Volume 243,
Issue 11,
2012
-
あゆみ 薬剤起因性消化管傷害Update
-
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 939-939 (2012);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 941-946 (2012);
View Description
Hide Description
アスピリンはサリチル酸誘導体の非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)であるが,胃粘膜傷害性に関しては,発生機序およびシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害との関連性など,他のNSAIDs とは大きく異なっている.一般的にNSAIDs による胃傷害の発生はいかなる投与経路によっても認められ,内因性プロスタグランジン(PG)の産生低下に基づく防御系の脆弱化を背景として,胃酸の存在,胃運動亢進,好中球および活性酸素などにより説明されている.アスピリンは他のNSAIDs と異なり,非経口投与では胃傷害を誘起しないことから,傷害の発生機序として胃粘膜に対する直接作用が指摘されている.しかし,皮下投与されたアスピリンも非傷害誘起用量の他のNSAIDs と同様に,COX-1 阻害による間接作用を介して,ストレスなどによる傷害反応を増悪する.
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 947-951 (2012);
View Description
Hide Description
高齢化社会に伴い虚血性心疾患や脳血管障害が増加し,低用量アスピリン(LDA)が頻用されている.アスピリンはその剤型や用量,投与期間によらず上部消化管傷害を引き起こす.同様にH. pylori 感染も重要なリスク因子であり,両者が合併すると上部消化管傷害のリスクは相加相乗的に増加する.H. pylori 感染とLDA 内服による消化管粘膜傷害の機序のひとつとして胃酸分泌が密接に関連している.したがって,LDA による上部消化管傷害の予防としてH. pylori 除菌のみならず,胃酸分泌抑制薬の投与が必要である.すなわち,H.pylori 感染を伴うLDA 起因性消化管粘膜傷害の一次予防は,①H. pylori 除菌かつ可能であればプロトンポンプ阻害薬(PPI)投与,②PPI 投与,二次予防はH. pylori 除菌かつPPI 投与であり,これらを徹底すべきである.
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 952-956 (2012);
View Description
Hide Description
非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)起因性小腸粘膜傷害発生の主要な小腸内攻撃因子のひとつに,腸内細菌があげられる.胃酸による殺菌作用のため腸内細菌は小腸口側で少なく,肛門側では嫌気性菌をおもに急速に増加する.NSAIDs 起因性小腸潰瘍は肛門側に多く,細菌の分布を考慮すると小腸潰瘍に腸内細菌が関与している可能性が高い.プロトンポンプ阻害薬(PPI)による小腸内細菌叢の変化がNSAIDs 起因性小腸粘膜傷害を増悪させることが報告され,腸内細菌の関与が確定的になるとともに,細菌叢の変化が重要な因子であることが明らかとなった.プロバイオティクスやプレバイオティクスを用いたNSAIDs 起因性小腸粘膜傷害予防の試みは,これらの副作用が少ないことから有望であり,開発が望まれる.
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 957-962 (2012);
View Description
Hide Description
人口の高齢化が進み,整形外科疾患,循環器系疾患が増加し,NSAIDs や低用量アスピリン(LDA)の処方機会が増加している.消化性潰瘍のおもな原因であった,ヘリコバクターピロリの感染率の低下とともに,NSAIDs,LDA に起因する消化管傷害がめだつようになった.近年の発生頻度の動向は,NSAIDs 起因性は不変~やや減少,LDA 起因性は増加している.バルーン内視鏡やカプセル内視鏡の開発により,これらの傷害は上部消化管のみならず,小腸にも少なからず発症していることが明らかとなった.NSAIDs 潰瘍の予防は潰瘍の既往を有する“潰瘍再発のハイリスク群”ではプロトンポンプ阻害薬(PPI)の投与が望まれる.COX-2 阻害薬の投与では従来型NSAIDs に比べて上部消化管傷害,下部消化管傷害(小腸傷害)ともに減少する.欧米ではCOX-2 阻害薬での心血管系イベントのリスクが危惧されているが,従来型NSAIDs のリスクと同等との報告もある.
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 963-967 (2012);
View Description
Hide Description
心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化・血栓性疾患の予防における低用量アスピリンの効果は確率している.高齢化社会を迎えアスピリン服用者数が増加する一方で消化管傷害の副作用が問題となっているが,近年カプセル内視鏡など小腸内視鏡の進歩により,アスピリンが上部消化管のみならず小腸に多彩な病変を引き起こすことが明らかになった.健常人を対象に行った試験により,低用量アスピリンが実際に小腸粘膜傷害を惹起すること,さらに傷害の発生頻度について明らかにされ,アスピリン常用者のカプセル内視鏡所見からは円形潰瘍・地図状潰瘍・輪状潰瘍など多彩な内視鏡像を認めることが証明された.しかし,まだ報告も少なく解明ははじまったばかりといえる.本稿では,アスピリン関連小腸粘膜傷害の現況および評価方法について,著者らがカプセル内視鏡を用いて検証した臨床研究の成績を文献的考察とともに概説したい.
