Volume 243,
Issue 3,
2012
-
あゆみ 利尿薬の最新エビデンス
-
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 209-209 (2012);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 211-217 (2012);
View Description
Hide Description
体液の組成の恒常性生命は,腎が生体に過不足なく正確に水電解質を調整しているからである.腎のこのような大きな調節機構は,1 日150 L にも及ぶ多量の濾過と多量の再吸収に基づいている.糸球体濾過や尿細管による再吸収は,経口摂取などに反応してダイナミックに調節されている.腎の一見複雑な構造と機能は,食塩摂取や血圧が変動しても十分な濾過を維持し,ナトリウムバランスを維持するとともに腎自身を虚血から護るために,きわめて論理的,かつ精巧・精緻にできていることに驚かされる.
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 219-224 (2012);
View Description
Hide Description
高血圧症や心血管疾患におけるアルドステロンの役割は,うっ血性心不全や原発性アルドステロン症(PA)をはじめとする内分泌性高血圧において示されている.異なる3 種類以上の降圧薬でも血圧のコントロールが不良である治療抵抗性高血圧ではミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬の併用により血圧のコントロールが著明に改善することが多く,著者らはこのような病態を“MR 関連高血圧”と提唱している.MR 関連高血圧は血漿アルドステロン濃度が高値を示すタイプと,正常範囲であるタイプの2 つのサブタイプに分けられる.前者にはPA,アルドステロン関連高血圧,アルドステロンブレイクスルー現象,閉塞性睡眠時無呼吸症候群などが含まれる.後者には肥満,糖尿病,慢性腎臓病(CKD),多嚢胞性卵巣症候群などが含まれる.後者のMR 関連高血圧の病態では高アルドステロン血症以外の機序によるMR 活性化が想定される.そのなかにはMR 発現量の増加,MR 感受性の亢進,MR の安定化,MR 結合因子による活性化,MR 遺伝子の活性化変異などが含まれる.治療面では,高アルドステロン血症を伴うMR 関連高血圧に対してはMR 拮抗薬を第一選択薬として用いるべきであり,正常アルドステロン血症を伴うMR 関連高血圧に対してはアンジオテンシン受容体拮抗薬やアンジオテンシン変換酵素阻害薬を第一選択薬として,MR 拮抗薬を併用薬として少量用いるのが効果的である.
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 225-229 (2012);
View Description
Hide Description
利尿薬,とくにサイアザイド系およびその類似薬は1 日1 回の服薬で緩徐かつ安定した降圧効果を発揮するため,古くから降圧薬として用いられている.これに対してループ利尿薬は浮腫改善薬と位置づけられてきた.しかし,体液量が正常域近くになれば,作用持続時間の長いサイアザイドの方が体液量を減少させ血圧を低下させる作用が大きいと考えられる.利尿薬は血圧日内リズムをnon-dipper からdipper に正常化させるため,心不全,腎不全を合併する症例では予後改善に寄与する可能性も想定される.今後,心不全などの浮腫性疾患でもサイアザイドの活用が望まれる.
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 231-235 (2012);
View Description
Hide Description
ループ利尿薬はうっ血症状をコントロールするために,いまも慢性心不全患者の治療に欠かせない薬剤である.しかしレトロスペクティブな検討から,慢性心不全においてループ利尿薬の使用量が多いほど患者の予後が悪い,ということが明らかになった.それは,重症な患者ほど大量のループ利尿薬が必要だから,というだけではなく,ループ利尿薬によるレニン-アンジオテンシン(RA)系や交感神経系の活性化が,慢性心不全の予後を悪化させている可能性が示唆された.動物実験の結果から,同じループ利尿薬であっても長時間作用型のアゾセミドは,短時間作用型のフロセミドよりも慢性心不全の長期予後によい影響を及ぼすのではないかと考え,著者らはNYHA Ⅱ~Ⅲ度の慢性心不全患者を対象として,多施設共同前向きランダム化比較試験JMELODIC試験を実施した.その結果,一次エンドポイントの心不全症状の悪化による入院または心血管死はアゾセミド群でフロセミド群よりも有意に少なかった(ハザード比:0.55,95%信頼区間:0.32-0.95,p=0.03).今後,慢性心不全において長時間作用型のループ利尿薬を優先的に使用すべきであると考えられた.
