医学のあゆみ
Volume 247, Issue 1, 2013
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【10月第1土曜特集】 骨粗鬆症―研究と臨床の最新動向
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- オーバービュー
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骨代謝研究の進歩と今後の展望
247巻1号(2013);View Description Hide Description骨はつねに破骨細胞による吸収を受けては骨芽細胞による形成が営まれており,両者の間の平衡により骨量および構造が維持され,重力に抗して活動するうえで必要な強度が保たれている.骨再構築はまず破骨細胞の形成・活性化による骨吸収により開始される.この破骨細胞の形成・活性化過程はRANKL-RANK シグナルにより開始されるが,その下流に免疫系細胞で機能する数多くの分子が関与していることが明らかとなった.一方,骨形成は分化した骨芽細胞により営まれるが,その分化および機能の制御にWnt-β-catenin シグナルが重要な役割を演じていることも明らかとなった.さらに,骨芽細胞の終末分化した細胞として,骨形成後の骨基質中に埋め込まれ相互に細胞突起により連絡された骨細胞が,骨構造の変化や圧力変化の感知による骨形成と骨吸収の間の平衡関係の維持やPTH などの骨形成刺激への反応性,さらにはFGF23 の発現調節を通じて血清リン濃度の調節を介する骨基質石灰化の制御に中心的役割を担うことも明らかとなった.そこで本稿では,破骨細胞の形成・機能とその調節,骨芽細胞の分化制御と機能調節,そして骨代謝制御における骨細胞の役割についての最近の知見についてまとめる. - 骨代謝基礎
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骨免疫学からみた骨代謝研究の新展開
247巻1号(2013);View Description Hide Description骨代謝の恒常性は破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成のバランスにより維持されており,ホルモンやメカニカルストレスによる制御が従来からよく知られている.しかし,関節リウマチ(RA)における炎症性骨破壊の研究が契機となり骨組織と免疫系の密接な関係が判明し,両者を結ぶ骨免疫学研究が進展した.破骨細胞分化に必須のRANKL の同定や骨リモデリング制御メカニズム,炎症性骨破壊におけるIL-17 産生性ヘルパーT 細胞の重要性に関する分子機構の解析が進むにつれ,骨代謝と免疫系が多くの制御分子を共有し,たがいに影響し合うことがわかってきた.また,免疫担当細胞を含むすべての血球系細胞の起源である造血幹細胞は骨髄で増殖し維持されている.近年では,骨髄中の骨構成細胞を含む多様な細胞が造血幹細胞の機能や保持,免疫細胞の分化に重要であることがあいついで明らかになり,骨と免疫系はたがいに無視することのできない存在となってきた. -
骨代謝調節における骨細胞の役割
247巻1号(2013);View Description Hide Description骨細胞はギャップ結合を介した細胞間ネットワークと骨細管を介した細胞外ネットワークを形成している.骨細胞はアポトーシスを起こしてもマクロファージに貪食されないため,骨細胞死は最終的にネクローシスの形態を取り,破骨細胞形成,骨吸収を惹起し,骨のリモデリングを誘導する.これは細胞外ネットワークを介した細胞内の免疫刺激分子の骨表面への放出による.骨細胞間および細胞外ネットワークの両者の破綻したマウスなどの解析から,生きた骨細胞は生理的条件下で骨吸収を軽度促進,骨形成を軽度抑制していることが明らかとなった.さらに,骨細胞ネットワークはメカニカルストレスを感知し,非荷重時にはその機能を増強させ骨吸収を強く促進し,骨形成を強く抑制することも明らかとなった.非荷重時のこれらの機能のすくなくとも一部は,骨細胞ネットワークを介した骨芽細胞によるRankl の発現上昇,骨細胞におけるスクレロスチンの発現上昇によって説明される. -
Wntシグナルと骨代謝
