Volume 247,
Issue 8,
2013
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あゆみ PM2.5と健康―大気汚染Update
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医学のあゆみ 247巻8号, 655-655 (2013);
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医学のあゆみ 247巻8号, 657-661 (2013);
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アジア地域では火力発電所や工場,家庭,自動車などにおける化石燃料やバイオマス燃料の燃焼などによって,大気汚染物質が大量に大気中に放出されている.このような大気汚染物質はアジア諸国の経済成長とともに1980 年代後半から急増しており,PM2.5 やオゾンなどによる深刻な大気汚染を引き起こしている.アジア大陸で発生したPM2.5 などの大気汚染物質は,大陸の風下に位置する日本列島に運ばれ,日本の大気質に大きな影響を及ぼしている.九州北部での観測や大気汚染シミュレーションに基づく最近の研究によって,日本の広い範囲が大陸から越境輸送されたPM2.5 の影響を強く受けており,とりわけ中国からの影響が大きいことが明らかになってきた.
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医学のあゆみ 247巻8号, 662-666 (2013);
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PM2.5 の健康影響は,1990 年代に相次いで報告されたアメリカでのコホート研究によって注目されるようになり,総死亡,死因別死亡(循環器,呼吸器など)のほか,入院,救急受診,虚血性心疾患などの心血管イベントの発生,不整脈,心拍数の変動,虚血性の症状出現,肺機能の低下といった,幅広い健康影響のエンドポイントによる研究結果が報告されている.その対策の一環として,アメリカ,WHO,EU,日本で環境基準(WHO はガイドライン)が設定されているものの,より低い濃度レベルでの健康影響の有無については,依然十分に明らかにはなっていない.PM2.5 の健康影響は世界の疾病負担研究(GBD)2010 によれば,世界中で310 万人の死亡,疾病負担の3.1%に寄与し,世界の人びとの健康に影響を及ぼす上位10 要因に含まれているうえ,世界銀行は開発途上国で進む急速な都市化が急速かつ調和がとれないまま進むと,さらにPM2.5 の大気環境レベルが悪化すると予想している.今後も公衆衛生上のグローバルな課題として,社会全体でこの問題に取り組んでいく必要がある.
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医学のあゆみ 247巻8号, 667-672 (2013);
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大気中に浮遊する粒径2.5μm 以下の微小な粒子(PM2.5)は呼吸によって吸入されると細気管支や肺胞レベルまで到達し,呼吸器系に対して短期的および長期的にさまざまな影響を与える.短期的な影響として,1 日単位のPM2.5 濃度の上昇が喘息などの呼吸器疾患による入院や救急受診の増加,喘息患者のピークフロー値や一秒量の低下,呼吸器症状の増悪をもたらす.短期的影響は呼吸器疾患患者では比較的低い濃度でもみられているが,健常人においては明らかな影響が認められていない.長期的な影響として欧米諸国における研究では,PM2.5 が高濃度の地域に居住している人は喘息の有症率が高く,小児では肺機能の成長が阻害され,喘息の発症率の高いことが報告されている.こうした影響はわが国の一般環境よりも低い濃度でも認められており,今後はわが国においてもPM2.5 の成分との関連などについて長期的な疫学調査が必要である.
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医学のあゆみ 247巻8号, 673-677 (2013);
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大気汚染は心血管病の誘因となることが示されている.脳卒中の発症も大気汚染と関連があるとする疫学研究は多いが,大気汚染物質が心血管病を誘発する詳細な機序は明らかではない.PM2.5 などの大気汚染物質は肺胞において,あるいはさらに血中に移行し,炎症反応,内皮機能障害,自律神経機能障害,血液凝固亢進などの生体反応を起こし,脳卒中などの心血管病を引き起こすと考えられている.近年,越境大気汚染による健康被害が注目されている.著者らは中国大陸から飛来する黄砂と脳梗塞発症の関連性を検討してきた.脳梗塞はその発症機序により,アテローム血栓性脳梗塞,ラクナ梗塞,心原性脳塞栓,その他の病型に分類されるが,黄砂の飛来後にはアテローム血栓性脳梗塞の発症リスクが増加していた.黄砂の飛来日に増加するSPM,Ox,NO2,SO2 などの因子で調整しても結果が変わらなかったことから,黄砂自体あるいは従来の大気汚染物質とは別の因子が原因となっている可能性がある.黄砂と心血管病の関連性については今後の研究の進展がまたれる.
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医学のあゆみ 247巻8号, 678-683 (2013);
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吸入された粒子状物質(PM)は,①肺から全身への炎症を介する経路,②自律神経のアンバランスをきたす経路,③直接血液へ移行する経路を通じて循環器疾患の発症や増悪に関与すると考えられている.コホート研究から,PM の長期曝露により循環器疾患の発症や死亡が増加することを示す知見が欧米を中心に報告されている.一方,国内の疫学研究では結果は一貫していない.疾病構造(循環器疾患に占める心筋梗塞・脳卒中の割合),循環器疾患死亡のリスクファクターの分布,脳卒中の地域分布,PM 成分などの違いが,日本と欧米の研究結果の違いに関係している可能性がある.今後,疾患発症や機能・症状に対する影響も含めた知見の蓄積が望まれる.
