Volume 250,
Issue 10,
2014
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【9月第1土曜特集】 消化管癌内視鏡治療の最前線
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医学のあゆみ 250巻10号, 875-875 (2014);
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内視鏡治療の新しい風
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医学のあゆみ 250巻10号, 879-884 (2014);
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◎近年の消化器内視鏡の技術革新によって,さまざまな低侵襲治療を内視鏡で行うことが可能になり,その数は増加している.それに伴い,内視鏡治療における手技・安全性の向上および患者の苦痛軽減のために鎮静を行う機会も増加している.鎮静を行う医師にとって一番大きな問題はその使用にあたっての偶発症である.ところが,これまで鎮静に関する明確な基準や体制づくりは十分とはいえず,各医師あるいは施設ごとの方法で施行されてきた.最近になりわが国でもEBM に基づくガイドラインが発表され,その体制づくりが急がれている.一方で,プロポフォールやデクスメデトミジンをはじめとする新しい薬剤の報告も散見されるようになり,鎮静にあたる医師には十分な知識と偶発症に対する十分な準備・対応が求められている.
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医学のあゆみ 250巻10号, 885-890 (2014);
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◎粘膜下層剝離術(ESD)は理論,処置具,内視鏡機器の進化により広く浸透し,一定の条件をクリアした内視鏡医であれば,だれもが安全に行える手技となっている.しかし,確実なcounter traction のない治療手技にはやはり不安定さを指摘する声は多く,ESD をより簡便かつ安全な手技にすべく,さまざまな工夫や機器開発はいまも進んでいる.そこで本稿では,①counter traction,②CO2送気装置,③粘膜下局注剤,④新しい粘膜下層剝離器具,の4 項目に分け,研究段階のものを含め,その最前線について取りあげる.Counter traction法については,糸付クリップ法を基本原理として,ゴム,バネ,磁石などさまざまな発想から,さらに洗練された技術が生み出されている.また,内視鏡治療においてもCO2送気環境が確立しつつあるいま,さらに安定した視野環境をめざした消化管内定圧送気システムの完成も目前である.粘膜下局注剤は,これまでの膨隆維した視野環境をめざした消化管内定圧送気システムの完成も目前である.粘膜下局注剤は,これまでの膨隆維持性能に加え剝離補助というあらたな視点からの開発が進んでおり,粘膜下層剝離器具についても局注,洗浄,切開・剝離など多機能性を有するデバイスが開発され,急速に普及している.また,高周波を用いない粘膜下層剝離器具についても取りあげた.
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医学のあゆみ 250巻10号, 891-895 (2014);
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◎わが国においては,内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の開発に伴って内視鏡プラットフォームが治療機器として急速に進化している.一方で,ESD が普及に至っていない欧米諸国では,経管腔的内視鏡手術(NOTES)用プラットフォームとして,内視鏡ロボットを含むtriangulation プラットフォームとよばれる機器の開発が進んでいる.NOTES は口,肛門,腟といった,人間が生まれもった自然孔から内視鏡を挿入し,体表面に傷つけることなくさまざまな内視鏡手術を行うものである.実用化にはさまざまな難点があり,内視鏡ロボットを含むtriangulation プラットフォームなどの技術革新による打開が望まれている.内視鏡ロボットは,概念的には胃カメラに2 本以上の作業アームがついたイメージであり,術者の動きに合わせて,持つ,引っ張る,切るといった一連の動作を行うことができ,複雑な手術操作も可能である.本稿では,新規治療内視鏡開発の最前線にあるtriangulation プラットフォームと内視鏡ロボットについて概説する.
