医学のあゆみ
Volume 243, Issue 9, 2012
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【12月第1土曜特集】 CKD診療ガイド2012 ガイドブック
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- CKDの基本と背景
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CKDの定義と重症度分類
243巻9号(2012);View Description Hide Description慢性腎臓病(CKD)の重症度分類の変更に伴い,日本腎臓学会は『CKD 診療ガイド2012』を発行した.CKDの重症度は原因(cause:C),腎機能(GFR:G),蛋白尿(アルブミン尿:A)によるCGA 分類で評価する.GFR区分は従来のステージ3 がGFR 45 mL/min/1.73 m2で分割され,G3a,G3b となった.糖尿病患者ではアルブミン尿の定量測定で評価し,それ以外は尿蛋白定量で評価する.専門医への紹介基準,専門医への受診間隔についてもこの重症度分類に基づいて行う. -
CKDの疫学―日本人のCKDの特徴
243巻9号(2012);View Description Hide Description慢性腎臓病(CKD)は蛋白(アルブミン)尿,およびeGFR(血清クレアチニン,年齢,性より求める)の両者によって分類される.蛋白尿が多いほど,またeGFR が低下するほど末期腎不全(CKD ステージ5D)および心血管障害の発症率が高くなる.蛋白尿が多い例では降圧目標を低め(130/80 mmHg 以下)とする.透析療法を要する末期腎不全(end-stage kidney disease, ESKD)はいぜんとして増加している.原疾患では糖尿病および高血圧が増加し,慢性腎炎は減少している.住民健診時のデータでは糖尿病,高血圧以外に血尿,高脂血症,肥満および喫煙が蛋白尿,腎機能低下(eGFR<60 mL/min/1.73 m2)発症の危険因子である.eGFR の低下の様式はさまざまであり,直線的に低下する例はむしろ少ない.治療薬物,感染症,原疾患の病態が複雑に関与している. -
心腎連関
243巻9号(2012);View Description Hide Description『CKD 診療ガイド2012』では,微量アルブミン尿の存在が心血管病(CVD)リスクを有することが強調されている.腎障害と微量アルブミンの発症機序は,著者らが提唱しているStrain vessels 仮説により説明づけられる.表在ネフロンと比較し,傍髄質ネフロンは構造上高血圧の影響を受けやすく,また酸素需要能も高いため,虚血に陥りやすい.その結果,より早期に高血圧による障害を受けるが,これが微量アルブミン尿の漏出を招くものと考えられることから,アルブミン尿自体が傍髄質ネフロンを含む全身の細血管の障害の指標となりうる.CVD 予防には降圧加療が中心となるが,診療ガイドの改訂に伴い,レニン-アンジオテンシン系の治療薬を主体としつつも,個々の症例に応じた降圧薬の使用が推奨されるようになった. -
生活習慣とメタボリックシンドローム
243巻9号(2012);View Description Hide Descriptionエネルギー・食塩の過剰摂取,運動不足,飲酒,喫煙,ストレスなどの生活習慣は,慢性腎臓病(CKD)の発症・進展に関与している.そして生活習慣の乱れに基づくメタボリックシンドローム(MetS)と,その構成因子である腹部肥満,血圧高値,血糖高値,脂質異常は,それぞれにCKD の発症・進展に関与している.MetSではその基盤にあるインスリン抵抗性,アディポネクチン低下,炎症・酸化ストレスなどを介して,CKD の発症・進展につながる.また,腎機能が低下するとインスリン抵抗性も強くなり,MetS とCKD の間で悪循環が生じる.喫煙と非活動性,あるいは過度の飲酒もCKD 進展や末期腎不全発症のリスク要因となる.これらのリスク要因は重なるほど,CKD 進展リスクはより高くなる.食事・運動療法により減量できると,蛋白尿が減少することが報告されていることから,MetS におけるCKD の発症・進展の抑制には生活習慣の改善が重要である. - 評価
