Volume 245,
Issue 8,
2013
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あゆみ 脳血管障害に対する抗凝固療法
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医学のあゆみ 245巻8号, 619-619 (2013);
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医学のあゆみ 245巻8号, 621-624 (2013);
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血栓は血小板と凝固系の相互作用により形成されるが,両者の関与の度合いは,血管の種類,壁の性状などによって異なる.凝固系は外因系と内因系の2 つの経路からなる凝固カスケード説が広く受け入れられており,これは臨床検査で観察される血液凝固反応をよく反映している.しかし,臨床病態と一致しない点も指摘されていた.近年,細胞をベースとした新しい凝固反応モデルが提唱されている.一般に動脈は流速が速いため,血栓形成における凝固系の関与は小さいと理解されている.しかし,動脈硬化性プラークでは組織因子が過剰に発現しているため,破綻部の血栓形成では凝固系の関与が大きい.一方,静脈は血流が緩徐で凝固系が活性化されやすいため,静脈血栓はフィブリンと赤血球が主体の赤色血栓と理解されている.しかし,深部静脈や左心房内の血栓には,フィブリンと赤血球に加えて多数の血小板板凝集像が観察され,凝固系と血小板の相互作用が血栓の形成・成長に重要であることを示している.
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医学のあゆみ 245巻8号, 625-628 (2013);
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アテローム血栓症の急性期で症状が進行性であったり虚血症状を繰り返したりする場合,アルガトロバンやヘパリンを用いた抗凝固療法により血栓形成や虚血病巣の拡大を抑制することが期待される.一方,心原性塞栓症の急性期では出血性梗塞になるリスクを考慮しても再発予防効果の有用性が上まわると考えられる場合は,急性期から抗凝固療法による再発予防が推奨される.
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医学のあゆみ 245巻8号, 629-633 (2013);
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予後の悪い心原性脳塞栓症は,適切な予防がとくに大切な病態である.その一方で,適切な抗凝固療法が十分行われていない現状がある.多くの症例においては出血リスクよりも塞栓症発症リスクのほうが大きいため,適応と考えられた場合には十分な抗凝固療法を行う必要がある.心房細動が持続しているケースを除くと,脳梗塞が心原性脳塞栓症であることの診断は意外と難しい.病歴,症状,検査所見どれひとつとっても十分正確にその脳梗塞が心原性であることを予測しえず,それらを組み合わせて総合的に判断していくことになる.心臓の病態ごとに抗凝固療法の適否やエビデンスレベルは異なるため,とくに非弁膜症性心房細動以外の理由による心原性脳塞栓症の場合には留意が必要である.
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医学のあゆみ 245巻8号, 634-637 (2013);
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60 年あまり唯一の経口抗凝固薬であったワルファリンは,非弁膜症性心房細動からの脳梗塞を約1/3 に減らすことができ,塞栓症予防としてはきわめて有用な薬剤である.その反面,リスクとして最近の臨床試験でも,出血性脳卒中を年間0.4%程度発症することが示されている.実地臨床では食事や他の薬剤の影響を受けやすく,目標国際標準化比(INR)を維持することが難しい薬剤である.しかし,新規抗凝固薬と異なり,INRによって薬効をモニターできることから,高齢者や腎機能障害を伴う非弁膜症性心房細動などの新規抗凝固薬の適応の難しい症例での有用性はいまだ健在である.
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医学のあゆみ 245巻8号, 639-643 (2013);
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ダビガトランは,血液凝固因子であるトロンビンを直接拮抗的に阻害する新規経口抗凝固薬である.RELY試験で,固定用量のダビガトランは用量調節ワルファリンに比べて,非弁膜症性心房細動患者における大出血のリスクを高めることなく,塞栓症の発症を同等かそれ以上に抑制することが示された.とくに注目すべきは頭蓋内出血の発現率が大きく減少した点である.日本人はコーカシアンよりも脳出血の発症リスクが高いので,日本人にとってメリットの大きい経口抗凝固薬として期待される.
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医学のあゆみ 245巻8号, 644-649 (2013);
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わが国は,2050 年に高齢者人口が35.7%の超高齢化社会を迎える.心筋梗塞や心房細動などの加齢に伴う有病率の増加に伴い,心原性脳塞栓症が今後さらに激増することが予測されている.心房細動患者に対するXa 阻害薬などの新規抗凝固薬は血液凝固能検査に応じた投与量の調整の必要がなく,心房細動による脳卒中または全身塞栓症の発症を抑制し,さらに出血率もワルファリンと比較して同等あるいは抑制されるといった結果が得られている.つまり個々の症例の血液凝固能に応じた用量の調節をする必要がなく,適応基準および減量基準を適切に遵守して使用するかぎりにおいては,ワルファリンよりも塞栓症予防,大出血発症ともに良好な結果が得られる結果となっている.今後は実臨床下における使用実態における評価を行う必要がある.