247巻1号(2013);View Description Hide DescriptionWnt シグナルは多くのプレーヤーによって構成されている.哺乳類ではリガンドが19 種類,Frizzled 受容体が10 種類,さらに共受容体や阻害因子が多数同定されている.これらのプレーヤーが組織に特有なシグナルネットワークを構成することで,形態形成や癌の発生などさまざまな生物学的事象を制御する.骨代謝もWnt シグナルの制御を受ける事象のひとつである.骨芽細胞におけるWnt/β-catenin シグナルは骨形成を誘導する一方,osteoprotegerin の発現を誘導し破骨細胞の分化を阻害する.これによって骨吸収は抑制される.一方,β-catenin を介さないWnt シグナルを活性化するWnt5a は,共受容体Ror2 を介して破骨細胞分化を亢進することが明らかになってきた.本稿では骨吸収と骨形成を制御するWnt シグナルについて,最新の知見を紹介する. - 骨と骨外臓器のネットワークシステム
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骨・血管相関
247巻1号(2013);View Description Hide Description最近,骨粗鬆症治療が生命予後改善につながることが明らかとなった.当初,その理由として骨折の抑制によるQOL 改善の関与が想定されたが,それとは独立して動脈硬化の抑制による心血管死亡率低下の結果,生命予後が改善することが明らかとなってきた.骨粗鬆症と動脈硬化の惹起因子は加齢をはじめ共有される因子が多いため,両者の進展には相関関係があるが,骨粗鬆症治療介入そのものが動脈硬化を進展させる.骨には生体の99%のカルシウム(Ca)が存在することがよく知られているが,その一方,生体内で6 番目に多いリン(P)も体内総量の60~80%程度が骨に存在し,両者がハイドロキシアパタイトを形成して存在している.したがって,骨吸収により骨からのCa 放出が増大するとともにP 放出も同時に増大する.最近,経口でのP負荷増大が生体毒として直接,および腎機能悪化を介して間接的に動脈硬化性変化を進行させ,心血管死亡率の上昇を主因に全死亡率を押し上げることが注目されている.骨吸収によって骨から血中に大量にP 負荷が生じることがその主因と考えられ,骨吸収抑制薬は骨から血中へのP 放出を抑制することで動脈硬化指標の改善や心筋梗塞発症率・死亡率を低下させると考えられている. -
神経系による骨代謝制御
247巻1号(2013);View Description Hide Description骨は一生涯にわたって形成と吸収を繰り返す動的な器官である.このバランスが厳格に制御されている結果,骨の恒常性が保たれている.この骨代謝の制御は種々のホルモンやサイトカインなどに制御を受けることが知られている.近年,食欲を抑制するレプチンが中枢神経系を介して骨代謝を調節するということが明らかになって以来,神経系と骨代謝の関連が注目されている.また,食欲調節の中枢である視床下部ではレプチンの作用によりNPY やCart などの食欲調節ペプチドの発現が増減する.これらの食欲調節ペプチドが骨代謝に与える影響について,レプチンによる骨代謝との関連から幅広い検討が重ねられている.さらに,最近では感覚神経系が骨代謝に作用することも報告されている.本稿では,神経系による骨代謝調節について概説したい. -
骨由来蛋白オステオカルシンによる糖・エネルギー代謝調節機構
247巻1号(2013);View Description Hide Description近年,骨に内分泌臓器としての役割があることが明らかとなった.オステオカルシン(OC)遺伝子欠損マウスでは肥満と耐糖能異常をきたし,高脂肪食負荷マウスへのOC の投与は肥満,耐糖能異常を改善する.OCは膵β細胞に作用してインスリン分泌を促進し,一方で脂肪細胞にも作用してインスリン感受性を高めるアディポネクチンの発現を増強する.OC はビタミンK 依存的にカルボキシル化を受けるが,これまでの基礎研究からは低カルボキシル化OC に糖代謝改善作用があると報告されている.さらに,ヒトを対象とした疫学研究によっても血中オステオカルシンと糖代謝,内臓脂肪型肥満との間に関連性があることが報告されている.したがって,骨代謝と糖・エネルギー代謝との間には密接な関連性があり,さらにはOC がメタボリックシンドロームや糖尿病に対するあらたな創薬に発展することが期待されている. -
筋・骨連関
