Volume 240,
Issue 4,
2012
-
あゆみ 腎線維化を担う細胞群を探る
-
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 263-263 (2012);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 265-269 (2012);
View Description
Hide Description
腎線維化を病理学的視点に立って述べるが,その前提として腎間質の成り立ちを胎生期に遡っておもに電顕観察し,間葉未熟間質細胞の特徴に言及した.種々の病態による尿細管間質炎の特徴は,炎症細胞とともに間質細胞がネットワークを形成するように増生し,間質に漏れた原尿に対して脈管外通液路の形成に関与する.線維化は種々の要因でできるが,その疾患や時期によって異なり,間質性腎炎のなかでとくにIgG4 関連腎症は特異的で間質細胞ネットワークができず,早期から線維芽細胞が随伴する.線維化がそのままいつまでも残ることは少なく,腎萎縮して消失し腎機能に影響するが,間質線維化と腎機能とはかならずしも相関しない.
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 271-276 (2012);
View Description
Hide Description
尿細管間質線維化は末期腎不全で一般に認められる病理所見であり,慢性腎臓病(CKD)の増悪に重大な影響を与えている.低酸素は尿細管間質線維化の原因となるとともに,尿細管間質線維化で悪化する.この悪循環は,原疾患にかかわらず,CKD が末期腎不全に至る共通経路であると考えられている.腎は正常でも酸素分圧が低い臓器であり,低酸素の影響を受けやすい.とくに近位尿細管が影響を受けやすく,線維化を促進する.低酸素では間質細胞も線維化に寄与する.低酸素は血流障害,酸素の拡散障害,酸素消費の増加,酸化ストレス,貧血などが原因となる.細胞が低酸素に適応し生存するうえで,hypoxia-inducible facto(r HIF)が中心的な役割を担う.しかし,HIF は線維化に関与しているとの報告もあり,低酸素における役割には未解明な部分もある.低酸素はCKD の普遍的な増悪因子であり,低酸素の治療は慢性腎臓病に広く適応できる.HIFの作用を利用したあらたな治療法が模索されている.
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 277-282 (2012);
View Description
Hide Description
腎間質線維化は進行性腎障害の共通進展機序であり,その病態解明と治療法の確立は重要である.腎を含む臓器線維化に関与する細胞成分として,骨髄由来のcirculating mesenchymal progenitor cells であるCD45/Ⅰ型コラーゲン二重陽性(CD45+ /COL1+)細胞が知られるようになった.マウス腎間質線維化モデルでは,ケモカイン・ケモカインレセプターシステムならびにレニン-アンジオテンシン系を介したCD45+ /COL1+細胞の腎浸潤機構が関与することが示唆された.さらに,Th1/Th2 サイトカインがCD45+ /COL1+細胞分化を制御することで腎間質線維化機序に関与することも明らかになりつつある.ヒト腎臓病の検討においても,腎間質を主体にCD45+ /COL1+細胞浸潤を認めた.さらに,腎間質内CD45+ /COL1+細胞数は腎間質線維化の程度と正の相関を認めた.一方で,推算糸球体濾過率および24 時間クレアチニンクリアランス(Ccr)と負の相関を認めた.以上から,CD45+ /COL1+細胞は腎内の線維化担当細胞と関連して,ヒト腎臓病の進展に関与している可能性が示され,腎間質線維化の治療標的細胞となる可能性がある.
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 283-287 (2012);
View Description
Hide Description
腎線維化において線維を産生する細胞の由来には諸説あり,不明瞭な部分も多く,尿細管細胞が傷害を受けてepithelial-mesenchymal transition(EMT)を起こし,間質に移動して線維産生細胞になるとおもに考えられてきた.しかし最近,fate-mapping が可能な遺伝子改変マウスなどを用いたstate-of-the-art の手法により,線維産生細胞の大半は微小血管に存在するpericyte(周皮細胞)由来であることが示されるとともに,in vivo では尿細管細胞は傷害を受けても間質に移動しないことも報告された.さらに,血管からpericyte が離脱するためのシグナル経路を抑制すると,線維化が抑えられるだけでなく,pericyte が血管にとどまることで血管が安定化し,腎機能低下につながる傍尿細管毛細血管の脱落が減少することも示され,腎疾患の新規治療対象としての可能性もおおいに期待されている.
