Volume 245,
Issue 9,
2013
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【6月第1土曜特集】 イオンチャネル病のすべて
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医学のあゆみ 245巻9号, 695-695 (2013);
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イオンチャネル病研究へのアプローチ
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医学のあゆみ 245巻9号, 699-703 (2013);
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“イオンチャネル病”の概念は1980 年代に,組換えDNA または遺伝子工学技術の進歩に伴って疾患遺伝子のマッピングが行われるようになり確立した.1990 年以降,悪性高熱症と家族性高カリウム血症性周期性四肢麻痺の突然変異が同定されてからは,イオンチャネルやトタンスポーター,イオンポンプの遺伝子異常に基づく機能異常が数多く報告されている.循環器領域でも先天性QT 延長症候群の原因遺伝子が同定されて以降は,遺伝性不整脈という新しい概念が誕生した.イオンチャネルなどの細胞膜蛋白は,イオンを正常に通過させることではじめて機能が発揮される.その機能の確認にはパッチクランプ法を用いた電気生理学的解析が不可欠であり,イオンチャネル遺伝子をさまざまな細胞に導入することで検証される.本稿では,イオンチャネル発現実験で多用されるHEK293 細胞の生物物理学的特性と内因性遺伝子の種類および性質を概説する.
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医学のあゆみ 245巻9号, 704-709 (2013);
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2006 年にマウスiPS 細胞の樹立がはじめて報告され,翌2007 年にヒトiPS 細胞の樹立が報告された.京都大学・山中伸弥教授はその功績により2012 年にノーベル医学生理学賞を受賞された.ヒトiPS 細胞は患者から容易に作製することが可能である多能性幹細胞であり,すぐに世界中でさまざまな研究がはじまった.研究の流れは,iPS 細胞樹立が報告された直後の基礎的なiPS 細胞解析や新規樹立方法の開発から近年は,臨床により近い研究に変わってきている.臨床応用に向けてもっとも期待されているものは再生医療への応用である.末期心不全など傷害された臓器に対して,iPS 細胞由来の元気な心筋細胞を移植することによる再生医療である.一方で,遺伝性疾患の病態解明と新規治療方法の開発に向けた疾患モデル作製としてのiPS 細胞研究も盛んに行われている.iPS 細胞はゲノムにコードされたすべての遺伝情報を受け継いでおり,分化細胞を用いることにより疾患モデルを作製することが可能である.未解決であった病気の原因解明や,同細胞を用いたドラッグスクリーニングなどにより,新規治療方法の開発ができるのではないかと期待されている.これらの研究結果をもとにした革新的な新規治療方法の開発がまたれる.
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医学のあゆみ 245巻9号, 710-718 (2013);
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遺伝性不整脈の多くはイオンチャネル蛋白をコードする遺伝子の変異により引き起こされると一般には考えられている.しかし,その遺伝子変異が実際に不整脈の発生につながっていることを実証するのはきわめて難しい.そのような状況において近年,システムバイオロジーに基づいて構築されたコンピュータモデルを用いて,遺伝子型と表現型の関連を調べるシミュレーション研究が注目されるようになった.本稿では遺伝性不整脈の研究における現状と,そのなかにおけるコンピュータシミュレーション研究の意義,さらには組織レベルのシミュレーションの重要性などを概説したうえで,応用例としてQT 延長症候群,Brugada 症候群,家族性心房細動,iPS 細胞などに関する最新のシミュレーション研究を紹介する.
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医学のあゆみ 245巻9号, 719-724 (2013);
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心臓イオンチャネル病はMendel 型遺伝病である.連鎖解析による原因遺伝子の同定によってイオンチャネルの機能解析が可能となり,イオンチャネル病の病態生理の理解に結びついた.しかし,実際には原因遺伝子とイオンチャネル病発症は一対一の関係ではなく,同じ原因遺伝子変異を有していても突然死をきたす症例から無症候例まで臨床症状は多様であり,病態には連鎖解析ではみつけることのできないエフェクトサイズの小さい複数の遺伝的な修飾因子や環境因子がかかわると推測されている.近年の遺伝子解析技術の発達により,関連解析を用いて一般人口の1%以上に認められるような頻度が高くエフェクトサイズの小さい遺伝子多型のスクリーニングが可能となり,イオンチャネル病においても研究が進められている.本稿では,イオンチャネル病の原因あるいは修飾因子である遺伝子変異・遺伝子多型について,関連解析など最近の知見をまとめる.
