Volume 248,
Issue 8,
2014
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あゆみ 光老化の臨床とメカニズム
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医学のあゆみ 248巻8号, 569-569 (2014);
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医学のあゆみ 248巻8号, 571-576 (2014);
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高齢者の顔面など露出部の皮膚には,老徴とよばれるシワ,シミ(日光黒子),イボ(脂漏性角化症),タルミなどが顕著であり,ときに皮膚癌も生じる.これらは単なる加齢に伴う変化ではなく,慢性の紫外線曝露による皮膚障害である.紫外線のUVB がもっとも大きな影響をもつが,最近の研究ではUVA の作用も無視できない.UVB はDNA に吸収されやすく,DNA にピリミジンダイマーなどの直接的損傷を与える.UVA は皮膚内分子に吸収されたあと活性酸素を発生し,間接的にDNA,蛋白質,脂質に酸化的損傷を与える.DNA 損傷の修復にエラーが生じると,突然変異により癌が発生する.真皮にまで到達するUVA は一重項酸素を発生させ,線維芽細胞が産生した蛋白分解酵素は細胞外基質の膠原線維や弾性線維を分解し,変性した弾性線維塊は光線性弾性線維症という光老化に特徴的な組織変化をもたらす.光老化は生活態度,サンスクリーン剤,衣類などによる適切な紫外線防御で予防でき,かつ抗酸化剤やさまざまな治療的手段で改善可能である.
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医学のあゆみ 248巻8号, 577-581 (2014);
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色素性乾皮症(XP)はDNA 修復異常による遺伝性高発癌性皮膚疾患である.紫外線によるDNA 損傷を修復できないため,日光曝露部は若年から光老化をきたし,皮膚悪性腫瘍の発生が促進される.日本では重症型であるA 群がもっとも多く,以前は10 歳までに皮膚癌を発症し,20 歳前後で死亡する症例が多くみられていた.しかし,疾患概念が確立・浸透してきたことにより近年では遮光の重要性が認識され,皮膚悪性腫瘍の頻度は減少し,平均発症年齢も上昇している.また,著者らの施設での症例を検討すると,A 群の早期診断症例において皮膚悪性腫瘍の頻度は減少しており,早期診断することによって皮膚悪性腫瘍の予防につながると考えられた.光老化を予防するには遮光が重要であり,XP においては予後に直結するため,医療従事者はそのことをもっとも認識し,患者・家族を支え,指導しなければならない.
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医学のあゆみ 248巻8号, 583-586 (2014);
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皮膚老化には内因性老化(自然老化)と環境因子から生じる外因性老化があり,環境因子としてもっとも大きな原因となるものは紫外線(光老化)であるが,タバコ喫煙や大気汚染も皮膚老化に関与することが明らかとなった.喫煙が皮膚に及ぼす影響としては,シワが深くなることや皮膚が浅黒くみえること,オレンジ皮のような皮膚になることである.これらの皮膚の変化は紫外線から起こる光老化と共通した点が多く,環境因子から生じる外因性老化と考えられるようになった.メカニズムとして活性酸素や,ダイオキシンのレセプターであるAryl hydrocarbon recepto(r AhR)の関与が著者らの解析から明らかとなり,疫学的な調査の結果から明らかに喫煙と皮膚老化の関係が見出された.喫煙が心血管障害や肺疾患,肺癌や種々の臓器の癌に関係するといわれることは有名であるが,さらには皮膚老化や皮膚疾患につながることも明らかとなってきた.
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医学のあゆみ 248巻8号, 587-591 (2014);
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光老化による真皮の変化は深いシワ,弾性を失った粗造な皮膚と毛細血管拡張の像などの臨床症状として現れる.このように光老化した真皮のコラーゲン量は,自然老化の皮膚と比べて著しく減少している.これは紫外線照射によりmatrix metalloproteinases(MMPs)の発現が亢進され,真皮マトリックスが破壊されるためである.とくに,真皮内のコラーゲンは不完全に分解されるため,変性したコラーゲンが蓄積し真皮の立体構造に障害をもたらす.これが深いシワの形成を引き起こす.光老化した皮膚ではエラスチンが真皮網状層に蓄積し,solar elastosis の像を呈しており,張りのない粗造な皮膚を形成する.さらに,長期の紫外線曝露により真皮上層部では顕著な毛細血管拡張がみられる.本稿では光老化で生じる真皮内の変化の分子メカニズムについて,これまでの知見を踏まえて概説する.
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医学のあゆみ 248巻8号, 592-596 (2014);
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慢性の紫外線曝露により生じるシミとして,日光性黒子があげられる.表皮ケラチノサイト,メラノサイト,真皮乳頭層の線維芽細胞に異常をきたし,メラノサイトが活性化されるためである.頻度は少ないが,肝斑の発症も光老化が関与すると考えられている.ただし,肝斑では遺伝的素因や女性ホルモンも関与する.この2 疾患の病態の分子メカニズムについて概説した.