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 288-292 (2012);
View Description
Hide Description
腎は排泄臓器であると同時に,造血に必須のホルモンであるエリスロポエチン(EPO)を分泌する内分泌臓器でもある.慢性腎臓病(CKD)が進行すると,腎が線維化するとともにEPO 産生量が低下し,重篤な貧血(腎性貧血)をきたすが,そのメカニズムには不明な点が多い.著者らは最近,“腎の線維化”と“腎性貧血”は発生段階に胎児腎に移入した1 種類の細胞の機能不全によって起こることを見出した.この細胞を制御する薬剤は,この2 つの病態の治療法として有用であると期待できる.
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 293-297 (2012);
View Description
Hide Description
糸球体病変から間質病変・線維化が惹起される際,尿細管上皮細胞(TEC)は腎疾患進展シグナルのトランスデューサーとして機能すると推定されている.尿中の蛋白やその他の成分,および周囲間質環境の低酸素により,TEC はNF-κB 経路を代表とするシグナル伝達経路を介して活性化される.そして多彩なケモカイン,細胞接着分子および増殖因子を産生し,炎症細胞浸潤や線維芽細胞誘導を介して間質病変を発症・進展させる.活性化されたTEC と周囲間質細胞の間では活発なクロストークが交わされ,TEC は徐々に線維化に関連した形質を獲得し,そのうちの一部は尿細管構造を逸脱して間質へと遊走し,線維芽細胞になると推定されている.このように尿細管間質連関・クロストークは腎線維化において重要な役割を果たしており,そのメカニズムの解明・翻訳は治療法開発に必須と考えられる.
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 299-304 (2012);
View Description
Hide Description
尿細管間質線維化は,ほぼすべての腎疾患に共通する終末像である.さらに,変化の強い糸球体疾患においては細胞外基質増加を伴う糸球体硬化を呈し,ネフロンが脱落し,腎線維化が進行する.本稿では,おもに腎線維化を促進する液性因子について取り上げ,TGF-βやその下流の因子と想定されているCTGF(or CCN2)の役割と,線維化に拮抗する作用をもつナトリウム利尿ペプチドとアドレノメデュリンについて述べる.CTGF の抑制は一側尿管結紮による腎線維化の進行を抑制し,糖尿病性腎症の組織像やアルブミン尿を改善させる.また,CTGF 過剰状態は糖尿病性腎症において病態を増悪させる.現在,ヒト化CTGF 中和抗体の糖尿病性腎症に対する治験がアメリカで進行しており,その結果が注目されている.ナトリウム利尿ペプチドおよびアドレノメデュリン(AM)は,アンジオテンシンⅡおよびTGF-βの下流で細胞外基質産生作用を抑制し,線維化を軽減させることが明らかとなってきている.
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 305-308 (2012);
View Description
Hide Description
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系の阻害薬は,臨床における腎保護効果が確認されている.種々の実験により,この効果は血中RAA 系に対する阻害効果とは独立した腎局所におけるRAA 系阻害によるものであると提唱されている.腎,とくに近位尿細管においてアンジオテンシンⅡ(AngⅡ)の著明な蓄積が確認されており,このAngⅡはAT1 受容体に結合し,酸化ストレス,NF-κB などのシグナルを介して線維化促進に働いていると考えられている.また,近位尿細管ではアンジオテンシノーゲンの産生も亢進しており,これも腎RAA 系の異常活性に関与していると考えられている.これらはRAA 系阻害薬の腎保護効果を裏づけるものであるが,今後,このRAA 系/線維化の進展を示すマーカー(例:尿中アンジオテンシノーゲン)が同定されれば,RAA 系阻害薬の効果を推察することも可能になると思われ,今後のさらなる研究が望まれる.
