Volume 248,
Issue 4,
2014
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あゆみ ピロリ菌除菌療法の新展開
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医学のあゆみ 248巻4号, 243-243 (2014);
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医学のあゆみ 248巻4号, 245-248 (2014);
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これまでヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染者は単に“胃癌リスク”としてとらえられていたが,2013年2 月に“ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎”という新しい疾患概念が確立し,治療の対象疾患となった.除菌治療により胃癌発生が予防できることが期待されるが,効率的な胃癌予防にはできるだけ若年での除菌治療が必要である.消化性潰瘍に関しては治癒促進,再発予防のみならず,一次予防も期待される.同様にNSAID 起因性潰瘍についても予防効果が期待されている.さらには,H. pylori 除菌により胃ポリープ,胃MALT リンパ腫のみならず,特発性血小板減少性紫斑病,鉄欠乏性貧血など種々のH. pylori 関連疾患の発生頻度が減少することが予想される.
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医学のあゆみ 248巻4号, 249-254 (2014);
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2013 年2 月に“ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎”に対して除菌治療の適用が拡大された.すなわち,H.pylori 感染に伴う慢性胃炎の治療が,H. pylori 感染者全員に保険診療で行うことができるようになった.H.pylori 除菌で組織学的胃炎は改善し,萎縮,腸上皮化生の改善も期待できるケースがある.また,胃癌をはじめとするH. pylori 感染疾患の予防が期待できる.保険診療上,“ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎”に対するH. pylori 除菌は,①内視鏡検査により“ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎”を確認,②H. pylori の感染診断,③H. pylori 陽性であれば除菌治療,の順で行う.さきに内視鏡検査を行うのは胃癌をスクリーニングする意味がある.また,感染診断や除菌判定および除菌治療の扱いについてはこれまでの保険適用と同様である.内視鏡検査で胃角部に集合細静脈の規則的な配列(RAC)を認める場合にH. pylori 未感染と判断でき,それ以外ではH. pylori 胃炎を疑う必要がある.
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医学のあゆみ 248巻4号, 255-258 (2014);
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ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)菌の感染診断法には,内視鏡を用いる①迅速ウレアーゼ試験,②鏡検法,③培養法と,内視鏡を用いない④尿素呼気試験,⑤抗体測定,⑥便中抗原測定の6 種類がある.これらの検査の特徴を理解したうえで,診療現場で応用することが必要である.保険診療では原則,このうちのひとつだけ算定できるわけであるが,ひとつ目の検査で陰性となった場合に異なる検査法を再度実施した場合に限って,もう1 項目に算定できる.また,感染診断と除菌判定でそれぞれ組合せの制限が決まっているものの,2 種類まで同時算定もできるようになった.
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医学のあゆみ 248巻4号, 259-263 (2014);
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ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染に対する除菌療法は現在,一次・二次除菌療法が保険適用である.保険適用となった2000 年前後は一次除菌率が90%程度であったが,近年,除菌率の低下が報告されており,70%台となっている.原因としてはクラリスロマイシン(CAM)耐性株の増加による除菌率の低下がもっとも考えられる.一方,二次除菌に関しては除菌率は90%以上と良好であり,除菌率の低下は認めていない.一次・二次除菌療法によりH. pylori 感染者の97~98%は保険診療により除菌可能であるが,2013 年2 月にH.pylori 感染胃炎に対する検査・除菌が保険適用となり,除菌対象者が増加したため,一次・二次除菌療法に失敗し,自費診療で三次除菌を行う患者が増加することが考えられる.現時点で推奨する三次除菌方法としては,シタフロキサシン(STFX)を含む3 剤併用療法があげられる.
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医学のあゆみ 248巻4号, 265-269 (2014);
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ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)除菌治療後に発生する注意すべき諸問題のおもなものに逆流性食道炎の発生,生活習慣病の発生,除菌後胃癌があげられる.わが国においては元来,胃体部優勢胃炎を背景にもつため,除菌後に逆流性食道炎を発症しやすいが,程度は軽微かつ一過性であり,逆流性食道炎が発生しても酸分泌抑制薬を必要とする症例は少ない.また,除菌によりあらたに肥満や高脂血症などの生活習慣病をきたす症例も認められるが,薬物療法を必要とする症例はほとんどなく,生活習慣指導などにより対応可能である.さらに,胃体部に萎縮を認める胃潰瘍,早期胃癌・胃腺腫の内視鏡切除後,胃萎縮性胃炎症例では,除菌成功後においても胃癌発生リスクが残存するため,除菌後も年1 回の内視鏡検査による経過観察が必要であり,その必要性を患者へ十分に説明することも重要である.