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各論
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医学のあゆみ 245巻9号, 727-731 (2013);
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嚢胞性線維症(cystic fibrosis:CF)は,ヒトにおけるもっとも頻度の高い常染色体劣性遺伝を示す疾患である.CF 遺伝子は上皮細胞に発現するクロライドチャネルをコードしており,その遺伝子変異により主として上皮細胞のクロライドイオンの分泌が障害される結果,NaCl の排出に支障が起こり,水分泌が減少する.その結果,気道や消化管における感染症に対する易感染性が高まり,その生命予後を著しく悪化させる疾患である.本稿では最初に発見されたイオンチャネル病としてのCF について概説する.
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医学のあゆみ 245巻9号, 732-739 (2013);
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骨格筋にはさまざまなイオンチャネルが存在し,電気生理的活動を担っている.これらのチャネルの機能異常はミオトニー,麻痺,筋小胞体の障害などを主とする疾患の原因となり,骨格筋チャネル病と総称される.この骨格筋チャネル病にはチャネル遺伝子自体の変異による一次性と,他の原因によりチャネルの発現や機能が影響を受けて発症する二次性とがある.一次性のうち,ミオトニー症候群に関しては,Nav1.4 チャネルによる疾患を中心に臨床診断,遺伝子変異同定,変異チャネル機能解析を通じて理解が深まっている.また,麻痺を主症状とする疾患については,電位感受性ドメインに生じる漏洩電流(gating pore 電流)の発見により病態生理の解明に近づいている.一方,二次性については甲状腺中毒性周期性四肢麻痺の一部でKir2.6 という新規原因チャネルが近年同定されたものの大部分は不明であり,複数の原因で構成される症候群と考えられ,さらなる研究がまたれる.
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医学のあゆみ 245巻9号, 740-744 (2013);
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分子遺伝学研究の進歩により,イオンチャネルおよびチャネル内蔵型受容体の遺伝子異常が一部てんかんの発症に寄与していることが判明し,以来,てんかん=チャネル病(channelopathy)としてとらえられてきた.神経細胞の膜電位の維持,活動電位の発生,さらには神経細胞の興奮性とその抑制のコントロールに,イオンチャネルおよびチャネル内蔵型受容体の働きが深くかかわっていることからも,てんかんの発症とイオンチャネルの機能異常とのつながりに疑う余地はない.本稿では,イオンチャネルの遺伝子変異および機能異常と種々のてんかんの発症機序について概説する.
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医学のあゆみ 245巻9号, 745-753 (2013);
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アクアポリン(AQP)は水を効率よく通過させる膜蛋白であり,組織での水輸送に不可欠の働きをしている.生物界に多くのファミリーメンバーが存在しており,ヒトではAQP0 からAQP12 までの13 種類が存在している.AQP の生理機能はノックアウト(KO)マウスの作成により明らかにされてきているが,いまだ不明の部分も多い.ヒトの疾患とのかかわりにおいて,AQP の遺伝的障害により白内障と腎性尿崩症が起きることが証明されている.また,脳に発現するAQP4 に対する自己抗体により視神経脊髄炎が惹起されることも判明し,AQP が関与する疾患も広がりを見せている.
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医学のあゆみ 245巻9号, 754-757 (2013);
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Polycystin-1,-2 は複数膜貫通型の膜蛋白であり,常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の原因遺伝子産物である.Polycystin-1,-2 は複合体を形成し,ともにprimary cilia に局在して細胞周期,細胞増殖,細胞内Ca2+の調節などにおいて機能していると考えられている.最近は発生期での働きが腎嚢胞形成に重要であると示唆されており,サードヒット仮説が提唱されている.病態に応じた新規治療薬も有効性を示唆する結果が報告されており,今後の発展が期待される.