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 309-314 (2012);
View Description
Hide Description
慢性腎臓病(CKD)の進行に伴い貯留する尿毒素は,尿細管上皮細胞傷害を介して腎線維化を促進すると考えられる.Organic anion transporte(r OAT)1 とOAT3 は尿細管上皮に発現し,インドキシル硫酸(IS)などの有機アニオン性尿毒素を尿細管に取り込んで腎傷害を促進する.ラット腎不全モデルではIS の血中濃度が上昇して酸化ストレスが増加し,腎機能障害と糸球体硬化,腎線維化が促進する.経口吸着剤のAST-120 の投与により腎不全モデルでのIS 血中濃度が低下し,腎傷害が軽減される.尿細管上皮培養細胞を用いた検討では尿毒素は酸化ストレス,慢性炎症,小胞体ストレスなどを介して尿細管傷害を引き起こし,p53,p21 の発現亢進により細胞増殖抑制,TGF-β,α-SMA の発現亢進により腎線維化が促進されることが示唆される.SLCO4C1 は尿細管での尿毒素排泄を担うトランスポーターであり,その発現亢進により,ラット腎不全モデルでの高血圧,心肥大,腎内炎症が改善することから,CKD のあらたな治療標的として注目される.
-
連載
-
-
これだけは知っておきたい接触皮膚炎の基礎知識 2
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 321-326 (2012);
View Description
Hide Description
パッチテストは,アレルギー性接触皮膚炎の原因物質の特定に有用な検査である.アレルゲン試薬を皮膚に一定時間貼布し,人工的にアレルギー性接触皮膚炎を再現することにより原因物質を特定する.パッチテストを適切に行うための基本的な知識として,①パッチテストすべき物質の抽出(問診),②貼布するためのパッチテストユニットの準備,アレルゲン試薬の入手・調整,③患者への貼布・判定,④結果の解釈などが必要である.本稿では,パッチテストの基本手技と結果の解釈をわかりやすく説明する.
-
フォーラム
-
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 327-329 (2012);
View Description
Hide Description
-
逆システム学の窓 43
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 330-334 (2012);
View Description
Hide Description
近年,卵,乳製品,小麦を三大原因とする子どもの食品アレルギーの増加が注目されている.成人では,小麦を食べた後に,運動すると全身に膨疹がひろがるWDEIA(Wheat Dependent Exercise Induced Anaphylaxis;小麦依存性運動誘発性アナフィラキシー)が知られている.ところが最近,“茶のしずく”という洗顔石鹸を使った成人女性に,WDEIA と似ているが,全身のアナフィラキシーというより,眼瞼の発赤,腫脹と顔面の皮膚のかゆみ,発赤,蕁麻疹を主な臨床症状とする非典型的な小麦アレルギーが報告され,すでに400 例を超えるという(http://www.allergy.go.jp/allergy/flour/002.html). “茶のしずく石鹸”は,しっとり感を増すため,小麦の加水分解産物を添加している.患者の血清からIgE 型の小麦のグルテンという蛋白への抗体が検出された.分子量の小さくなったグルテンの分解されたペプチドが皮膚から吸収されTh2 を主体とする反応を引き起こし,石鹸の使用だけでなく,小麦食後の運動で誘発される過敏反応を引き起こしたと考えられる. 筑波大の渋谷彰教授らは,肥満細胞のアレルギー反応を阻害する受容体としてIgG ドメインとITIM モチーフをもつアラジン1 を発見し,それを抑制するとヒスタミン遊離を抑えられることを明らかにした.我々も核内受容体のPPARδが腸管粘膜舌マクロファージに沢山発現していること,その標的分子がアラジン1 と類似したCD300a でPPAR アゴニストにより誘導されることを発見した.さらに,免疫疾患を発症しやすいNOD マウスではコムギ蛋白含有食で炎症を起こしやすいことが,PPARδの活性化剤を投与するとCD300Aが誘導され炎症が抑制されることがわかってきた. 小麦アレルギーの治療は,今まで小麦食を避けること,アナフィラキシー時のアドレナリンなどの対症療法しかなかった.その点で,肥満細胞やマクロファージにおけるアレルギー反応のシグナル自体を抑制する治療法の開発は,期待が大きいものとなっている.
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 335-336 (2012);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 337-340 (2012);
View Description
Hide Description
-
TOPICS
-
-
生化学・分子生物学
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 315-316 (2012);
View Description
Hide Description
-
免疫学
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 316-318 (2012);
View Description
Hide Description
-
糖尿病・内分泌代謝学
-
Source:
医学のあゆみ 240巻4号, 318-319 (2012);
View Description
Hide Description