医学のあゆみ
Volume 245, Issue 11, 2013
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あゆみ GIST Update―診療ガイドライン改訂を踏まえて
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GISTの病理組織診断のポイント
245巻11号(2013);View Description Hide DescriptionGastrointestinal stromal tumo(r GIST)は消化管のCajal細胞由来の間葉系腫瘍である.GISTの病理診断では,正確な診断とともに,予後の推定とリスク分類に必要な因子の診断が重要である.GIST は組織学的に,①spindle cell type,②epithelioid type,③mixed spindle and epithelioid type の3 つのサブタイプがあり,免疫染色によりKIT やDOG1 の発現を確認することが重要である.予後の推定のうえでもっとも重要な因子は細胞分裂数で,50 高倍率視野による計測とともに,5 mm2当りの細胞分裂数の計測も勧められる.病理診断報告書には,診断とともに腫瘍径と細胞分裂数,そして発生部位や腫瘍破裂の有無,切除断端を記載することが求められる. -
GISTの原因遺伝子と標的治療の基礎
245巻11号(2013);View Description Hide DescriptionGIST の発生に関与する遺伝子の代表的なものにはc-kit 遺伝子,PDGFRA 遺伝子,NF1 遺伝子,SDH 遺伝子群,BRAF 遺伝子などがある.これらの遺伝子異常の関与は基本的に排他的であり,同じGIST に複数の異常がみられることはほとんどない.全GIST のうち,c-kit 遺伝子変異をもつGIST が80~85%を,PDGFRA遺伝子に変異をもつGIST が約10%を占めることから,その他の遺伝子異常によるGIST はまれである.それぞれの遺伝子異常により発生するGIST には臨床病理学的にさまざまな特徴があり,治療との関係も深い.分子標的薬のイマチニブは,c-kit 遺伝子変異をもつGIST の大部分,およびPDGFRA 遺伝子変異をもつGISTの一部に対し有効であるが,その他の遺伝子異常をもつGIST には効果が期待できない.GIST の原因遺伝子異常を明らかにし,その病態に応じた治療を考えることは今後より重要になるものと考えられる. -
消化管粘膜下腫瘍の診断治療戦略
245巻11号(2013);View Description Hide Description日常臨床において消化管粘膜下腫瘍はしばしば遭遇する疾患ではある.食道に発生する粘膜下腫瘍のほとんどが良性腫瘍であり,約70%が平滑筋腫である.その他のものに顆粒細胞腫,血管腫などがある.胃において良性のものは平滑筋腫が多く,ついで異所性膵,脂肪腫があり,悪性のものはGIST,悪性リンパ腫,カルチノイドなどがある.十二指腸では良性のものはBrunner 腺の過形成,平滑筋腫など,悪性のものはカルチノイド,悪性リンパ腫などがある.大腸の粘膜下腫瘍は他の部位に比べ少なく,脂肪腫,直腸カルチノイド,リンパ管腫,GIST,悪性リンパ腫などが多い.粘膜下腫瘍に対する通常の鉗子による組織生検は困難で,超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)が組織採取に有用である.GIST などの粘膜下腫瘍の診療ガイドラインが改訂されたが,2 cm 以下の病変に対する治療方針に関しては今後もさらなる検討が必要である. -
GISTの診断と治療に必要な画像診断知識
245巻11号(2013);View Description Hide DescriptionGIST は消化管粘膜下腫瘍や腹部腫瘤として発見されることが多い.初期画像診断ではGIST に特異的な画像所見はなく,画像での確定診断は困難であるが,腫瘍の検出,局在診断,病期診断が可能で,治療方針決定において重要な役割を果たす.GIST の画像診断モダリティとしてもっとも重要なのはCT,とくに造影CT であり,MRI,FDG-PET,超音波が補助的に用いられる.外科手術後の経過観察,分子標的薬治療の効果判定の目的にも造影CT がおもに用いられ,その効果判定では腫瘍のサイズ変化を評価するRECIST よりも,腫瘍のサイズ変化に腫瘍内の変性を反映した造影CT でのCT 値の変化を考慮したChoi’s criteria がより正確に判定できるとされる.GIST の分子標的薬治療開始後初期の抗腫瘍効果による画像変化,および経過観察中にみられる再進行の特徴的な画像所見について知っておく必要がある. -
初発GISTの外科治療戦略
245巻11号(2013);View Description Hide Description初発GIST の外科治療では根治性はもちろん,臓器機能温存にも最大限努めることが原則である.そうした面に配慮して,腹腔鏡や内視鏡を併用した手術を導入する施設が増えている.また,薬物治療の奏効性を活かし,腫瘍が縮小した後に手術を行う集学的治療も,臓器温存と根治性の両方を向上させる治療として有望視されている.しかし,新しい手術にはイノベーションの要素が強く,集学的治療はまだ研究的な位置づけを脱していない.どちらも今後の発展が望まれるが,実臨床への導入の際は,外部監査や臨床試験など倫理面に配慮した取組みも並行して行われることが望まれる. -
予後因子とリスク分類―どれを用いるとよいか
245巻11号(2013);View Description Hide DescriptionGIST に対する根治治療として外科治療がなされる.完全切除後の再発リスクに関しては,腫瘍径,核分裂像数,発生臓器を用いてさまざまな再発リスク分類が用いられてきた.再発リスクは術後の転帰の予測に用いられるのみならず,近年そのエビデンスが立証された術後補助化学療法の対象を決定するといった点からも重要性が増している.本稿では現在用いられているいくつかのリスク分類を取り上げ,その特徴ならびに実臨床の場での使用法について紹介する. -