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医学のあゆみ 245巻9号, 759-764 (2013);
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原発性アルドステロン症は高血圧症のなかでもっとも頻度の高い内分泌性高血圧である.本症は心血管合併症が多い予後不良の疾患であるが,約40~50%を占めるアルドステロン産生腺腫(APA)は片側副腎摘出術により治癒可能な高血圧症である.最近,APA 組織における全exome sequencing による検討の結果,APAの発症病因として,KCNJ5K+チャネルの体細胞変異が約40%に,ATP1A1 やATP2B3 の体細胞変異が約7%を占めることが明らかにされた.これらの体細胞変異により腺腫においてCYP11B2 の過剰発現が誘導され,アルドステロンの自律的な過剰産生が起こる.また,KCNJ5 の胚細胞変異では生下時より両側副腎の巨大な過形成を生じ,著明な高アルドステロン血症や低カリウム血症をきたし,家族性高アルドステロン症3 型というあらたなサブタイプが発見され,両側副腎摘出術の適応となっている.
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医学のあゆみ 245巻9号, 766-772 (2013);
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先天性QT 延長症候群(LQTS)は心電図でのQT 時間延長に伴いTorsade de Pointes(TdP)とよばれる致死性の心室性不整脈を引き起こし,失神発作や突然死の原因となる疾患である.変異のある遺伝子の種類により現在1~13 のタイプに分類されているが,LQT1~3 型が9 割を占める.遺伝子診断率の向上(50~70%)により,遺伝子型と表現型との関連や,さらに同じ遺伝子型でも変異部位別の重症度の違いが検討されてきている.国内の多施設登録研究によって遺伝子型のみならず変異部位による特異的な重症度の評価・治療方法の選択が可能になりつつある.しかし,同一家系内で同じ遺伝子異常を有しているにもかかわらず,心事故の発症リスクに差が認められることも珍しくなく,遺伝子の変異だけですべてが説明可能なわけではない.今後は年齢,性差や遺伝子多型の存在などさまざまな修飾因子を考慮し,それに基づく個別リスク評価と治療法の選択が可能となると思われる.
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医学のあゆみ 245巻9号, 773-780 (2013);
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QT 短縮症候群(SQTS)は心臓イオンチャネル病のなかで比較的最近明らかになってきた疾患であり,頻度は少ないが,心電図上QT 間隔の短縮を認め,心房細動や心室性不整脈による失神や突然死を特徴とする致死性不整脈疾患である.病因として,現在まで5 つの心臓イオンチャネル遺伝子(KCNH2,KCNQ1,KCNJ2,CACNA1C,CACNB2b)が原因遺伝子として報告されている.本稿ではSQTS の診断,疫学,病因,治療に関して述べる.
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医学のあゆみ 245巻9号, 782-789 (2013);
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Brugada 症候群は遺伝性不整脈疾患で,アジア人に多いとされており,心筋のNa チャネルのSCN5A 遺伝子のほか,L 型Ca チャネル遺伝子など,12~15 種の遺伝子変異が同定されている.これまでBrugada 症候群の実験モデルでは,心外膜-心内膜の再分極相で電位勾配が生じてST 上昇が起こるとともに,貫壁性および心外膜層内で再分極時間のばらつきが生じて心室細動(VF)が発生すると報告され,その発生機転を再分極異常に求める考え方が主流であった.しかし近年になって,右室局所における伝導遅延が種々報告されるに至り,再分極異常と同様に脱分極異常の重要性が認識されつつある.一方,日本人のBrugada 症候群例の予後には,VF や失神の既往,突然死の家族歴,下側壁誘導での早期再分極(J 波)の合併などが関連することが報告されており,診断と治療のガイドラインが策定されているが,失神群,無症候群のなかで将来のハイリスク例をいかに予測するかが課題となっている.
