Volume 242,
Issue 2,
2012
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あゆみ 血液凝固異常研究の進歩
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医学のあゆみ 242巻2号, 151-151 (2012);
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医学のあゆみ 242巻2号, 153-158 (2012);
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外傷などによって血管が損傷したとき,止血のために傷害部位で血液凝固反応系が発動して止血血栓を形成することは生命維持に必須である.しかし,血管内での過剰な凝固反応の作動は,病的血栓形成の原因となる.傷害部位以外での血液凝固反応の進行を制御して血栓形成を抑制し,血液の流動性を維持する役目を担っているのが凝固制御因子である.凝固制御因子には血液凝固因子の活性を直接阻害するプロテアーゼインヒビターや,凝固反応の促進因子であるⅤa 因子およびⅧa 因子を限定分解して失活させる酵素の前駆体プロテインC などが含まれる.また,プロテインC の補助因子プロテインS やプロテインC 受容体,トロンボモデュリンもこの系に含まれる.組織因子系インヒビター,アンチトロンビンなどのプロテアーゼインヒビターは,いずれも血管内皮細胞表面のヘパリン様分子であるヘパラン硫酸プロテオグリカンに結合して活性を発現する.これらの凝固制御因子は凝固因子同様,細胞表面(固相面)で機能することで効率的に制御していると考えられる.最近,プロテインS が組織因子系インヒビターと共同して組織因子系を阻害するという報告があり,組織因子系インヒビター/プロテインS の協働による凝固制御反応の存在も示唆されている.凝固制御系全体を理解することは,血栓症のさらなる診断や治療,予防法の確立に結びつくものと考えられる.
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医学のあゆみ 242巻2号, 159-162 (2012);
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血栓症は近年日本で増加傾向にあり,その原因には先天的あるいは後天的な要因が複雑にかかわっている.血栓性素因とは遺伝的に血栓傾向を示す病態で,その原因として生理的状況下では,血管内で血液の流動性を保つ働きをする凝固制御因子の異常があげられる.生理的凝固制御因子であるアンチトロンビン(AT),プロテインC(PC),プロテインS(PS)は,それぞれの遺伝子においてこれまでに多数の変異が報告されている.遺伝子変異によりその抗凝固活性が低下することで,血管内での凝固機構とそれを抑制する凝固制御機構のバランスが崩れ,結果として血栓症を発症しやすくなる.これら凝固制御因子の分子レベルでの解析は,血栓症の病因および病態の解明に必要である.
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医学のあゆみ 242巻2号, 163-167 (2012);
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深部静脈血栓症をはじめとする静脈血栓塞栓症は元来,欧米白人種に高頻度に発症する疾患であると考えられてきたが,日本でもかなりの頻度で発症していることが認識されつつある.欧米白人の血栓性素因は15年ほど前に凝固系第Ⅴ因子の多型[Factor Ⅴ Leiden(R506Q)]であることが示され,それ以降急速に血栓症対策が進んだ.一方,日本人など欧米白人以外の人種ではFactor Ⅴ Leiden はまったくみつかっておらず,その血栓性素因は別の要因であろうと推測されていた.最近の著者らの研究では,日本人の血栓性素因は凝固制御因子プロテインS の遺伝子変異による活性低下であることが示唆されており,日本のみならず東アジア全体の血栓性素因であることが証明されつつある.今後アジアにおける血栓症対策にはこのプロテインS 異常症の検出が重要となり,そのための正確・簡便な検査法の開発が必須であろうと考えられる.
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医学のあゆみ 242巻2号, 169-174 (2012);
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生理的な止血栓の形成には,血管傷害部位のみに限局する血液凝固反応と,傷害部位以外へ進展および拡大を阻止し止血栓を局在化させる凝固制御機構が重要である.凝固制御因子の遺伝子異常は向凝固と抗凝固との不均衡により過凝固状態をもたらし,ときに静脈血栓塞栓症へと進展する.凝固制御因子が動脈硬化における血栓形成の重要な決定要因のひとつであることや,重症感染症における炎症性サイトカインが凝固制御因子の産生を低下させ,播種性血管内凝固症候群でみられる全身性の広範囲な血栓症を引き起こすことが明らかにされている.慢性肝疾患患者では肝組織構造の改変による門脈血流の低下とともに,プロテインC 活性化能の低下をきたし抗凝固活性が減弱するために,門脈血栓症などの血栓形成をきたしやすい病態を示す.
