例は皮疹を有さず,亜急性の経過で四肢・体幹筋の筋力低下と筋萎縮を生じ,ステロイド治療の反応性が悪く,病理所見では炎症所見を欠くなど,一般的な他の筋炎とは臨床病理像がかなり異なることが知られてきた.近年,本症のなかに緩徐発症で筋萎縮がめだち,筋ジストロフィーとの区別が必要になる例や小児期発症例などが報告されるようになり,抗SRP 抗体陽性筋症の多様性が知られるようになってきた.本症の筋破壊機序,治療抵抗性の理由,亜急性重症型と慢性型の2 つが存在する理由などの解明には,今後の検討が必要である. -
ステロイド筋症の分子機構
239巻1号(2011);View Description Hide Descriptionグルココルチコイド(GC)療法の副作用のひとつであるステロイド筋症の病態は不明であり,汎用性の高い治療法もない.しかし,膠原病患者を対象としたアンケートにより,その頻度はけっして低くなく生活への影響も無視しえない実態が浮かび上がった.著者らは骨格筋におけるグルココルチコイドレセプター(GR)の標的遺伝子を同定し,GC による骨格筋萎縮の分子機構について,栄養センシングの鍵分子であるmTOR の抑制機構などを中心に明らかにした.同時に,GR とmTOR の間の排他的相互作用を証明し,骨格筋量制御機構解明に新しい切り口をもたらしたといえる.この成果はステロイド筋症の分子病態を明確にし,画期的治療法を開発する糸口を与えるものとなった.