Volume 242,
Issue 10,
2012
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あゆみ 皮膚免疫学―免疫臓器としての意義と病態
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医学のあゆみ 242巻10号, 771-773 (2012);
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医学のあゆみ 242巻10号, 774-779 (2012);
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皮膚はわれわれの身体の外表を覆う構造物である.そのもっとも重要な機能が外界と生体の境界をなすバリアとしての機能である.哺乳類皮膚表皮のバリアは,①角質バリアと②タイトジャンクション(TJ)バリアの2 つの要素から構成されている.近年,皮膚の最表層を覆う角質層のバリア機能不全が慢性的な外来抗原の経皮的侵入の増加を招き,経皮感作が成立しやすくなることで,さまざまなアトピー疾患の発症要因となるという仮説が注目されている.一方,角質バリアの内側ではTJ によるバリアと表皮内樹状細胞であるLangerhans細胞との相互作用による非常に洗練された抗原取得システムが存在し,外来抗原に対する予防的獲得免疫の成立に寄与している.皮膚がもつ物理的なバリアと免疫機構との相互作用の解説を通じて,病原体に対抗するバリアとして皮膚が担う役割と免疫の作用,経皮感作を通じたアトピー疾患の病態形成について考察する.
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医学のあゆみ 242巻10号, 780-784 (2012);
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皮膚は外界と体内とを隔てる臓器であり,活発な免疫活動の場である.T 細胞や樹状細胞をはじめとした多種多様の免疫細胞が入り交じり,多彩な免疫反応が形成される.空間的にも時間的にもダイナミックに変化する免疫反応を捉えるには,近年現れたライブイメージングの手法が強力な研究ツールとなる.本稿では皮膚免疫のライブイメージングについて,接触皮膚炎のマウスモデルである接触過敏反応を中心に解説した.皮膚の炎症部に遊走してきたT 細胞は皮膚のなかを活発に動きまわって抗原をスキャニングするが,いったん抗原提示細胞である樹状細胞から特異抗原の提示を受けると移動を停止して,数時間にわたり樹状細胞に接着する様子がとらえられる.このようにライブイメージングを用いることで,従来定点的にしか評価できなかった皮膚免疫を四次元のレベルで観察・評価することが可能であり,皮膚免疫学研究へのさらなる応用が期待される.
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医学のあゆみ 242巻10号, 785-790 (2012);
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皮膚は生体が外界に接する境界面に位置する構造物である.そこでは常在細菌叢による刺激,電磁波(紫外線,可視光線,赤外線)への曝露,水・油などの無機・有機溶剤との接触や電解質変化など,微小変化が常時繰り返されている.これらの影響を受ける,あるいは感知する機構のひとつが自然免疫機構であり,皮膚は自然免疫機構によって維持されているといっても過言ではない.自然免疫受容体とその誘導分子である抗菌ペプチドは,宿主外の微生物に対する防御とともに,宿主組織の炎症を惹起し,生体への警鐘を鳴らす.一方で,自然免疫機構の破綻・過剰反応は皮膚炎症性疾患の病態にかかわることも明らかになりつつある.本稿では皮膚における自然免疫機構を概説し,酒さ,乾癬,全身性エリテマトーデス(SLE),湿疹性疾患を中心に自然免疫の側面から鑑みた皮膚病態論について紹介する.
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医学のあゆみ 242巻10号, 791-794 (2012);
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自己炎症性疾患は,細胞質内に存在するNOD 様受容体(NOD-like receptor:NLR)ファミリー分子など自然免疫にかかわる分子の変異により,発熱や関節症状を主症状とする遺伝性疾患である.そのひとつであるBlau 症候群(Blau syndrome:BS)/若年発症サルコイドーシス(early-onset sarcoidosis:EOS)は4 歳以前の乳幼児に発症し,皮膚炎,関節炎,ぶどう膜炎を3 主徴とする肉芽腫性疾患であり,失明や関節拘縮をきたす予後不良の疾患である.NOD2 遺伝子の変異はNOD 領域(nucleotide-binding oligomerization domain)に存在し,MDP(muramyl dipeptide)非存在下でのNF-κB の基礎活性を増強させる機能獲得型変異であり,わが国ではR334W の変異がもっとも多い.NF-κB の恒常的な活性化が肉芽腫形成に関与すると想定されるが,詳細なメカニズムは明らかでなく,今後の解明が期待される.
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医学のあゆみ 242巻10号, 795-798 (2012);
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発展途上国を中心に約20 億人存在するといわれる亜鉛欠乏症では多彩かつ特徴的な皮膚症状(acrodermatitis)がみられるが,古くより精力的な研究がなされてきたにもかかわらず,その発症メカニズムについては長らく不明であった.亜鉛欠乏は細胞性免疫ならびに液性免疫を著明に低下させるため,これまで亜鉛欠乏に伴う皮膚炎は何らかの感染症により引き起こされると推測されてきたが,最近この皮膚炎の本態が実は一次刺激性接触皮膚炎であることが明らかとなった.亜鉛が欠乏すると,外界の一次刺激物質との接触によって,より多量の炎症起因物質,アデノシン三リン酸(ATP)が表皮細胞から細胞外へ放出される.一方,ATP 不活化作用を有するCD39 を表皮内で唯一発現するLangerhans 細胞(LC)は,亜鉛欠乏により著明に減少あるいは消失する.このため,亜鉛欠乏症では一次刺激物質によって大量の細胞外ATP が誘導されて,炎症反応すなわち一次刺激性接触皮膚炎が惹起されやすいと考えられる.このことから,亜鉛欠乏患者の口囲や外陰部,四肢末端に生じる “acrodermatitis”は,それぞれ食べ物や屎尿,生活環境内における化学物質などが刺激物となって引き起こされた一次刺激性接触皮膚炎であると推測される.
