医学のあゆみ
Volume 247, Issue 7, 2013
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あゆみ 原発性アルドステロン症Update 2013
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わが国における原発性アルドステロン症の疫学調査と課題
247巻7号(2013);View Description Hide Description原発性アルドステロン症(PA)は治癒可能な二次性高血圧の代表的疾患である.診断の遅れは治療抵抗性高血圧や脳・心血管系障害の原因となることから,高血圧の日常診療において適切な早期診断・治療が望まれる.種々のコホート研究から高血圧に占める頻度はその3~10%とされており,わが国の高血圧の総患者数が約4,000 万人であることを考慮すると,推定患者数は100 万人を超えると考えられる.一方,厚労省研究班による全国疫学調査の報告(平成9 年度,平成19 年度)では年間2,000 例程度で,コホート研究によるPA の頻度とは大きな乖離がある.今後,PA の診療ガイドラインの普及と診療水準の向上が求められるとともに,PA 診療実態のより詳細な把握が,今後わが国の疫学調査の重要課題と考えられる. -
原発性アルドステロン症治療法決定における副腎静脈採血の重要性とその限界
247巻7号(2013);View Description Hide Description副腎静脈採血(AVS)は,原発性アルドステロン症(PA)の外科的治療の適応を決定するサブタイプ診断に重要な検査法である.手術適応のある片側副腎性PA と内科治療が選択される両側副腎性PA は,ACTH 刺激後のアルドステロン濃度,またはアルドステロン/コルチゾール比の左右比で鑑別診断可能である.しかし,従来のAVS では不可能であったアルドステロン産生腺腫(APA)の診断や,特発性アルドステロン症と両側副腎APA の鑑別は超選択的ACTH 負荷副腎静脈採血法(SS-ACTH-AVS)で可能となった.さらに,SS-ACTHAVSの診断に基づき,片側副腎APA と両側副腎APA は,APA を含めた片側副腎部分切除での治療が可能となった. -
原発性アルドステロン症患者の手術療法:適応と意義
247巻7号(2013);View Description Hide Descriptionわが国の高血圧患者は推定で4,000 万人に上ると考えられているが,近年は有効かつ安全な降圧薬の開発・普及により以前より比較的安定した降圧が得られ,高血圧診療は格段の進歩を遂げている.しかし,その一方で高血圧の原因のほとんどが本態性高血圧症(EH)と考え,安易な薬物治療が選択されていることも多い.血圧を下げることだけではなく,まずはその病態の本質を見極め,治療戦略を練ることが重要である.とくに二次性高血圧は診断が遅れ不適切・不十分な降圧療法が続くと,高血圧の重症化はもとより心・脳血管障害のイベント,腎硬化症による慢性腎臓病・末期腎不全といった不可逆的臓器障害を招く可能性がある.このなかで原発性アルドステロン症(PA)はその代表格として,近年盛んなスクリーニングにより頻度の高い疾患と考えられるようになった1).高血圧患者の5~10%程度2),治療抵抗性高血圧患者の20%は本症と考えられている3).おもな病型はアルドステロン産生腺腫(APA)と特発性アルドステロン症(IHA)であるが,とくに前者は手術加療により治癒可能な疾患として,そして一方で血圧・臓器障害が重症化しやすく診断が急がれる病型として重要である.本稿では,その手術療法の対象となるAPA の診断法と治療の適応・意義について述べる. -
原発性アルドステロン症におけるKCNJ5遺伝子変異
247巻7号(2013);View Description Hide Description原発性アルドステロン症(PA)の副腎病変を説明する遺伝子異常が同定されつつある.そのなかで,とくに日本人のアルドステロン(Aldo)産生腺腫の60%以上に変異がみられるKCNJ5 遺伝子の検索で,その病態解明が試みられている.その変異は副腎細胞内カルシウム(Ca)濃度の持続的な増加をもたらし,Ca メッセンジャー経路を活性化し,Aldo 産生の律速段階であるCYP11B2 を亢進させ,自律的なAldo 分泌をもたらすものと考えられている.同時にそのCa 細胞内シグナルは,細胞増殖をもたらすことで腫瘍形成に関与するのではと考えられている.さらに,家族内発症のPA の一部もこの遺伝子異常で生じると考えられ,本疾患の病因が急速に解明されつつある.今後,本疾患の診断治療にこの遺伝子異常の有無で適切な対応が可能な時代がくるものと予想される. -
原発性アルドステロン症のトランスレーショナルリサーチ―時計遺伝子と高血圧の出会い
247巻7号(2013);View Description Hide Description生体リズムを生み出す時計遺伝子は転写を制御する物質であり,数千個の遺伝子の発現を制御する.時計遺伝子は全身のほとんどの細胞に存在し,細胞の時間代謝をつかさどっていることから,この障害が多くの病態にかかわっていることが想定される.著者らは,時計遺伝子Cry1/Cry2 が欠失し生体リズムが完全に消失したマウスの病態解析より,このマウスが食塩感受性高血圧を示すことを明らかにした.このマウスの解析より,あらたなステロイド代謝酵素が原発性アルドステロン症の候補としてあがってきた.本稿では,時計研究からはじまった原発性アルドステロン症のトランスレーショナル研究の進展と今後の課題を検証する. -
ヒト副腎皮質のどこでアルドステロンはつくられているのか
247巻7号(2013);View Description Hide Description近年,アルドステロン合成に関与する種々のステロイド合成酵素,とくにCYP11B2 に対して特異度,感度双方が高い抗体が開発され,3βHSD,c17,CYP11B1 など,ほかの酵素に対しての抗体を組み合わせ,通常の病理組織標本を用いて免疫組織化学的にアルドステロン合成の場が同定されるようになってきた.しかし,コルチゾールなどに比較してアルドステロンの産生される量が圧倒的に少ないなどの点で,実際の免疫組織化学の結果を解釈するには慎重であるべきである.
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連載
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- 初学者のための医療経済学入門 5
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視界ゼロを脱するかDPC/PDPS―今後の政策・運営方針への示唆
247巻7号(2013);View Description Hide DescriptionDPC とはDiagnosis Procedure Combination の略であり,患者分類としての診断群分類である.これにPDPS(Per-Diem Payment System)が加わり診療報酬上の包括評価制度となった.しかし,在院日数に応じた1 日当り定額報酬を基本としているため,世界的にみて長いわが国の平均在院日数の短縮の経済的インセンティブは乏しい.また,2025 年の医療・介護提供体制の改革イメージを実現すべく,DPC 制度も病院を3 類型にするなど大きく変わった.しかし,屋上屋を架した4 層の医療機関別係数の算定根拠が曖昧で透明性に欠ける.医療の効率性をめざすには1 日定額払いを改めるとともに地域包括ケアを実現するケースミックス(ACG など)の開発が求められる.
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フォーラム
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- 近代医学を築いた人々 23
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- 社会の“痛み”を癒す―ケアの心理と病理 5
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- サバイバーの時代 “地域におけるがん患者仲間同士の支えあい” 8
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TOPICS
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- 細菌学・ウイルス学
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- 脳神経外科学
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- 糖尿病・内分泌代謝学
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- 皮膚科学
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