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医学のあゆみ 245巻8号, 651-658 (2013);
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ワルファリンの薬剤感受性には個人差が大きく,凝固因子の生成阻害により効果を発現するため,初回導入時に時間がかかり脳卒中医療連携の障害となっている.また,定期的な凝固能モニタリングが必要で,維持期におけるアドヒアランスも高いとはいえない.一方,近年発売された新規経口抗凝固薬(NOAC)は,直接トロンビンあるいは活性化第Ⅹ因子(Ⅹa)を選択的にかつ可逆的に阻害するため,その抗凝固活性は血中濃度とよく相関する.また,その効果は短時間に現れるため,医療連携を考慮した場合,臨床的有用性が高い.ところが,NOAC ではあらかじめ用量が規定されており,抗凝固活性をモニターできないため,腎機能障害患者,高齢者,低体重の患者,抗血小板薬との併用などでは出血リスクが高い.当初,このような薬剤の特徴を理解しないまま,多くの医師が安易にNOAC を使用したため,出血事故が多発した.したがって,抗凝固療法を行う際には,用量調節が行えるワルファリンを含めて慎重に薬剤を選択する必要がある.
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医学のあゆみ 245巻8号, 659-663 (2013);
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大出血,脳内出血やその増大,および頭蓋内出血のリスクとして,高齢者,日本人を含むアジア人,脳卒中の既往,MRI-T2 スター画像での微小出血信号,アスピリン併用,腎機能障害,低体重,およびダビガトランに対するワルファリン療法が指摘されている.これらのなかで調整できるリスクである高血圧,高血糖,喫煙,過度のアルコール摂取を徹底的に管理することは,大出血予防の観点からきわめて重要である.抗血栓薬の併用を避けることや頭蓋内出血が少ない新規経口抗凝固薬(NOAC)を選択することも,大出血や頭蓋内出血を減らす有効な方策である.大出血時には休薬,止血,および点滴によるバイタルの安定をはかり,頭蓋内出血では十分な降圧を行う.ヘパリン療法中は硫酸プロタミン投与を,ワルファリン療法中はビタミンK や第Ⅸ因子複合体投与を考慮する.NOAC 療法中は第Ⅸ因子複合体投与や内服後早期なら胃洗浄や活性炭投与を念頭におく.ダビガトランは透析で取り除くことができる.
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連載
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Brain-Machine Interface(BMI)の現状と展望 4
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医学のあゆみ 245巻8号, 669-674 (2013);
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ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)は中枢神経系に機械を介在させて神経系固有の機能の一部を機械に代行させる技術の総称である.もともとは一次運動野や運動前野などの機能解剖学的なメカニズムを明らかにするための一種の評価方法として上肢運動をロボットアームに代行させる実験システムが構築されたが,臨床的視点からはこれを応用した医療福祉機器の開発が期待されている.たとえば,電極を脳内あるいは脳表に留置する神経活動記録法を用いれば,脳活動から精確な上肢運動軌道をリアルタイム推定することが可能になりつつあり,頸随損傷やロックトイン症候群を対象としたロボットアーム制御や家電制御システムの開発が進められている.一方,頭皮に皿電極を貼付して非侵襲的に脳活動を記録する頭皮脳波は信号品質が劣るために高精度な脳活動状態の推定に基づいたBMI の構築には不向きであるものの,電極の付け外しが容易なことから,脳卒中片麻痺をはじめとした運動障害に対する神経リハビリテーションへの応用が検討されている.いずれのBMI も福祉や医療への応用展開を進める過程で,さまざまな技術革新や研究手法が考案されており,これまでの神経科学研究では明らかにできなかった知見が集積され,あらたな科学的潮流を生み出しつつある.
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速報
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医学のあゆみ 245巻8号, 675-676 (2013);
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フォーラム
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がん患者の就労支援 4
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医学のあゆみ 245巻8号, 679-681 (2013);
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第77 回日本循環器学会学術集会レポート 2
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医学のあゆみ 245巻8号, 682-684 (2013);
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わが国において肺高血圧症に対してエビデンスのある経口薬が使用できるようになり8 年が経過し,現在では治療の選択肢も広がっている.また近年,肺高血圧症への理解の深まりとともに,その病態に基づくあらたな治療薬の開発が進み,2013 年2 月に5 年ぶりにWorld Symposium がニースで開催されたことも合わせ,この分野への関心が高まっている. 本シンポジウムにおいて肺高血圧研究で有名なコロラド大学Pulmonary Hypertension Center で10 年以上にわたりDirector を務められ,肺高血圧症の病態生理学研究において先駆的研究をされてきたVoelkel 教授を,国内循環器関連学会としては今回はじめてお迎えしKeynote lecture をお願いした.さらにはわが国の当該分野でご活躍されている先生方に,とくに臨床応用をめざした基礎研究について研究成果をご報告いただいた.
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書評
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医学のあゆみ 245巻8号, 685-685 (2013);
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医学のあゆみ 245巻8号, 686-687 (2013);
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医学のあゆみ 245巻8号, 688-691 (2013);
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TOPICS
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免疫学
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医学のあゆみ 245巻8号, 665-666 (2013);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 245巻8号, 666-667 (2013);
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環境衛生
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医学のあゆみ 245巻8号, 667-668 (2013);
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