Volume 240,
Issue 5,
2012
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【2月第1土曜特集】 造血幹細胞移植の最新動向
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医学のあゆみ 240巻5号, 343-343 (2012);
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造血幹細胞移植の方法と特徴:最近の知見
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医学のあゆみ 240巻5号, 347-352 (2012);
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同種造血幹細胞移植(HSCT)を行う場合,移植片としての造血幹細胞(HSC)を採取する必要がある.HSCは骨髄に多く存在し,従来,骨髄(BM)が移植に使用されてきた.その後,顆粒球コロニー刺激因子をドナーに投与しHSC を骨髄から末梢血中に動員後,成分採血する末梢血幹細胞(PBSC)が移植に使用されるようになった.健常児出産後,臍帯静脈を穿刺して採取される臍帯血(CB)は児由来の血液であり,多くのHSC を含む.凍結保存されたCB を移植に使用する.BM,PBSC,CB は,HSC,免疫担当細胞などの組成が異なることから,それぞれの移植片の特徴を考慮した移植を行う必要がある.
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医学のあゆみ 240巻5号, 353-363 (2012);
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わが国における造血細胞移植の現状を解説し,今後の展望を行った.自家移植は2000 年代になり年間1,000~1,500 例でほぼ一定で推移しているのに対し,同種移植は一貫して増加の一途をたどり最近では年間3,000 例程度となっている.同種移植におけるドナーは1980 年代まではHLA 一致の同胞がほとんどであったが,1990 年代に非血縁者間骨髄移植や非血縁者間臍帯血移植が開始され,非血縁者間移植が現在も増加しつづけている.自家移植における移植細胞源は1980 年代までは骨髄がほとんどであったが,1990 年代に入り末梢血幹細胞による移植が増加しはじめ,2000 年代にはほとんどが末梢血幹細胞となっている.同種移植においても1980 年代までは骨髄のみであったが,1990 年代に血縁者間の末梢血幹細胞,非血縁者間の臍帯血が増加しはじめ,2000 年代には血縁者間では末梢血幹細胞が骨髄を上まわるようになり,非血縁者間では骨髄と臍帯血がほぼ同数で実施されるようになっている.
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医学のあゆみ 240巻5号, 365-370 (2012);
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毒性の低い骨髄非破壊的移植前治療(NMA)の開発により同種移植の対象患者は飛躍的に拡大し,一定の成果があがった.しかし,非再発死亡率は低下したものの,抗腫瘍効果が低いため再発率が増加し,生存率の向上に至ってはいない.そこで最近は,プリン誘導体に骨髄破壊的な量の静注ブスルファンや全身放射線照射などを組み合わせて,毒性は低く抑えつつ抗腫瘍効果は高く保つ,いわゆるreduced-toxicity myeloablativeconditioning(RTMAC)が開発され,期待されている.
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医学のあゆみ 240巻5号, 371-376 (2012);
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非血縁者間同種末梢血幹細胞採取・移植は世界的に普及している技術であり,わが国においては血縁ドナーの中長期の安全が確認された2010 年度に諸国より遅れて開始された.本技術はドナーの自己血採血,全身麻酔,骨髄穿刺を必要とせず,患者においては移植後の血液回復が速やかであって高齢患者におけるミニ移植を可能にし,また緊急に造血幹細胞移植を必要とするような事態などにも適している.一方,ドナーの安全性や患者のGVHD(移植片対宿主病)への懸念もあり,わが国に導入するにあたりドナーの短期の安全性に十分に配慮したマニュアルが作成され,今後患者の有害事象の発生については前向き観察研究でデータを集めていくことになった.また,末梢血幹細胞ソースには豊富な幹細胞および免疫担当細胞が含まれており,今後の血液疾患治療の発展において欠かせないものである.