エビデンスに基づくGIST標的治療
245巻11号(2013);View Description Hide Description切除不能・再発GIST に対する薬物療法はここ10 年の間に飛躍的な発展をみせた.イマチニブ,スニチニブの登場により平均予後は5 年を超え,それまでの経験的治療からの全生存期間1.5 年から劇的な改善をみせた.しかし,これら2 つの薬剤をもってしても耐性腫瘍の出現によりいまだ予後不良な疾患であり,また副作用のマネージメントには,通常の殺細胞薬と異なり,十分に経験を積んだ腫瘍医の積極的な関与が求められている.一方,2012 年には新規分子標的治療薬であるレゴラフェニブが三次治療としての地位を確立したことで,さらなる治療成績の向上が期待されている. -
標準的治療と標準治療後の医療
245巻11号(2013);View Description Hide Description切除不能GIST に対する一次治療薬はイマチニブである.イマチニブの病変コントロール率は85%を超え,無増悪生存期間は約2 年である.イマチニブ耐性GIST に対する治療はスニチニブであるが,生存期間の延長を狙って局所治療を組み合わせる集学的治療も行われている.エビデンスからは薬物治療の有効性が示されていることから,イマチニブおよびスニチニブを基本治療とし,そのなかに局所療法を組み入れるという集学的治療の基本方針を示した.最後に,エビデンスはほとんどないが,実臨床でしばしば求められる標準治療後の治療としてイマチニブの再投与や,局所療法のひとつとしてラジオ波焼灼療法(RFA)や放射線療法についても実例を示して概説した.
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連載
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- Brain-Machine Interface(BMI)の現状と展望 6
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BMI ニューロリハビリテーション―片麻痺上肢に対するあらたな治療戦略
245巻11号(2013);View Description Hide Description脳卒中後の上肢麻痺が実用段階まで回復することは容易ではなく,従来のリハビリテーション(リハ)の重点は代償的アプローチにおかれていた.一方,近年の神経科学研究は成熟脳にも可塑性があることを示し,麻痺自体の回復に向けた治療が試みられている.なかでも抑制療法は大規模ランダム化比較試験により効果が示されている.ただし,その適応は手指・手関節の伸展が可能な症例に限られる.著者らは手関節装具と筋電をトリガーに手指伸展を補助する携帯型電気刺激装置の組合せにより日常生活における麻痺手の使用を促すHANDS 療法を開発し,その効果を報告してきた.HANDS 療法は抑制療法より適応範囲が広いが,筋電が記録されない重度麻痺に対しては無力であった.このような症例に対し,手指伸展の運動イメージに伴い出現するμ律動の脱同期を脳波でとらえ,それをトリガーに電動装具で麻痺手を伸展させるBrain Machine Interface(BMI)リハを開発し,その効果を検証してきた.BMI 技術の応用により麻痺自体を回復させうるあらたなリハの展開が期待される.
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フォーラム
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- 近代医学を築いた人々 18
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- 第77 回日本循環器学会学術集会レポート 4
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To Improve Outcomes of Acute Heart Failure Patients:Lessons from Asia and Western Registries
245巻11号(2013);View Description Hide Description急性心不全患者数は年々増加傾向にあり,その再入院率の高さからも循環器領域に限らず,医療経済的にも心不全診療改善のための対策を早急に練っていく必要がある.このような対策を練るためには各地域,各国で入院を要する心不全患者の実態を知ることが不可欠である.このような観点から急性心不全という用語より,最近はもうすこし広義な意味で,“入院を要する心不全”(hospitalization for heart failure:HHF)という用語が使われはじめている.本セッションは,関連するレジストリーから得られた知見をもとに予後改善にむけた展望を示すために企画された.アメリカ,韓国,そして日本からこの分野で活躍されている先生方に,自らのデータをもとに総括あるいは研究結果をご報告いただいた.なお,香港からCheuk-Man Yu 教授(Princeof wales Hospital)の発表も予定されていたが,都合により欠席された. - がん患者の就労支援 6
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- 書評
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TOPICS
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- 神経内科学
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- 糖尿病・内分泌代謝学
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- 血液内科学
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