Volume 240,
Issue 7,
2012
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あゆみ 炎症疾患におけるキナーゼ阻害薬の進歩
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医学のあゆみ 240巻7号, 555-555 (2012);
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医学のあゆみ 240巻7号, 557-561 (2012);
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Bcr-Abl キナーゼ阻害薬として最初に登場したメシル酸イマチニブは,抗癌剤と比較して副作用が少なく,慢性骨髄性白血病の画期的な治療薬となり,分子標的療法への道を拓いた.イマチニブはさらにc-Kit 阻害作用により消化管間葉腫瘍(GIST)に対する治療薬としても広く用いられているが,transforming growth factor-βの作用に重要なc-Abl や血小板由来増殖因子(PDGF)受容体の活性も阻害することで,線維化を抑制する薬剤としても各領域で注目されている.さらに,第二世代のニロチニブやダサチニブの開発により,Bcr-Abl キナーゼを中心としたさまざまな組合せでのキナーゼ活性阻害が可能となり,難治性病態の治療に光明がみえつつある.
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医学のあゆみ 240巻7号, 562-566 (2012);
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関節リウマチ(RA)治療は炎症性サイトカインを標的とした生物学的製剤により飛躍的に進歩したが,投与経路,経済的負担などの理由から治療導入または継続が困難なことがある.また,難治症例も存在し,経口投与可能なあらたな作用機序を有する抗リウマチ薬の開発が待たれている.このような状況下で,細胞質内チロシンキナーゼであるJanus kinase(JAK)を阻害標的としたtofacitinib が,内服薬でありながら生物学的製剤に匹敵する効果を示している.著者らはtofacitinib 投与前後の末梢血の変化と関節滑膜組織を用いた検討を行い,CD4+T 細胞のサイトカイン産生と増殖抑制,さらに滑膜細胞の軟骨浸潤を抑制することを明らかにした.この結果は,RA 患者におけるtofacitinib による骨破壊抑制効果がみられたこととも一致しており,今後の長期投与によるさらなる治療効果が期待される.
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医学のあゆみ 240巻7号, 567-570 (2012);
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Syk はわが国で単離された非受容体型のチロシンキナーゼで,免疫系を中心にさまざまな生理機能に重要な役割を担う細胞内分子である.近年,Syk のシグナル伝達経路についての理解が進み,細胞内に存在するSyk 標的分子のリン酸化を指標とした新しいSyk 阻害薬が開発され,低分子化合物による関節リウマチ治療のあらたな展開として注目を集めている.アレルギー性鼻炎や関節リウマチに有効であることが報告されているR406 のプロドラッグで,経口摂取が可能なR788/フォスタマチニブは,関節リウマチ患者を対象とした第Ⅱ相試験の結果,臨床症状の明らかな改善を認め,その有効性が確かめられた.また,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を対象とした第Ⅱ相試験の結果もフォスタマチニブの有効性を示している.一方,Syk 阻害薬の長期投与には,免疫抑制や発癌,癌転移,出血傾向などの副作用が懸念され,臨床応用にあたっては安全性に対する十分な配慮が必要であると考えられる.
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医学のあゆみ 240巻7号, 571-575 (2012);
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Rho キナーゼは低分子量GTP 結合蛋白Rho の下流標的蛋白のひとつである1).このRho キナーゼは平滑筋収縮,細胞増殖・遊走,遺伝子発現などの制御に関与しており,Rho キナーゼ阻害薬である経静脈投与の塩酸ファスジル注射剤(商品名:エリル®,以下Fasudil)は,くも膜下出血術後の脳血管攣縮およびこれに伴う脳虚血症状の改善に対し2007 年にわが国でも販売され,臨床で用いられている.近年,Rho キナーゼ阻害薬の自己免疫性疾患への有効性も示唆されており,関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に対する新知見と著者らのデータの一部,そして臨床応用に向けた今後の課題について解説する.
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医学のあゆみ 240巻7号, 577-582 (2012);
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関節リウマチ(RA)をはじめとする膠原病は全身性の慢性炎症性疾患で,自己免疫異常が病態の進展に関与している.ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)は細胞の増殖や生存をはじめ,さまざまな細胞機能に関与するが,免疫担当細胞においても重要な役割を有す.全身性エリテマトーデス(SLE)では患者B 細胞およびT 細胞におけるPI3K/Akt 経路の活性化がみられ,またループスモデルマウスではPI3K 阻害薬が腎症を軽減させることなどから,病態への関与が示唆されている.また,RA 患者滑膜においてもPI3K 活性化がみられるが,著者らはコラーゲン誘発性関節炎マウスにPI3K 特異的阻害薬ZSTK474 を投与すると関節炎が抑制されることを報告した.ZSTK474 はin vitro でリンパ球や滑膜細胞増殖を抑制し,さらにin vitro およびin vivo における破骨細胞形成を阻害した.PI3K はさまざまなリウマチ性疾患の慢性炎症や自己免疫異常の病態形成にかかわっており,その阻害薬の今後の治療への可能性が期待される.