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医学のあゆみ 248巻4号, 271-275 (2014);
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機能性ディスペプシアとヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染胃炎が保険病名として収載されたことにより,慢性胃炎の診療体系は大きく変化した.これまで慢性胃炎は組織学的胃炎,症候性胃炎,形態学的胃炎,および保険診療病名としての慢性胃炎が混同された概念であったが,組織学的胃炎のおもな原因がH. pyloriであることが明らかとなり,症候性胃炎には機能性ディスペプシア(FD)の概念が該当することとなった.H.pylori 陽性である組織学的胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)と,H. pylori と関連のない症候性胃炎(機能性ディスペプシア)はそれぞれ独立して定義されるべき概念で,H. pylori 感染胃炎とFD は併存することもしないこともある.今後,これらの概念は異なった疾患として扱われていくべきであり,安易な慢性胃炎という病名使用は控えるべきである.
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医学のあゆみ 248巻4号, 276-280 (2014);
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ヘリコバクター・ピロリ(以下,ピロリ菌)感染は胃癌発生の必要条件と位置づけられ,そのなかで進展した胃粘膜萎縮は高危険群である.胃X 線検査がわが国の胃癌検診に果たしてきた役割は大きいが,ピロリ菌感染と胃癌との関連が明らかになったことやピロリ菌感染率の急速な低下,上部消化管内視鏡検査の普及,さらに,ピロリ菌診療の保険適用の拡大により転換期を迎えている.簡便な血液検査であるABC 分類により胃癌リスク分類が可能であり,胃癌検診のgateway として活用すべきと考えられる.ただし,A 群のなかにピロリ菌感染持続者や感染既往者が混入しないように注意する必要があり,また,ABC 分類導入時には,その後の画像検査を含めたシステム構築が必須である.除菌による胃癌発生率低下が期待されるが,未感染者と除菌後例の胃癌リスクは異なり,除菌後も定期的画像検査は必要であり,国民総除菌可能時代においても胃癌検診は重要である.
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医学のあゆみ 248巻4号, 281-284 (2014);
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2010 年のわが国人口の20~69 歳の各年齢層の20%(5 人に1 人)を対象にピロリ菌の感染検査を行い,陽性者の除菌をするというモデルによって,要する費用と削減できる医療費を検討した.除菌に要する費用は約910 億円で,胃がんでは889 億円,消化性潰瘍で29 億円の医療費削減効果が期待でき,差し引き8 億円程度の黒字が予想された.これ以外のプラス面として血小板減少性紫斑病,胃のMALT リンパ腫,鉄欠乏性貧血の減少がある.マイナス面として除菌の副作用のほか,未観察であるが逆流性食道炎や食道下部腺がん,胃噴門部がんの発生の増加が考えられる.胃がんの救命,消化器症状などによる病悩期間の減少,次世代の感染減少もプラス面と考えられるので,全体としてはピロリ菌の除菌は費用に比べて効果が大きいと考えられる.
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連載
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初学者のための医療経済学入門 11
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医学のあゆみ 248巻4号, 291-297 (2014);
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ドラッグラグやデバイスラグの批判を受けて保険外併用療養費の範囲を拡大してきたわが国にあって,2 つの課題が残っている.ひとつは,評価療養,とくに先進医療の適応が限局的なため,件数・金額面からみて普及していないこと.いまひとつは保険診療への昇格基準がいぜんとして不明確なことである.とくに前者については再生医療をどう産業化するかが“日本再興戦略”とあわせて今後の課題である一方,後者は粒子線治療の費用対効用分析が喫緊のテーマとなるであろう.医療経済分析を実施するにあたり,医師の belie(f 確信)に関する予備調査やQOL 指標の妥当性の検証が求められるが,社会の視点か患者の視点かによってその結論が異なることも留意すべきである.今後は保険導入が加速度的に進む分子標的薬の費用対効果分析も急務である.
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フォーラム
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社会の“痛み”を癒す―ケアの心理と病理 11
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医学のあゆみ 248巻4号, 299-301 (2014);
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書評
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医学のあゆみ 248巻4号, 303-303 (2014);
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医学のあゆみ 248巻4号, 305-306 (2014);
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医学のあゆみ 248巻4号, 307-310 (2014);
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TOPICS
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神経内科学
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医学のあゆみ 248巻4号, 285-286 (2014);
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呼吸器内科学
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医学のあゆみ 248巻4号, 286-287 (2014);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 248巻4号, 288-289 (2014);
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