Volume 247,
Issue 4,
2013
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あゆみ 神経障害性疼痛に対する最新治療
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医学のあゆみ 247巻4号, 309-309 (2013);
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医学のあゆみ 247巻4号, 311-316 (2013);
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神経障害性疼痛は“体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛”と定義され,侵害受容性疼痛と異なり,生体防御の警告系としての意義のない痛みであり,QOL の低下が著しい.これまで疼痛医療に関連する複数の診療領域で統一した疾患概念として扱われてこなかったが,神経障害性疼痛は先進国で人口当り約7%が罹患し,その重症度は慢性疼痛疾患のなかでもっとも高い.神経障害性疼痛を引き起こす原因は感染性(帯状疱疹後神経痛など),代謝性(糖尿病性ニューロパチー),中毒性(癌化学療法など)など,多岐にわたる診療領域で観察される.神経障害性疼痛についての正しい知識をもち,その考え方を習得することは,すべての臨床医にとって必須である.
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医学のあゆみ 247巻4号, 317-321 (2013);
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神経障害性疼痛には,体性感覚伝導路(求心路)である脊髄・脳幹・脳の損傷または障害が原因で発生する中枢性神経障害性疼痛と,求心路外の損傷または障害で発生する末梢性神経障害性疼痛があげられる.神経障害性疼痛と侵害受容性疼痛とでは疼痛の発生機序が異なり,したがって薬物に対する反応性も異なるため,神経障害性疼痛の診断は疼痛治療の初期診療に欠かすことができない.正確な診断に基づく病態の解析は,神経保護による発症予防や損傷神経治療のための薬物開発につながる可能性がある.本稿では神経障害性疼痛の種類と診断法について述べる.
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医学のあゆみ 247巻4号, 322-326 (2013);
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神経障害性痛は非ステロイド性鎮痛薬で痛みの軽減が得られないことが特徴である.診察時に痛いところを触れ,触れた感覚が鈍かったり逆に強く感じてしまう感覚の障害を認めた際は神経障害性痛を疑う必要があり,疑うことが神経障害性痛の痛みの治療の出発点となる.神経障害性痛に対する薬物療法のガイドラインが日本ペインクリニック学会から発行され,薬物を処方する順番,薬物療法アルゴリズムが明確に提示された.第一選択薬はCa チャネルα2δリガンドのプレガバリンと,三環系抗うつ薬のアミトリプチリンである.第二選択薬としてワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤,デュロキセチンなどがある.無効時には第三選択薬として麻薬性鎮痛薬(医療用麻薬)および非医療用麻薬の弱オピオイドを用いる.
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医学のあゆみ 247巻4号, 327-332 (2013);
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痛みの治療は,痛みの箇所だけでなく痛み構成要素(侵害受容性,神経障害性,心因性)に分け,治療戦略を立てることが重要である.神経障害性疼痛はさまざまな痛みの増強機構が働くため,難治性であることが多い.神経ブロック療法の神経障害性疼痛の有効性を示すエビデンスの高い報告はほとんどないが,日常診療で短期的に有効な症例は多い.神経ブロックは,①知覚神経,②交感神経,③知覚神経と交感神経をブロックするもの,に分けられ,症例に応じて使い分けることになる.局所麻酔薬で有効な症例はより長期効果のあるパルス高周波,高周波熱凝固法が適応となる.また,より発展したインターベンショナル治療も考慮に入れる.インターベンショナル治療として脊髄刺激療法(SCS),胸腔鏡下胸部交感神経節切除術(ETS クリップ法),および末梢神経領域刺激法(PNS)について概説する.
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医学のあゆみ 247巻4号, 333-338 (2013);
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神経障害性疼痛に対する外科的神経破壊術として選択的脊髄後根切断術と脊髄後根進入部破壊術が用いられているが,あらたな神経障害性疼痛の発生にも注意する必要がある.脳脊髄刺激療法では脊髄刺激装置の進歩が著しい.ひとつの刺激発生装置に2 本の刺激電極を接続するdual-lead SCS によって,疼痛部に選択的に刺激感覚を誘発することが可能となった.その結果,手術成績が向上するとともに,適応となる疾患も増加している.難治性の脳卒中後疼痛もドラッグチャレンジテストに基づく薬物の併用療法に加えて,dual-leadSCS を併用することによって,良好な治療効果を得ることが可能となった.視床知覚中継核をターゲットとする脳深部刺激療法は,末梢神経の損傷が原因となる神経障害性疼痛に有効である.また,中枢神経の損傷が原因となる神経障害性疼痛には大脳皮質運動野刺激が有効であるが,テスト刺激が容易にできる脊髄刺激が第一に選択されることが多い.
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医学のあゆみ 247巻4号, 339-343 (2013);
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神経障害性疼痛の症状には感覚障害,運動機能障害,空間認知障害などが知られているが,周囲に理解されにくい病的体験を患者にもたらしている.自身の苦痛・苦悩を言葉で表現する力が少ない失感情症傾向を合併すると,周囲との交流不全がさらに起こりやすく,抑うつ・不安・破局化といった不快情動が蓄積されやすくなり,難治化の因子になる.医療処置や交通事故後に発症した症例では不公平感や怒りが痛みの強さに関連することもあり,徹底した支持的カウンセリングが重要である.医療コミュニケーションに配慮したうえで,痛みによる恐怖回避による不動か,あるいは否定的感情の発散のための過活動になるかの極端な行動に陥りやすい問題に対して,適度なリハビリと休息のバランスをとるペース配分の心理教育的アプローチといった心身医学的アプローチが重要である.神経障害性疼痛に伴う患者心理が広く医療一般に理解されることが望まれる.
