Volume 241,
Issue 10,
2012
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あゆみ 眼疾患の再生治療
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医学のあゆみ 241巻10号, 743-743 (2012);
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医学のあゆみ 241巻10号, 745-748 (2012);
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近年の幹細胞生物学の発展はめざましく,種々の臓器で組織幹細胞(体性幹細胞)が同定されるとともに,多能性幹細胞であるヒト胚性幹細胞(ES 細胞)の樹立や人工多能性幹細胞(iPS 細胞)の創製などの革新的な成果があげられている.このような成果を基盤として,再生医療の実現化に向けた取組みが国家プロジェクトとして進められている.眼組織においても種々の幹細胞/前駆細胞を同定したという報告がなされ,とくに角膜上皮と網膜の幹細胞研究が進んでいる.角膜上皮幹細胞は角膜周辺部の輪部に,網膜前駆細胞は毛様体辺縁あるいは網膜内(Müller 細胞)に局在しているという説がある.
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医学のあゆみ 241巻10号, 749-752 (2012);
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角膜は透明な無血管組織であるが,疾患や外傷により透明性は低下する.透明性低下により視覚障害に至った患者に対しては,ドナー眼を用いた角膜移植が実施されているが,全世界的にはドナーが不足しており,またとくに角膜上皮疾患においては拒絶反応が高頻度で起こるといった問題がある.著者らはこれらの問題を解決すべく,難治性角結膜上皮疾患に対して患者自身の上皮幹細胞・前駆細胞を用いて作製した培養上皮細胞シートによる治療法の臨床応用を開始し,角膜上皮層を再建することに成功した.本手法は,ドナーを必要とせず,また,拒絶反応も起こらないため,有効な治療法のなかった難治性上皮疾患に対する有効な治療法になりうると考えられる.
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医学のあゆみ 241巻10号, 753-758 (2012);
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角膜内皮細胞は角膜のもっとも内側に存在する一層の細胞である.この細胞は角膜実質からポンプ機能により水分を前房内に移動させる働きを担っており,これが破たんした場合,水疱性角膜症として視力を喪失する.また,角膜内皮細胞はヒトの生体においては増殖しないため,病的・機械的に一度喪失した場合,何らかの形で外から補充する必要が生じる.これを行うために現在ではドナー眼からの他家移植医療を行っているが,ドナー眼は慢性的な不足状況にあり,これが角膜内皮細胞に対する再生医療の根拠となる.再生角膜内皮細胞のソースとしては,角膜内皮(幹)細胞,他の神経堤由来の体性幹細胞,iPS 細胞をはじめとした多能性幹細胞が現在試されており,それぞれが臨床応用に向け大きく発展している段階にある.
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医学のあゆみ 241巻10号, 759-764 (2012);
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角膜実質は角膜全体の9 割を占める間充織であり,径の細いコラーゲン原線維が同一方向に等間隔で配向したコラーゲン線維束が編みあがって構成され,この中におもに神経堤を由来とする角膜実質細胞が散在する.角膜移植は優れた治療法ではあるが,これを一部代替することができれば,ドナー不足解消の一助となると期待される.角膜移植の代替法として人工角膜,異種角膜,生分解性素材の移植などが考えられているが,他に再生医療的方法として角膜様組織を生分解性素材に細胞を包埋して構築する方法,細胞自身に細胞外基質を産生させて構築する方法,角膜実質内に直接細胞を移植する方法が研究されている.角膜実質細胞は血清添加培養でその性質を失うが,最近,角膜実質細胞の性質を維持できる培養法が複数開発されており,角膜様組織構築あるいは移植用の細胞源として有用と思われる.角膜実質の再生医療はまだまだ挑戦的であるが,今後の発展が期待される.
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医学のあゆみ 241巻10号, 765-770 (2012);
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霊長類の角膜内皮細胞は生体内では増殖能がきわめて低く,外傷やジストロフィなどによって障害されると不可逆性の内皮機能不全,すなわち水疱性角膜症となって重篤な視力障害を生じる.著者らは角膜内皮障害に対する再生医学的治療法の確立をめざし,体性幹細胞を用いた培養角膜内皮再生医療の開発に取り組んでいる.これまでにⅠ型コラーゲンシートあるいはヒト角膜実質を基質として作製したカニクイザル培養角膜内皮細胞シートを,ヒトと同様に角膜内皮細胞の増殖能の低いカニクイザルの水疱性角膜症モデル眼に移植し,移植角膜が透明性を回復し,長期間にわたって角膜内皮機能を維持することを報告した.また,臨床応用可能な正常な形質を維持したヒト角膜内皮細胞の大量培養法の開発を試みており,選択的Rho キナーゼ(ROCK)阻害剤の一種であるY-27632 が,霊長類角膜内皮細胞の細胞接着と細胞増殖を促進し,アポトーシスを抑制する効果を有することを見出した.現在は,ROCK 阻害剤を併用した前房内への培養角膜内皮細胞の注入治療,および生体内で患者の角膜内皮細胞を再生させる世界初の角膜内皮治療薬の開発に着手しており,いずれも数年以内の実用化をめざした研究を行っている.