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食道内視鏡治療の最前線
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医学のあゆみ 250巻10号, 899-903 (2014);
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◎食道癌診断治療ガイドライン2012 では食道扁平上皮癌に対する内視鏡的切除の適応基準が改訂され,周在性の制限が無くなった.これはESD の技術が進歩し,大きな病変に対しても安全に施行しうること.および術後の狭窄予防法が進歩したことに基づく.この結果,食道扁平上皮癌では,大きさ,周在性にかかわらず深達度T1aEP―LPM までが内視鏡治療の適応となった.技術的には糸付きクリップを用いた牽引法の普及がESD の安全性向上に貢献した.食道ESD の長期予後は外科治療成績と比較しても遜色がなく,表在型食道扁平上皮癌治療の第一選択手技としての地位を確立した.一方,Barrett 食道癌のリンパ節転移危険因子はいまだに明確ではない.胃癌のように組織型,大きさ,深達度,潰瘍の有無という,詳細な危険因子解析に基づく危険因子の解明が急務である.
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医学のあゆみ 250巻10号, 905-909 (2014);
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◎ステロイドの投与が,広範な内視鏡切除後の狭窄予防に有効であることが広く認知されてきた.一般によく用いられているステロイドの投与法には,トリアムシノロンアセトニド(TA)の食道局注とプレドニゾロンの経口投与がある.TA の食道局注は,穿刺に多少の技術を要する以外は非常に簡便である.この方法は非全周切除例には高い有効性を示すため第一選択と考えられているが,全周切除例には十分な効果が得られないことが多い.一方で,プレドニゾロンの内服はステロイドの漸減や耐糖能異常などのモニターが必要であるが,特別な技術は必要とせず,非全周切除例のみならず全周例にも効果が期待できる.これらの方法により,食道癌に対する内視鏡切除後の狭窄は大幅に減少した.しかし,ステロイド投与後には食道壁が脆弱になるとの指摘や,まれながら感染症の合併もあることを念頭に,経過観察する必要がある.
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医学のあゆみ 250巻10号, 910-914 (2014);
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◎食道癌による悪性狭窄に対する食道ステントは一般的に金属ステント(SEMS)が使用され,留置が成功すれば症状が劇的に改善する.SEMS の最大の弱点は放射線治療との相性の悪さで,放射線治療前後で留置するとステント関連の合併症が多く発生することが知られている.食道癌治療後の難治性良性狭窄に対するステントとして国内で承認されている機器はないが,海外ではプラスチックステント(SEPS)や生分解性ステントなどが開発され,その有効性も報告されている.また,最近はまったく新しいタイプのステントも開発されており,なかでもヨウ素125(125I)シード線源装填食道ステントは,切除不能進行食道癌による悪性狭窄に対する治療として,通常の食道ステントと比較して有意に予後向上が得られたインパクトのある試験結果も報告され,今後国際的な評価が期待されている.
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医学のあゆみ 250巻10号, 915-920 (2014);
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◎近年,内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の技術の進歩により,広範な早期食道癌であっても切除可能となってきた.ところが,広範な食道ESD を行うとESD 後の潰瘍に起因する強固な狭窄により,患者は何度も内視鏡的バルーン拡張術を受けなくてはならない.著者らは食道ESD 後の狭窄に対し,細胞シート技術を応用して患者の自己の口腔粘膜組織から作製した培養口腔粘膜上皮細胞シートを経内視鏡的にESD 後の潰瘍面に移植することで,潰瘍の上皮化を促進し狭窄を抑制するという再生医療的治療法を開発した.再生医療に関する規制に対応しながら,著者らは2011 年までに臨床10 例を経験し,良好かつ安全に施行しえた.近年,国内では長崎大学と共同で空輸した培養口腔粘膜上皮細胞シートを用いた臨床研究,海外ではスウェーデンのカロリンスカ研究所と共同で早期Barrett 腺癌に対する探索的な臨床研究を開始している.培養口腔粘膜上皮細胞シートは食道に対する療法として有力なオプションと考えられ,細胞シートによるさらなる再生医療研究の推進が必要である.
