医学のあゆみ
Volume 245, Issue 12, 2013
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あゆみ フローサイトメトリーの診療への活用Update
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フローサイトメトリー活用のためのコツとピットフォール―臨床研究で実際に注意すべき基本的ポイント
245巻12号(2013);View Description Hide Descriptionフローサイトメトリーは臨床診断の精度,迅速性を飛躍的に高めたのみならず,免疫学,微生物学,発生学,環境科学,植物学などさまざまな学術分野において最新の細胞情報の発信を担っている.今日,フローサイトメトリー機器のマルチパラメータ解析,高速高精度および自動化に向けた改良は大きく進み,専門知識や操作経験のない人でも比較的簡単に活用できる.また,機器メーカーのマニュアルに従えば,コツやピットフォールなどを気にする必要もなく信頼できるデータが得られるようになっている.しかも基本的な原理には大きな変更はないので,実際の活用における留意点は数あるフローサイトメトリー解説書でほとんどかわらない.したがって本稿では,フローサイトメトリー原理に基づく留意点については最低限必要と思われるもののみ簡単に述べることにして,精度管理ならびに標準操作手順に重点をおいて紹介する.これらはアレイテクノロジーのようなハイスループット技術における世界的な流れであり,これらを確立遵守することが臨床研究におけるフローサイトメトリー活用のコツと思われるからである. -
白血病診療におけるフローサイトメトリー利用時の注意点
245巻12号(2013);View Description Hide Descriptionフローサイトメトリー(FCM)は,検体採取当日に結果が得られるという迅速性で他の検査を大きく凌駕し,日常診療に必須の検査法である.混合形質性急性白血病(MPAL)はその診断にFCM が大きな力を発揮するが,ミエロペルオキシダーゼ(MPO)陽性の判断が細胞化学や免疫組織化学の結果と乖離し,困難であることがある.FCM におけるMPO のcut-off 値をより低い値(10~15%程度)に設定する方がより適切である可能性がある.また,FCM 上,急性前骨髄性白血病(APL)と類似した抗原発現パターンをとるものにcup-like leukemiaがある.これは核の形態に特徴があるため,形態をよく観察することでAPL とは鑑別可能である.Cuplikeleukemia は初診時の白血球数や芽球数が多い症例が多く,核型も正常核型が多いとされている.さらに,Flt3 とNPM1 のmutation を同時に認める症例が多いと報告されている.しかし,これらの遺伝子異常が予後に与える影響については十分に解析されていない. -
リンパ腫のフェノタイプ解析の意義
245巻12号(2013);View Description Hide Descriptionフローサイトメトリーを用いた細胞表面マーカーの検索は,リンパ腫診療において重要な検査である.CD20,CD19 はB 細胞性リンパ腫のマーカーであるが,各組織型により発現に差がみられる.CD20 の発現低下は予後不良因子である.CD4 はヘルパーT 細胞のマーカーであるが,腫瘍組織へのCD4 陽性細胞の浸潤は予後良好因子として報告されている.CD200 は慢性リンパ性白血病の鑑別に,また,CD11c,CD103,CD25,CD123 はヘアリー細胞白血病の鑑別に有用なマーカーである.CD44,CD54,CD10,CD43,CD79b,CD71 を用いたBurkitt リンパ腫の鑑別が報告されている.CD10 は血管免疫芽球性T 細胞性リンパ腫の診断に有用である. -
微少検体を用いたフローサイトメトリー活用術
245巻12号(2013);View Description Hide Description造血器腫瘍細胞の同定は光学顕微鏡による形態学的検査が基本であるが,腫瘍細胞が発現しているさまざまな抗原をフローサイトメトリー(FCM)で検出することによって腫瘍細胞の解析が可能である.FCM の利点として,迅速に結果が判明すること,再解析が可能であること,結果が定量的であること,クロナリティーを判定できることがあげられる.このためFCM は造血器腫瘍の診断や治療効果判定に必須の検査法であり,現在広く用いられている.骨髄やリンパ節生検検体が材料として一般的であるが,針生検検体や体腔液など微少検体においてもFCM による評価が実用化されてきている.検査する抗体の種類を絞り,染色を工夫するなどして少ない検体でも検査可能である.内視鏡下針生検や体腔液穿刺などは比較的低侵襲性であり,患者の負担も少ない.細胞診や病理組織検査が一般的に行われるが,時間を要すること,形態学的に鑑別が困難なことがしばしばある.FCM を組み合わせることにより疾患の早期診断・早期治療に結びつき,日常診療において有効である. -
フローサイトメトリー法による小児急性白血病の微小残存病変の検出