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医学のあゆみ 245巻9号, 790-795 (2013);
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早期再分極(またはJ 波)は健常人の1~10%程度に認められる心電図所見であり,良性の所見と長らく考えられてきた.しかし近年,早期再分極が心室細動や突然死に関与していることが明らかとなり,大きな関心を集めている.早期再分極症候群症例の70~80%は男性であり,診断年齢は40 歳前後である.突然死の家族歴を10~20%に認め,これは早期再分極症候群の発症に遺伝的背景が関与していることを示唆しており,実際に現在までに5 種類のイオンチャネル遺伝子が原因遺伝子として報告されている.心室細動発作をきたす状況は一様でなく,夜間や睡眠中に発作をきたす症例が多いが,労作時や運動時に発作をきたす症例も少なからず存在する.当初は下壁または側壁誘導の早期再分極が心室細動に関連することが報告されたが,右側胸部誘導に早期再分極を認める症例もある.J 点の高さはさまざまな状況において変動し,ときに消失するが,ポーズや徐脈時に増強し,心室細動発作の直前に通常はもっともJ 点が高くなる.心室細動発作の既往のある症例においては植込み型除細動器(ICD)が適応となる.ICD は突然死予防にはもっとも有効な治療であるが,発作の頻度が頻回である症例には発作予防の薬物療法が必要となる.頻回発作時にはβ刺激薬であるイロプロテレノールや,心拍数を早くするためのペーシングが有効である.再発予防にはキニジンの有効性が報告されている.また,抗不整脈薬が無効な症例において,心室細動をトリガーする心室性期外収縮を標的としたカテーテルアブレーションの有効性も報告されている.
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医学のあゆみ 245巻9号, 796-801 (2013);
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特発性心室細動は,器質的心疾患を伴わない心臓に発症する心室細動と定義されている.その発症メカニズムとして,心筋イオンチャネルの関与が考えられている.さまざまなタイプのイオンチャネルが複合的に機能することが心筋活動電位形成には不可欠である.しかし,イオンチャネル電流のバランスが崩れ,再分極過程における過剰な外向きの電流がBrugada 症候群や早期再分極症候群などにおける心室細動を惹起すると考えられている.このイオンチャネル電流の異常の原因として,イオンチャネルおよび関連蛋白をコードする遺伝子の異常が報告されている.もっとも報告例が多いのはNa チャネル関連の遺伝子であり,K そしてCa チャネル関連遺伝子の報告がある.特発性心室細動をイオンチャネル病として分類することで,より詳細な発症メカニズムの解明につながることが期待される.
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医学のあゆみ 245巻9号, 802-809 (2013);
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進行性心臓伝導障害(PCCD)は,明らかな基礎心疾患の存在なしに,進行性の房室ブロック・脚ブロックという伝導異常の心電図所見を示し,失神やペースメーカー植込みの原因となる遺伝性徐脈性不整脈である.心臓刺激伝導系の線維変性によるものと考えられている.現在までに知られている原因遺伝子として心筋Naチャネル(SCN5A,SCN1B),Ca2+活性化非選択性カチオンチャネル(TRPM4),コネキシン40(GJA5)などがあげられる.また,伝導障害を初発症状としたラミンA/C(LMNA)による心筋症があげられる.ラミン心筋症では40 歳代になるまでは軽微な伝導障害しかないことが多いため,家族歴を聞かずに良性の伝導障害として処理してしまうと,その後急速に増悪する伝導障害や心不全・重症不整脈を見逃してしまうおそれがあり,注意を要する.さらに,副伝導路症候群や神経筋疾患の一部にも心臓伝導障害をきたすものがあり,伝導系の発生に関与するさまざまな転写因子も疾患遺伝子の候補としてあげられている.今後のゲノムワイドの遺伝子研究の進歩によって,伝導障害の疾患遺伝子・関連遺伝子の解明はさらに進んでいくと思われる.
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医学のあゆみ 245巻9号, 810-814 (2013);
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カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)は致死的不整脈であり,治療・管理が重要である.現在,5 つの亜型が報告されている.すべての亜型でRyR2 からの異常なCa2+放出が不整脈の原因とされている.CPVT1はリアノジン受容体(RyR2)異常が原因であり,CPVT2 はカルセクエストリン(CASQ2)異常で,Ca2+貯蔵障害およびRyR2 の膜安定化障害により発生する.CPVT3 は原因遺伝子が不明である.CPVT4 はトリアジン(TRDN)異常が原因で,RyR2 でのCa 放出複合体形成異常が原因となる.CPVT5 はカルモデュリン(CALM1)異常によりRyR2 抑制作用が失われることが原因となる.治療としてはβ遮断薬とフレカイニドの併用が推奨されている.