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医学のあゆみ 248巻8号, 597-601 (2014);
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紫外線の皮膚癌発生における有害性についてはもはや議論の余地はない.とくに長期間紫外線を浴びることによって生じる皮膚発癌のメカニズムについてはさまざまな研究がなされ,徐々にではあるが明らかになりつつある.そのもっとも中核となるイベントとして,紫外線より生じるDNA 損傷から連続する癌抑制遺伝子であるp53 の不活性化があげられるが,最近それらのメカニズム以外にも,活性酸素や炎症因子によるメカニズムが紫外線による免疫抑制(癌化した細胞に対する免疫サーベイランスの低下)と関与することが示唆されている.さらに,近年の診断能などの向上により日光角化症という初期段階の皮膚癌が,癌の進展する前に発見できるようになってきている.一方,多発かつ高齢者などの症例で,外科的治療の選択が難しいものについては,イミキモドの外用治療が日光角化症に対して保険適応となった.さらに,抗癌剤の外用以外の選択肢としてphotodynamic therapyという光増感剤存在下に光線を照射をして治療する手法も確立されつつある.
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医学のあゆみ 248巻8号, 602-607 (2014);
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生体内で重要な機能を果たす蛋白質は,紫外線によって酸化,脱アミド化,非酵素的糖化,異性化(アミノ酸のD-体化など)など,さまざまな影響を受けている.著者らはこれまでに,加齢性白内障のクリスタリンや眼の結膜,網膜,加齢性黄斑変性症に存在する凝集性蛋白質,さらに紫外線曝露の皮膚蛋白質中に,本来,生体内では合成されないはずのD-アスパラギン酸(D-Asp)が多量に存在することを報告してきた.D-Asp の生成は非酵素的ラセミ化反応の結果であり,これらの蛋白質では非酵素的糖化(AGE 化)反応も同時に生じていた.このような修飾を受けた蛋白質は不溶性の凝集性蛋白質であったことから,D-Asp の生成が引き金となり,蛋白質の構造異常→不溶化→相互作用変化→機能低下→疾患へと誘導されるのではないかと考えられた.本稿ではこれらの結果を紹介するとともに,最近著者らが開発した液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)を用いた簡便・迅速なAsp の異性体分析法についても概説する.本法の確立により,短時間で多数の試料中のAsp 異性体の一斉分析が可能となった.
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医学のあゆみ 248巻8号, 610-614 (2014);
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光老化の諸症状のうち,シミやシワは顔面や手背部に好発するため,QOL を低下させる.シミやシワの治療において最近,メカニズムが明らかであり,かつエビデンスを有する治療方法が開発されている.シミに対しては美白化粧品の外用,Q スイッチ・ルビーレーザーやQ スイッチ・アレキサンドライトレーザーなどのレーザー療法,intense pulsed ligh(t IPL)による光治療などが用いられている.シワに対しては抗シワ化粧品の外用,ボツリヌス毒素・ヒアルロン酸・コラーゲンなどの注射,レーザー療法,がある.また,光老化のさまざまな症状を改善するものとしてフラクショナルレーザー(FL)治療がある.レーザーなどの光治療では副作用も生じる.患者の有する疾患・病態・ニーズによって適切な治療方法を選択する必要がある.
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連載
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初学者のための医療経済学入門 14
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医学のあゆみ 248巻8号, 620-624 (2014);
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不採算部門といわれる救急医療部門を閉鎖する病院が増えているが,こうした現象は諸外国でもみられる.わが国でも救急車をタクシー代わりに利用する,いわゆる“モラル・ハザード(倫理の欠如)”が社会問題化しており,特別料金を徴収する議論もある.しかし,その前に行うべきは救急医療のみえる化ではないか.実際,救急搬送の情報と医療機関が保有する搬送後の予後情報をリンクさせたところ,11 回以上の照会事案は2008年に922 件あり,そのうちの462 件(50.7%)は23 カ所もの救命救急センターを有する東京であることがわかった.また,その転帰の1/3 は死亡退院であった.特筆すべきは内因性患者が3/4 を占めていることで,この傾向は2002 年度の船橋市救急医療白書と整合性があった.今後は時間価値の測定に向け,さらなる詳細なデータの回収が求められる.
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フォーラム
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医学のあゆみ 248巻8号, 625-627 (2014);
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医学のあゆみ 248巻8号, 629-630 (2014);
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医学のあゆみ 248巻8号, 631-634 (2014);
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TOPICS
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免疫学
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医学のあゆみ 248巻8号, 615-616 (2014);
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癌・腫瘍学
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医学のあゆみ 248巻8号, 616-617 (2014);
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耳鼻咽喉科学
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医学のあゆみ 248巻8号, 618-619 (2014);
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