Volume 246,
Issue 8,
2013
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あゆみ 臨床研究と倫理
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医学のあゆみ 246巻8号, 529-534 (2013);
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人を対象とする臨床研究においては,研究に伴う危害やリスクを一身に負わざるをえない被験者を適切に保護するためにも,医療従事者本来の責務と医学研究者としての責務が相反することの自覚をもつことが研究に携わる医療従事者には何よりもまず求められる.そして,この自覚に加えて臨床研究自体が社会からの3つの要請(研究の社会的意義の確保,研究の科学性の確保,被験者の保護)に正しく応答してはじめて当該研究は倫理的に適切なものとなる.臨床研究が,こうした社会からの要請に適切に応えるためには,大きく6 つの倫理上の関門,①科学的有用性・社会的意義の確保,②適切な検証仮説の設定と方法論の選択,③社会的“眼”との対話と協同,④被験者の“納得”の確保,⑤情報管理・プライバシー保護への対応,⑥研究参加後の配慮,のそれぞれにおいて求められる倫理的配慮を行い,クリアしなければならない.研究に携わる医療従事者が奢ることなく感謝と報恩の念をもって被験者と向き合うことが,臨床研究の推進のためには不可欠である.
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医学のあゆみ 246巻8号, 535-538 (2013);
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患者・被験者のプライバシーにアクセスしたり身体を侵襲したりする際にはインフォームドコンセント(IC)を得ることが不可欠である.しかし研究はかならずしも被験者の利益につながるわけではなく,科学的な知識を得ることを目的としているので,研究のIC と診療のそれとは性格が異なり,被験者には他者の利益のために自己犠牲を引き受ける判断をするにあたって必要な情報が提供される必要がある.それでも被験者は自らの利益のために研究が行われているのだと誤解しがちであり,そのために過度のリスクを引き受けてしまう可能性がある.それゆえ,研究におけるIC のプロセスでは,このような誤解を招かないよう注意する必要がある.
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医学のあゆみ 246巻8号, 539-544 (2013);
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リスク・ベネフィット評価は研究の倫理的妥当性を判断する際に,インフォームドコンセントと並び,その核となるものである.それはすなわち被験者のリスクや負担と研究のもたらす社会的利益(場合によってはそれに加えて被験者個人に対する治療上の利益)とを慎重に比較考量することである.本稿はまず国内外の指針におけるリスク・ベネフィット評価に関する規定を確認したうえで,そこで共通認識となっている基本的な考え方を,①多様なリスクと利益の同定,②リスクの最小化,③リスクと利益の比較,という3 つの手順に沿って整理する.また合わせて,リスクの制限が求められる一部の研究で使用されている“最小限のリスク”概念についても述べる.
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医学のあゆみ 246巻8号, 545-551 (2013);
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ヒト試料を用いる研究活動には研究倫理の諸原則の適用を考えるうえで留意すべき特徴がある.たとえば,試料の利用に伴って提供者への直接的な害がただちに発生することは少ないが,一方で派生しうる害への懸念を払拭できるような即応策にも欠ける場合が多い.バンキングを伴う場合には具体的な用途や予想される成果を事前に把握することはさらに難しく,採取された試料は提供者から離れて,また採取時から一定の時間を経過してから利用されるため,提供者の意向を利用のつど確認することが,研究者・提供者双方にとって負担となることもある.ヒト試料を科学研究の素材として利用していくには,試料の利用に付随するこのような“不確定性”への継続的な配慮が必要である.たとえば,活動の透明性を確保し,提供者との認識のずれを防ぐことが重要な意味をもつ.提供者と研究活動との関係は,提供時に終わるのではなく,提供以降に発展的に展開する.管理者をはじめ,試料に関与する者がこの点を意識し,活動への信頼を支える必要がある.
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医学のあゆみ 246巻8号, 552-557 (2013);
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近年,医薬品・医療機器の開発を目的とする臨床試験の場が,世界的に途上国へと急速にアウトソーシングされるようになっている.その理由は,開発を行う先進国側にとっては試験コストの大幅な軽減や試験期間の短縮が可能であるなど,臨床試験を途上国で実施することにはさまざまなメリットがあるためである.その一方で,先進国に比べてもともと圧倒的に不利・不安定な社会・経済的環境におかれている途上国では,その被験者も含めて,ともすれば臨床試験を主導する先進国側から不利・不当な条件やリスクを容易に押しつけられかねないといった,臨床試験に伴う不公正や搾取の可能性についての倫理的懸念が広がっている.現在,こうした搾取から途上国と被験者を適切に保護するため,①ホスト国の健康上のニーズと優先事項に関する試験であること,②当該試験に伴う危害・リスクなどの負担にみあう利益がホスト国とその被験者に還元されることが保証されること,という条件が必要であることが,ヘルシンキ宣言を含めほぼ世界的に合意されている.しかし,とくに,②の条件の解釈および具体的な適用をめぐっては異論も多く,さまざまな課題が残されているのが現状である.
