Volume 242,
Issue 3,
2012
-
あゆみ “自殺予防”最前線
-
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 221-221 (2012);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 223-227 (2012);
View Description
Hide Description
わが国における自殺死亡数は1998 年に8 千人以上急増し3 万人を超えて以降10 年以上にわたって3 万人前後で推移しつづけており,自殺死亡率は世界的にみても高い水準にある.わが国では自殺死亡は一貫して女性よりも男性に多く,とくに1998 年以降は男性の中高年層に顕著なピークがみられる.わが国の自殺死亡の実態は一様ではなく地域差がみられる.また,自殺死亡は男女ともに春に多く,冬に少ないという季節変動が認められる.さらには,自殺の原因・動機としてもっとも多いのはうつ病などの精神疾患を含めた健康問題,ついで経済・生活問題であり,保健医療福祉従事者が自殺予防に果たす役割の大きさが示唆される.現在,“自殺対策基本法”に基づき平成19 年(2007)6 月に閣議決定された“自殺総合対策大綱”の見直しが進められている.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 229-233 (2012);
View Description
Hide Description
1990 年代後半以来,“過労自殺”が社会問題化している.労働関連自死の労災申請件数は近年,年間160件前後にすぎず,“勤務問題”が原因・動機の年間自死者数の2,500 件前後からみれば“氷山の一角”といえる.労働関連自死増加の背景には,“3 つの元年”に象徴される,1990 年代後半から加速された新自由主義的な社会・経済構造の改革がある.その結果,労働ストレスが悪化し,うつ病を中心に精神疾患が増加し,労働関連自死が増加した.この“因果の鎖”にかかわる研究とともに,成果主義賃金や長時間過重労働がうつ病の予測因子であることが示唆された著者らの研究に触れる.労働ストレスの低減やうつ状態の改善に,認知行動的スキル訓練とリラクゼーションを組み合わせたストレスマネジメントトレーニングは中等度の効果がある.これに組織志向のプログラムを組み合わせたメンタルヘルス対策が有望視されている.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 234-238 (2012);
View Description
Hide Description
自殺者の90%近くが自殺時に何らかの精神科診断がつく状態であったことが見出されている.内訳としてもっとも多いのが,うつ病をはじめとする気分障害であり,ほかに物質関連障害,統合失調症,パーソナリティ障害などがある.うつ病は有病率が高く,ほかの疾患に合併することも多いことから,適切な発見と積極的な治療が望まれる.双極性障害も自殺率は高く,うつ病相で多く起こるため,この病相に対する治療を積極的に考える必要がある.統合失調症の自殺は疾患経過の早期に多い.うつ状態,自殺企図歴は危険因子であり,これらを問う問診と疾患の受容を支えるケアが重要である.物質関連障害のなかでもアルコール症は自殺のリスクが高く,ヘビードリンカーになる前の介入が必要となる.パーソナリティ障害は併存する気分障害,物質関連障害などが自殺のリスクを高める.うつ状態や物質乱用・依存の治療を行う際,背景のパーソナリティ障害の有無をチェックする視点が望ましい.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 239-242 (2012);
View Description
Hide Description
わが国では1998 年以来,年間自殺者数が3 万人を超え,この数は交通事故死者数の6 倍以上にのぼる1).さらに,自殺未遂者数は少なく見積もっても既遂者数の10 倍にのぼるとの推計がある(40 倍との推計すらある).そして自殺未遂や既遂が1 件生じると,深い絆のあった多くの人びとに心理的影響を及ぼす.このように,自殺は死にゆく3 万人の問題にとどまらずに,社会を広く巻き込んだ深刻な問題となっている.自殺の危険の高い人の多くは,何らかの精神障害に罹患しながらも,さまざまな身体症状を訴えて精神科以外の診療科を受診しているという報告もある.したがって,精神科を専門としない医療従事者一般が自殺のリスクを初期の段階で発見し,適切な精神科治療へと導入するゲートキーパーの役割を果たすことが期待されている.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 243-247 (2012);
View Description
Hide Description
自殺予防のためには医療者はまず率直に自殺念慮について尋ねることで,その危険に“気づく”必要がある.その際に,患者との間で“自殺の是非”をめぐる議論をしたり叱責したりするのではなく,まずは話を傾聴する必要がある.そのうえで,しかるべき専門的支援機関に“つなぎ”,さらに,その“つなぎ”が途切れないように“見まもり”を続ける必要がある.このようにして複数の援助者がそれぞれ複数回ずつ会い続けるなかで,“気づき,つながり,見まもりあう”関係性が文字どおり網の目のように張りめぐらされ,患者の周囲に“いのちのセーフティネット”がつくり上げられることが,自殺の危険を回避するために求められる対応である.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 248-252 (2012);
View Description
Hide Description
