Volume 249,
Issue 11,
2014
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あゆみ レチノイドと癌治療
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医学のあゆみ 249巻11号, 1145-1145 (2014);
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医学のあゆみ 249巻11号, 1147-1152 (2014);
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ビタミンA の類縁化合物であるレチノイドには,種々の癌腫に対する抗腫瘍効果が報告されている.そのなかでレチノイン酸は核内においてレチノイン酸シグナルとよばれる転写調節機構を活性化し,多くの標的遺伝子の発現を調節しうることから,レチノイン酸応答性遺伝子の同定と機能解析により癌の予防や治療に役立つ標的分子の発見が期待できる.著者らはこれまで,肝においてレチノイン酸シグナルが慢性肝疾患や肝細胞癌の抑制に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた.そこで著者らは,肝細胞癌の新規治療標的分子を同定することを目的に,肝におけるレチノイン酸応答性遺伝子の同定を試みた.本稿では,著者らが独自に考案したin-silico 解析に基づくレチノイン酸応答性遺伝子の網羅的スクリーニング法について概説し,そこから見出された肝細胞癌の新規標的分子について発現の臨床的意義や肝細胞癌における機能解析について報告する.
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医学のあゆみ 249巻11号, 1153-1158 (2014);
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非環式レチノイドは肝細胞癌初回根治治療後の二次発癌抑制能を有する薬剤候補である.その作用機構については,たとえば蛋白質架橋酵素トランスグルタミナーゼTG2 の遺伝子発現を介する転写因子Sp1 の架橋不活性化を引き起こすことによって異常細胞増殖シグナルを抑制するなど,標的遺伝子の発現調節を介するgenomic な作用に加えて,肝細胞癌にみられる過リン酸化反応によるレチノイド核内受容体RXRαの転写因子活性喪失の抑制・回復という遺伝子発現調節を介さないnon-genomic な作用を報告してきた.さらに最近,網羅的オミックス解析を利用して非環式レチノイドの新規標的分子を探索し,非環式レチノイドがエネルギー代謝調節キーエンザイムpyruvate dehydrogenase kinase 4 依存的に肝癌細胞のエネルギー代謝を阻害することを見出した.これらの作用によって非環式レチノイドは正常肝細胞には影響を与えずして肝癌(幹)細胞選択的に異常増殖を抑制すると考えられ,近い将来の肝細胞癌治療への臨床応用が期待される.
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医学のあゆみ 249巻11号, 1159-1163 (2014);
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慢性肝疾患を発生母地とし,高率に発癌・治療後再発をきたす肝細胞癌の予後はきわめて不良であり,肝硬変,残存肝といった高危険群に対する有効な発癌予防法(薬)の開発が求められている.岐阜大学で行われた臨床介入試験において,非環式レチノイド(600 mg/day,経口投与)は初発肝細胞癌根治的治療後の二次発癌を抑制し,生存率を改善することが明らかになった.これを受けて行われたphaseⅡ/Ⅲ試験において非環式レチノイド(600 mg/day 経口投与)は,初発および初回再発肝細胞癌根治的治療後の再発を抑制すること,とくにChild-Pugh A かつ腫瘍サイズ2 cm 未満の場合より強い二次発癌抑制効果を示し,全生存期間も改善することが確認された.肝細胞癌の芽(clone)を除去する(clonal deletion)ことで肝発癌を抑制する,非環式レチノイドの早期臨床応用がまたれる.
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医学のあゆみ 249巻11号, 1167-1172 (2014);
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ビタミンA ならびにその類縁体を含むレチノイドは生体内において種々の生理活性を示し,さらに一部のレチノイドについては白血病や肝癌に対する治療薬としてすでに知られている.一方,糖や脂質などに対してもレチノイドはさまざまな代謝調節作用をもつことが明らかにされつつある.とくに非アルコール性脂肪性肝疾患では肝臓におけるレチノイド代謝酵素が発現亢進しており,このことから,レチノイドシグナルの減弱が肝代謝異常をもたらしている可能性が示唆されている.これまでの研究から,著者はインスリン抵抗性や肝鉄過剰蓄積がレチノイド投与によって改善することを明らかにした.これらの代謝異常は慢性肝疾患で高頻度に認められ,酸化ストレスの亢進などによって肝癌発症リスクを高めることが示唆されている.そのため,レチノイドの補充は代謝異常を伴う慢性肝疾患の治療法としてだけでなく,肝発癌に対する有効な予防法にもなりうるものと期待できる.
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医学のあゆみ 249巻11号, 1173-1178 (2014);
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レチノイン酸(RA)は急性前骨髄性白血病の治療薬であるが,再発後の患者はRA 耐性を引き起こす.またその誘導体フェンレチニド(4-HPR)は種々の癌に対し治療効果を示すものの暗順応障害といった副作用を示す.そこで副作用のない抗癌剤の開発をめざし,4-HPR の構造活性相関研究からp-ドデシルアミノフェノール(p-DDAP)を創製した.p-DDAP は白血病,乳癌,前立腺癌,神経芽腫などの癌細胞にアポトーシスを誘導し増殖を抑制するとともに,RA 抵抗性白血病・乳癌細胞の増殖も顕著に抑制した.また,p-DDAP は治療薬に乏しい難治癌である膵癌および胆管癌の増殖を抑え,さらに癌の転移,浸潤も阻害した.p-DDAP は暗順応障害の原因である血中レチノール濃度に影響を及ぼさないことから,癌細胞の増殖および転移を抑制する作用を併せもつ副作用のない優れた抗癌剤となりうる可能性が示唆された.