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医学のあゆみ 247巻8号, 684-688 (2013);
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大気中を浮遊する粒径2.5μm 以下の微小粒子状物質(PM2.5)は,さまざまな燃焼,とくに化石燃料やバイオマス燃料の人為的な燃焼を発生源とする場合が多く,それらに含まれていた炭化水素や金属,その酸化物や不完全燃焼成分,イオンなど,非常に多くの物質の集合体である.多様な成分には有害物質も含まれていること,さらに,大きな粒子と比較し,吸気により細気管支や肺胞へと達しやすいことから,その健康影響が懸念されている.疫学的に大気中のPM2.5 濃度の上昇と相関し,増加・増悪をきたす健康影響として,全死亡率,呼吸器系や循環器系の疾患による死亡率,それらの疾患の増悪が指摘され,なかでも気管支炎や気管支喘息の増悪,アレルギーにかかわる疾患や症状の増悪などがあげられている.本稿では,PM2.5 が感受性が高いと考えられる呼吸器系・循環器系に影響をきたす機序について紹介し,著者らの実験データも交えて概説する.
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医学のあゆみ 247巻8号, 689-693 (2013);
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黄砂は古来より春の風物詩として空が黄褐色に霞む自然現象として理解されていたが,近年の発生回数の増加と大規模化によって健康被害が報告されるようになり,黄砂はいまや自然現象から社会的な環境問題となっている.著者らは動物実験モデルにおいて,黄砂が気管支喘息やスギ花粉症を増悪することを報告してきた.黄砂に付着した微生物成分や黄砂の粒子自身に抗体産生や免疫応答を増強させる作用のあることが明らかとなり,現在,それらの増悪メカニズムについて研究を行っている.黄砂が肺の炎症やアレルギー反応を高める環境因子になりうることをここに警鐘する.
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医学のあゆみ 247巻8号, 695-700 (2013);
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2013 年1 月,中国では北京市を中心に,微小粒子状物質(PM2.5)などによる深刻な大気汚染が発生した.わが国でも西日本の広域で一時的なPM2.5 濃度の上昇が観測されたことなどから国民の関心が急速に高まった.PM2.5 はさまざまな成分からなる2.5μm 以下の微小な粒子であり,肺の奥深くまで入りやすいため,呼吸器系への影響のほか,循環器系への影響などが懸念されている.環境省は2009 年9 月にPM2.5 の環境基準を設定し,大気汚染防止法などに基づく排出削減対策を進めるとともに,PM2.5 常時監視体制の整備や成分分析などに取り組んできた.中国における大気汚染問題を受け,環境省は2013 年2 月8 日,国内観測網の充実,専門家会合による検討,国民への情報提供,中国などへの技術協力の強化を柱とする,当面の対応を取りまとめた.また,専門家会合では日平均値70μg/m3を注意喚起のための暫定的な指針となる値として設定するとともに,PM2.5 濃度がこの値を超えると予測される場合に,自治体が住民などへ注意喚起を行うための指針が取りまとめられた.PM2.5 対策については観測体制の整備をはじめ,二次生成メカニズムの解明や健康影響などに関する知見の集積,シミュレーションモデルの精緻化,中国等への技術協力の推進などが今後の課題である.
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連載
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初学者のための医療経済学入門 6
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医学のあゆみ 247巻8号, 705-710 (2013);
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“医療のみえる化”が叫ばれて久しいが,日本はICT 化によって獲得したデータをかならずしも有効活用しているとはいえない.しかし,わが国の高齢化のスピードやいまの財政状況を考えると,今後は医療を提供する側にも一定のデータ分析に基づく“可視化”が求められる.その場合のキーワードは“医療の質の向上と効率化の同時達成”である.一般に,経済的動機付けを行えばこうした方向に進むとされるが,諸外国におけるP4P の試みをみるとかならずしもそうなっていない.これは医療分野におけるKAIZEN は経済的合理性だけで決まらないことの証左かもしれない.事実,医療にかけるコストと年齢や合併症などのリスク調整後の死亡率はトレードオフ(反比例)の関係にあるとされるが,現実には同じコストでも死亡率にばらつきがある.逆に同じ死亡率を達成するのに要するコストにもばらつきがある.P4P に先がけてP4R が求められる.
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フォーラム
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医学のあゆみ 247巻8号, 711-712 (2013);
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社会の“痛み”を癒す―ケアの心理と病理 6
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医学のあゆみ 247巻8号, 713-716 (2013);
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医学のあゆみ 247巻8号, 717-718 (2013);
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医学のあゆみ 247巻8号, 719-723 (2013);
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TOPICS
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感染症内科学
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医学のあゆみ 247巻8号, 701-702 (2013);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 247巻8号, 702-703 (2013);
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神経精神医学
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医学のあゆみ 247巻8号, 703-704 (2013);
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