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医学のあゆみ 246巻8号, 559-564 (2013);
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研究の倫理指針は研究者が遵守すべき基本的なルールを示したものであり,研究実施の体制において重要な位置を占めている.指針には,研究者に対しては基本理念や手続きを明示する役割があり,市民や社会に対しては研究者の姿勢を示して信頼を得るという役割がある.指針が十分機能するには,内容と策定方法の両方が妥当でなければならない.わが国の指針策定は府省が主体となって委員会を組織して策定し公表するという方式であり,府省が直接研究者を規制する構図となる.研究の特性を考えれば,研究者集団が自己規制するのが道理かつ合理的であり,このためには指針策定の過程においてガバナンスは研究者集団が行い,府省はそれが実現するためのマネジメントをする,という役割分担の体制が必要である.本稿では胚性幹細胞(ES 細胞)の指針を例に,問題が策定方法に由来していることを示し,策定方式を改善する必要性と提案を述べた.
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医学のあゆみ 246巻8号, 565-569 (2013);
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人を対象とする研究においては,研究者の研究倫理に関する理解に加えて独立した倫理審査委員会による審査が倫理性の担保に不可欠である.よりよい研究倫理審査のためにはまず個々の委員が国際的な規範や日本では行政指導としての意味合いを有する倫理指針を理解することが基本となる.倫理性の評価のためには,インフォームドコンセント,リスク・ベネフィット評価,対象者の選択などに注意を払わなければならない.とくに,インフォームドコンセントが得られただけではどのような研究も可能なわけではないことの理解が必要である.また,研究倫理審査委員会は自主的に設置されてきた経緯があるが,今後はとくに運営経費の点から,事業としての体制整備,機能の分担,事務局の充実化などが必要と考えられる.倫理審査委員会相互の交流活発化などを介して個々の倫理審査委員会が個々の役割をよりよく果たせるような状況が成熟することが望まれる.
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医学のあゆみ 246巻8号, 570-576 (2013);
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近年アメリカで広がりをみせ,日本でも試みられるようになった研究倫理コンサルテーションサービス(RECS)とは,あらゆる研究場面における関係者の倫理的疑問に対して専門家が応える助言活動である.本稿では,まず基本事項としてアメリカや日本におけるその起源と現状,つぎにニーズについて概観する.さらに,RECS の課題として,おもに倫理審査委員会(IRB)との関係や守秘義務の限度,また業務の標準化と,データ収集,共有,評価をめぐる議論を取り上げる.IRB と異なるRECS のおもな役割は,規制適合性を超える専門的な倫理的検討と助言を行うことである.また,RECS のデータ収集と共有に基づき,業務標準と評価方法に関する研究と質向上が求められる.日本においても今後のRECS の広がりと,データ共有や公開は,研究倫理の研究と教育,制度改善のための有用な資源になると期待され,当研究室においても積極的に進めていく計画である.
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連載
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Brain-Machine Interface(BMI)の現状と展望 12
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医学のあゆみ 246巻8号, 582-587 (2013);
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脊髄損傷や脳梗塞による運動機能の消失は,大脳皮質と脊髄間を結ぶ下行路が切断されているために起こる.しかし,損傷の上位および下位に位置する神経構造はその機能を失っているわけではない.この残存した神経構造どうしを,損傷領域を跨いでBrain Computer Interface 技術によって人工的に神経接続できれば,失った四肢の随意制御を取り戻せる.本稿では,脊髄損傷によって片麻痺を呈する脊髄損傷モデルサルを用いて随意制御可能な筋活動・脳活動を記録し,その信号をコンピュータで電気刺激に変換し,機能の残存している脊髄神経回路へ電気刺激する人工皮質脊髄によって麻痺している上肢の筋活動を随意制御する試みを紹介する.
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フォーラム
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近代医学を築いた人々 20
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医学のあゆみ 246巻8号, 589-589 (2013);
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医学のあゆみ 246巻8号, 590-590 (2013);
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サバイバーの時代 “地域におけるがん患者仲間同士の支えあい” 1
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医学のあゆみ 246巻8号, 591-592 (2013);
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医学のあゆみ 246巻8号, 593-594 (2013);
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医学のあゆみ 246巻8号, 595-597 (2013);
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TOPICS
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糖尿病・内分泌代謝学
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医学のあゆみ 246巻8号, 577-578 (2013);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 246巻8号, 578-579 (2013);
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皮膚科学
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医学のあゆみ 246巻8号, 580-581 (2013);
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