Volume 239,
Issue 7,
2011
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あゆみ 腹膜透析療法の新展開
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医学のあゆみ 239巻7号, 739-739 (2011);
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医学のあゆみ 239巻7号, 741-745 (2011);
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わが国および世界の腹膜透析(PD)療法の現況を俯瞰し,わが国における現在の問題点,今後の課題について述べる.PD 療法は腎不全治療法としての長い歴史をもちながら,なお腹膜の生理,病理,透析液の問題,カテーテルの材質,腎臓医の教育,コメディカルスタッフの教育,患者教育,社会的支援の展開など,施設における通常の通院血液透析治療と比較して未成熟な部分が多い.これらの多岐にわたるバリアーを解決してはじめて,PD が末期腎不全治療法としての本来の役割を果たすことができる.
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医学のあゆみ 239巻7号, 746-751 (2011);
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在宅医療である腹膜透析(PD)の命綱ともいえるカテーテルは,PD の継続を左右する重要な腹膜アクセスである.理想的なカテーテルの留置によって合併症の軽減,患者のQOL の改善が可能になる.カテーテル留置術は,カテーテルの機能,感染症や合併症の回避ばかりではなく,日常の患者自身によるケアの容易さにも留意して施行する必要がある.段階的なPD の導入法であるSMAP は,導入時の入院期間の短縮が図れるばかりではなく,計画的で迅速な導入,透析液のリークやカテーテル感染症などの合併症の軽減を可能にした.SMAP はわが国でPD 導入患者の30%に適応されている.しかし,体内に留置するカテーテルの常として,PD カテーテルにも閉塞という重要な合併症がある.カテーテルの閉塞によってPD の継続は不可能になり,血液透析への変更が必要になる.閉塞の対策として,腹腔内でのカテーテルの動きを制限して大網など腹腔内臓器の巻絡を予防する手技,カテーテル閉塞を容易かつ安全に解除する手技が登場した.本稿では,理想的なPD カテーテルの留置術と,カテーテル閉塞への対策について解説する.
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医学のあゆみ 239巻7号, 752-759 (2011);
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透析療法において重要なことは,患者に最適な透析療法を提供することにある.その指標となるものが“適正透析”である.最適な透析療法とは,透析を行うことによって,①生命予後が改善すること,②合併症(心血管合併症,腎不全など)の発症が抑制されること,③生活の質(QOL)の改善がみられること,そして④医療費の抑制につながること,などが達成できる透析療法である.日本透析医学会(JSDT)の「腹膜透析ガイドライン2009」では,腹膜透析(PD)における適正透析が明確に定義されている.そこでは“溶質除去”と“適切な体液状態”を指標とし,これらが適切である状態を“適正透析”と定義している.具体的には,「腹膜透析量(低分子除去能)は週当りの尿素Kt/V で評価し,適正透析量として残存腎機能と合わせて最低値1.7 を維持する.さらに,体液量過剰状態を起こさないように,適切な限外濾過量を設定する.適正透析が実施されているのに腎不全症候や低栄養が出現する場合,処方の変更あるいは他の治療法への変更を検討する.」と記されている.しかし,わが国ではいまだ“適正透析”に関する明確なエビデンスがない.わが国のエビデンスの確立を目的として,2009 年よりJSDT の統計調査委員会において“PD レジストリ”が開始された.今後の作業としてわが国のエビデンスをもとに,「腹膜透析ガイドライン2009」を改訂していく予定である.
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医学のあゆみ 239巻7号, 760-766 (2011);
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腹膜透析(PD)の在宅透析療法としてのメリットより,PD の合併症や残腎機能消失時の透析不足などのデメリットを重視し,さらには近年の血液透析(HD)の発達もあり,わが国では腎代替療法としてHD を選択することが多いのが実情である.しかし,この約10 年でPD のデバイスや透析液も改良され,さらにはHD との併用療法も行われるようになった現在では,PD に関するデメリットを恐れ,PD を避ける状況は改善されてきている.しかし,いまなお合併症が腹膜透析離脱の主因となっており,在宅透析療法としてのPD のメリットを生かすためにも合併症対策の重要性は変わらない.本稿では,PD 特異的な合併症である①感染症,②ヘルニアと横隔膜交通症,③腹膜障害を取り上げ,さらに残腎機能消失時に生じうる臨床的問題点も含め概説する.
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医学のあゆみ 239巻7号, 767-772 (2011);
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被嚢性腹膜硬化症(EPS)は,腹腔内の炎症に伴い腸管が癒着・炎症性被膜によって覆われ腸閉塞症をきたすイレウス症候群であり,腹膜透析(PD)の普及に伴い,腹膜劣化の致死的合併症として症例数が増加した.わが国での発症率は全PD 患者の2.5%であり,PD 期間とともに増加する.発症後の治療はステロイドが有効であるが,腸閉塞症状を繰り返す場合には積極的な開腹癒着剥離術が必要となる.予防は腹膜劣化の防止であり,生体適合性のよい腹膜透析液の使用が重要である.