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医学のあゆみ 240巻7号, 583-586 (2012);
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P38 MAPKs 経路は細胞内のシグナル伝達において炎症,細胞サイクル調整,アポトーシス誘導などの作用を示すとされ,P38 MAPK を阻害することにより炎症や組織破壊を調節し,各種炎症病態モデルにおいてその有効性が認められてきた.しかし,P38 はユビキタスに組織に発現していることもあり,P38 MAPK 阻害剤を用いた治療は臨床研究において各種の副作用が報告され,安全面の課題があるとされている.一方,P38の下流にあるMK2 には細胞サイクル調整,炎症抑制機能の2 つの作用があるとされ,P38 阻害剤に比べてMK2 阻害剤は副作用が出にくいと考えられている.近年,抗炎症作用の目的で世界的にMK2 阻害剤の開発が試みられているが,関節炎モデルなどin vivo の実験で効果が確認された薬剤はまだわずかであり,臨床的に効果が確認された薬剤はまだ存在しない.臨床的に有効な薬剤の開発にはまだ課題があると思われる.
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医学のあゆみ 240巻7号, 587-590 (2012);
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IKK 阻害剤にはNF-κB 阻害機能があり,抗炎症剤としての期待がもてる薬剤である.炎症は多くの疾患の進展や発症に重要な役割のあることが知られている.近年の研究成果によりIKK にはα,β,γなど3 つのサブユニット,IκB にはαやβをはじめ8 つ,NF-κB には5 つのサブユニットがあることがわかっており,NF-κB 経路は従来の経路以外にもさまざまな経路があることが報告されている.そのため選択性の高いIKK阻害剤は複雑な機構の解明に有用であると考えられる.本稿ではIKK 阻害剤の紹介と,循環器疾患モデルでのIKK 阻害剤の効果について紹介する.
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医学のあゆみ 240巻7号, 591-595 (2012);
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生物学的製剤などの関節リウマチ(RA)新治療薬はRA の予後を劇的に改善した.しかし,関節破壊進行を完全阻止できるのは2 割程度の患者とされ,強い免疫抑制力は易感染性を招き,製造工程の複雑さは生物学的製剤を高薬価とした.著者らはこれらの新薬剤がおしなべて,RA の炎症過程を阻害することに着目し,炎症過程の下流にある滑膜線維芽細胞増殖を治療標的としてきた.この細胞増殖がパンヌスとよばれる炎症肉芽を形成し,骨・軟骨を破壊するからである.一般に,細胞周期を支配するのはサイクリン依存性キナーゼ(CDK)であるが,RA 滑膜線維芽細胞ではCDK4/6 阻害分子の発現が低い.そこで著者らは,CDK4/6 阻害性の低分子化合物を用いて,RA 動物モデルを治療したところ,免疫を抑制することなく抗関節炎効果を示した.将来,CDK4/6 阻害による細胞周期制御療法があらたなRA 治療となることを願っている.
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連載
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これだけは知っておきたい接触皮膚炎の基礎知識 4
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医学のあゆみ 240巻7号, 601-606 (2012);
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全身性の金属アレルギーの関与が考えられる疾患として,掌蹠膿疱症や異汗性湿疹,扁平苔癬,貨幣状湿疹,痒疹などがある.歯科金属や食事中の金属が関与していないかどうか調べる方法として,金属の経口負荷試験や金属パッチテストがある.パッチテストは試薬の入手や手技が煩雑で広く普及しているとはいえないが,比較的安全で,どのような施設でも施行できる.ただし,陽性反応が得られたからといって即座に原因と決めつけてはならず,因果関係を検討しながら診療を進めていくことが重要である.歯科金属の関与を検討する場合,多くの症例では歯性病巣の治療を要することも多く,検査・治療には歯科医との連携が不可欠であると考える.
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フォーラム
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近代医学を築いた人々 2
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医学のあゆみ 240巻7号, 607-607 (2012);
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医学のあゆみ 240巻7号, 608-610 (2012);
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逆システム学の窓 44
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医学のあゆみ 240巻7号, 611-616 (2012);
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福島原発事故から,今までの自然放射線の数倍にあたる被曝を,1 万平方キロの地域で,百万人以上の人が浴びている.こうした低レベルの放射線被曝にどう向き合うか問われている.低線量被曝の危険性について,最初に本格的に指摘したのはコレステロール研究者だったジョンW・ゴフマン(John William Gofman,1918-2007)である.彼は,学生時代にマンハッタン計画の一部を担い,ウラン233 の核分裂を発見した秀才でありながら,医師になり心臓病研究に従事し,超遠心法を用いてHDL(高比重リポ蛋白質)とLDL(低比重リポ蛋白質)の分離法を生み出し,動脈硬化の要因として,LDL が攻撃的指標であり,HDL が防御的指標であることを明らかにした.疫学研究の数値から“科学的な装い”で提唱されるリスク論に対して,コレステロール研究で成長したゴフマンは,低線量被曝の危険性を真に“科学的”に理解するには,基本的メカニズムに立ち返ることを唱えた.細胞が死なない低い線量の被曝により,遺伝子が損傷され,修復をうける途上で変異を蓄積させ,癌化を促進する危険性を訴えた.オークリッジ国立研究所で行われた低線量の被曝について数万匹のネズミを用いた世界で最も大規模な実験は,7 つの遺伝子座で修復能力が高まることを示し,一見“しきい値”があるという仮説が正しく,ゴフマンの予想を否定する結果かに思えた.しかし,チェルノブイリ原発事故は,エビデンスがないという学者の意見に反して,4,000 人以上という大変な数の子どもの甲状腺癌を生み出した. 歴史は,データの科学的理解を重視したゴフマンの予測の正しさと,アプリオリに数値と現象を結びつけた安易なエビデンス論の陥穽を照らし出すのである.
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TOPICS
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感染症内科学
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医学のあゆみ 240巻7号, 597-598 (2012);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 240巻7号, 598-599 (2012);
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血液内科学
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医学のあゆみ 240巻7号, 599-600 (2012);
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