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医学のあゆみ 242巻2号, 175-180 (2012);
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妊娠時にはエストロゲンの増加による凝固因子の増加と凝固活性の亢進,線溶系の抑制がみられ,生理的な過凝固状態となる.この現象は分娩時出血の止血に合目的である反面,血栓症を起こしやすい状態でもある.凝固制御異常では妊娠・分娩・産褥期に静脈血栓塞栓症を発症する頻度が高くなるのみならず,流産,胎児死亡,妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剝離,胎児発育不全の発症リスクも高くなることが明らかとなってきた.なかでも凝固制御因子のひとつであるプロテインS の異常症では,妊娠22 週以降の胎児死亡のリスクが血栓性素因のなかでもっとも高いことが報告されている.また,プロテインS は妊娠初期から生理的に低下し,胎児発育不全や妊娠高血圧症候群の発症と関連することが示されている.このように周産期領域においても,プロテインS 異常をはじめとする凝固制御異常が妊婦や胎児のどのような病態や疾患にいかに関与するのかという母児に及ぼす影響とその発症機序に着目されるようになってきた.
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医学のあゆみ 242巻2号, 181-187 (2012);
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後天性血栓性素因は,基礎病態により誘発された複数の凝固亢進要素が重なり合い血栓形成に至る.凝固亢進の要素として,組織因子(TF)の増加やトロンボモデュリン(TM)などの凝固制御因子の活性低下が背景にある場合が多い.代表的な後天性血栓性素因である抗リン脂質抗体症候群(APS)は血中に抗リン脂質抗体(aPL)を認め,動静脈血栓症や妊娠合併症を主症状とする.aPL が血栓形成に関与することは間違いないが,その詳細な機序は不明である.抗β2-glycoproteinⅠ抗体(aβ2GPⅠ)とホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)が血栓形成に関与するaPL と考えられている.aPL が凝固制御因子活性に抑制的な影響を与えることに加え,aPL がリン脂質結合蛋白を介して血管内皮細胞・単球などに結合し活性化することにより易血栓性が形成されると推定される.β2GPⅠを介したaβ2GPⅠの細胞活性化によるTF 発現のためには,p38-MAPK リン酸化およびNKκB 活性化が重要である.動物実験などからβ2GPⅠの細胞膜上レセプターとしてTLR-4 などが推定されている.このように後天性血栓性素因の血栓機序は単純でないため,血栓の予防や治療,血栓傾向の診断や検査などは複雑で困難を伴う.
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医学のあゆみ 242巻2号, 188-193 (2012);
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血液凝固第Ⅷ因子(FⅧ)は血液凝固反応過程においてリン脂質膜上で凝固FIX の補因子として機能し,凝固反応速度を著しく増強させる糖蛋白である.本因子の欠乏は血友病A として知られているが,一方,血栓症患者のFⅧ活性レベルが高値を示すことも統計学的に証明され,FⅧと血栓形成とのかかわりも注目されている.つまりFⅧは出血と血栓の相反する病態にかかわるきわめて重要な因子である.従来のresearch は,①凝固のinitiation phase にかかわる凝固外因系,②続いて惹起されるトロンビンバーストのpropagation phase にかかわる内因系,③トロンビン-トロンボモデュリン系を介する凝固抑制系,さらに④形成したfibrin clot を溶解する線溶系に分け,十二分に研究・発展されてきた.しかし,凝固に至るまでこれら複数の制御系が同時に絡みあって進行していく概念も,近年支持されつつある.2008 年にFⅧ(一部を除く)の結晶構造が報告され,FⅩase 複合体でのFⅧの役割も明らかとなってきている.最近では,FⅧ-線溶系制御軸やFⅧ-FⅦa/TF制御軸もすこしずつ解明されつつあり,FⅧを中心とした凝固と血栓の形成機序の解明は,安全かつ有効な新規FⅧ製剤や抗血栓・抗凝固療法の開発にもつながると強く期待される.
