Volume 249,
Issue 12,
2014
-
あゆみ 麻酔と脳障害
-
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1223-1224 (2014);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1225-1230 (2014);
View Description
Hide Description
アルツハイマー病(AD)は,高齢化に伴い増加の一途をたどり社会問題となっているが,高齢者に対して全身麻酔を行う機会もまた増えている.認知症患者が術後に認知症を増悪させるだけでなく,術前に正常と思われた高齢者が術後に認知機能障害を生じる症例を目にする機会も少なくない.その理由を紐解くために,本稿ではAD の経過とその根底にある病理過程,とくにアミロイドカスケード仮説について解説する.また,全身麻酔薬がAD の病態に及ぼす分子メカニズムに関する知見を整理することで,理解の助けとしたい.
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1231-1238 (2014);
View Description
Hide Description
術後に比較的頻発する精神神経・認知障害を合併する脳障害に,せん妄と高次脳機能障害(POCD)がある.せん妄とPOCD は,その原因に関しては共通する部分が多い.全身の炎症反応が血液脳関門を破綻させ骨髄由来のマクロファージが脳へ浸潤することにより,脆弱性のあるアセチルコリン作動性ニューロンを主体とした神経障害が生じる可能性が示唆されている.術後せん妄の合併はPOCD の発症に関連することを示すエビデンスが蓄積されつつあり,術後せん妄の軽減はPOCD 発生の減少につながる可能性がある.しかし,せん妄の発生予防や治療には,患者の環境因子を整える以外に現時点では有効な方法がない.周術期に患者の背景因子を調整し,直接因子である手術侵襲の軽減と炎症の制御を行うことが,せん妄の軽減に効果がある可能性があり,POCD 発生の減少にもつながると考える.
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1239-1243 (2014);
View Description
Hide Description
術後の高次脳機能障害(POCD)は,麻酔や手術を契機とし認知機能が術前より低下した状態で,QOL を低下させ,社会生活に支障をきたし死亡率をも上昇させる重大な合併症のひとつである.人工心肺を用いた心臓手術では塞栓・低灌流・炎症により脳虚血が起こるため,非心臓手術に比べてPOCD が多いとされ,術後早期では半数以上の症例で認められる.多くは数カ月で回復するが,不可逆的な症例も存在する.人工心肺を用いない冠動脈バイパス術(CABG)はPOCD を減少させると期待されたが,同じようにPOCD が認められることが明らかとなり,患者因子に焦点があてられるようになった.糖尿病,高血圧,高脂血症などの動脈硬化の危険因子,脳血管障害,さらには高齢者に潜在している血管性認知症やアルツハイマー病(AD)などが,長期的な高次脳機能障害に影響することが示唆されている.
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1244-1248 (2014);
View Description
Hide Description
生後7 日のラットにおいて麻酔薬が神経毒性を有するという報告が2003 年になされて以来,いまやほとんどの麻酔薬が発達期の動物の脳に神経毒性を起こすといっても過言ではないくらい数多くの報告がみられる.その機序は当初,アポトーシスの関与が示唆されていたが,最近では神経回路の発達障害と関連した神経機能異常の観点からも盛んに検討されている.ヒトでは既存のコホートを使用したいくつかの後ろ向き研究で,乳幼児期の麻酔経験と成長後の発達障害との関連が指摘されている.しかし,後ろ向き研究では児がもともと有する疾患ならびに手術侵襲の影響を除外することは困難であることから,最近はじまった前向き研究の結果がまたれる.すなわち,ヒトでは発達期における麻酔が神経毒性を起こすかどうかは証明されておらず,現時点では「患者やその家族にrisk & benefit をきちんと説明し,麻酔(手術)が必要なときはそれを避けるべきではない」という方針で臨むのがよいと思われる.
