医学のあゆみ
Volume 244, Issue 9, 2013
Volumes & issues:
-
【3月第1土曜特集】 がんの免疫制御―研究と臨床の最前線
-
-
- がんにおける免疫病態
-
炎症とマクロファージによるがんの発生・進展機構
244巻9号(2013);View Description Hide Descriptionがんの発生や悪性化に,慢性炎症反応が関与すると考えられている.炎症反応により腫瘍組織に浸潤するマクロファージはtumor-associated macrophage(TAM)と呼ばれ,PGE2,TNF-α,IL-6,CXCL12 などの炎症性メディエーターやサイトカインを産生し,これらの発現は相互に制御されてネットワークを構築する.このネットワークががんの発生や悪性化に関与していることが実験的に証明されている.一方,これらの因子を産生するTAM は,がん細胞の血管内浸潤や転移先臓器への遊走など,がんの悪性化にかかわっていることが知られている.また最近の研究では,TAM が腫瘍免疫を抑制することで化学療法に対する抵抗性を獲得している可能性も示されている.したがって,TAM のがん組織への浸潤やTAM による炎症性サイトカインのネットワーク構築を制御することは,がんの予防や治療戦略として重要である. -
がん免疫編集機構―がんに対する免疫系の二面性作用
244巻9号(2013);View Description Hide Description「体に発生したがんを免疫系は排除できるか」という問いは,腫瘍免疫学最大の争点であった.近年の研究で得られた多くの証拠から,いわゆるがん免疫監視機構が実際に存在することが明らかになった.しかし免疫系は体に発生したがんを排除する一方で,免疫原性の低いがん細胞を増殖させるという二面性をもつことから,がん免疫監視機構を抱合した新しいがん免疫編集機構という仮説が生まれた.これは排除相(がん免疫監視機構),平衡相,逃避相の3 つの相で構成される.近年,動物実験でがん免疫編集機構の存在が示され,ヒトにおいてもその存在を裏づける証拠がいくつも報告されている.また,がん免疫編集機構のメカニズムについてもしだいに明らかになってきた.今後,このがん免疫編集機構についての理解が細胞・分子レベルでさらに進めば,腫瘍免疫学の最終目標である真に有効ながん免疫治療の開発につながると考えられる. -
担がん生体における免疫病態
244巻9号(2013);View Description Hide Descriptionがん患者では,その形成過程で免疫抵抗性や抑制性を獲得したがん細胞が選択的に増殖する.その結果,がん組織,所属リンパ節,骨髄などのがん関連微小環境では,がん細胞の遺伝子シグナル異常を起点として,多様な免疫細胞や免疫調節分子が関与する複数の免疫抑制カスケードが作動し,がん細胞増殖浸潤促進的かつ免疫抑制的な状態となっている.効果的ながん免疫療法開発のために,患者ごとに異なる免疫病態を理解して,効果が期待できる症例の選択や治療効果の予測を可能にするバイオマーカーの同定や,抗腫瘍免疫ネットワークの総合的な制御による複合免疫療法を開発することが期待されている. - 効果的ながん免疫療法に必要な技術開発とその臨床応用
- 【腫瘍抗原の同定とがんワクチン】
-
がん幹細胞を標的としたがんワクチン療法の展望―効率的かつ抜本的な第4の抗悪性腫瘍ストラテジー
244巻9号(2013);View Description Hide Descriptionがん幹細胞とは,①高い造腫瘍能,②自己複製能,③多分化能を有する細胞群,と定義される.がん幹細胞は,化学療法や放射線療法といった既存の抗悪性腫瘍治療に強い抵抗性を示すことが知られており,臨床上深刻な問題であるがんの再発や転移に関与している可能性が示唆される.今日では幅広いがん種においてがん幹細胞の分離・同定が可能となり,さまざまな分子メカニズムも解明されつつある.近年,悪性腫瘍に対する新規の治療ストラテジーとしてがん免疫療法が注目されている.そのなかでもがんワクチン療法は,がん細胞に特異的な細胞障害性T リンパ球(CTL)を誘導することを目的としている.当教室では,がん幹細胞特異抗原に対するCTL を誘導し選択的に障害するがん幹細胞標的ワクチン療法の臨床試験が進行中であり,現段階までにいくつかのがん種の難治・再発症例において期待のもてる結果がみられた.本稿では新規がん幹細胞の標的候補分子も紹介し,免疫療法という方法でいかにがん幹細胞にアプローチできるか,その可能性について考察する. -