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医学のあゆみ 242巻2号, 194-198 (2012);
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ワルファリンは凝固因子の産生に影響して抗凝固作用を発揮するが,近年開発された抗凝固薬は選択的に活性化凝固因子のⅩa やⅡa を抑制する.このため,ワルファリンの作用持続時間は長く,プロトロンビン時間によるモニターは容易である.一方,抗Ⅱa 剤や抗Ⅹa 剤の作用時間は短く,抗凝固活性のモニターは困難である.フォンダパリヌクスはアンチトンビンを介してⅩa を抑制し,エドキサバン,リバーロキサバン,アビキサバンは直接Ⅹa を抑制する.ダビガトランは直接Ⅱa を抑制し,脳卒中リスクを有する心房細動(AF)患者の血栓予防に適応である.フォンダパリヌクスは静脈血栓塞栓症(VTE)の予防ならびに治療に適応であり,エドキサバンはVTE 予防に適応である.その他,脳卒中リスクを有するAF の血栓予防にリバーロキサバンは承認され,アビキサバンは承認申請中である.本稿ではこれらの薬剤の臨床試験成績についても述べる.
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連載
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漢方医学の進歩と最新エビデンス 10
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医学のあゆみ 242巻2号, 204-210 (2012);
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めまい・耳鳴りの西洋医学的な治療は,考え方,器械,手技などの進歩はあったが,薬物治療については画期的なものは出現していない.今回,漢方薬による治療の3 つの話題を提供する.1 つ目はめまい集団リハに補中益気湯を併用することで,抑うつ傾向の患者の精神症状の改善を認めた報告である.外来で治療しているめまい症例のなかには抑うつ傾向の患者も多く存在するので,これを見逃してはならず,気鬱,気虚を治療する漢方薬を加えることも考慮すべきであることを示唆している.2 つ目は,耳管開放症に補中益気湯を投与した報告である.広く知られてきた加味帰脾湯に加えて,補中益気湯も選択肢のひとつになることが期待される.3 つ目は,BPPV の治療に苓桂朮甘湯を投与した報告である.薬物治療はめまい症状を抑制し,自然軽快をはかる方法とされている.苓桂朮甘湯も眼振の持続期間を短縮しなかったが,BPPV 治療に対する有用性を否定するものではない.
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フォーラム
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第76 回日本循環器学会総会・学術集会レポート 4
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医学のあゆみ 242巻2号, 211-212 (2012);
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現在,世界的に肥満者数の増加が問題となっている.もっとも多いのはアメリカで,わが国は世界的にみると比較的少ない傾向にあるが,日本人は欧米人に比べて元来インスリンの分泌量が少ないため,軽度の肥満であっても糖尿病を発症しやすい.また,インスリン分泌不全という遺伝的素因に加えて近年ライフスタイルの欧米化が進み,生活習慣が変化することで肥満者が増えてきたことから,今後10 年間でわが国においても糖尿病が増加することが推測されている. とくに,糖尿病における心筋梗塞や脳梗塞などの大血管障害の発症が,死亡率の増加やQOL の低下に影響を及ぼしている.したがって,糖尿病における心血管障害の病態生理を解明することは,糖尿病合併症の診断・治療においても重要である.最近では酸化ストレスによる糖化蛋白の存在が,糖尿病性心血管障害に関与していることも報告されている.一方で糖尿病治療薬は,インクレチン関連製剤など新しい薬剤が開発されて,心血管イベント抑制の観点からも基礎的・臨床的検討が進んでいる.そこで本シンポジウムでは,糖尿病性心血管障害の病態生理や新規の治療法に関する発表をしていただき,今後の糖尿病診療に有用なヒントとなる議論をしていただいた.
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パリから見えるこの世界 6
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医学のあゆみ 242巻2号, 213-216 (2012);
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TOPICS
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免疫学
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医学のあゆみ 242巻2号, 199-200 (2012);
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呼吸器内科学
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医学のあゆみ 242巻2号, 200-201 (2012);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 242巻2号, 201-202 (2012);
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