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腎機能の評価法:成人
243巻9号(2012);View Description Hide Description『CKD 診療ガイド2009』では日本人のGFR 推算式が記載され,血清クレアチニン(Cr)に基づく腎機能評価が可能となった.『CKD 診療ガイド2012』1)ではこのGFR 推算式に加え,血清シスタチンC による推算式が追加された.基本的な腎機能評価には血清Cr による推算GFR(eGFRcreat)を用いるが,eGFRcreat の信頼性に問題がある場合は血清シスタチンC による推算GFR(eGFRcys)が利用できる.血清Cr 値は腎機能だけでなく筋肉量にも依存し,筋肉疾患,四肢欠損,長期臥床など筋肉量の減少した症例ではeGFRcreat は高めの値になる.血清シスタチンC は筋肉量の影響が少ないのでこのような症例ではeGFRcys の有用性が高い.血清シスタチンC 濃度は甲状腺機能亢進やステロイドの使用により高くなると報告されており,腎外因子の影響について注意が必要である.GFR 推算式はあくまで簡易法であり,より正確にはイヌリンクリアランスやクレアチニンクリアランス(Ccr)で腎機能を評価することが望ましい -
腎機能の評価法:小児
243巻9号(2012);View Description Hide Description新生児期のGFR は成人の1/5 程度ではじまり,2 歳前に成人とほぼ同等となる.そのため生後数カ月まで血清クレアチニン基準値は減少するが,その後は成長とともに増加する.日本人小児の酵素法による血清クレアチニンの基準値が作成され,暫定的ではあるが%表示のGFR 推算式(eGFR)が計算可能となった.これを使用してCKD ステージ分類を行っている.近い将来日本人小児のeGFR が完成するまではこれを使用してCKDステージ分類を行う.しかし,eGFR はあくまで簡易法であり,イヌリンクリアランスで腎機能を評価することがより正確で望ましい. -
尿所見の評価法
243巻9号(2012);View Description Hide Description検尿(蛋白尿,血尿)は慢性腎臓病(CKD)の早期発見のために簡便かつ有効な方法である.蛋白尿は腎機能とは独立した生命予後・腎予後の予測因子でもあり,尿所見はより重要になってきている.尿所見の評価における『CKD 診療ガイド2012』のおもな改訂ポイントは,①試験紙法で尿蛋白(1+)以上は尿異常として蛋白定量を行う,②随時尿での蛋白尿の評価は尿クレアチニン(Cr)で濃度を補正した尿蛋白/クレアチニン比(g/gCr)で行う,③蛋白尿を正常(<0.15 g/gCr),軽度(0.15~0.49 g/gCr),高度(≧0.50 g/gCr)に分類し軽度以上を陽性とする,などである.さらに,腎臓専門医への紹介基準,かかりつけ医での経過観察時の注意点,偽陽性・偽陰性への注意なども,日常臨床により即した記載となっている. - アプローチから紹介・フォローアップ
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成人・高齢者CKDへのアプローチ
243巻9号(2012);View Description Hide Descriptionわが国では65 歳以上の高齢化率は上昇しつつある.2010 年には25.8%を記録し,2025 年には30.5%になると予測されており,日常診療における高齢者の腎臓病の重要性が増している.成人・高齢者の慢性腎臓病(CKD)を診断するうえで,検尿,血液生化学検査,とくに血清クレアチニン(あるいはシスタチンC),画像診断が必要である.また,診療におけるポイントとして,①成人CKD では糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎が多くみられる,②無治療で放置された場合,CKD のステージが重症化する危険がある,③尿所見に乏しい疾患としては嚢胞腎,腎硬化症,間質性腎症や痛風腎などがある,④無症候性顕微鏡的血尿の単独の場合,高齢者では腎尿路の悪性腫瘍スクリーニングが必要である,⑤高齢者では加齢に伴う腎機能低下を考慮する.さらに,健診などでの検尿異常,心血管病変(CVD)の既往,服薬歴,腎毒性物質への曝露歴などを聴取することで,CKD とCVD を見逃さないことが重要である. -
