Volume 241,
Issue 6,
2012
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あゆみ がん微小環境―あらたな診断・治療を拓く
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医学のあゆみ 241巻6号, 433-433 (2012);
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医学のあゆみ 241巻6号, 435-438 (2012);
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がん組織には,がん細胞のまわりに存在する線維芽細胞,炎症細胞(リンパ球,単球/マクロファージ),血管構成細胞などの間質細胞(がん間質細胞)も多数存在する.近年の研究から,がん間質細胞は単なる充填細胞としての役割のみならず,がん細胞の増殖・生存能,浸潤能,転移能といった悪性像に決定的な影響を与える細胞集団であることが示されている.すなわち,がん細胞の悪性像はがん細胞自身が有する遺伝的・生物学的因子(内因性因子)だけでなく,がん間質細胞により影響を受ける因子(外因性因子)にも規定されていることが明らかになってきた.がん組織における間質細胞動員,生物像のメカニズムをより明確にすることにより,間質を標的としたがん治療の開発につながるものと考えられる.
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医学のあゆみ 241巻6号, 439-444 (2012);
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DNA メチル化異常をはじめとするエピジェネティック異常は体細胞分裂後も保存されるために,がんの発生と進展に深く関与する.一見正常にみえる上皮にも,大量のDNA メチル化異常が蓄積して発がんの素地を形成していることが,胃がん,大腸がん,肝がんなどで知られている.このDNA メチル化異常の誘発には炎症が重要であるが,単に長期間の炎症ではなく,H. pylori 感染による慢性炎症が重要である.また,DNA メチル化異常の誘発にリンパ球は必須ではないこともわかっており,単球・マクロファージの関与が疑われている.一方で,がん微小環境を構成する線維芽細胞などでも特異的なDNA メチル化異常が報告されており,線維芽細胞の性質が非可逆的に変化する機構としてもエピジェネティック変化が関与している可能性が高い.また上皮間葉転換の機構としても,DNA メチル化変化が報告されている.上皮細胞・間質細胞でのエピジェネティック変化は,がん間質の影響結果として,また,がん間質の形成機構として重要である.
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医学のあゆみ 241巻6号, 445-449 (2012);
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がんの微小環境におけるエネルギー代謝を理解するために,キャピラリー電気泳動-質量分析装置(CEMS)を用いたメタボローム解析を大腸がん,および胃がんの臨床検体に適用した.解糖系,ペントースリン酸経路,TCA 回路などのエネルギー代謝経路,ならびにアミノ酸代謝や核酸代謝などに含まれる中間代謝物を網羅的に解析した結果,がん特異的ないくつかのあらたな知見を得ることができた.本稿ではその詳細について述べる.
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医学のあゆみ 241巻6号, 450-455 (2012);
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腫瘍内には十分な栄養や酸素が供給されない低酸素微小環境が存在し,この領域に存在するがん細胞は化学療法耐性,放射線治療耐性,アポトーシス耐性,転移・浸潤能を獲得するなど悪性度が高いことが知られている.さらにマクロファージなどの間質細胞も,低酸素環境において腫瘍悪性化を促進することが明らかになりつつある.この腫瘍内低酸素細胞を効果的に攻撃するためには,従来の分子標的治療に加えて,あらたに“環境標的治療”が必要である.そこで著者らは,低酸素環境で誘導される転写因子HIFs(hypoxia induciblefactors)の活性に注目し,HIFs 活性化細胞を標的とした新規診断・治療法の開発に取り組んでいる.本稿では,これまでに開発したHIFs 活性化細胞の生体イメージング技術と標的治療薬について概説し,腫瘍進展に伴うHIFs 活性化細胞の寄与と環境標的治療薬の今後の可能性について紹介する.
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医学のあゆみ 241巻6号, 456-459 (2012);
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がん組織は極性を失い無軌道に増殖するがん細胞の集合体であると思われてきたが,実は正常の組織と同様に,幹細胞のような大本になる細胞が存在し,その細胞から派生した細胞とともにあたかも社会のような組織を構築することが明らかになってきた.このようにがん組織を永続的に構築するための大本になる細胞,つまり“がん幹細胞”(CSC)はさまざまなストレスに耐性を示し,治療抵抗性や,がんの再発や,転移の起源となり,今後がん治療のもっとも重要な標的細胞となると考えられている.正常の組織幹細胞はその“自己複製”と“多分化能”という性質を維持するために,細胞周辺の微小環境が重要であることがわかっており,この微小環境のことを“ニッチ”とよぶ.CSC の性質を維持するためにも,この組織幹細胞のニッチに相当する微小環境があると想像されており,そのニッチの性状を明らかにすることはあらたな治療を考案するうえできわめて重要である.