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医学のあゆみ 247巻4号, 344-349 (2013);
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神経障害性痛に対するリハビリテーションについて運動療法を中心に述べる.複合性局所疼痛症候群(CRPS)に代表される神経障害性痛において,動かすことの重要性は以前から指摘されている.運動機能が改善していくと痛みを含めたいろいろな症状の軽減が相乗的に得られていく.したがって,運動療法は重要な治療のひとつとなっているが,強い痛みのために十分に施行できないことが多いのも現状である.運動療法を開始する前に,またよい効果を引き出すために,患者の意欲の向上,医師と療法士との連携,疼痛緩和治療との併用や二次的に生じる異常な運動や姿勢を検討しなければならない.最終目標は機能の回復,ADL の向上となる.運動療法は疼痛緩和治療と併用すべきであり,なかでも神経ブロック治療は有用と考える.運動療法にエビデンスが得られた手法はないが,関節可動域(ROM)の改善ばかりにとらわれず,機能的動作を獲得する手法が薦められる.近年,脳の再構築を促すニューロリハビリテーションが注目され,運動イメージを介入させる研究が進んでいる.痛みに対するリハビリテーションにおいて今後の進歩が期待される.
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医学のあゆみ 247巻4号, 350-356 (2013);
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2002 年から日本でPGA‒Collagen tube の第一臨床例としてCRPS type Ⅱ(causalgie)の根治例を報告して以来,CRPS type Ⅱ・type Ⅰに至るまで診断基準に合致する数百例単位の症例に,客観的評価から一定の生体内再生治療が行われ,長期経過観察の結果,80%程度の患者がすでに社会復帰を果たした.これまで電気生理学的検討に否定的であった国際学会疼痛学会(IASP)も,一転2008 年診断フローチャートでの客観的検査を重要視する見解を示し,病態解明・病因追求から根治治療へと向かう潮流が生まれつつある.しかし,その一方で評価不能例も13% 程度と少なくない頻度でみとめられ,この症候群の治療の困難さを際だたせる.本稿では現状の著者らの考える病態ならびに対策,問題点について述べる.
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連載
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初学者のための医療経済学入門 3
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医学のあゆみ 247巻4号, 362-369 (2013);
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わが国は超高齢社会を向かえ後期高齢者の医療費が伸びている.人口構造の変化をみると今後は75 歳をもって“お年寄り”とする社会が到来するかもしれない.低経済成長下で,医療費の配分が喫緊の課題になると考えられるが,その疾病特性についてはより熟慮を重ねる必要がある.とくに最近よく話題にのぼる終末期医療費についてはさらなる“みえる化”が求められる.その一方で高齢者における糖尿病性腎症が年々増加しており,その伸びをどう適正化するかが政策課題になるであろう.そこでDPC データを使って一定の定量分析を行った.その結果,緊急入院率は加齢とともに高くなる傾向にあるが,かりに緊急入院を回避できれば高齢者においても入院医療費の減少が見込まれることがわかった.とくに腎臓専門医への外来紹介は緊急入院を回避する主たる“打ち手”であることが示唆された.今後はかかりつけ医と専門医が提携して一定の透析前教育を行うことが求められる.
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注目の領域
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医学のあゆみ 247巻4号, 370-374 (2013);
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世界フィラリア症制圧プログラム(GPELF)は,2020 年までに“顧みられない熱帯病”の1 疾患であるリンパ系フィラリア症を世界から制圧することをめざして2000 年に設立されたグローバルプログラムである.GPELF ではマルチステークホルダー・パートナーシップであるフィラリア症制圧世界協定のもと産官民学が連携し,各蔓延国が国家フィラリア症制圧プログラムを段階的に進めていくための支援を提供している.2012 年には日本の製薬会社がWHO と官民パートナーシップを締結し,供給不足に陥っているフィラリア症治療薬の1 つをGPELF へ無償提供することを表明した.本稿ではGPELF について概説し,日本がすでに達成したフィラリア症根絶の経験と技術をここで終焉させることなく,国際的なマルチステークホルダー・パートナーシップに積極的かつ戦略的に参画し,リーダーシップを発揮する可能性について考察する.
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フォーラム
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社会の“痛み”を癒す―ケアの心理と病理 3
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医学のあゆみ 247巻4号, 375-377 (2013);
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医学のあゆみ 247巻4号, 378-379 (2013);
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医学のあゆみ 247巻4号, 380-383 (2013);
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TOPICS
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細胞生物学
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医学のあゆみ 247巻4号, 357-358 (2013);
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麻酔科学
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医学のあゆみ 247巻4号, 359-360 (2013);
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耳鼻咽喉科学
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医学のあゆみ 247巻4号, 360-360 (2013);
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