小児CKDへのアプローチ―学校検尿および各種画像診断
243巻9号(2012);View Description Hide Description学校検尿では蛋白尿,血尿,糖尿,および膿尿(膿尿は2 回目以降が多い)がチェックされ,顕微鏡的血尿は全対象の約1%に,蛋白尿は約0.3~0.5%に,蛋白尿血尿合併は約0.1%に出現する.長年続く学校検尿システムはわが国の小児CKD 対策の根幹をなすものである.一方,小児においてあらたに判明する進行したCKDの多くは,慢性腎炎でなく先天性腎尿路異常(CAKUT)で,3 歳児検尿・学校検尿では発見されにくい.現在はCAKUT をみつけるさまざまな画像診断法があるが,なかでも超音波検査は簡便,非侵襲的,安価,情報量の多さで小児では理想的である.各種画像診断法は,被曝など患児側のリスク(およびコスト)ベネフィットをつねに考えつつ計画されねばならない. -
CKD患者を専門医に紹介するタイミング―腎臓専門医との連携
243巻9号(2012);View Description Hide Description基本的につぎの①~③のいずれかに該当するCKD 患者は腎臓専門医に紹介し,連携して治療することが勧められている. ① ステージA2 の蛋白尿に血尿も認める場合(尿蛋白1+以上かつ血尿1+以上) ② ステージA3 の蛋白尿(尿蛋白/尿クレアチニン比0.5 g/g クレアチニン以上または0.5 g/day 以上) ③ eGFR 50 mL/min/1.73 m2未満(40 歳未満の若年者ではeGFR 60 mL/min/1.73 m2未満,腎機能の安定した70 歳以上ではeGFR 40 mL/min/1.73 m2未満) ①,②は腎機能の悪化スピードが速いと考えられる所見があり,腎生検を含めた精密検査を実施して腎疾患固有の治療方針を立てるべき時期,③は末期慢性腎不全への進行が危惧され,将来的に腎代替療法などの専門治療の必要性が高いと判断されるためである.さらに,CKD 診療ガイドに則った治療が困難で主治医が専門医との併診が必要と判断したときには躊躇なく腎臓専門医へ紹介すべきである. -
CKDのフォローアップ:成人
243巻9号(2012);View Description Hide DescriptionCKD のフォローアップで重要なことは,CKD の進行を遅らせることと心血管疾患(CVD)の発症を防ぐことである.一般的にはeGFR 50 mL/min/1.73 m2未満の場合,70 歳以上ではeGFR 40 mL/min/1.73 m2未満の安定した症例はかかりつけ医が管理する.尿蛋白の急激な増加,eGFR の急速な低下(3 カ月以内に血清クレアチン(Cr)値が30%上昇)が認められた場合には,ただちに腎臓専門医に紹介する.定期的に尿検査,血清Cr 値によるeGFR 評価を行い,腎機能の把握とともにCVD のチェックを行う.ステージG4 で進行性に腎機能が低下する場合には,腎代替療法に関する詳細な情報提供が必要である. -
CKDのフォローアップ:小児
243巻9号(2012);View Description Hide Description小児CKD のフォローアップで重要なことは,CKD の悪化を遅らせることと合併症の防止である.合併症を考えるうえで成人と異なるのは成長・発達を考慮しなくてはならないことである.また,原疾患が成人と異なり,先天性腎尿路疾患が多く,腎機能予後に影響を与える尿路異常(とくに下部尿路異常)の治療は小児泌尿器科医と協力して積極的に行うことが必須である.腎機能が正常の1/2(GFR:60 mL/min/1.73 m2未満)となったら小児腎臓専門医がさまざまな合併症に注意して管理し,将来の腎代替療法を含め患者・家族と生涯のイメージを共有することが重要である. - 生活指導・食事指導
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生活指導・食事指導:成人
243巻9号(2012);View Description Hide Description生活指導,食事指導は従来,腎疾患の治療において重きをなしてきた.生活指導についてはエビデンスの集積が十分ではなく,いまなおエキスパートオピニオンによるところが大きいが,食事指導については,『エビデンスに基づくCKD 診療ガイドライン』および『食事療法基準』作成過程で明らかとなってきたエビデンスを積極的に考慮し,今回のCKD 診療ガイド改訂においてはこれまでの記載から大きな変更が加えられた.本稿ではCKD 診療ガイドにおける生活指導・食事指導のステートメントを提示し,その背景について文献も交えつつ解説を加える1). -