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 968-972 (2012);
View Description
Hide Description
低用量アスピリン(LDA)およびチエノピリジン誘導体の抗血小板薬併用による消化管出血が問題になっているが,抗血小板薬の中止により原疾患を増悪させる可能性があり,出血時も可能なかぎり抗血小板薬の継続あるいは早期再開が望ましい.潰瘍および合併症予防のために,シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)選択,非選択にかかわらず非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の併用を避け,潰瘍高リスク群に対してはプロトンポンプ阻害薬(PPI),高用量のH2 受容体拮抗薬(H2RA)あるいはプロスタグランジン(PG)製剤による予防治療が必要である.また,カプセル内視鏡の検討により,抗血小板薬による小腸粘膜傷害が高頻度に検出されることが報告されている.アスピリンを含めNSAIDs による小腸粘膜傷害に対するミソプロストールやレバミピドの有効性が報告されているが,現時点で,LDA による小腸粘膜傷害に対する治療の有効性のエビデンスはほとんどなく,予防法も含め治療法は確立していない.
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 973-979 (2012);
View Description
Hide Description
循環器領域において動脈硬化性疾患に対する抗血小板薬,あるいは心房細動,心臓弁膜症に対する人工弁置換術後などの抗凝固薬は必須の内服薬である.経過中に消化管出血の合併症により消化器内科医にお世話になることがあるが,非心臓手術時の抗血栓薬の中止は血栓塞栓症のリスクを上昇させる.つねに,出血リスクと血栓リスクの双方から考慮する必要があるが,血栓症の発症を予防し,かつ出血性偶発症のリスクを増加させない抗血栓療法の安全域と中止の期間に関するエビデンスは少なく,出血傾向や血栓塞栓症のリスクは個人,あるいは同じ個人でも疾病の時期,病勢によっても異なるであろうし,さらに人種によっても異なる可能性があるため,絶対的な安全域の設定を宣言することは非常に困難と思われる.そもそもランダム化比較試験(RCT)に馴染まない領域であり,循環器医と消化器医のおたがいの意思疎通が重要であるとの意味で,cardio-gastric linkage の概念を提唱している.
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 980-982 (2012);
View Description
Hide Description
Collagenous colitis は長期間持続する水様性下痢を主徴とし,病理組織学的には大腸上皮直下の肥厚した膠原線維帯とリンパ球を主体とした炎症細胞浸潤を特徴とする.内視鏡所見は,以前にはほぼ正常な大腸粘膜を呈するとされていたが,その後の報告例の増加に伴い,近年では血管透見像の乱れや顆粒状粘膜など軽微なものから縦走潰瘍や裂創を来たすものまで多彩な内視鏡像を呈することが判明している.本症の原因は不明であるが薬剤との関連性が指摘され,わが国では近年,とくにプロトンポンプ阻害薬(PPI)との関連性が指摘されている.
-
シリーズ対談 Vol.3
-
-
“教養”としての研究留学
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 996-1005 (2012);
View Description
Hide Description
-
連載
-
-
疾病予防・健康増進のための 分子スポーツ医学 3
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 988-994 (2012);
View Description
Hide Description
糖鎖は核酸,蛋白に続く第3 の鎖状生命物質であり,蛋白の翻訳後修飾を担う重要な生体分子である.小胞体で合成された糖蛋白はGolgi 体でさまざまな糖転移酵素の働きにより糖鎖修飾を受ける.細胞膜に存在するほとんどの蛋白(膜受容体や接着分子など)が糖鎖修飾を受けており,糖鎖の違いにより細胞内シグナル伝達に影響を及ぼすことが知られている.N-アセチルグルコサミン転移酵素V(GnT-V)はN 型糖鎖の分岐鎖構造の生合成にかかわる酵素で,β1-6GlcNAc という特殊な糖鎖構造をつくる.GnT-V はがんと関連のもっとも深い糖転移酵素で,これまでにがんの進展,とくに転移における役割について精力的に研究が進められてきた.最近,著者らは全身発現性GnT-V トランスジェニックマウスを作製し,正常細胞におけるGnT-V の過剰発現の意義についてあらたな知見を得ている.すなわち,GnT-V の過剰発現は皮膚の創傷治癒を促進し,肝の炎症・繊維化を抑制することを見出した.皮膚,肝にGnT-V を誘導することはむしろ生体の恒常性を保つことであり,ひいては健康推進のためのスポーツ医学の分野にも応用できる可能性がある.
-
フォーラム
-
-
近代医学を築いた人々12
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 995-995 (2012);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 1007-1008 (2012);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 1009-1012 (2012);
View Description
Hide Description
-
TOPICS
-
-
生化学・分子生物学
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 983-984 (2012);
View Description
Hide Description
-
耳鼻咽喉科学
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 984-986 (2012);
View Description
Hide Description
-
泌尿器科学
-
Source:
医学のあゆみ 243巻11・12号, 986-987 (2012);
View Description
Hide Description