Volume 244,
Issue 1,
2013
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【1月第1土曜特集】 小児用ワクチンUpdate
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医学のあゆみ 244巻1号, 1-1 (2013);
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総論
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医学のあゆみ 244巻1号, 5-10 (2013);
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日本とアメリカなど先進国との間のワクチンギャップ問題は,定期接種ワクチンの種類数に関しては改善の兆しがみえはじめてきた.しかし,これも今後のなりゆきはまだまだ不透明である.さらに,種類数の問題だけでなく,DPT ワクチンのように開始月齢,接種回数,追加接種ワクチンの組成などに未解決の問題が残っているものがまだある.また,新規開発ワクチンの定期接種導入をスムーズに進めるための安定したシステムが日本にはまだ存在しないのも残された課題である.そして最後に,予防接種を推進し接種率を極力高めるよう努力するという大命題を,最近の小児科学会はその達成に向け積極的な行動をとるよう変わってきているが,行政サイドはこの点が一向に理解できていないとしか思えない状況にある点が,現在の日本の最大の問題点と考えられる.
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医学のあゆみ 244巻1号, 11-14 (2013);
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ワクチンは,病原体を弱毒化・不活化するなどしてつくられた,免疫原性をもつ生物学的製剤である.ワクチン接種により特異的な能動免疫が誘導され,感染症の発症・重症化を予防する.生ワクチンは液性免疫と細胞性免疫をともに誘導するが,不活化ワクチンは液性免疫のみ誘導する.ワクチンはきわめて不安定な製剤であるため,主成分である微生物や抗原に加え,安定剤,保存剤などの添加物が含まれている.また,不活化ワクチン,トキソイドでは免疫原性を増強させるアジュバントが用いられる.ワクチンの製造工程は生物学的製剤基準に基づき,細菌やウイルスの培養から最終製品の製造まで,厳密な無菌的操作と多くの品質管理試験を受けながら進められる.
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医学のあゆみ 244巻1号, 15-21 (2013);
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日本の予防接種はここ20 年あまり停滞して,他の先進国との間にワクチンギャップといわれる遅れを生じてしまった.接種可能なワクチンは海外の半分にも満たないありさまであったが,近年,インフルエンザ菌b型(Hib),小児用肺炎球菌,ヒトパピローマウイルス(HPV)ウイルスなどに対するワクチンが認可され,さらにロタウイルスや不活化ポリオワクチンも認可された.また,以前より任意で接種されていた水痘,ムンプス,B 型肝炎と,定期ではないものの公費助成がされているHPV,Hib,7 価肺炎球菌の6 種は定期接種の枠組みに入れられることが決まり,予算が確保されしだい実施される.今後は,同時接種や筋肉注射の推進,接種部位の見直しなどが求められる.また,生前~生直後からの接種勧奨を積極的に進め,受け身ではなく,自発的な接種行動を促していきたい.思春期の女性に接種する場合は接種後に“失神”をきたすことがあり,ショックと混同しやすいので注意すべきである.
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医学のあゆみ 244巻1号, 22-27 (2013);
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ワクチンで予防できる細菌・ウイルス感染症のわが国における現在の発症状況をまとめた.まだまだ流行している疾患も多いため,今後も現在の接種率を維持あるいは高めて,これらの疾患を予防する必要がある.近年わが国では,長年問題視されたワクチンラグは解消されつつあるが,欧米先進国に比べて定期接種の数が少ない.今後,速やかに予防接種法が改正され,定期接種の数が増えることが期待される.
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医学のあゆみ 244巻1号, 28-33 (2013);
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すべての健康な小児に対する予防接種は,日本小児科学会予防接種・感染対策委員会が作成した“日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール”を参考にしていただきたい.定期・任意接種にかかわりなく,接種が推奨されるワクチンを推奨接種年齢の早いワクチンから順に示したものであり,“ワクチンで予防できる感染症はワクチンで予防する”との立場から,“任意接種ワクチンであっても接種を推奨する”ことが明確に示されている.他方各種の疾患に罹患し,特殊な状況にある小児に対する予防接種については,“予防接種ガイドライン”を参考にしていただきたい.予防接種ガイドライン等検討委員会より日本小児科学会の各分科会に依頼し,各病態における予防接種についての見解を提示いただき,それらがまとめて掲載されている.