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 236-240 (2012);
View Description
Hide Description
1980 年代は,単にループ利尿薬による低カリウム血症を予防する目的で,つまりループ利尿薬の“おまけ”として“カリウム保持性利尿薬”という位置づけで心不全治療に用いられてきたミネラロコルチコイド受容体遮断薬であったが,複数の介入試験において心不全治療薬としての有用性が確立した.その機序は血清カリウム値の保持,あるいは利尿効果とは独立したものであることも示され,心不全治療という観点からは利尿薬とは別のクラスの薬剤として認識すべきと思われる.ミネラロコルチコイド受容体遮断薬は“抗アルドステロン薬”ともよばれているが,病的状態にある心臓など非上皮組織においてはミネラロコルチコイド受容体のリガンドはアルドステロンのみではないと考えられる.つまり本薬剤は,アルドステロンの作用のみを阻害しているわけではないと思われることから,その名称も“抗アルドステロン薬”ではなく“ミネラロコルチコイド受容体遮断薬”とされるべきと考える.古くから存在する薬剤ではあるが,心筋線維化や肥大の進展阻止などを介して広く循環器疾患患者に福音をもたらす可能性のある薬剤として,いまではあらたな観点から認識されはじめている薬剤であり,今後のエビデンスの蓄積が望まれる.
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 241-244 (2012);
View Description
Hide Description
心不全治療において利尿薬はなくてはならないものであり,水利尿薬であるバゾプレシン受容体拮抗薬を手にした今,われわれは心不全治療において新たな転帰を迎えている.心不全における利尿とは何かを改めて整理し,この薬剤の特性をいかしつつ,どのように心不全における体液貯留をマネージメントしていくかを考える必要がある.予後の重要な規定因子といわれている低ナトリウム血症を中心にこの薬剤の対象は多岐にわたり,その期待は非常に大きい半面,特性をいかした使用方法を明らかにすることはけっして容易な道程ではなく今後の課題である.
-
連載
-
-
漢方医学の進歩と最新エビデンス ⑲
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 249-255 (2012);
View Description
Hide Description
わが国でもメタボリック症候群が増加しており,その対策が急務とされる.その基盤となる肥満治療の基本は食事療法と運動療法であるが,薬物療法が補助的に用いられることがある.欧米では抗肥満薬としては脂質吸収薬であるオルリスタットなどが用いられている.最近,米FDA で抗肥満薬Lorcaserin が承認された.しかし,日本で肥満症の保険適応があるのはマジンドールと防風通聖散などの漢方薬のみである.防風通聖散は,麻黄,甘草,荊芥,連翹など18 種類の生薬より構成される漢方薬である.麻黄は,エフェドリンを含み,交感神経終末からノルアドレナリン放出を増強し,白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞のアドレナリン受容体を活性化する作用をもつ.甘草,連翹にはホスホジエステラーゼ阻害作用がある.その結果,肥満モデル動物では褐色脂肪組織の活性化を介して抗肥満作用を発揮する.肥満を伴うIGT を対象としたランダム化比較試験では体重・腹部内臓脂肪量とともに,インスリン抵抗性の改善が認められている.ただし,防風通聖散は麻黄や甘草などを含んでいるため,肝機能障害などの副作用に注意する必要がある.メタボリック症候群に汎用される漢方薬の特徴と注意点をよく知って,補助的に漢方薬を用いることが肝要である.
-
注目の領域
-
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 257-263 (2012);
View Description
Hide Description
Fabry 病の有病率に関しては従来は約40,000 人に1 人とされていたが,最近スクリーニングの精度の向上により男児を対象としたものでは1,500 人に1 人と報告され,今後本疾患の臨床的重要性は高まるであろう.GLA の基質であるLyso-GL-3 が新規のバイオマーカーとして浮上しているが,酵素補充療法の効果の判定やモニターにも有用である.遺伝子異常に関しては最近の話題はE66Q 変異であるが,Fabry 病を起こす原因遺伝子なのか疑問視されていたが,機能的遺伝子多型の可能性が高い.現在Fabry 病の治療法としては酵素補充療法が標準的であるが,欠点を克服すべくメタノール資化性酵母を用いて組換えヒトGLA を生産する方法,化学または薬理シャペロン療法が注目されている.ミガラスタト塩酸塩も薬理学的シャペロンとして知られているが,全世界で第Ⅲ相臨床試験を実施中である.改変型α-N-アセチルガラクトサミニダーゼにサポシンB を添加する治療法も検討されている.
-
フォーラム
-
-
近代医学を築いた人々 ⑩
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 265-265 (2012);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 266-268 (2012);
View Description
Hide Description
-
TOPICS
-
-
細胞生物学
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 245-246 (2012);
View Description
Hide Description
-
免疫学
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 246-247 (2012);
View Description
Hide Description
-
神経内科学
-
Source:
医学のあゆみ 243巻3号, 247-248 (2012);
View Description
Hide Description