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医学のあゆみ 242巻10号, 799-804 (2012);
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乾癬は炎症,毛細血管拡張・増殖とともに表皮細胞の過増殖と分化異常を特徴とする,代表的な炎症性角化症である.乾癬患者ではIFN-γが皮疹部,末梢血のT 細胞で高発現していることから,おもにTh1 細胞がかかわっていると考えられていた.しかし近年,関節リウマチなど自己免疫疾患に関与するTh17 細胞が乾癬においても重要であることが明らかになった.IL-23 刺激により分化・成熟したTh17 細胞は皮膚に浸潤した後,IL-17 やIL-22 を分泌し,表皮を刺激して抗菌ペプチドやケモカイン分泌を誘導する.同時にTh17 は,乾癬に特徴的な表皮角化細胞の増殖・分化の異常を誘導する.一方,表皮からのケモカインに反応して好中球などとともにTh17 細胞が遊走し,悪循環ループが形成される.著者らは乾癬モデルマウスを用いてこれらIL-23/Th17 軸-表皮細胞クロストークを明らかにした.平成22 年(2010)よりわが国では,乾癬に対し抗TNF 抗体製剤,引き続いて抗IL-12/23p40 抗体製剤の保険適用が承認された.これらは乾癬発症におけるIL-23/Th17 軸の重要性を示唆しており,今後もこれに続いて抗IL-17 抗体などがあらたに登場すると思われる.本稿では乾癬におけるIL-23/Th17 軸,最近注目されはじめたIL-36 の関与,そして今後さらに登場する治療法の展開なども紹介しつつ,乾癬と皮膚免疫のかかわりを概説したい.
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医学のあゆみ 242巻10号, 805-810 (2012);
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Stevens-Johnson 症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)と薬剤性過敏症症候群(DIHS)は,重症薬疹の双極である.この発症機序として,HLA アリルとの関連について精力的に研究されている.しかし,この関連は薬疹の起こしやすさを決めているだけであり,臨床型を決めているのは別の因子である.そのなかで大きな因子は制御性T 細胞(Treg)の存在である.DIHS ではTreg が増大しているために発症が遅れるし,ウイルスの再活性化が起こる.それに対しSJS/TEN ではTreg の機能低下によりCD8+エフェクターT 細胞の過度の活性化が起こる.先行するウイルス感染はTreg の機能を一時低下させることにより,SJS/TEN を起こしやすい状況をつくりだす.このように薬疹の発症には,Treg を介してウイルスが発症のさまざまな過程に関与している.
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医学のあゆみ 242巻10号, 811-815 (2012);
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天疱瘡は,デスモグレイン(Dsg)に対する自己抗体によって起こる自己免疫疾患である.Dsg は細胞内の小胞体で前駆体(preDsg)として生成され,細胞表面に運ばれる間にプロペプチドがはずれて成熟蛋白となり,デスモゾームを形成して表皮細胞間接着にかかわっている.天疱瘡患者において,Dsg に特異的なB 細胞が自己抗体産生に重要な役割を果たしているが,著者らの最近の研究で,健常人においてもpreDsg に特異的なB 細胞が消去されずに存在していることがわかってきた.核内や細胞質内の自己抗原に対する抗体であること,抗体の特性のほとんどを特定の重鎖が担っていること,ゲノム遺伝子配列からの変異がほとんどないことなどから,preDsg1 に特異的なB 細胞は健常人のだれもがもっている自然自己抗体の特徴を備えていると考えられた.このようなpreDsg 特異的B 細胞の役割,存在意義はいまのところ不明であるが,組織損傷などが誘因となって自己反応性T 細胞へのDsg の抗原提示を行い,天疱瘡発症に関与している可能性がある.さらに,風土病型落葉状天疱瘡などの特定の条件下で,健常人からもpreDsg に対する自己抗体が検出されることも示されてきており,発症前段階における標的抗原の前駆体に対する自己反応性B 細胞および自己抗体というあらたなアプローチが,自己免疫疾患の発症機序解明への手がかりになることが期待される.
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連載
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漢方医学の進歩と最新エビデンス 15
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医学のあゆみ 242巻10号, 821-826 (2012);
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頭痛の治療薬として多くの漢方薬が経験的・伝統的に有用とされている.片頭痛に対しては,呉茱萸湯,五苓散,桂枝人参湯などが,緊張型頭痛に対しては川芎茶調散,葛根湯,釣藤散などが頻用され,薬物乱用性頭痛をはじめ二次性頭痛にも使用されている.多数の成分を含む漢方薬は作用機序の詳細が未解明で,これまでエビデンスレベルの高い臨床報告は少ない.しかし最近,基礎研究とともに従来の経験則を考慮した臨床治験も進められている.
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フォーラム
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医学のあゆみ 242巻10号, 827-831 (2012);
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パリから見えるこの世界 8
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医学のあゆみ 242巻10号, 832-836 (2012);
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よくわかるゲノムワイド関連解析 1
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医学のあゆみ 242巻10号, 837-838 (2012);
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TOPICS
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 242巻10号, 817-818 (2012);
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形成外科学
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医学のあゆみ 242巻10号, 818-819 (2012);
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皮膚科学
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医学のあゆみ 242巻10号, 820-820 (2012);
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