247巻1号(2013);View Description Hide Description高齢化社会の進展に従い,骨粗鬆症とともにロコモティブ症候群の原因となるサルコペニアという概念が注目されてきている.サルコペニアの要素として筋肉量の減少と筋肉の機能低下があり,それぞれかならずしも併行しない形で骨粗鬆症と密接に関連すると考えられる.また,これまでの臨床知見より,筋肉量が多いほど骨密度増加や骨折リスク低下がみられるとされている.さらに,種々の内分泌疾患では筋と骨が同時に障害を受けることが知られており,活性型ビタミンD,GH/IGF-Ⅰ系,性ホルモン,グルココルチコイド,インスリンなどが重要と考えられる.これらの事実は,筋と骨の相互関連(筋・骨連関)が生理あるいは病態において重要な役割を果たす可能性を示唆する.著者らは筋・骨連関の一部として,①局所的な筋骨化の調節と,②全身的な筋から産生され骨アナボリックに働く体液性因子の調節,という2 つの側面から研究を進めている. - 骨粗鬆症の成因
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骨質因子と骨強度因子の評価
247巻1号(2013);View Description Hide Description原発性骨粗鬆症は骨密度の低下と骨質の劣化により骨強度が低下する疾患である.骨粗鬆症の患者集団は多様性があり,骨密度の低下や骨質の劣化の程度は症例ごとに異なる.骨質は骨の素材としての質である“材質特性”と,その素材をもとにつくり上げられた“構造特性(微細構造)”により規定される.骨密度や骨の微細構造は骨リモデリングにより制御される.これに対し骨の材質の良し悪しは,骨の新陳代謝機構である骨リモデリングのみならず,骨基質を合成する骨芽細胞機能の良し悪しや骨基質の周囲の環境(酸化・糖化のレベル),ビタミンD やビタミンK の充足状態といった,骨リモデリングとは独立した機序で制御されている. -
骨粗鬆症発症遺伝子
247巻1号(2013);View Description Hide Description骨粗鬆症は多因子疾患として知られ,その発症には遺伝的素因と生活習慣や加齢などが成因となる.骨粗鬆症における骨強度は骨密度と骨質により規定される.骨密度はいままでの遺伝学解析により,その50%以上は遺伝的素因によって規定されることが想定されている.著者らを含む複数のグループが関連解析により骨粗鬆症に関連する一塩基置換遺伝子多型(SNP)の探索と同定を行い報告してきた.近年ではDNA チップを用いたゲノムワイド関連解析により,骨密度減少,骨粗鬆症発症,脆弱性骨折に関与するSNP が網羅的に明らかになりつつある.これらの解析によりLRP5 をはじめとしたWnt シグナル伝達因子が骨粗鬆症の成因に大きく関与することが明らかとなり,本シグナルを標的とした診断・治療への応用が進められている.今後も,ゲノムワイド関連解析をはじめとした遺伝的素因の解析により,あらたな骨粗鬆症の成因が明らかとなることが期待される. - 骨粗鬆症の検査・診断
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骨構造特性評価法の進歩
247巻1号(2013);View Description Hide Description放射線学的手法を用いた非破壊的な骨構造評価について,ex vivo,in vivo 評価法に分けて解説する.骨形態の全体像を掌握するジオメトリーや,海綿骨・皮質骨微細構造の評価は骨代謝性疾患の病態の解明に多くの情報を与えており,さらに骨強度との関連も認められるため,骨構造から骨力学特性の指標を算出することも行われている.骨粗鬆症治療薬はそのメカニズムにより,構造特性への作用が異なる知見が示されているとともに,それぞれが及ぼす効果が骨脆弱性改善へどのように寄与するかの解明も進んでいる.非侵襲的および非破壊的に評価が可能な手法として,椎体骨折や非椎体骨折予防をめざして,介入効果の評価への貢献が期待される. -
骨代謝マーカー測定の意義と展望
247巻1号(2013);View Description Hide Description骨粗鬆症をはじめとする代謝性骨疾患の診断において骨代謝マーカーは重要な役割をもつ.とくに骨粗鬆症の診断・治療において骨代謝マーカーは,骨密度(BMD)測定と並び,重要な評価項目である.骨代謝マーカーを実地診療に生かすために,“骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイドライン(2012 年版)”が作成されるに至った.また,骨代謝マーカーは代謝性骨疾患の評価のみならず,生命予後との関連も示され,臨床応用の範囲が広がりつつある. -
骨粗鬆症の診断基準と薬物治療開始基準