245巻12号(2013);View Description Hide Description小児がんのなかでも小児急性白血病の治療成績の向上は著しく,最近の5 年生存率は急性リンパ性白血病で約80%,急性骨髄性白血病で約70%までに達している.今後,さらなる治療成績の改善のためには新規予後因子の探索およびそれを加味したリスク層別化による治療戦略が重要である.近年,欧米を中心に寛解導入療法に対する治療反応性を従来の形態学的診断では同定できないレベルの微小残存病変(MRD)の有無で評価し,その後の治療層別化に用いる臨床試験が盛んに行われるようになった.その結果,MRD を用いたリスク層別化が治療成績の向上に大きく貢献することが示され,わが国の小児急性白血病臨床試験においても寛解導入療法後のMRD をフローサイトメトリー(FCM)法で測定し,予後との相関を解析する試みが開始されている.本稿では,小児急性白血病に対するFCM 法によるMRD 検出システムとその臨床応用について概説する. -
HLA半合致移植後の再発における白血病細胞のHLA欠失―フローサイトメトリーによる検出方法とその意義
245巻12号(2013);View Description Hide Descriptionキメリズム解析/HLA-flow 法は,アリル特異的抗HLA モノクローナル抗体*とフローサイトメーターを使用して,HLA 不一致造血細胞移植後の混合キメリズムを測定する方法である.HLA-flow 法により,臍帯血移植やHLA 半合致移植後の生着動態や微小残存病変(MRD)を迅速,高感度かつ定量的にモニタリングすることが可能である.著者らは本方法を使用して,HLA 半合致移植後に再発した症例の白血病細胞における不一致HLA の欠失の有無を,高い精度と感度で解析する方法を確立した. -
フローサイトメトリー法の基礎研究から臨床応用へのステップアップ
245巻12号(2013);View Description Hide Descriptionマルチパラメータフルオレッセンス励起型細胞ソーティング(FACS)の導入よって,血液細胞の分化の階層的秩序,この階層内の違った幹細胞や前駆細胞集団の細胞的および分子的特徴,血液腫瘍における正常造血の破綻などについてのわれわれの知識が急速に発展した.CD34+コンポーネント内に含まれるさまざまな幹細胞や前駆細胞に関する知識によって,骨髄性白血病の細胞由来のより複雑で白血病亜型依存的なモデルを導かせた.自己複製能をもち,より分化した白血病芽球の子孫を産み出すとされる白血病幹細胞のまれな亜集団の存在をFACS で証明することによって,急性骨髄性白血病の細胞成長の理解を根本的に変えた. -
マルチカラーFACSによる白血病造血の解析
245巻12号(2013);View Description Hide Descriptionフローサイトメトリー技術の進歩により,多数の細胞表面抗原を同時に解析し,均一なフェノタイプの細胞集団を分離することが可能となった.表面抗原の発現パターンを用いて系統特異的前駆細胞集団を純化し,それらの階層的位置関係を明らかにすることで,造血幹細胞を頂点とした造血のヒエラルキーが理解されるようになり,造血システムの研究は飛躍的に進歩した.さらに,この技術が白血病をはじめとした造血器悪性腫瘍においても応用されることで,ごく少数の腫瘍性幹細胞が自己複製能と限定された分化能を保持しながら病態を形成しているという,白血病幹細胞の概念を生み出すに至った.現在,白血病幹細胞分画の生物学的特徴について詳細な解析が行われ,白血病の発症メカニズムの解明が試みられている.また,正常造血幹細胞と白血病幹細胞の網羅的遺伝子発現解析により得られた細胞表面抗原の発現パターンの相違に着目し,抗体創薬を中心として臨床への応用研究が行われている.
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シリーズ対談 vol.5
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連載
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- Brain-Machine Interface(BMI)の現状と展望 7
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皮質脳波を用いた低侵襲BMI
245巻12号(2013);View Description Hide Descriptionブレイン・マシン・インターフェースは非侵襲,低侵襲型,高侵襲型に分けられる.侵襲型では手術が必要であるが,高い性能が得られやすい.微小針電極を用いる高侵襲型では運動ニューロンがもつdirectional tuningという特性を用いて巧緻な運動制御が可能であるが,長期安定性に問題がある.脳表電極を用いる低侵襲型では運動企図時に生じるγ帯域活動を用いてロボットアームのリアルタイム制御が可能であり,長期安定性の面で優れる.侵襲型では感染リスク低減のため体内埋込化が必要であるが,いったん埋め込むと装脱着の必要がなく利便性に優れる.また,当初はALS などの重症の身体障害者への適用が期待されるが,技術レベルの進歩により,より患者数の多い疾患にも適用可能となると考えられ,医療機器としての潜在的な市場規模も大きい.
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フォーラム
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TOPICS
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- 呼吸器内科学
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- 麻酔科学
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