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医学のあゆみ 240巻5号, 377-383 (2012);
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同種造血幹細胞移植にもっとも適したドナーはHLA 適合血縁者であるが,先進国においてそのようなドナーが得られる確率は30%程度にすぎない.そこで,非血縁者間骨髄移植,HLA 不適合血縁者間移植,非血縁者間臍帯血移植が開発されてきた.HLA 一抗原不適合血縁者間移植は特殊な移植方法を用いなくても実施可能であるが,HLA 適合血縁者間移植や遺伝子レベルでHLA が適合した非血縁者間移植よりも若干移植成績が低下する.これらのドナーが得られない場合には,HLA 二抗原以上不適合血縁者間移植や非血縁者間臍帯血移植を検討する.抗ヒト胸腺細胞抗体やアレムツズマブを用いた体内T 細胞除去などの移植方法の開発によって,HLA 二抗原以上不適合血縁者間移植は以前と比較して格段に安全に行うことができるようになっているが,至適な移植方法の選択や臍帯血移植との優劣など,まだ明らかになっていないことも多い.
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疾患別にみた造血幹細胞移植の最新動向
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医学のあゆみ 240巻5号, 387-392 (2012);
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急性白血病は,化学療法によって根治可能な例と,同種移植が必要な症例が混在した疾患群である.どのような症例に同種移植を施行すべきか,近年解明が進んできているものの不明な部分も多い.急性骨髄性白血病(AML)に関しては染色体異常と遺伝子異常が再発リスクとして重要である.染色体予後中間群に第一寛解期に移植すべきかどうかは定まっていない.急性前骨髄性白血病(APL)は,分化誘導療法の登場以降,移植の役割は大幅に狭められたが,再発後の第二寛解期には自家移植が,また地固め療法・維持療法中の微小残存病変陽性例には同種移植も考慮される.急性リンパ性白血病(ALL)においてはフィラデルフィア染色体(Ph)陽性例は絶対的予後不良とされてきたが,チロシンキナーゼ阻害薬の登場により,その後の移植を含めた成績が向上している.Ph 陰性例に対して第一寛解期で同種移植をすべきかどうかは定まっていない.
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医学のあゆみ 240巻5号, 393-397 (2012);
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骨髄異形成症候群(MDS)は高齢者に発症し,保存的治療に難反応性のことが多いため,移植可能年齢であれば根治的治療としての同種造血幹細胞移植(HSCT)が積極的に選択される.近年の骨髄非破壊的移植法の開発や臍帯血移植(CBT)の導入によるドナー細胞の確保などによって,多くのMDS 患者への移植がさらに可能になってきている.しかし,MDS には多くの病型が存在すること,それぞれの病型で再発などのリスクも異なることなどから,実際の臨床現場では移植方法の選択と移植時期の決断について悩む場合が多い.適切な治療選択を行うためには,国際予後判定システム(IPSS)などリスクをできるかぎり客観的に推定する方法を用い,患者と医療者とが意思決定を共有することにより適切な移植選択を行うことが,MDS 診療において重要な臨床的課題である.
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医学のあゆみ 240巻5号, 398-403 (2012);
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同種造血幹細胞移植は重症再生不良性貧血(再不貧)に対するもっとも有効な治療方法である.ただし,再不貧は良性疾患であるため,治療関連死亡を伴う造血幹細胞移植は,再不貧の重症度,患者の年齢,ドナーとの間のHLA 適合度,薬物療法に対する反応性などによって,適応を慎重に決定する必要がある.移植の前処置としてはシクロホスファミド(CY)大量療法に抗胸腺細胞グロブリン(ATG)や低線量の全身放射線照射またはリンパ節照射を併用するレジメンがよく用いられてきたが,心毒性が強いため,最近ではフルダラビン(Flu)を併用することによりCY を減量する前処置が主流になりつつある.ただし,移植片対宿主病(GVHD)を抑えるためのATG や,拒絶を抑えるための全身放射線照射(TBI)を,どのタイミングでどの程度の量を投与するかについてはまだ十分に確立されていない.移植に末梢血幹細胞を用いると慢性GVHD の頻度が増えて生存率が下がるため,移植片としては骨髄を用いる.
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医学のあゆみ 240巻5号, 404-408 (2012);
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リンパ腫の患者で,通常の化学療法では予後不良と予測される場合には,造血幹細胞移植が治療選択肢となる.びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(DLBCL)やHodgkin リンパ腫の再発,初回治療抵抗性例でサルベージ化学療法感受性の場合には,大量化学療法・自家造血幹細胞移植(自家移植)を行うのが標準的治療と位置づけられている.マントル細胞リンパ腫(MCL)の若年例に対する初回治療では,地固め療法として自家移植が行われることが多い.同種造血幹細胞移植は移植片対リンパ腫(GVL)効果を狙った治療である.濾胞性リンパ腫(FL)では再発を繰り返す場合,とくに前治療の奏効期間が短い場合には同種移植が治療選択肢となりうるが,移植後再発が少なく治癒がめざせる可能性がある一方で,無再発死亡割合が他の治療と比較して高いことから,同種移植の選択に際してはリスク・ベネフィットについて患者との十分な議論が必要である.