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医学のあゆみ 244巻1号, 34-41 (2013);
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予防接種は健康な人に接種するため,一般の医薬品よりも高い安全性が求められているが,生ワクチン,不活化ワクチンともに特異的免疫誘導の機序から,理論上副反応がないワクチンの製造は不可能である.しかし,医学的・免疫学的および時間的に発症する副反応は一定のパターンがあり,このパターンから外れるワクチン後の臨床反応は,原則ワクチンとは因果関係がない反応である.ワクチンの安全性を評価するために,予防接種後健康状況調査,予防接種後副反応報告,医薬品副作用報告が実施されている.ワクチンの副反応で問題となるのはアナフィラキシーと,健康被害と呼ばれている重篤な副反応である.健康被害が発生した場合,定期接種,任意接種ともに健康被害救済制度があり,審査会で認定された場合は制度に基づき障害の程度に応じた給付額が支給される.
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医学のあゆみ 244巻1号, 42-48 (2013);
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途上国への渡航者にとって,ワクチンは自らの健康を守るために,また国外から感染症をもちこまないために,前もって接種しておく大切な予防手段である.黄熱ワクチンは国際保健規則(IHR)により,流行国への入国,あるいは流行地を経由しての入国者に対して接種が要求される国があり,検疫所など指定機関発行の接種証明書が必要である.また,メッカ巡礼のビザ発給に際してサウジアラビア保健省が髄膜炎菌ワクチンの接種を条件として課すような例もある.欧米諸国の学校への留学や編入学の際にも予防接種が必要となる.たとえば,アメリカでは国のスケジュールに沿ったワクチンを接種ずみであることが入校の条件とされ,記録の提出を求められる.わが国は諸外国と比べて定期接種されるワクチンの種類や回数が少ないので,定期接種をすべて完了していても追加の接種が必要となる.その一方で,BCG はわが国ではすべての子どもたちに接種されるが,アメリカはそうではない.その結果,健康診断書にツベルクリン反応の判定を記載する場合には,結核菌感染者であると誤解を招かれないような配慮が必要である.
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医学のあゆみ 244巻1号, 49-54 (2013);
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日本と欧米諸国とのワクチンギャップが叫ばれて久しいが,小児科学会をはじめとする各学会,厚生労働省などの働きによって,定期接種,任意接種ともに新規ワクチンの導入が進んでいる.その一方で,乳児期の総ワクチン接種本数は増加の一途をたどっており,被接種児,両親,医療関係者にかかる心理的・経済的などさまざまな負担の増大が認められている.一方,同様の問題に直面していた欧米諸国を中心にした世界では近年,混合ワクチンの開発・導入が盛んに進められている.日本においてもあらたな混合ワクチンの早期開発および導入が望まれる.本稿では混合ワクチン導入による利点やその欠点をそれぞれ提示し,また免疫応答に与える影響についてまとめた.さらに,世界で混合ワクチンが開発導入される際の問題点および,今後日本におけるあらたな混合ワクチンの開発導入にかかわる諸問題についてまとめ,考察する.
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予防接種各論
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医学のあゆみ 244巻1号, 57-63 (2013);
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BCG ワクチンは1921 年にCalmette とGuérin によってフランスで開発された.抗結核薬の登場する以前は,BCG ワクチンだけが結核の予防に効果があった.BCG ワクチンはわが国で当初再接種されていたが,接種後の局所の潰瘍や瘢痕が問題となり,1967 年に皮内接種から現行の9 針管針2 押しによる経皮接種に変更となった.BCG ワクチンは再接種が廃止され,2005 年に直接接種となった.BCG ワクチンは成人では50%の発病予防効果があり,新生児,乳児の効果は74%であり,結核性髄膜炎や粟粒結核の発病予防にも効果が高い.近年,BCG の副反応として皮膚病変や骨炎の報告が増加している.そのため接種時期は,2013 年4月より現行の生後6 カ月未満から1 歳未満へ見直し,標準的接種期間は生後5 カ月以上8 カ月未満とされる.わが国ではBCG ワクチンの接種を廃止する段階にはなく,将来的には新規のBCG ワクチンの開発や結核の流行状況によって接種基準や対象も変化すると推測される.