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医学のあゆみ 241巻6号, 460-463 (2012);
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骨髄はがん転移の好発部位であるばかりでなく,がんの病態において中心的な役割を果たすがん幹細胞ニッチの存在部位であると考えられている.がん幹細胞ニッチを含むがん骨転移微小環境における種々の細胞,分子,環境因子の複雑な相互作用を可視化し,新規治療法を開発するためには生体における骨髄内の螢光観察が不可欠である.骨組織は光の散乱係数が高く透過性が低いが,深部観察に優れる2 光子励起顕微鏡を利用することにより,骨髄内の螢光をとらえることも可能となってきている.著者らはマウス骨転移モデルを作成し,生物発光イメージングと2 光子励起顕微鏡による螢光in vivo イメージングを組み合わせ,がん幹細胞ニッチの解析を試みている.
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医学のあゆみ 241巻6号, 464-468 (2012);
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細胞・分子生物学や医学の進歩はめざましいものの,正常臓器に悪影響をもたらさずに,がん細胞を特異的に殺す薬はいまだない.理由は真にがん特異分子は残念ながらないからである.低分子抗がん剤は容易に正常血管から漏れ,このことが薬物有害事象へとつながる.一方,抗体製剤を含む高分子制がん剤やナノ粒子は腫瘍血管透過性亢進機構を使い腫瘍へ選択的に集積する.しかし,一般の固形がんは間質に富んでおり,腫瘍組織へ漏出した高分子はその後,肝心のがん細胞への到達が間質により妨げられる.実際,がん特異抗体に抗がん剤を付加したミサイル治療は,血管が豊富で間質がほとんどない血液系腫瘍で一部成功しているが,間質が豊富な一般の固形がんではほとんど成功していない.著者らはこのジレンマを解消すべく,がん細胞表面特異的抗体ではなく,がん間質関連分子に対する抗体を作製した.ポリマーを介して抗がん剤をエステル結合で付加した.この剤型は腫瘍血管から漏出し,血管周囲の間質に選択的に集積し,そこで足場をつくり,非酵素的に徐放的に低分子抗がん剤をリリースすることで間質バリアを簡単に通り抜けがん細胞に到達し,また腫瘍血管内皮細胞にもアタックすることが判明した.このがん間質ターゲティング療法をcancer stromal targeting(CAST)therapy と命名した.間質が多い難治がんの治療法として期待される.
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連載
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漢方医学の進歩と最新エビデンス 5
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医学のあゆみ 241巻6号, 475-480 (2012);
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糖尿病では日常の診療に漢方薬を処方する際,まずは西洋学的手段で行い,合併症治療上の問題点にのみ漢方薬を考慮する.最近では,糖尿病領域においても漢方医学が有用な領域があることも認知されてきており,EBM に基づいた実証的な研究データも広範囲に蓄積されつつある.そのなかでも牛車腎気丸は糖尿病性神経障害の自覚症状を改善させることが明らかになったが,著者らはさらに2 型糖尿病患者のインスリン抵抗性を改善させることを明らかにした.また防風通聖散は,2 型糖尿病の病態であるインスリン抵抗性を軽減させるという観点から内臓脂肪を減少させ,インスリン抵抗性を改善させることも明らかにした.今後,日本の医療はますます西洋医学の臨床と基礎研究をもとに,漢方薬の西洋医学的評価,つまりEBM を推し進めて東西医学の融合がはかられていくと考えられる.そして新しい医療の道を開くことができると期待する.今後のさらなる大規模な研究を待ちたい.
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フォーラム
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医学のあゆみ 241巻6号, 481-484 (2012);
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パリから見えるこの世界 4
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医学のあゆみ 241巻6号, 486-490 (2012);
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TOPICS
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神経内科学
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医学のあゆみ 241巻6号, 469-470 (2012);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 241巻6号, 470-471 (2012);
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耳鼻咽喉科学
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医学のあゆみ 241巻6号, 471-473 (2012);
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