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医学のあゆみ 240巻5号, 409-417 (2012);
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多発性骨髄腫(MM)では,サリドマイド(Thal)やレナリドミド(Len),ボルテゾミブ(Bor)などの新規薬剤が臨床導入されたことにより,治療成績は大幅に改善し,標準治療や治療目標は大きく変化している.MM 患者の多くは高齢者であるが,65 歳以下の初回標準治療は自家移植である.自家移植の導入療法において,新規薬剤とアルキル化剤やデキサメタゾンとの2~3 剤コンビネーションレジメンは,従来治療と比較して移植前後とも高い寛解率を示し,同時に無増悪生存期間(PFS)を延長する.また,新規薬剤を移植後の強化・維持療法に用いることで,寛解率やPFS はさらに改善し全生存期間(OS)延長も示されつつある.現在では,新規薬剤を含む4 剤コンビネーションレジメン試験のほか,自家移植up-front 施行vs. 再発時施行の比較試験が進行中で,自家移植の至適施行時期や施行そのものの意義についても検討されている.また,Bor やThal による重篤な末梢神経障害発生やLen 長期投与に伴う二次発癌発症頻度上昇などの有害事象も明らかになり,新規薬剤の最適投与時期・量・期間・組合せなども重要な検討課題である.同種移植は現在,自家移植後に減量前処置を用いた移植が検討され,長期生存の可能性も示唆されているが,新規薬剤時代における役割・意義に関して一定の見解は得られていない.従来治療薬と新規薬剤のみできわめて深い寛解を得ることが可能となり,そのなかでの自家および同種移植のあり方が,おもに欧米の臨床試験で検討されているのが現状である.
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医学のあゆみ 240巻5号, 418-422 (2012);
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神経芽腫は脳腫瘍を除いた小児期発症の固形腫瘍のなかでもっとも頻度が高い.その約半数が進行期であり,進行期神経芽腫は外科療法,放射線療法,大量化学療法併用自家末梢血細胞移植などの集学的治療によっても長期無病生存率は40%台と予後不良である.1990 年台後半に確立された治療骨格である大量化学療法+自家末梢血幹細胞移植と13 シス-レチノイン酸による分化誘導療法に,近年GD2 抗体による免疫療法が加えられ,治療成績の改善が報告されている.再発神経芽腫や化学療法抵抗性神経芽腫に対しては同種移植およびキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)を組み込んだ免疫細胞療法の試みが行われており,さらなるブレークスルーが期待されている.
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移植の合併症と管理
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医学のあゆみ 240巻5号, 425-430 (2012);
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急性および慢性移植片対宿主病(GVHD)は,移植前治療や移植片の多様化などにより臨床像も変化し新しい診断分類や重症度判定基準が提唱され,臨床的有用性が検証されている.標準的全身治療はいぜんとしてステロイド剤であるが,成績向上と有害事象軽減を目標にした薬剤の適正使用と代替治療法の開発が重要な課題である.移植後合併症の鑑別診断と重症度および治療反応性判定に基づいた治療戦略選択は直接的に予後に関連するため,移植臨床医が専門性を要求される最大の場面であるが,同時に臨床決断が難しい場面でもある.エビデンスが集積しつつある発症メカニズムや客観的分子マーカーは,病態の理解ばかりではなく分子標的療法や薬物療法以外の治療法の開発・臨床導入の道を開き,脱ステロイド時代の新しい潮流を生み出す可能性がある.