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医学のあゆみ 244巻1号, 65-70 (2013);
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ポリオはおもに下肢に永続性の運動麻痺を生じ,呼吸不全を起こし死に至ることもあるウイルス性感染症である.治療法はないが,有効なワクチンがある.1950 年代に不活化ポリオワクチン(IPV)が先行して導入されたが,流行的発生を完全に抑えるという効果はやや低く,世界でのポリオのコントロールについてその後導入された経口生ポリオワクチン(OPV)の果たした功績は大きい.一方では,OPV にはまれな副反応としてポリオワクチン関連麻痺(VAPP)の存在がある.これを回避するためにIPV が改めて見直され,わが国でも2012 年9 月から本格的導入に至った.VAPP の発生はわが国からなくなるが,世界でのポリオ根絶が達成されるまではポリオに対する免疫を高く維持しておく必要がある.わが国においてOPV はその役割を終え表舞台から去ったが,日本の子どもたちを守ってきたすばらしいワクチンであったということは記憶にとどめておきたい.しかし,そのすばらしい成果はVAPP を発生した人びとの犠牲の上に守られてきた,ということも忘れてはいけない.
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医学のあゆみ 244巻1号, 71-78 (2013);
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麻疹の国内患者報告数は2008 年の全国流行を最後に激減し,排除に近い状況になりつつある.麻疹輸出国といわれた日本は現在,輸入国に変わりつつあるが,輸入された麻疹ウイルスが感染拡大しないようにするためには,予防接種率を目標の95%以上に上げてその状態を維持させ,必要回数の2 回の予防接種を徹底することが重要である.接種するワクチンを麻疹・風疹混合ワクチンにすることで,麻疹対策のみならず風疹対策にもつながる.2012 年は,これまでに風疹の定期接種の機会がなかった30~40 代の男性と,集団接種から個別接種に変わり接種率が激減した20 代男女を中心に風疹が流行しており,先天性風疹症候群の報告もみられている.麻疹対策と風疹対策は別々に考えるのではなく,両疾患を排除することを目標に,国民一人ひとりが理解して受ける予防接種になってほしい.
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医学のあゆみ 244巻1号, 79-85 (2013);
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わが国における日本脳炎の発生数は年間10 名以下であるが,西日本地区のブタの感染率は高く,ヒトの感染リスクがなお無視できない.日本脳炎ワクチンは1994 年の予防接種法改正により定期接種1 類とされたが,2005 年5 月にマウス脳由来の日本脳炎ワクチン第3 期接種後の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の症例が健康被害認定を受けたことにより,接種の積極的勧奨が差し控えられ,予防接種率が5%まで低下し,幼児の感受性者が多数蓄積した.マウス脳を使わない新しい乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンであるジェービックV® が2009 年6 月に,エンセバック® が2011 年4 月に上市された.新ワクチンの発売に合わせて国は2009 年6月から接種漏れ者対策を展開し,2010 年度からは順次積極的勧奨も再開され,さらに特定の年齢層の者には20 歳未満まで定期接種とする政令改正を行った結果,免疫ギャップは埋まりつつある.
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医学のあゆみ 244巻1号, 86-91 (2013);
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わが国では,おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンは現在でも任意接種のままで,おたふくかぜの流行はコントロールができていない.おたふくかぜのもっとも問題になる合併症,後遺症は無菌性髄膜炎と難聴である.1989 年に麻しん・おたふくかぜ・風疹3 種混合(MMR)ワクチンが定期接種に導入されたが,このなかのおたふくかぜワクチンに伴う髄膜炎の発生が500~1,000 人に1 人報告され,1993 年にMMR ワクチンは中止された.しかし,自然感染でははるかに多い80 人に1 人が髄膜炎で入院治療を受ける.その後に任意接種されたおたふくかぜ単独のワクチンでも髄膜炎は経験されるが,2,000~2,500 人に1 人の頻度で自然感染より少なく,一般には軽症で後遺症もない.ワクチンによる難聴の報告はほとんどない.おたふくかぜはまれには再罹患も経験するため,ワクチンの接種後罹患も少なくない.流行を抑止するためには諸外国と同様にワクチンの2 回接種が定期接種として普及することが必要である.