生活指導・食事指導:小児
243巻9号(2012);View Description Hide Description小児慢性腎臓病(CKD)の各ステージを通して,基本的に運動制限は行わない.運動制限は情操的・心理的問題からも不要であり,ときとして有害となるからである.また,小児CKD では水分の過剰摂取や極端な制限は行わない.とくに原疾患としてもっとも頻度の高い低形成・異形成腎患者は,尿細管機能障害による塩類喪失を伴い,尿濃縮力低下から低張多尿となっている.そのため水分および塩分制限は慢性脱水による腎機能障害の進行や成長障害(「サイドメモ1」参照)を起こし,有害となるからである.小児の食事においては原則として蛋白質は制限せず,塩分は浮腫がみられるときや高血圧時に制限する. - 管理法各論
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血圧管理:成人
243巻9号(2012);View Description Hide Description今回の『CKD 診療ガイド2012』で改訂されたCKD における血圧管理では,従来のCKD 関連のガイド・ガイドラインでの内容と若干異なる点もみられる.CKD 診療ガイド2012 での血圧管理(成人)の内容の概要は,①降圧目標は診察室血圧130/80 mmHg 以下に設定,②年齢に応じた降圧治療を推奨(とくに高齢CKDでの過剰降圧の回避を推奨),③血圧日内変動,季節性血圧変動を考慮した降圧治療を推奨,④eGFR 維持と尿蛋白減少の長期的な両立をはかることを推奨,⑤病態に応じて第一選択薬を含めた降圧薬の選択を行うことを推奨,であり,同じCKD でも患者の年齢や病態,血圧変動を考慮したテーラーメイドな降圧治療を行うことを推奨している.本稿ではこれらの背景を含めて,CKD 診療ガイド2012 における血圧管理について背景を含めて解説する. -
血圧管理:小児
243巻9号(2012);View Description Hide Description小児慢性腎臓病(CKD)においても高血圧は高頻度に合併し,CKD の進行や心血管疾患発症のリスクとなるため,早期からの管理が必要である.小児の血圧測定を行うときは体格に合わせた適切なサイズのマンシェットを選択することが大切であり,Task Force 血圧基準値における各年齢の90 パーセンタイル未満に管理することが望ましい.高血圧治療前には循環血液量が適正であるかを評価する必要がある.循環血液量増加による高血圧症例に対しては,塩分制限するよう食事指導するとともに利尿薬を使用する.また,小児CKD 患者に降圧薬を投与する場合はアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI),アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB),カルシウム(Ca)拮抗薬を使用することが推奨される. -
CKDを合併した糖尿病患者に対する管理
243巻9号(2012);View Description Hide Description新規透析導入の原疾患の第1 位は糖尿病腎症であり,慢性腎臓病(CKD)対策の重要課題であるその発症・進展抑制には,低血糖に留意した厳格な血糖コントロールと,レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬を第一選択薬とした血圧コントロールが重要である.また,スタチン,フィブラート薬による脂質異常症の管理には,糖尿病腎症の進展阻止効果があることも示されている.さらに,チーム医療の介入による生活習慣・血圧・血糖・脂質に対する包括的治療は,糖尿病腎症の進展に有効であるだけでなく,病期の寛解をもたらし,かつ,心血管疾患発症リスクと死亡リスクを軽減する. -
CKDにおける脂質管理