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医学のあゆみ 241巻10号, 771-775 (2012);
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涙液には抗菌作用,創傷治癒促進作用があるだけでなく,眼表面を滑らかにすることにより視力維持にも貢献している.涙液の分泌がまったくなければ,眼表面上皮を正常に維持することができず,角膜の透明性を維持することもできなくなる.そして最終的には高度の角化組織(皮膚など)で眼表面が覆われると,極度の視力低下をきたし,通常の角膜移植を施行しても透明な角膜を維持することができなくなる.こういった高度の瘢痕性角結膜疾患には涙腺機能の再生が不可欠である.涙腺には腺上皮細胞,導管上皮細胞,筋上皮細胞,線維芽細胞の4 つの主となる構成細胞が存在するが,どの細胞種に涙腺の前駆細胞があるのかはまだ解明されていない.本稿では涙腺再生の臨床的重要性,涙腺の発生,涙腺の幹細胞研究,細胞誘導,細胞移植などの研究の現状,現段階で臨床応用されている技術について言及する.
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医学のあゆみ 241巻10号, 777-781 (2012);
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これまでにさまざまな基礎研究と臨床研究が行われてきた網膜色素上皮(RPE)の再生医療であるが,標準治療となる安全性と有効性が十分に確立されたものがあるとはいいがたい.このようななかで,RPE 移植の臨床応用を想定したiPS(induced pluripotent stem)細胞,ES(embryonic stem)細胞といった多能性幹細胞由来のRPE に関連する基礎研究・応用研究が注目されている.これまで日本では倫理や指針などの問題により,移植細胞源として有力であったES 細胞を使用したRPE の再生医療は見送られてきたが,ES 細胞と同等の能力をもちながらES 細胞のさまざまな問題を解決するiPS 細胞の出現は,日本でのRPE 移植による再生医療を急速に現実のものにしている.そこで,現在著者らが臨床研究をめざしているiPS 細胞由来RPE 移植を中心に,これまで行われてきたRPE の再生医療について概説する.
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医学のあゆみ 241巻10号, 782-786 (2012);
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近年になって,哺乳類の中枢神経でも内在的な再生能力をもちうること,大人の網膜でも移植された視細胞の前駆細胞を組み込むことができることなどあらたな知見が得られた.加えてES 細胞やiPS 細胞から組織として網膜を立体分化培養する方法が報告され,胎児期相当の網膜から,より成熟した網膜まで,培養によって得られるようになった.こういったことから,これまでは現実的ではなかった網膜や網膜細胞の移植による再生治療の可能性が具体的に模索されるようになった.これらの最近の進展をまとめてみたい.
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連載
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漢方医学の進歩と最新エビデンス 7
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医学のあゆみ 241巻10号, 792-798 (2012);
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更年期障害は,閉経周辺期の女性の生活の質(QOL)を阻害する重大な病態である.これに対し漢方療法は,その考え方の基本である全人医療と生体のバランスの維持を目的としているという点から,心身の多彩な症状を含む症候群である更年期障害に対してもっとも適した治療法のひとつであると考えられてきた.現在,漢方療法はホルモン補充療法(HRT)とともに更年期医療の中心的な治療法のひとつになっており,知名度が高く,副作用が少ない点から“自然”を好む傾向のある日本人女性においてはコンプライアンスもよく,頻用されている.実際,臨床での感触では,有効性を実感することが少なくない.しかし,evidence based medicine(EBM)の観点からは,これまでのところ,その有効性が明確に示されているとは言い難い.近年,質の高い無作為化比較試験も行われており,今後のさらなる検討が期待されている状況にある.
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フォーラム
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第76 回日本循環器学会総会・学術集会レポート 1
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医学のあゆみ 241巻10号, 799-801 (2012);
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炎症は,プラーク形成の発症や進展において中心的な役割をもつ.そして,急性冠症候群の発症には,プラーク性状が重要であることや,血管内超音波(IVUS)での検討から,「血管の陽性リモデリング」も,プラークの不安定性に関連していることが実証されてきた.一方,この10 年程の間に,血管石灰化がプラークの安定性に及ぼす影響についての研究が進み,石灰化の病態生理的な意義も明らかになりつつある.それとともに,血管石灰化は血管細胞の単なる変性ではなく,骨形成に類似した能動的な現象であることも明らかになってきた.そこで,本プレナリーセッションでは,世界ではじめて血管石灰化病変に骨形成因子が発現していることを報告し,その後一貫してこの分野で先駆的な研究をしておられる米国UCLA のDemer 教授をThe State-ofthe-Art lecturer としてお迎えした.また,わが国で,当該分野で活躍されている先生方に,基礎,臨床の両面から研究成果をご報告いただいた.
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パリから見えるこの世界 5
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医学のあゆみ 241巻10号, 802-805 (2012);
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TOPICS
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薬理学・毒性学
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医学のあゆみ 241巻10号, 787-788 (2012);
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小児科学
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医学のあゆみ 241巻10号, 788-789 (2012);
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癌・腫瘍学
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医学のあゆみ 241巻10号, 789-791 (2012);
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