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医学のあゆみ 244巻1号, 92-96 (2013);
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水痘ワクチンは日本で開発され,安全性,有効性ともに優れている.しかし,水痘帯状疱疹ウイルスは初感染後に生涯潜伏感染するウイルスで,帯状疱疹という再活性化の病像があるので,感染源を一掃することは難しい.ワクチン接種後に長期間を経て免疫が減衰し,水痘(breakthrough varicella)を発症することもまれではない.ライフスパンを見渡したうえで,ワクチンの活用法を考えていく必要がある.アメリカではすでにuniversal immunization として2 回接種することが推奨され,さらに高齢者に対する帯状疱疹予防としての水痘ワクチンも認可されている.一方,ヨーロッパでは限定的な使用が推奨されているのが現状で,まだ論議点が残っている.わが国では任意接種のため小児の接種率は30%程度で依然として水痘の流行があり,水痘ワクチンの定期化が考慮されている.長期を経て免疫の減衰が成人水痘,免疫不全者への感染,新生児水痘の重症度や発症率にどのような影響を与えるか予測し,対応策を考慮したうえでワクチン戦略を練る必要がある.
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医学のあゆみ 244巻1号, 97-103 (2013);
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わが国においてはインフルエンザに対する国家的な戦略として,1960 年代から90 年にかけて学校での集団接種が行われた.しかし,あいつぐ予防接種訴訟の敗訴や,ワクチンの有効性に疑義が出されるようになり,1994 年に集団接種は中止になった.その後,インフルエンザによる高齢者や乳幼児の死亡者数の増加がみられ,集団接種が流行を阻止するうえで一定の役割を果たしていたと再評価された.また,国内外でもインフルエンザワクチンの有用性を肯定する報告が増え,さらに強毒性インフルエンザによるパンデミックも現実的な脅威として考えられるようになり,予防接種は改めてインフルエンザ対策の中核的手段として認識され,2001 年にインフルエンザ予防接種ガイドラインが策定された.2009 年に発生したA/H1N1 によるパンデミックは当初想定していた強毒性ではなかったが,ワクチン供給体制の整備について貴重な教訓を残した.政府は予想されるA/H5N1 パンデミックに際し,迅速に効果的なワクチンを供給するため,ワクチンメーカーに細胞培養法による製造や経鼻不活化ワクチンなどの第三世代ワクチン開発に対する交付金を拠出するなど,新型インフルエンザ等対策特別措置法の基盤整備を急いでいる.
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医学のあゆみ 244巻1号, 105-111 (2013);
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国際標準である全小児を対象にしたB 型肝炎ワクチン(HB ワクチン)の定期接種化(universal vaccination:UV)に関する論議が活発化している.一部の自治体ではすでに定期接種化を開始しており,小児科関連学会も強く推奨している.その理由は,B 型肝炎ウイルス(HBV)の感染力は強く,HBV 母子感染の予防のみではこの感染症を制圧できないことが明らかになった点にある.すなわち,HBV キャリアの父親から小児への感染が約10%存在すること,保育園などの施設での感染も無視できないこと,UV 未施行も一因であるが,わが国にまれであった遺伝子型A のHBV 感染が性感染症として急速に蔓延したこと,一過性感染でもHBV-DNA は肝細胞核内に潜み,免疫抑制状態で再活性化することがあること,UV 未施行であるとHBV 感染者への差別や偏見が解決しないこと,などである.世界的常識はHBV 集団免疫を獲得し,HBV を撲滅しようとしている.その結果,UV 施行国ではHBV 関連の急性肝炎のみならず,慢性肝疾患も減少している.わが国でも早急にUV に向けた調査・検討が必要である.
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医学のあゆみ 244巻1号, 112-118 (2013);
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A 型肝炎はおもに飲食物により伝播する.近年,日本では衛生環境の改善により年間数百人規模の小流行にとどまっているが,いぜんとして急性肝炎の主要な原因である.日本周辺には東南アジアなど流行国が多く,国際化により人の往来や食品の流通が盛んになる一方,日本人では50 歳代以下の大部分が抗体のない感受性者で,重症化しやすい高齢患者が増加するなど,あらたなリスクが高まっている.2010 年には患者数が一過性に増加し,アラートが発せられた.一般的には生命予後は良好であるが,月単位の療養を必要とし社会的損失も大きい.アメリカでは月齢12~24 か月の全小児にA 型肝炎ワクチン接種が行われている.日本でも発展途上国への渡航者,調理師や生鮮食品の取扱者,医療従事者,血液製剤の使用者,重症化しやすい慢性肝疾患患者などには,積極的にA 型肝炎ワクチン接種を勧奨すべきである.また現在,小児へのワクチン接種は保険適応外であるが,一刻も早い適応承認が望まれる.