243巻9号(2012);View Description Hide Description慢性腎臓病(CKD)では特有の脂質異常症を生じ,CKD の進展および心血管疾患(CVD)発症の危険因子となることが知られている.また,脂質異常症はCKD の発症にも関与する.その管理目標として,LDL コレステロール(LDL-C)は120 mg/dL 未満(可能であれば100 mg/dL 未満)にコントロールすることが重要である.加えてルーチンの評価には,標準的な空腹時LDL-C のみならず,随時採血によるnon-HDL-C を許容してよいものと考えられる.さらに,スタチンを中心として治療効果のエビデンスが蓄積されつつある.生活習慣の改善とともに,脂質低下療法によりCKD の進展抑制とCVD の発症予防が期待される.今後もわが国のCKD治療において,腎保護,CVD 抑制に対する脂質低下療法のエビデンスの発信が期待される. -
CKD患者の貧血管理
243巻9号(2012);View Description Hide Description貧血CKD ステージG3a~G5 では貧血を合併することがあるため貧血についての検査が必要であり,貧血があればその成因を検索する.その成因は多岐にわたるが,鉄欠乏の評価と適切な鉄補充が重要である.CKD患者に赤血球造血刺激因子製剤(ESA)を投与するときは患者個別に合併症を考慮し,有効性と副作用を検討し,個々の患者に応じて適切に投与する.ESA の開始時期と投与量は腎臓専門医に相談して決定する.CKD患者へのESA の投与開始はHb 濃度10 g/dL 以下とし,治療目標Hb 値を10~12 g/dL として12 g/dL を超えないよう配慮することを推奨する. -
CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常―その病態と治療
243巻9号(2012);View Description Hide Description腎不全に伴う二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)を中心とした骨・電解質異常を,CKD-MBD(chronic kidneydisease-mineral bone disorder)と称する.骨線維症による易骨折性,動脈などの多種臓器にわたる石灰化,貧血,皮膚掻痒症など,末期腎不全に伴う多くの合併症にかかわる病態である.腎におけるリン(P)の排出不全,ビタミンD の活性化不全などの状態が持続することにより,副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌が増加し,かつ副甲状腺自体も腫大し,副甲状腺腫となる.病態が進行すると活性型ビタミンD 製剤投与などによる内科的治療が困難となり,副甲状腺摘出手術を要することもあるため,早期よりフォローし,治療することが望ましい.しかし,活性型ビタミンD 製剤投与や,高P 血症に対する炭酸カルシウム(Ca)投与はかえって動脈石灰化などを助長する可能性もあり,腎不全の保存期から積極的に治療介入するには十分なエビデンスがない.腎機能低下とともに血中P 濃度は食事の影響を強く受けるようになる.高P 血症はSHPT の強い悪化因子であり,早期に食事療法を開始することが重要である. -
CKDにおける尿酸管理の重要性
243巻9号(2012);View Description Hide Description慢性腎臓病(CKD)が進行し腎機能が低下すると尿酸排泄能が低下するため,血清尿酸値は上昇傾向を示す.そのため,CKD 患者においては高尿酸血症の頻度が高い.一方,高尿酸血症それ自体も腎障害の原因となる.すなわち,高尿酸血症はCKD に対して,原因・結果の両面から関係が深い.さらに,高尿酸血症は動脈硬化を促進することが知られており,心血管疾患(CVD)のリスク因子ともなる.一方,CKD はCVD のリスク因子としての側面を有しており,CVD リスクを低下させる観点からもCKD における尿酸管理は重要である可能性がある.しかし,CKD 診療における尿酸コントロールについてはいまだ一定の見解は確立しておらず,治療方針もまちまちである.最近,あらたな尿酸低下薬が上市され,腎不全時の高尿酸血症治療の可能性が広がり注目を集めるようになった.これを踏まえて,『CKD 診療ガイド2012』において尿酸管理の項目が設けられた.本稿ではCKD と尿酸の関係や,CKD における高尿酸血症のマネージメントについて,CKD 診療ガイドの内容を踏まえて概説する. -