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医学のあゆみ 239巻7号, 773-778 (2011);
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従来の酸性・高ブドウ糖分解産物(GDP)含有腹膜透析(PD)液の時代では,透析液に長期間に曝露された腹膜に強い変性と線維化が出現し,とくに閉塞性血管病変が特徴的であった.これらの腹膜変化は透過性亢進や除水不全などの腹膜機能異常を引き起こしたが,形態と機能の関係には疑問点が多い.近年導入された中性・低GDP 透析液はこれらの形態学的腹膜傷害を改善させたが,透過性亢進などの機能異常はいまだ存続している.腹膜の病理学的解析は腹膜形態と機能の関係を明らかにし,PD 療法の諸問題に解決の糸口を与えてくれる.従来の酸性・高GDP 透析液と最近の中性・低GDP 透析液の腹膜形態の比較から明らかとなった血管新生と透過性の問題について考察し,傷害腹膜の回復や腹膜恒常性の長期維持のための新しい取組みについて解説する.
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医学のあゆみ 239巻7号, 779-783 (2011);
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腹膜透析の日本での普及率は,いぜんとして高くない.その理由として,患者および医療スタッフの教育が不十分であることや,腹膜炎による離脱がけっして少なくないことがあげられる.被嚢性腹膜硬化症のリスクも問題である.また,患者自身および患者を取り囲む社会的環境も腹膜透析離脱の理由のひとつとなっている.これらの問題は長期腹膜透析施行を妨げる原因にもなっている.では,問題はこれだけであるかというと,現在使用されている腹膜透析液自体にも問題が残っている.本稿では生体内の液性免疫の一部として重要な働きを担っている補体活性系に注目して,腹膜透析における補体活性系のかかわりについて腹膜炎と腹膜透析に焦点を当てて,著者らの知見を含めて述べる.
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医学のあゆみ 239巻7号, 784-789 (2011);
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長期の腹膜透析(PD)により,腹膜中皮細胞の脱落と中皮下線維組織の肥厚,新生血管増加が認められ,透過性の亢進による除水の低下を含めた腹膜機能の低下が認められる.この変化にはTGF-βやその下流の因子と想定されているCTGF が重要な役割を果たし,中皮下線維組織の筋線維芽細胞の増加に関与している.また,VEGF は中皮下組織における血管新生に関与し腹膜透過性を亢進させる.さらに,IL-6 の被嚢性腹膜硬化症(EPS)や腹膜障害のバイオマーカーとしての意義の検討が進んでいる.現在,これら成長因子の意義を検討するために,成長因子の投与や遺伝子欠損マウスを用いた検討が行われつつある.また,腹膜線維症モデルマウスで増加する成長因子として同定されたpleiotrophin は細胞増殖,細胞遊走に関与し,腹膜の透過性亢進に関与することが明らかとなってきた.本稿では,成長因子・サイトカインの腹膜障害に及ぼす影響について概説する.
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フォーラム
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ノーベル生理学・医学賞2011 に寄せて
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医学のあゆみ 239巻7号, 803-805 (2011);
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最近30 年のノーベル医学・生理学賞における免疫分野での受賞をみると,1970 年に抗体の化学構造に関する発見により2 名に,1980 年には主要組織適合性抗原(Major HistocompatibilityComplex:MHC)の発見に対して3 名に,1984年に免疫系の発達と制御における選択性に関する諸理論およびモノクローナル抗体の作製原理の発見に対して計3 名,1987 年に抗体の多様性に関する遺伝的原理の発見に対して利根川進博士に授与されている.ところが9 年後の1996 年に細胞性免疫制御の特異性に関する研究で2 名が選ばれて以来,長らく免疫学分野での受賞はなかった.そのため,ここ数年,今年こそは免疫学が対象となるのではないかとの期待が免疫学研究者の中にあった.それがようやく15 年目にして現実のものとなり,2011 年のノーベル生理学・医学賞が免疫学分野の研究者3 名に贈られることになった. 自然免疫の活性化における功績に対して,米スクリップス研究所のBruce Beutler 教授(現在はダラスのUniversity of Texas SouthwesternMedical Center)と2009年まで仏ストラスブール大に所属したJules Hoffmann 元教授に半分を,残りの半分を樹状細胞(dendritic cells)の発見とその適応免疫応答における役割の解明に尽くした米ロックフェラー大学のRalph M Steinman教授に与えるというものである. ノーベル財団による受賞理由の冒頭には,「免疫系は20 世紀における研究によって一歩ずつ解明されてきて,B 細胞は抗体をどのようにして作るのか,T 細胞がどのように抗原を認識するのかが明らかになり,抗体やキラーT 細胞が感染細胞を除く機構がわかってきた.しかし,自然免疫応答がどのようにして開始されるのか,また,自然免疫応答がリンパ球によって担われる適応免疫応答にどのように繋がるのかが不明であった」とあり,受賞対象となった3 名がこれらの問題解決の糸口を明らかにしたとある.
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書評
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医学のあゆみ 239巻7号, 806-806 (2011);
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TOPICS
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皮膚科学
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医学のあゆみ 239巻7号, 791-792 (2011);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 239巻7号, 792-793 (2011);
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耳鼻咽喉科学
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医学のあゆみ 239巻7号, 794-795 (2011);
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