医学のあゆみ
Volume 247, Issue 2, 2013
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あゆみ 心臓サルコイドーシス診療の最前線―早期診断と適切な治療をめざして
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心臓サルコイドーシスの診断ガイドライン
247巻2号(2013);View Description Hide Descriptionサルコイドーシスの診断基準には,組織診断群と臨床診断群の2 つがある.組織診断群はある臓器に組織学的に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が認められ,なおかつ他の臓器で“サルコイドーシス病変を強く示唆する臨床所見”が認められる場合である.一方,臨床診断群は“サルコイドーシス病変を強く示唆する臨床所見”が2つ以上の臓器で認められてはじめて診断される.さらに,両群ともに“全身反応を示す検査所見”6 項目中2項目以上の陽性が必要である.本症の診断基準は,身体および検査所見など本症に特異的なものが少ない,あるいは感度が低いために,複数の臓器で本症が強く示唆される場合にはじめて診断が可能になるという苦肉の策でもある.心臓サルコイドーシスの診断は,この“サルコイドーシスの診断基準”と本稿で述べる“心臓サルコイドーシスの診断の手引き”に基づいて行う. -
心臓サルコイドーシスの心電図・心エコー図所見
247巻2号(2013);View Description Hide Description心臓サルコイドーシス(心サ症)においては,心筋の炎症に基づき房室ブロック,心不全,および心室性不整脈が,単独あるいは混在した形で発症する.このため,心電図異常と心エコー図が診断の端緒となることが多い.心筋障害の部位・程度には多様性があるが,約90%に中隔障害を伴うため,心電図としては伝導障害による右脚ブロックおよび房室ブロックが特徴的所見として認められる.また,心筋障害を反映した軸変位,異常Q 波およびST 変化,micro-reentry の形成に基づく心室性不整脈を認める.心エコー図では,初期には局所,とくに中隔基部の形態異常(菲薄化・肥厚)と壁運動異常を認めることが多い.ことに中隔基部の菲薄化は心サ症の特異的所見である.急激に発症する例がある一方,数年を経て徐々に悪化する例もあり,長期にわたる心電図および心エコー図の観察が重要である. -
F-18 FDG PETによる心臓サルコイドーシスの診断
247巻2号(2013);View Description Hide Description心臓サルコイドーシス(心サ症)は病巣が限局性であるために,心筋生検による検出率は低い.そこで,炎症病変を描出できるGa-67 イメージングが採用されてきたが,十分な感度が得られなかった.近年,本診断にF-18 FDG PET が導入され,高感度に検出できる性能が注目されている.F-18 FDG は,糖代謝が盛んな癌細胞だけでなく炎症細胞にも良好に摂取されるので,炎症イメージング法としても活用できる.心サ症の診断の場合に重要なことは,心筋への生理的な集積を抑制して病巣を分離描出することであり,絶食条件の徹底である.また,心筋組織障害との関連を知るために,心筋血流SPECT 像との対比診断が望ましいと考えられる.2012 年4 月にF-18 FDG PET の心サ症診断への応用が保険収載されて以来,同法の臨床応用が急速に進んでいる.このたび,日本心臓核医学会は撮像ならびに画像判定の手引きを作成し,2013 年7 月発刊の同学会誌に掲載した. -
心臓サルコイドーシスの心臓MRI検査―遅延造影像および今後の展開
247巻2号(2013);View Description Hide Description心臓MRI 検査は非侵襲的に心臓サルコイドーシス(心サ症)を診断可能であり,形態学的情報(心筋の菲薄化や局所心室瘤,心筋肥厚),機能的情報(左室機能),病理組織学的情報(心筋浮腫や線維化)を1 回の検査で得ることが可能である.浮腫や線維化を反映する遅延造影像(LGE)は心サ症の診断に中心的な役割を果たしており,その特徴は,①心基部よりの中隔に比較的多く存在する,②心外膜側あるいは全層性に明瞭な高信号を呈することが多い,③LGE 領域の増加とともに左室拡大と左室機能低下(いわゆる拡張型心筋症化),をきたすことである.LGE 所見は他の検査に比べて既往を含めた本症の診断能が高く,また予後の推定が可能である.心サ症は,生命予後に直接かかわることから,寛解期や心臓孤発症例を含めて診断の必要性が高まっている.心サ症は慢性的かつ遷延性に進行していくため,経過の一時点で診断基準を満たさなくても生涯にわたって経過観察していく必要があり,心臓MRI 検査は有用な診断ツールのひとつである. -
心臓サルコイドーシスの薬物治療