WT1ペプチドがんワクチン
244巻9号(2013);View Description Hide DescriptionWilms 腫瘍遺伝子WT1 は小児の腎癌の原因遺伝子として単離され,がん抑制遺伝子と定義されているが,WT1 は根源的ながん遺伝子である可能性が高い.WT1 蛋白は白血病やほとんどすべての種類の固形癌で高発現する汎腫瘍抗原である.既存の76 種類の腫瘍抗原の有用性についてアメリカがん研究所が9 項目について評価を行い,WT1 を第1 位にランクした.著者らはWT1 ペプチドワクチンの第Ⅰ相臨床研究を2001 年に開始し,その安全性と有用性を明らかにした.急性骨髄性白血病(AML)の3 人の患者には7 年10 カ月~9 年5 カ月の長期間WT1 ペプチドワクチンを継続投与されたが,投与部位の発赤・腫脹以外副作用がみられず,WT1 ペプチドワクチンは安全である可能性が高くなってきた.現在までに700 例以上の患者にWT1 ペプチドワクチンを投与した.AML,慢性骨髄性白血病(CML),その他の血液悪性疾患,再発悪性神経膠芽腫,進行性膵癌,婦人科癌,そのほか種々の固形癌で有効性がみられており,死亡例などの重篤な副作用はみられていない.WT1 ペプチドワクチンは現在,中外製薬,大日本住友製薬,大塚製薬によって製剤化のための治験が行われている. -
革新的癌ワクチン,H/K-HELPの開発―ショートペプチドからヘルパー/キラーロングペプチドへの移行
244巻9号(2013);View Description Hide Description本稿では,ヘルパーエピトープとキラーエピトープを化学的に結合させた人工癌抗原ロングペプチド(helper/killer hybrid epitope long peptide:H/K-HELP)癌ワクチン開発に至る癌免疫の基盤研究と,その成果の臨床研究への応用,そしてなぜH/K-HELP ロングペプチドワクチンが,従来のショートペプチドに比べ有効であるかを解き明かす基盤研究の成果について概説したい. -
がんワクチンと抗体併用による抗腫瘍機構
244巻9号(2013);View Description Hide Descriptionがんワクチンは,特異的がん抗原の投与を介して抗がん活性を有するリンパ球を誘導する治療法であり,国内外での免疫療法の主流としての位置を占めていた.それに対して,CTLA-4 など免疫制御因子を標的とした抗体療法の臨床的成功を契機として免疫療法のなかの抗体療法の比重が高まりつつある.さらに,がんワクチンと抗体療法はそれぞれ異なる作用機序により抗腫瘍効果を発揮しうることが判明しており,併用による相乗的効果が期待できるという利点がある.さらに,免疫細胞に限定せず血管内皮細胞,ストローマ細胞に由来するがん微小環境形成を制御する分子をターゲットとした抗体,ワクチン療法が抗腫瘍免疫応答を改善することが判明し,その臨床開発が国内外で進行中である.以上より,がんワクチンと抗体療法を基盤とした適切な併用法の工夫,および併用に適したワクチンや抗体開発が今後のがん免疫療法の臨床効果の向上において重要なポイントになると考えられる. -
cDNAマイクロアレイ解析とHLAトランスジェニックマウスを利用した理想的な腫瘍抗原ペプチドワクチン療法の開発
244巻9号(2013);View Description Hide Description癌はもともと正常な自己の細胞が癌化して際限なく増殖した結果であり,副作用の少ない効果的な癌治療の開発には正常細胞を傷害せず癌細胞のみを標的とした治療法を開発する必要がある.著者らは正常細胞と癌細胞の遺伝子発現を,cDNA マイクロアレイを用いて網羅的に解析することにより,癌細胞においてのみ強く発現し,正常細胞には発現をほとんど認めない腫瘍関連抗原(TAA)遺伝子を同定した.HLA 結合性ペプチドを推定するアルゴリズムとHLA トランスジェニックマウスを用いることにより,このTAA 由来のペプチドで,細胞傷害性T 細胞とCD4 陽性ヘルパーT 細胞を誘導するペプチドを同定し,TAA ペプチドワクチンとして臨床応用することを試みている.病原体に対するワクチン接種がその病原体だけに対して特異的な免疫応答を誘導し効果を発揮するのと同様に,TAA ペプチドワクチン療法は腫瘍細胞と正常細胞を識別して腫瘍に対する特異的な免疫応答を誘導し,癌細胞のみを傷害することができるため,従来の手術,抗癌剤治療,放射線治療と併用できる,副作用の少ないあらたな第4 の治療法として期待されている. - 【免疫調整剤の開発と臨床応用】