大切な人を自殺で失ったとき,遺された人びとはこころにさまざまな影響を受ける.うつ病や不安障害などの症状が顕在化することもまれではない.こうした影響を最小限にするために,遺された人びとに適切なこころのケアを行うことがポストベンション(postvention)である.ポストベンションでは個人面接,グループワーク,集団教育を適宜組み合わせながら,対象者に必要な情報を提供し,適切な形で振り返ってよいことを保証し,喪の作業が行える環境づくりを援助する.また,振り返りのなかで得られた情報について,精神医学的に統合・再構築する.ただし,ポストベンションだけですべての問題が解決するわけではなく,医療が必要な人がいる場合にはフォローアップにつなげることも重要である.自殺が起こった後は喪の作業が避けられやすい傾向があり,また,さまざまな症状に苦しんでいても,「時間が解決するしかない」と治療に結びつかないことも多い.自殺の原因をめぐって周囲では流言飛語が飛び交っている場合もある.ポストベンションによって適切な情報が共有されると,これらが改善することが経験されている.自殺予防に全力を尽くすことは当然であるが,不幸にも自殺が起こった場合には遺された人びとへのケアが大切である.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 253-257 (2012);
View Description
Hide Description
自殺予防を医療面からとらえると,うつ病対策が最重要となる.うつ病には精神症状と身体症状があり,多くの患者は全身倦怠感,不眠,食欲不振などの身体症状を訴え,まずは一般医を受診する.そのため,一般医と専門医(精神科医)の連携がうつ病の早期発見・早期治療,ひいては自殺予防の鍵となる.連携の要諦は,一般医と精神科医が“顔のみえる関係”を築き,両者の信頼関係を深めることにある.深刻化している自殺問題に対し“自殺から命を守る”という目標のもと,科の違いを越えて手を携えて取り組む姿勢が共有できるかどうか,いま,医療関係者に問われている.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 259-263 (2012);
View Description
Hide Description
わが国の医療においては,診療内容は保険診療報酬体系により規定されているのが現実である.したがって,自殺予防に医療的側面から寄与していくためには,患者の必要性に沿った保険診療報酬体系を実現することが重要と考える.自殺念慮を有する患者の治療においてはまず,患者の状況に応じた診察を提供できる体制が重要である.このような患者の診察はときには相当な時間を要し,頻回の診察を要することも少なくない.さらに,他科医師との連携も重要となる.つぎに,単に生物医学的側面のみの関与では治療は成功しない.精神障害の背景となっている,あるいは障害になってしまったがための二次的な心理的・社会的側面への関与が不可欠である.したがって,家族や職場あるいは学校など関係者との連携,そして患者の心理的・社会的側面への対応が十分できるような人員の確保が必要である.このように患者の必要性を担保できる診療報酬体系の構築が重要と考える.
-
連載
-
-
漢方医学の進歩と最新エビデンス 11
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 269-276 (2012);
View Description
Hide Description
一般の整形外科医の診療の選択肢にエキス剤の漢方薬は組み入れられていない.学会でも漢方薬の治療が有用であることは認識されていない.漢方の世界のなかでも整形外科はもっとも後進の診療科である.では,現代の整形外科の診療に漢方薬は不必要かというと,そうではなく,たいへん役立つことを臨床で使用している医師たちは知っている.整形外科医が漢方薬を使えるようになるためには,接し方があることを知らなければならない.難解な基礎理論とどのように折り合いをつけるかを知らなければ,使いこなすことはできない.さらに,難治性の疼痛に対する新規の西洋薬が使用できるようになった現時点における漢方薬の位置づけ,存在意義を知っていなければ臨床の幅は広がらない.腰痛の治療においては段階的な漢方薬の使用方法とその意義を,膝痛の治療においては知っておくべきいくつかの漢方薬と使い方のコツを紹介した.また,臨床から得られるエビデンスと基礎から得られるエビデンスについても紹介した.
-
フォーラム
-
-
近代医学を築いた人々― 7
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 277-277 (2012);
View Description
Hide Description
-
第76 回日本循環器学会総会・学術集会レポート 4
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 279-280 (2012);
View Description
Hide Description
このシンポジウムは,近年注目されている“心腎連関”の分子機序に焦点をあてたものである.海外からは,cardio renal anemic syndrome の提唱者であるTel Aviv メディカルセンターのDonaldS. Silverberg 先生と,Mayo Clinic のJohn C.Burnett 先生にご参加いただき,日本からは多くの応募演題のなかより奈良医大の竹田征治先生,金沢大学の武田仁勇先生,東京大学の藤生克仁先生の3名の演者に,最新の研究成果をお話しいただいた.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 281-284 (2012);
View Description
Hide Description
-
TOPICS
-
-
薬理学・毒性学
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 265-266 (2012);
View Description
Hide Description
-
免疫学
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 266-267 (2012);
View Description
Hide Description
-
循環器内科学
-
Source:
医学のあゆみ 242巻3号, 267-268 (2012);
View Description
Hide Description