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医学のあゆみ 240巻5号, 431-437 (2012);
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Hematopoietic stem cell transplantation-associated thrombotic microangiopathy(TA-TMA)は,移植後の重篤な合併症のひとつと認識されている.TA-TMA の病因や病態は複雑であり,thrombotic thrombocytopenicpurpura(TTP)やhemolytic uremic syndrome(HUS)に類する病態を包含している.従来,TA-TMA の診断は非常に難しく,発症頻度や診断基準に関する過去の報告には大きなばらつきが存在していた.近年,TATMAのあらたな定義や重症度分類が提唱され,今後,本疾患の診断の標準化につながるものと期待される.TA-TMA の典型的な臨床所見は,貧血や血小板減少,破砕赤血球の存在など,主としてmicroangiopathichemolytic anemia(MAHA)に起因する徴候である.しかし,TA-TMA の病態の本質は細動脈レベルの血管内皮細胞の障害であることから,正確な診断のためには病理学的な診断基準の確立が重要である.TA-TMA の治療の原則は,①増悪因子の除去,②薬物療法である.TA-TMA に対する血漿交換療法の有効性は限定的であり,原則的には治療法として推奨されない.TA-TMA に対する治療薬としてdaclizumab,defibrotide,rituximab などの有効性が報告されているが,いずれも少数例の臨床試験の結果に基づいている.今後は統一された基準を根拠としたTA-TMA の適切かつ正確な診断を確立したうえで,その標準的治療の開発を目的とした前方視的な臨床試験を遂行し,さらなる治療成績の向上をめざす必要がある.
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医学のあゆみ 240巻5号, 438-444 (2012);
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移植後の免疫不全状態は大きく3 期に分かれる.早期,すなわち移植骨髄が生着するまでの好中球減少期には,レンサ球菌やグラム陰性菌,ブドウ球菌などの細菌感染症とカンジダなどの真菌感染症が多い.感染予防としてキノロン系抗菌薬とフルコナゾールの有用性が確立している.好中球が回復した中期でも,細胞性免疫はいぜんとして回復していない.急性GVHD があり,ステロイドや免疫抑制剤が強力に投与されると侵襲性肺アスペルギルス症が起こる.アスペルギルス症の予防として抗糸状菌活性を有するアゾール系抗真菌薬が投与される.移植100 日以降の後期では,移植が順調に経過していれば感染症のリスクは低い.しかし,慢性GVHD の発症とその治療による液性免疫障害のため,有莢膜性細菌による感染症が起こりやすく,GVHDの治療としてステロイドが強力に使用されると侵襲性肺アスペルギルス症を併発しやすい.真菌感染症に対する経験的治療薬では,キャンディン系抗真菌薬やリポソームアムホテリシンB が有用である.アスペルギルス症が確定した場合にはボリコナゾールが第一選択で,治療成績も改善してきている.近年は接合菌などの増加にも注意が必要である.
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医学のあゆみ 240巻5号, 445-450 (2012);
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造血幹細胞移植,とくに同種造血幹細胞移植後には好中球回復後も細胞性および液性免疫不全が長期に続くことにより,各種感染症を発症する.そのなかでウイルス感染症に対しては細胞性免疫がもっとも重要な役割を果たしている.移植後にステロイド剤が投与された場合には細胞性免疫障害は高度になる.また,移植される造血幹細胞種によってもそのリスクは異なり,造血幹細胞とともに輸注される免疫担当細胞が免疫学的にナイーブな臍帯血移植ではその頻度は高くなることが知られている.同種造血幹細胞移植後に問題となるウイルスはヘルペス属ウイルスの頻度が高く,サイトメガロウイルス(CMV),水痘帯状疱疹ウイルス,ヒトヘルペスウイルス6 型,Epstein-Barr ウイルスなどであり,それぞれ異なった疾患・病態を引き起こす.そのなかでCMV は,頻度および発症時の致死率の高さからもっとも重要である.いずれのウイルスも治療成績の向上には先制治療あるいは早期診断・治療が不可欠であり,適切なモニタリングおよび早期診断のポイントについて精通する必要がある.
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造血幹細胞移植のトピックス
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医学のあゆみ 240巻5号, 453-459 (2012);
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自家そして同種造血幹細胞移植においては,幹細胞ソースとして骨髄から末梢血中に動員した造血幹細胞が広く用いられている.移植後の造血回復を確実とするためには十分量の造血幹細胞を採取する必要があるが,従来の化学療法やG-CSF を用いた動員法では末梢血への造血幹細胞に動員が不十分な症例(poor mobilizer)が5~40%存在する.骨髄内ではCXCR4 とその受容体CXCL12(SDF-1)との相互作用が造血幹細胞の動員に大きく関与しており,これらに対する拮抗薬を投与することで造血幹細胞が骨髄から血液中に効率よく動員されることが知られている.AMD3100(plerixafor)はCXCR4 の選択的拮抗薬としてはじめて臨床応用された薬剤である.現在では骨髄腫,リンパ腫に対する自家末梢血幹細胞移植の幹細胞動員に広く用いられるとともに,同種造血幹細胞移植の健常人ドナーへの臨床応用が検討されている.