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医学のあゆみ 249巻11号, 1179-1182 (2014);
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レチノイドは急性前骨髄性白血病の治療薬であるが,固形癌に対しても治療薬・予防薬としての期待が高まっている.一方,緑茶1 日10 杯の飲用は大腸ポリープの再発を50%予防し,カテキンの癌予防効果はヒトで証明された.レチノイドとEGCG はともに,マウス皮膚の発癌プロモーション活性を抑制するが,その作用機構は異なる.しかし,この両者の併用は新しいアポトーシス誘導経路(GADD153-DR5,TRAIL-DR5)を介して癌治療効果を著しく亢進することを見出した.レチノイドとEGCG との併用はレチノイドの副作用を軽減し,新しい癌治療法として世界でも期待されている.本稿では,レチノイドと抗癌剤との併用効果についても概説する.
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医学のあゆみ 249巻11号, 1183-1188 (2014);
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生理的レチノイドであるall-trans retinoic acid(ATRA)は,骨髄性白血病細胞の顆粒球系への分化を誘導する.レチノイド受容体として核内受容体retinoic acid recepto(RAR)α,β,γ,retinoid X recepto(RXR)α,β,γの6 種類が存在する.RXR はホモ二量体のほか,RAR,脂肪酸受容体peroxisome proliferator-activatedreceptor,オキシステロール受容体liver X receptor などとヘテロ二量体を形成する.ATRA はRARαの遺伝子変異(PML-RARA 融合遺伝子)を有する急性前骨髄球性白血病の治療に使用され,良好な治療成績をあげている.これらの核内受容体はマクロファージや樹状細胞の機能調節にもかかわっており,抗動脈硬化,抗糖尿病,免疫調節などの作用のメディエーターとして機能している.骨髄性白血病細胞,マクロファージ,樹状細胞におけるレチノイド作用を概説する.
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医学のあゆみ 249巻11号, 1189-1193 (2014);
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レチノイドの多彩な作用はおもに,レチノイン酸受容体(RAR)とレチノイドX 受容体(RXR)を介して発揮される.これまでに,癌の予防と治療を目的に,多くのレチノイド核内受容体リガンドが合成されてきた.癌治療の分野においては全trans 型レチノイン酸(ATRA)の急性前骨髄球性白血病(APL)に対する治療効果が画期的な臨床成績をあげ,医薬品として用いられている.その後も,RAR 選択的化合物であるAm80(タミバロテン)をはじめとしていくつかの化合物が臨床応用,あるいは臨床開発中である.一方,RXR リガンドの抗癌活性も検討され,LGD1069(ベキサロテン)が皮膚T 細胞リンパ腫の治療薬として用いられている.現在,受容体選択性などの特徴をもったさまざまな合成レチノイドが開発されている.そのなかで,ホウ素クラスター含有レチノイドはレチノイド核内受容体を標的とした癌の中性子捕獲療法という新しい治療法を開拓する可能性を秘めている.
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連載
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エコヘルスという視点 8
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医学のあゆみ 249巻11号, 1200-1205 (2014);
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栄養生態学では,人間が何を食べるかは①自然の条件(その環境の動植物相),②食べ物を手に入れるための人間の技術,③食物の分配と流通システム,という生態学的諸条件によって規制されているという前提に立って人間の食を考える.人の栄養状態が健康と密接に結びついていることは栄養転換と健康転換の関係をみても周知の事実であり,栄養生態学の枠組みに栄養状態のさきにある健康までを入れると,環境・社会・健康をいったいとしてとらえるエコヘルスの考え方とは重なる部分が非常に多いといえよう.本稿では,栄養生態学の考え方やパプアニューギニアやラオスでの研究事例を紹介しながら,エコヘルス研究と栄養生態学のかかわりについて考察する.そして食環境の多様性のもつ意味を栄養学的に評価する重要性や,遺伝子組換え技術などのつぎつぎに開発される新しい技術に対して,それらを食環境に組み入れることに対する評価システムの構築の必要性を指摘する.
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速報
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医学のあゆみ 249巻11号, 1207-1208 (2014);
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フォーラム
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医学のあゆみ 249巻11号, 1209-1210 (2014);
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パリから見えるこの世界 29
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医学のあゆみ 249巻11号, 1211-1215 (2014);
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ゲノム人類学の最先端 10
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医学のあゆみ 249巻11号, 1217-1219 (2014);
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TOPICS
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免疫学
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医学のあゆみ 249巻11号, 1195-1196 (2014);
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救急・集中治療医学
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医学のあゆみ 249巻11号, 1196-1197 (2014);
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皮膚科学
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医学のあゆみ 249巻11号, 1197-1198 (2014);
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