247巻1号(2013);View Description Hide Description骨粗鬆症の診断は骨密度の評価と鑑別診断・除外診断に基づくが,これは骨折を起こしていない状態での骨強度の臨床的指標として骨密度の値がもっとも有用であることを反映している.つまり初発骨折の予防には骨密度測定が欠かせない.一方,骨粗鬆症による骨折,特に椎体骨折や大腿骨近位部骨折をすでに起こした患者における再骨折リスクは骨密度で補正しても臨床的に有意なものである.このため,これらの骨折既往をもつ患者は鑑別診断・除外診断のうえで原発性骨粗鬆症と診断することになった.他の骨粗鬆症性骨折を既往としてもつ場合には,骨密度測定結果をあわせて診断する.このようにして診断された場合に加えて,“ 骨量減少” 大腿骨近位部骨折の家族歴やFRAX® の値を勘案して薬物治療の対象者を選定する. - 骨粗鬆症の薬物治療
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ビスホスホネート
247巻1号(2013);View Description Hide Descriptionビスホスホネート(BP)は高い骨折予防効果と長期間の使用経験から安全性が担保され,現在,国内外で骨粗鬆症治療の第一選択薬となっている.近年,4 週に一度の服薬製剤や静注製剤など新しいBP が臨床応用され,食後服用薬や年1 回投与薬剤も開発が進められている.一方で顎骨壊死や非定型大腿骨骨折との関連性も指摘されているが,その発生頻度はきわめて低い. -
選択的エストロゲン受容体モジュレーターの臨床使用における特性
247巻1号(2013);View Description Hide Descriptionわが国における骨粗鬆症治療経口薬としてもっとも頻用されているのがビスホスホネート製剤で,ついでエストロゲン受容体モジュレーター(SERM)である.SERM はエストロゲン受容体にリガンドとして結合してエストロゲン様作用を発現するが,性ホルモンではなく,新規化合物である.NIH により骨強度評価指標として骨質の概念が取り入れられたが,臨床的に骨質の改善作用の存在をはじめて示したのがSERM である.また,服用時の制限がなく,利便性に優れ,服薬コンプライアンスが良好な薬剤という特徴をもつ.ホットフラッシュさえなければ若い患者にも使用可能で,なおかつ高齢者にも忍容性がよい薬剤である.ラロキシフェン(RLX)のMORE,CORE,RUTH 試験に加え,バゼドキシフェン(BZA)の登場により301-WW 試験とそのサブ解析結果が報告され,SERM のあらたなエビデンスが集積しつつある.今後も新薬の登場が予想されるが,SERM は有効性や安全性,利便性に優れたバランスのよい薬剤であることから,骨粗鬆症治療薬のベースとなる薬剤として定着しつづけるものと思われる. -
骨粗鬆症治療薬としてのビタミンD製剤
247巻1号(2013);View Description Hide DescriptionビタミンD は骨・ミネラル代謝維持のために必須のホルモンであり,その作用低下は骨折リスクになる.ビタミンD 作用低下のもっとも頻度の高い原因はビタミンD 欠乏・不足である.ビタミンD 欠乏・不足は,血中25(OH)D 測定により容易に診断でき,天然型ビタミンD の補充により是正可能であるが,わが国では血中25(OH)D 測定に保険適応がなく,医師が処方可能な天然型ビタミンD がないため,しばしば見すごされている.わが国ではサプリメント扱いの天然型ビタミンD 以外に,骨粗鬆症治療薬としてのビタミンD には,活性型ビタミンD3 製剤とエルデカルシトールがある.いずれも一定の骨折抑制効果が認められている. -
副甲状腺ホルモン製剤
247巻1号(2013);View Description Hide Description副甲状腺ホルモン(PTH)は84 個のアミノ酸からなり,骨吸収や腎尿細管カルシウム(Ca)再吸収を促進し,血中Ca 濃度維持に必須のホルモンである.このPTH の持続投与は原発性副甲状腺機能亢進症患者に示されるように,骨吸収の亢進からおもに皮質骨の骨量減少を惹起する.一方,PTH の間欠投与は骨形成を促進し,海綿骨の骨量を増加させる.このためPTH 製剤が骨粗鬆症に対し臨床応用された.わが国では,PTH のN 末端34 個のアミノ酸であるテリパラチドの連日皮下投与製剤と週1 回皮下投与製剤が使用可能である.これに加え海外では,全長PTH 製剤も使用可能となっている.これらのPTH 製剤では,海綿骨量の増加から椎体骨折の発症を防止するエビデンスが得られている.また,テリパラチドの連日投与では非椎体骨折も防止される.ただしこれらのPTH 製剤の作用機序や製剤間の差異については現状でも不明な点が残されている. -