-
TLR3免疫アジュバントの開発
244巻9号(2013);View Description Hide Descriptionアジュバントは抗原提示細胞に発現するパターン認識レセプターを介して自然免疫を活性化し,獲得免疫応答を増強する.抗がん免疫ワクチンでは細胞性免疫応答の誘導が必須であり,NK 細胞活性化やがん抗原のクロスプライミングによる細胞傷害性T 細胞の活性化を誘導するアジュバントが求められている.Toll-likereceptor 3(TLR3)はクロスプレゼンテーション能が高い抗原提示細胞に高発現しており,二重鎖RNA を認識するとアダプター分子TICAM-1(別名TRIF)を介して樹状細胞(DC)にシグナルを伝達し,抗原のクロスプライミング,NK 細胞の活性化を誘導する.さらに,腫瘍浸潤マクロファージのエフェクター細胞への変換など多様な抗がんエフェクターシグナルを誘導することから,TLR3 リガンドは次世代免疫アジュバントとして実用化に向けた開発が期待されている. -
免疫抑制の克服による抗腫瘍免疫応答増強の可能性―抗腫瘍免疫応答の抑制解除
244巻9号(2013);View Description Hide Description近年の分子生物学的手法の発展により,さまざまな免疫応答が分子レベルで解明されてきている.腫瘍免疫分野でも抗腫瘍免疫応答を強めるさまざまな免疫関連分子の研究が臨床応用をめざして精力的に進められている.とりわけ,免疫抑制を解除し抗腫瘍免疫応答を増強させる方法が注目を集めている.中でも免疫応答を負に制御するCTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4)分子を標的とした免疫療法は,CTLA-4 シグナルをブロックする抗体(抗CTLA-4 抗体)の投与により,腫瘍退縮効果が誘導され生存が延長することが動物モデルおよび臨床試験の結果から明らかとなり,悪性黒色腫患者に対してアメリカで承認され,広く使用されている.抗CTLA-4 抗体に加えて,広範な免疫応答を抑制することで免疫寛容に関わる制御性T 細胞(Tregs)が,腫瘍局所に多数浸潤していることが明らかになっている.Tregs に特異的な分子マーカーを標的とすることでTregs のみを特異的に除去し,抗腫瘍免疫応答を増強させる方法の臨床試験が試みられ,有効な免疫療法の一つになりうることが期待されている. -
PD-1免疫チェックポイント阻害による癌免疫療法
244巻9号(2013);View Description Hide Description癌細胞や癌の微小環境には,癌に対する免疫応答を妨げる種々の免疫抑制因子が存在している.免疫応答の進行過程には数々の免疫チェックポイント(immune checkpoints)があり,とくにCTLA-4 やPD-1 などの負の共刺激分子機能は自己応答の制御のための重要なチェックポイントとなっている.癌免疫応答強化には,癌細胞に対する直接のエフェクター細胞機能を強化すると同時に,この免疫チェックポイントをブロックすることが必要であると考えられるようになった.CTLA-4 阻害に続く第2 の免疫チェックポイント阻害療法のひとつであるヒト化PD-1 あるいはPD-L1 抗体の投与は,CTLA-4 阻害に比較して自己免疫応答誘導の程度と頻度が低く,持続的効果がみられること,免疫療法があまり有効でないとされていた癌に対しても効果が得られたことなどで,第二世代の免疫チェックポイント阻害療法としての期待が高まっている.化学療法や他の癌免疫療法とのコンビネーション療法への展開も始まっている. -
化学療法・分子標的薬による免疫応答増強
244巻9号(2013);View Description Hide Description近年,がん組織での免疫環境が免疫療法の効果のみならず,その他の治療の効果や予後に影響を与えることがわかり,がん免疫微小環境の制御,改善の重要性が認識されている.一般に,がん組織内はさまざまな機構で免疫抑制状態が誘導されているが,近年その機構が分子レベルで解明され,これらを標的とする治療法が開発されている.さらに既存の抗がん剤や分子標的薬に関しても,がん細胞を直接殺傷する薬効に加えて,がん細胞からの免疫抑制分子の産生を阻害する効果,がん細胞に免疫原性を高めた死を誘導する効果,免疫細胞に対して直接働き免疫増強を誘導する効果によりがん免疫微小環境の改善ができること,免疫療法との併用で効果の増強が可能なことが明らかとなっている. - 【培養免疫細胞を用いた免疫療法】