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1249-1253 (2014);
View Description
Hide Description
わが国における高齢者人口は急速に増えており,今後ますます高齢者に対する手術は増加していくものと考えられる.周術期の合併症は術後の回復を遅延させるため,十分な予防と対策が必要である.周術期の神経系合併症の発生率は高くはないものの,いったん発症すると日常生活に大きな支障となる.神経系合併症としては脳卒中や脊髄傷などの害器質的神経障害とせん妄や術後認知機能障害などの機能的神経障害があるが,術後の高次脳機能障害に近年注目が集まっている.術後せん妄や術後認知機能障害(POCD)の発生率に麻酔法や麻酔薬が与える影響については十分には解明されていない.また,術前からアルツハイマー型認知症(AD)などの高次脳機能障害がある患者に対する麻酔の影響について多くの基礎研究がなされている.今後,術後の高次脳機能を保護する麻酔法の検討が必要である.
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1254-1258 (2014);
View Description
Hide Description
麻酔薬の脳保護よりも,正常脳に対する毒性が問題となっている.しかし,麻酔薬は理論上,損傷された脳にとっては治療薬として働く可能性がある.脳虚血とは脳代謝に対する相対的な血流低下を意味する.麻酔薬は一般的に脳代謝を抑えるため,虚血障害を軽減させる可能性があることがわかる.また,興奮性アミノ酸の拮抗や,シナプス伝達抑制系を活性化することで保護的に働く.虚血時に麻酔薬が投与されていれば,それなりの効果があることは事実である.しかし,虚血後の神経細胞死は動的過程であり,虚血後に長期にわたり死へのプロセスを続けるといわれている.この虚血後に進行する死への過程に対する麻酔薬の効果について懐疑的な意見も出ている.麻酔薬による脳保護は完全なものでないかもしれないが,脳虚血後に進行する死の過程を遅らせることで,何らかの策を講じるための時間的余裕(therapeutic window)を与えてくれているとも考えられる.
-
連載
-
-
エコヘルスという視点 9
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1264-1269 (2014);
View Description
Hide Description
環境中に存在する遺伝子断片(環境DNA)を利用して生物分布を明らかにする環境DNA 手法が,エコヘルス研究にどう活用できるかについて概説する.環境DNA 手法では,対象種のDNA を検出・定量することで種の在/不在や生息密度を推定することやDNA の種類から生息種を把握することなどができる.これを用いることで水系ベクター感染症の生態学的防除に向けた基礎情報を得ることが可能となる.たとえば,東南アジアにおけるタイ肝吸虫症の全体像を明らかにするためには,貝,魚,哺乳類と行った宿主と吸虫の生態学的な関連を理解する必要があるが,多くの分類群にわたる調査は従来の手法ではたいへんな労力がかかる.そこで,水というひとつのサンプルからそれらの生物の分布や動態を知ることができれば,感染症対策にあらたな道が開けるであろう.著者らはそのような目的で調査を行い,魚類や吸虫のDNA を環境サンプルから検出することに成功した.本手法は他の感染症にも応用可能であり,感染症のエコヘルス的理解のためのあらたなツールとなるであろう.
-
フォーラム
-
-
近代医学を築いた人々 30
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1271-1271 (2014);
View Description
Hide Description
-
第78 回日本循環器学会学術集会レポート 4
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1273-1274 (2014);
View Description
Hide Description
冠動脈の血行再建についてはこれまでCABG とPCI の選択があったが,多くの場合,どちらが優れているかを議論するにあたっては患者の予後を主としたエビデンスが重要視されていなかった.近年,PCI の器具や技術の革新がもたらされ,安定した結果が得られるようになって,対象を限定しない大規模試験が行われるようになり予後を改善するための治療としてのエビデンスが確立してきた.そして外科医と内科医,Inteventionalist がたがいに情報共有して,患者にとってのベストな治療を選択するというハートチームの重要性がガイドラインに記載されるようになっている.しかし,Real World での実態はさまざまであり,まだ解決されなければならない問題が残されている.その解決のために必要な工夫についてそれぞれの先生の立場から論じてもらった.
-
ゲノム人類学の最先端 11
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1275-1277 (2014);
View Description
Hide Description
-
TOPICS
-
-
細胞生物学
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1259-1260 (2014);
View Description
Hide Description
-
薬理学・毒性学
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1260-1261 (2014);
View Description
Hide Description
-
免疫学
-
Source:
医学のあゆみ 249巻12号, 1261-1262 (2014);
View Description
Hide Description