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医学のあゆみ 245巻9号, 815-820 (2013);
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アンダーセン(Andersen-Tawil)症候群は,①U 波を伴う心室性不整脈,②周期性四肢麻痺,③外表小奇形,を三徴とする疾患であり,KCNJ2 遺伝子変異が原因で起こる.KCNJ2 遺伝子は内向き整流性K チャネルであるKir2.1 蛋白をコードしており,その変異はKir2.1 の機能低下を起こしIK1電流が減少する.IK1電流は心室筋において深い静止膜電位を形成しており,その機能障害により頻発する心室性期外収縮や二方向性心室頻拍などの不整脈が起こると考えられる.Kir2.1 チャネルは,骨格筋や骨芽細胞,脳にも発現しており,周期性四肢麻痺や,小顎,耳介低位などの外表小奇形も合併する.しかし,その浸透率は同じ遺伝子変異をもつ家族間でも一定ではなく,亜型(不全型)も多くみられ,とくに二方向性心室頻拍が共通するカテコラミン誘発性多形性心室頻拍との鑑別が重要である.治療としては最近,フレカイニドが期待されている.
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医学のあゆみ 245巻9号, 821-824 (2013);
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Timothy 症候群は,染色体12p13.3 にあるL-type Ca2+チャネル蛋白(CaV1.2)をコードする遺伝子(CACNA1C)の変異によって起こるQT 延長症候群のひとつのタイプである.QT 延長症候群の責任遺伝子として8番目に発見されたため,LQT8 と称される.同症候群は多臓器障害を示し,心症状,指趾異常,顔貌異常,神経学的発達障害を伴っている.心症状としてはQT 延長を含む種々の不整脈,先天性心疾患,指趾異常としては合指症,顔貌異常としては鞍鼻,耳介低位,薄い上口唇,丸い顔貌,神経学的発達障害としては自閉症,痙攣,知的障害などを伴っている.不整脈は治療抵抗性であることが多く,予後は不良と考えられている.
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医学のあゆみ 245巻9号, 825-830 (2013);
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ATP はグルコースをはじめ種々の栄養素の異化によって産生される高エネルギー分子であり,さまざまな生命反応を引き起こすために必須なエネルギー源である.したがって,栄養素の欠乏,異化に必要な酸素の供給不足,あるいはエネルギー消費過剰が続けば細胞はATP 不足に陥り細胞や個体の死を招く.これに対し生体は細胞の代謝状況を反映して変動する細胞内ATP 濃度を感知することにより,さまざまな生体機能を調節している.1983 年に心筋細胞でチャネル電流が発見されたATP 感受性K+チャネル(KATPチャネル)は,その後の解析の結果,種々の電気的興奮細胞における代謝センサーとしてさまざまな細胞機能を制御していることが明らかになった.本稿ではKATPチャネルの発見から基本的な特性の解明の歴史と,KATPチャネルの生理的な役割,種々の疾患との関連について概説する.
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医学のあゆみ 245巻9号, 831-837 (2013);
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1997 年に最初の温度感受性TRP チャネルとしてカプサイシン受容体TRPV1 が遺伝子クローニングされてから,これまでに9 つの温度感受性TRP チャネル(TRPV1,TRPV2,TRPV3,TRPV4,TRPM2,TRPM4,TRPM5,TRPM8,TRPA1)が明らかになっており,温度刺激・機械刺激・化学物質刺激などで活性化されて痛みを含む“感覚”にかかわることがわかっている.しかし,遺伝子欠損マウスがさまざまな表現型を示すにもかかわらず,感覚異常をもたらす遺伝子変異はヒトではほとんど明らかになっていない.TRPV4 の変異は神経・骨・筋肉に異常を示す遺伝性疾患を引き起こすことがわかっているが,温度感覚との関連は明らかでない.温度感覚や痛みは疾患ではなく症状であることから発見が難しいのかもしれないが,今後,遺伝子変異が発見されていくことが期待される.