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医学のあゆみ 240巻5号, 460-464 (2012);
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造血幹細胞移植は移植片対宿主病(GVHD)と移植片対白血病(GVL)効果によって特徴づけられる治療法であり,両者はアロ抗原を認識したドナーT 細胞が責任細胞となる.活性化されたヘルパーT 細胞サブセットはそれぞれ特徴的なエフェクターメカニズムを動員する.エフェクターT 細胞は標的細胞を攻撃するが,逆に抑制シグナルを受ける両方向性のクロストークの存在も明らかにされ,GVHD 終息のメカニズムとして注目される.また,制御性T 細胞,メモリーT 細胞や,移植後の免疫再構築に伴うT 細胞再教育の異常がGVHDの終息・持続や,慢性GVHD の発症に関連するものと考えられる.このようにさまざまなドナーT 細胞サブセットがダイナミックに関連しあってGVHD の複雑な病態が形成される.また,GVHD は組織幹細胞を標的とし,正常な組織修復機転が破綻することが難治性のメカニズムのひとつである.
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医学のあゆみ 240巻5号, 465-469 (2012);
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著者らがマウスを用いて開発した骨髄内骨髄移植法(IBM-BMT)は,造血幹細胞(HSC)の増殖・分化を促進するために必要なドナーの間葉系幹細胞(MSC)を効率よく補充する方法である.この方法をヒトへ応用するために,従来の吸引法にとって代わって灌流法をサルを用いて開発した.この両者(IBM-BMT+灌流法)の組合せによる新しい移植方法は,移植片対宿主病を発症しないだけでなく,ドナーに対してもレシピエントに対しても負担を軽減する優れたもので,難治性の自己免疫疾患や加齢に伴って発症する種々の難病(Alzheimer病や肺気腫など)にも強力な武器となりうるものと確信する.
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医学のあゆみ 240巻5号, 471-476 (2012);
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造血幹細胞体外増幅法の確立は,再生医療の今後に向け重要な課題のひとつである.これまでおもに臍帯血中の造血幹細胞を対象に,サイトカインや化合物の添加,または支持細胞との共培養系を用いた増幅法が国内外で開発されてきた.その一部には,すでに安全性および早期血球回復の観点から有効性を示唆され臨床試験が進められているものもある.一方,恒久的な造血再構築を含む“完全な”造血幹細胞の体外増幅法については,残念ながらいまだ開発半ばである.近年,ヒト造血幹細胞活性をマウス体内で測定するヒト化マウスモデルや,極めて多種類の化合物を効率よくスクリーニングするハイスループットシステムが開発され,実際にそれらを活用したあらたな幹細胞因子の探索も行われるようになった.また,生体内で造血幹細胞をとりまき制御している微小環境に関する知見も急速に深まっている.本分野の現状と課題,最新の動向を併せて紹介する.
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医学のあゆみ 240巻5号, 478-484 (2012);
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同種造血幹細胞移植では移植片対宿主病(GVHD)や移植片対白血病効果(GVL)が移植成績に影響を及ぼし,これらの移植免疫反応にはドナーと患者のHLA(human leukocyte antigen)とその違いが大きく関与している.非血縁者間移植ではこれまで患者とドナーのHLA 座のマッチングという観点から多くの解析がなされ,日本骨髄バンク(JMDP)を介した移植でもレトロスペクティブな解析結果をもとに,臨床の場においてドナー選択に生かされている.HLA 領域にはHLA 座をコードする遺伝子以外にも免疫反応に関与する遺伝子が多く含まれ,自己免疫疾患や感染症などの疾患感受性との関連も報告されている.今後,移植免疫の分野においても,HLA 座以外のHLA 領域を含めたHLA ハプロタイプとの関連を解析することは重要と考えられる.本稿では,おもに非血縁者間骨髄移植におけるHLA ハプロタイプの意義について解説する.