-
iPS細胞由来のミエロイド細胞のがん治療への応用―TAP欠損iPS細胞に由来する増殖性を有するミエロイド細胞
244巻9号(2013);View Description Hide Descriptionがんに対する免疫療法として樹状細胞を用いたワクチン療法が国内外で実施されているが,多くの場合,患者自身の末梢血単球から作成された樹状細胞が用いられている.末梢血単球は増殖能力がほとんどないため,必要量の樹状細胞を作成するためにアフェレーシス装置を用いた白血球分離が行われている.また,単球の樹状細胞への分化能力には細胞ドナーによる個体差が大きいという問題もある.一方,海外ではマクロファージの直接的な抗腫瘍効果を期待し,自己の単球由来マクロファージによるがん治療の臨床試験が実施されている.しかし,がん患者由来の単球は担がん状態という体内環境に曝露されていたためか,マクロファージ療法が明らかな有効性を示した報告はない.樹状細胞療法にせよマクロファージ療法にせよ,より有効な治療法として確立し普及させるには,抗腫瘍活性を有する細胞を十分量提供できる技術の開発が必須であろう.著者らは,ヒトのiPS 細胞から長期間にわたり増殖し,かつ樹状細胞へ分化が可能なミエロイド系細胞ライン(iPSML)を作製する方法を開発している.さらに,iPS 細胞における遺伝子標的破壊により組織適合性の問題を解決することを試みている.将来的にはこれらの技術を基盤として,がん治療に用いるための樹状細胞とマクロファージを作成し実用化することをめざしている.本稿ではこの研究の現状について紹介したい. -
人工抗原提示細胞を用いた免疫療法
244巻9号(2013);View Description Hide Description患者体内,ならびに体外でがん特異的T 細胞を増幅するさまざまな免疫療法は,がん特異的T 細胞ががん細胞を選択的に認識し,がんを治癒に導く能力をもつことを示した.しかし,このようなT 細胞を容易に増幅し,体内で長期的に維持する手法はいまだ確立されていない.本稿では,人工抗原提示細胞(artificial antigenpresentingcell:aAPC)を用いて生体内で長期維持が可能ながん特異的T 細胞の新規培養法を紹介する.また,aAPC を用いたがん養子免疫細胞療法に焦点を当て,これまでの基盤的研究,臨床試験の結果と今後の展望を概説する. -
生体内樹状細胞を標的とする人工アジュバントベクター細胞の開発
244巻9号(2013);View Description Hide Description種々の腫瘍抗原が同定されるようになり,細胞性免疫を利用した癌ワクチンは進歩を遂げてきた.一方で,抗原を提示する抗原提示細胞のなかでとくに樹状細胞(DC)の詳細な解明が進み,抗原を提示したDC 療法が進められている.現在,DC 療法の発展において,生体内DC を標的とした抗腫瘍免疫誘導法に注目が集まっている.著者らは自然リンパ球の活性化を引き金とすることで,生体内DC の成熟化を誘導することを示した.さらに,これまでに得られた知見を応用して,抗腫瘍免疫カスケードを効率よく誘導する細胞ワクチンとして“人工アジュバントベクター細胞(aAVCs)” を考案した.このアジュバントベクター細胞は宿主のHLA 拘束性を考慮に入れる必要なく,DC の機能を効率よく高めて自然免疫と獲得免疫の両者を誘導できる.この新規癌ワクチンの概念を紹介する. -
T細胞輸注療法
244巻9号(2013);View Description Hide Description有効な腫瘍免疫が存在するのか,という長い論争の年月を経て,われわれはいままさに免疫療法が腫瘍治療の医療現場に持ち込まれる時代の目撃者になろうとしている.悪性腫瘍患者から腫瘍特異的T 細胞を誘導し,体外で拡大培養した後に患者に輸注する腫瘍特異的T 細胞輸注療法は,進行性の悪性黒色腫の患者において既存治療法を凌ぐ臨床効果を示している.腫瘍特異的T 細胞の誘導と大量培養が困難ながん種においても,T 細胞輸注療法を可能とする試みとして腫瘍特異的T 細胞受容体(TCR)遺伝子導入T 細胞療法やキメラ受容体(CAR)遺伝子導入T 細胞療法が開発され,有効性を示す症例が報告されはじめている.T 細胞輸注療法は細胞療法であり,場合によっては遺伝子治療であるという方法論の抱える制約ゆえに,医薬品としての開発はがんワクチンや抗体療法の後を追う形となってきた.しかし,近年のT 細胞療法臨床試験における顕著な臨床効果は企業などの関心を急速に集めており,今後製薬化,医療化が急ピッチで進むと考えられる.一方,その顕著な臨床効果は副作用の出現可能性と表裏一体であることも明らかになりつつあり,今後はより有効で,かつ安全性の高い治療戦略の構築が必須になる. -