CKDにおける高K血症・代謝性アシドーシスの管理
243巻9号(2012);View Description Hide Description慢性腎臓病(CKD)のステージが進行すると腎機能低下に伴う腎排泄量の低下に加えて,CKD の治療の影響により血清カリウム(K)値が上昇するため,定期的な採血での確認が必要である.今回改訂された『CKD 診療ガイド2012』でも高K 血症の原因として食事によるK 摂取過剰に加えて,薬物(ACE 阻害薬,ARB,スピロノラクトンなど)の影響が強調されている.血清K 値が7 mEq/L 以上で致死的不整脈をきたす危険性が上昇するため,徐脈,低血圧や心電図異常所見を認めた場合には高K 緊急症として早急に対応し,腎臓専門医へ相談するべきである.また,CKD における高K 血症は患者の予後に影響することが知られており,慢性期の高K血症の是正も重要な課題である.一方,腎機能低下により腎からの酸排泄量が低下すると,生理的あるいは病的な酸産生に伴って消費される重炭酸イオンの再生が障害されるために,代謝性アシドーシスをきたす.近年,代謝性アシドーシスの是正は,以前からいわれている骨・蛋白代謝の改善のみならず,腎予後も改善する可能性が指摘され,注目されている. -
尿毒症性物質の管理
243巻9号(2012);View Description Hide Description慢性腎臓病(CKD)では食事療法に加えて,血圧管理,血糖管理,脂質管理を含めた集学的治療が,症状の進行および心血管疾患(CVD)合併の抑制のために重要である.とくにCKD ステージG4~G5 では,球形吸着炭内服療法を併用することによりCKD 進行とCVD 合併に対する抑制効果と全身倦怠感などの尿毒症症状の改善効果が得られる可能性がある.球形吸着炭の服用にあたっては,ほかの薬剤とは同時に服用しない,などの注意が必要である. - 検査・薬剤投与のポイント
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CKD患者における造影剤腎症の予防
243巻9号(2012);View Description Hide Description造影剤腎症は腎機能低下などのリスクファクターを背景に発症し,造影剤投与後72 時間以内に血清クレアチニン(Cr)値が前値の0.5 mg/dL 以上あるいは25%以上上昇した場合と定義される.通常は乏尿を伴わず可逆性であるが,不可逆性に腎機能障害を進行させたり,透析導入が必要となる場合もある.造影CT ではeGFR45 mL/min/1.73 m2未満で,冠動脈造影(CAG)では60 mL/min/1.73 m2未満で造影剤腎症のリスクが上昇するため,このような場合には画像診断の質を落とさない範囲で造影剤の投与量を最少限とし,また造影検査前後の輸液療法による予防策を講じる.造影剤投与後の透析療法には造影剤腎症の発症予防効果はないが,全身状態が不良な患者で造影剤腎症により乏尿を呈する場合には積極的に導入する. -
CKD患者への薬剤投与のポイント
243巻9号(2012);View Description Hide Description腎機能が低下した慢性腎臓病(CKD)患者では腎排泄性の薬物は血中濃度が上昇し,薬効の増強や副作用の頻度が増大する.原則として腎排泄性の薬物を避け,非腎排泄性の代替薬や腎排泄の寄与の少ない薬物を選択することが望ましい.推算糸球体濾過量(GFR)は標準的な体表面積(BSA)1.73 m2当りの腎機能を示すが,薬物投与時には腎機能をBSA で補正しない推算GFR(mL/min)で評価し,薬物の減量や投与間隔の延長を行う.推算GFR が高値の場合には原則として腎機能に合わせて投与量を増やす必要はない.推算GFR を算出するもととなるクレアチニン(Cr)値は筋肉量の影響を受けるため,筋肉量が標準的でない場合には血清シスタチンC(Cys-C)に基づくGFR 推算式で腎機能を評価する.また,CKD 患者では腎障害性の薬物の投与を避ける.抗菌薬の一部やNSAIDs などはCKD 患者や高齢者で腎障害をきたす危険が大きいためできるだけ処方せず,処方した場合には腎機能をモニターする必要がある.
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