247巻2号(2013);View Description Hide Description心臓サルコイドーシス(心サ症)における薬物治療の中心はステロイドを主体とする免疫抑制療法である.長期予後について前向きに検討した報告はみられないが,多くの症例はステロイド投与後に臨床所見の改善がみられる.ステロイド治療が行われた心サ症における予後規定因子として心不全の重症度,左室リモデリングの程度,持続性心室頻拍などがあげられている.したがって,EBM に基づいた心不全治療や不整脈治療も重要である.著者らは20 年以上にわたり心サ症の治療を行ってきたが,この間,慢性心不全(収縮不全)に対する薬物治療の確立,突然死予防に対する植込み型除細動器(ICD)の導入,免疫抑制療法の工夫などにより,心サ症の予後は改善してきた可能性がある. -
心臓サルコイドーシスの非薬物治療―心サルコイドーシスにおける不整脈への対応
247巻2号(2013);View Description Hide Description心サルコイドーシスでは左室・右室の収縮不全だけでなく,徐脈性・頻脈性不整脈が発生することが特徴で,しばしばペースメーカー,植込み型除細動器,カテーテルアブレーションなどの非薬物治療を要するため,適切な対応が重要である. -
孤発性心臓サルコイドーシス
247巻2号(2013);View Description Hide Description最近,心臓以外の臓器にサルコイド病変が確認できない孤発性心臓サルコイドーシス症(孤発性心サ症)の報告がみられている.心サ症の診断には心内膜下心筋生検による組織学的同定が重要であるが,サルコイド病変の特性と生検カテーテルの操作性の限界により,サンプリングエラーが少なくない.一方で,心臓MRI やFDG-PET が心サ症の診断に有用であるという報告が増えている.本稿では孤発性心サ症の診断における問題点と画像診断の可能性について述べる. - 【ayuni TOPICS】
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連載
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- Brain‒Machine Interface(BMI)の現状と展望 16
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BMI についての倫理的・社会的問題の概要―脳神経倫理学における議論から
247巻2号(2013);View Description Hide Descriptionブレイン・マシン・インターフェース(BMI)にかかわる倫理的・社会的問題について,脳神経倫理学の議論を中心に紹介する.最初に,脳神経倫理学とはどのようなものであるかの概要を説明したうえで,脳神経倫理学において議論されている諸点を中心に,BMI にかかわる具体的な倫理的・社会的問題を提起し,最後にそれらに対応していくことが脳神経科学研究のコミュニティにおいてどのような役割と意義があるのかを述べる. - 初学者のための医療経済学入門
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1.国民医療費の構造分析
247巻2号(2013);View Description Hide Description国民医療費とは,当該年度内の医療機関などにおける傷病の治療に要する費用を中心に推計したものである.このなかには診療報酬額,薬剤支給額,医療材料のほかに健康保険などで支給される看護費,移送費などが含まれている.推計ベースで国民医療費は2010 年度に37 兆4,202 億円となり,国民1 人当り29 万2,200円である.国民医療費の流れを知るには,“負担”“分配”“使途”という3 面分析が有用である.国により医療費の定義はそれぞれ異なるが,OECD ヘルスデータによれば,先進諸国の医療費のGDP(Gross DomesticProduct;国内総生産)に対する割合(2010 年)は,アメリカの17.6%がトップなのに対し日本は9.5%にとどまっている.
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フォーラム
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- パリから見えるこの世界 21
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- 社会の“痛み”を癒す―ケアの心理と病理 1
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- サバイバーの時代“地域におけるがん患者仲間同士の支えあい” 5
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TOPICS
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- 細胞生物学
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- 腎臓内科学
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- 薬剤学
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