新規骨粗鬆症治療薬と今後の展望
247巻1号(2013);View Description Hide Description骨粗鬆症に対するおもな治療戦略は,骨吸収と骨形成の間のアンバランスを改善して骨量を増すことを目標にしている.したがってその治療戦術には,骨吸収を抑制する,あるいは骨形成を促進するという2 つの方向がある.骨代謝調節機序の解明が細胞レベルから分子レベルへと進むにつれて,特異的な治療標的に特化した骨粗鬆症治療薬の開発が進んでいる.具体的には,骨吸収抑制作用をもつ薬剤として従来から使用されているビスホスホネート製剤に加えて,あらたな薬剤として抗RANKL 中和抗体(denosumab)やカテプシンK の阻害薬があげられる.RANKL は破骨細胞形成に必須のサイトカインであり,カテプシンK は骨コラーゲンの分解酵素である.これらを特異的かつ選択的に阻害する薬剤が骨粗鬆症治療薬として有望とされている.また,骨形成促進作用をもつ薬剤として,骨形成抑制作用をもつスクレロスチンに対する中和抗体の開発が進められている.すでに第Ⅲ相臨床試験に進んでいる抗体製剤もあり,今後の展開が期待されている.その他の開発中の薬剤についても概観する. - 骨粗鬆症関連TOPICS
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ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン
247巻1号(2013);View Description Hide Descriptionステロイド性骨粗鬆症の本態は骨形成低下であり,骨吸収促進は早期に一過性にみられる.ステロイド投与は骨密度低下とは独立した骨折危険因子であり,椎体骨折のリスクがもっとも上昇する.ステロイド性骨粗鬆症に対してプラセボ対照無作為化比較試験により椎体骨折抑制効果が確認されているのは,アレンドロネートとリセドロネートであり,これら薬剤を対照として椎体骨折抑制効果の非劣性が確認されているのがゾレドロン酸,優越性が確認されているのがテリパラチド(連日製剤)である.各種ガイドラインやリコメンデーションでもビスホスホネート製剤が第一選択薬とされる.もっとも新しいガイドラインは2010 年にアメリカリウマチ学会から発表され,2012 年には国際骨粗鬆症財団とヨーロッパ骨代謝学会からガイドライン作成のためのフレームワークが発表された.わが国のガイドラインは2005 年に発表され,現在改訂作業中である. -
生活習慣病関連骨粗鬆症の成因とその管理:糖尿病
247巻1号(2013);View Description Hide Description生活習慣病の代表的疾患である2 型糖尿病はメタ解析で骨折リスク上昇のエビデンスがあり,その上昇には骨質劣化が大きく関与する.糖尿病においても合併する骨粗鬆症の薬物治療開始にあたり,原発性骨粗鬆症と同じくX 線で既存形態的椎体骨折を評価し,問診で非椎体骨折の既往を評価することが重要である.椎体や大腿骨近位部骨折が認められ,年齢が50 歳以上であれば薬物治療を開始する.脆弱性骨折がなく,かつ骨量減少閾値の骨密度低下を認める場合,糖尿病の存在そのものを骨折リスクとして薬物治療開始の判断基準とするかどうかは,今後の検討課題である. -
骨代謝因子としてのインクレチン
247巻1号(2013);View Description Hide Descriptionインクレチンとは,食事摂取に伴って消化管から分泌され,膵β細胞からのインスリン分泌を促進する消化管ホルモンの総称で,GIP とGLP-1 が知られている.GIP もGLP-1 も同様にインクレチン作用をもつが,それらの受容体欠損マウスの結果などから,これらのホルモンがインスリン分泌促進作用のみならず,膵β細胞や他のさまざまな臓器に対して多くの異なった生理作用を有していることが判明した.GIP,GLP-1 は骨への作用も有していると考えられ,GIP は直接作用により,GLP-1 は間接作用により骨代謝を調節している可能性がある.インクレチンの作用を応用したインクレチン関連薬は骨代謝に関する疾患への治療薬としても期待され,今後の研究が待たれる.
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