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医学のあゆみ 244巻1号, 119-122 (2013);
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Hib(インフルエンザ菌b 型)ワクチンが2008 年12 月に市販された.市販当初から任意接種とされ,複数回(標準4 回)接種が必要なため接種率が低迷していた.しかし,2011 年度から“子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業”としてHPV ワクチン,PCV7(7 価肺炎球菌結合型ワクチン)とともに公費補助の対象となり,急速に接種率が上昇した.このワクチンの予防対象疾患はHib の菌血症によって起こる細菌性髄膜炎であり,その発症時期は生後2~3 カ月から2 歳までの乳幼児期に集中している.このワクチンが定期接種に取り入れられた国々ではHib による髄膜炎の発症が激減している.Hib 感染症の防御は,菌の莢膜多糖体(PRP)に対する抗体が担う.18 カ月未満の幼小児はPRP のみを接種しても十分な抗体を産生せず,PRP にキャリア蛋白を結合したワクチンが開発され,2 カ月児でも効率的に抗体が産生され,接種が可能となった.わが国で認可されているワクチンはフランスのサノフィパスツール社で開発されたPRP-T(キャリア蛋白として破傷風トキソイドを使用,アクトヒブ)である.生後2 カ月から4 週ごとに3 回接種(初回接種)して,生後12 カ月を過ぎて追加接種するのが標準的である.この初回接種の時期は,PCV7,DPT-IPV(百日咳・ジフテリア・破傷風・不活化ポリオワクチン)やロタウイルスワクチンの接種時期と重なっている.日本小児科学会はこれらのワクチンの同時接種を基本とした学会が推奨する接種スケジュールを公表している.PCV7 とともに定期接種対象ワクチンに採用される日が待たれる.
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医学のあゆみ 244巻1号, 123-129 (2013);
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HPV ワクチンは子宮頸癌・陰茎癌・咽頭癌などの原因となる16・18 型の高リスク型のみを含有した2 価ワクチンとそれに尖圭コンジローマ・再発性呼吸器乳頭腫症の原因となる6・11 型の低リスク型を加えた4価ワクチンがある.効能が異なる点がもっとも大きな点であるが,両者には,抗体価,副反応などにも若干の相違がある.主たる対象者は小学高学年から中学生であり,思春期を主たる対象としたはじめてのワクチンである.HPV 感染・ワクチンについて理解ができる年齢層である点と,ワクチン含有型が子宮頸がんで70%程度のカバーであるように,もともと限界を有するワクチンでもある点より,HPV の感染経路(おもに性感染),2 種類のワクチンの選択など,接種者本人への健康教育,情報提供とそれに基づく自己決定を促す必要がある.思春期以降のバックアップ接種も必要であり,小児科のみならず,内科・婦人科などでも,2 種類の相違点を説明できる必要がある.
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医学のあゆみ 244巻1号, 130-135 (2013);
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ロタウイルスは乳幼児の感染性胃腸炎のなかでもっとも多くみられる病原体であり,先進国であってもロタウイルス感染症は多い.2011 年以降わが国でも第二世代ロタウイルスワクチンが認可された.5 価の経口生ワクチンRotaTeq と1 価の経口生ワクチンRotarix である.諸外国では2004 年から使用実績があるが,いずれのワクチンもロタウイルス感染による入院患者数を約90%減少させており,その有効性はきわめて高い.第一世代ロタウイルスワクチンではワクチン関連腸重積が問題となったが,RotaTeq,Rotarix では生後6 週から接種開始し,生後6~8 カ月までに完了することとし,現在まで腸重積の発症が有意に増加したという報告はない.ロタウイルスワクチンを導入することにより入院にかかる医療費は95%減少し,外来にかかる医療費は85%減少すると試算されている.現在ロタウイルスワクチンは任意接種であるが,かりにワクチン1コースの費用を1 万9 千円にできれば,ワクチンを公費で行っても全体の医療費を抑制することができる.