肺癌に対するがん免疫細胞治療におけるNKT細胞の有用性―臨床研究の経験から
244巻9号(2013);View Description Hide DescriptionNKT 細胞は,その特異的リガンドであるαガラクトシルセラミド(α-GalCer)で活性化すると強力な抗腫瘍作用を示すとともに,自然免疫系,獲得免疫系双方を橋渡しして活性化する役割を果たし,免疫系全体を活性化することにより抗腫瘍活性を示す.進行・再発非小細胞肺癌に対して内在性NKT 細胞活性化をめざすα-GalCer パルス樹状細胞療法では,安全性の確認とともに,治療後にNKT 細胞特異的免疫反応の増強を認めた症例群で有意に生存期間の延長を認めることを明らかにした.この結果により,進行・再発非小細胞肺癌に対するα-GalCer パルス樹状細胞の静脈内投与は,2011 年9 月28 日の高度医療評価会議において高度医療としての承認を受けた.この高度医療の枠組みのもとで,2012 年2 月より千葉大学医学部附属病院呼吸器外科で臨床研究を開始している. -
Vγ9 Vδ2T細胞を用いたがん免疫治療
244巻9号(2013);View Description Hide Descriptionリンパ球ストレス監視機構を担うγδT 細胞は,皮膚,粘膜などの臓器に分布して生体防御と恒常性の維持に貢献している.末梢血中に存在するVγ9 Vδ2T 細胞はがん化に伴うストレス誘導分子MHC class Ⅰ-related molecules A and B(MICA/B)や,メバロン酸代謝産物のisopentenyl pyrophosphate(IPP),その異性体であるdimethylallyl pyrophosphate(DMAPP)や,AMP と反応したtriphosphoric acid 1-adenosin-5-ylester 3-(3-methylbut-3-enyl)este(r ApppI)などのリン酸抗原を認識することでがん細胞を認識し,抗腫瘍作用を発揮する.生体内でのγδT 細胞活性化,あるいは体外でγδT 細胞を増殖させた後にふたたび患者に戻す細胞移入治療によるがん免疫治療の開発が期待されている. -
がん免疫療法のために有用なヒト樹状細胞サブセット
244巻9号(2013);View Description Hide Description樹状細胞(DC)を用いた癌免疫療法は,抗原を負荷したDC により癌抗原特異的な免疫応答を誘導し,癌増殖抑制,あるいは癌細胞の完全除去を目的とする癌ワクチンのひとつである.2010 年にSipuleucel-T が癌ワクチンとしてははじめてFDA に認可され,細胞癌ワクチン療法が延命効果をもたらすことが広く認知されるようになった.本稿では,著者の所属するベイラー免疫研究所での臨床治験データと,最近のヒトDC サブセットの基礎研究により得られた知見を総括し,どのようなタイプのDC が癌ワクチンに適しているかについて考察したい. - がん患者の免疫評価
-
癌患者における免疫モニタリング―評価法と国際標準化
244巻9号(2013);View Description Hide Description抗腫瘍免疫反応の評価には,特異抗体および反応性CD4+,CD8+ T 細胞を正確に検出することが必要である.しかし,反応T 細胞はその頻度が低く検出は容易ではない.検出方法としてはElispot 法,Tetramer 法,サイトカイン捕捉法,ICS 法が開発されているが,免疫評価の再現性には問題があり,国際的に標準化の試みがなされている.一方,腫瘍局所の免疫評価には組織学的解析が有用である.免疫染色法によりCD8+ T 細胞とCD45RO+ T 細胞を解析し,腫瘍を“immune score”により分類する試みがなされ,TNM 分類よりもよく予後に相関することが示された.これも癌の悪性度評価として国際標準化が進められている.
-