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医学のあゆみ 250巻10号, 921-926 (2014);
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◎食道癌に対する化学放射線療法(CRT)は臓器温存が可能な非外科的治療であるが,高い奏効率を示すものの遺残・再発が多いのが課題である.救済治療として一般に外科手術が行われるが,術後合併症の頻度が高く,安全な治療とはいいがたい.著者らは食道癌CRT 後の局所の遺残・再発に対する根治をめざした救済治療として,光線力学療法(PDT)を応用した治療開発を行ってきた.本稿では,著者らが行ってきた第一世代PDT から第二世代PDT による救済治療開発の経緯と,薬事承認をめざして行ってきた非臨床試験を含む医師主導治験の概要を解説し,救済PDT の可能性を述べる.
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胃内視鏡治療の最前線
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医学のあゆみ 250巻10号, 929-934 (2014);
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◎早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)はその高い有効性から広く普及しているが,難易度が高く,一定確率で偶発症が生じうる.偶発症のなかでも穿孔はかつて緊急手術を要していたが,保存的治療の良好な成績が発表され,今日では術中穿孔の大半は保存的治療が可能となってきている.穿孔後もクリップなどで完全閉鎖が可能であれば,2 日ほど入院期間を延長することで対処可能である.一方で,0.5%前後と頻度はまれではあるが術後に遅発性穿孔をきたすことがある.遅発性穿孔の多くは術後1~2 日に生じ,ときとして潰瘍底がすべて脱落するような広範な穿孔が生じる.潰瘍底は脆いことが多く,クリップ閉鎖は困難なことが多い.創を閉鎖できれば緊急手術は回避可能であるが,遅発性穿孔は高率に外科手術を要する病態であり,外科的治療のタイミングを逃さないよう留意すべきである.
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医学のあゆみ 250巻10号, 935-941 (2014);
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◎軟性内視鏡を用いた経管腔的内視鏡手術(NOTES)は体表面に術創のない低侵襲手術として注目されたが,腹腔鏡よりも圧倒的に機器の少ない内視鏡での手術は困難でしだいに消えつつある治療法と思われた.しかし,NOTES のなかでもESD の延長線上に位置し消化管壁の腫瘍を全層切除する内視鏡的全層切除術(EFTR)は,軟性内視鏡用全層縫合器と消化管虚脱に対する術野展開カウンタートラクション器が開発されれば,口から最短距離で病変にアプローチし病変のみ全層切除できる超低侵襲内視鏡手術となりうる.機器開発が進めば消化器内視鏡医がこの手術を担っていくものと思われる.超低侵襲手術がもたらす患者負荷の軽減や医療費削減効果は計り知れない.汎用軟性内視鏡を用いたあらたな手術の開発は社会的急務であると思われる.
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医学のあゆみ 250巻10号, 942-946 (2014);
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◎ 2006 年7 月より胃内発育型胃粘膜下腫瘍に対して腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除(LECS)を開発し,38 例の症例に安全に適応している.LECS は,内視鏡的粘膜下層切開剥離術を用いて,胃内腔から切除線を決定し,腹腔鏡下または内視鏡下に漿膜・筋層切開を行い,腫瘍摘出を行う方法である.胃を解放するということから,腫瘍散布や胃液の漏出による感染には十分な注意を払う必要があり,これを防ぐLECS 関連手技が近年開発されつつあり,本手技をClassical LECS と名づけている.Classical LECS は最小限の胃壁切除で胃粘膜下腫瘍切除が可能であるため,胃食道移行部,幽門輪近傍の病変にも応用可能な術式である.
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医学のあゆみ 250巻10号, 947-952 (2014);
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◎内視鏡を用いて胃内腔を開放させずに病変を任意のサイズで全層切除する方法として,非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術(non-exposed endoscopic wall-inversion surgery:NEWS)が考案された.腹腔内を汚染させず,上皮性腫瘍であっても医原性播種を危惧する必要のない本術式は胃粘膜下腫瘍および内視鏡治療困難な早期胃癌に対するより低侵襲な局所切除法のひとつとして動物実験を経て2011 年より臨床導入が開始された.さらに,リンパ節郭清範囲が縮小できるセンチネルリンパ節ナビゲーション手術と融合させることで,リンパ節転移が疑われる早期胃癌に対しても過剰な胃切除を回避できる可能性がある理想的な縮小手術法として,2014 年より臨床応用がはじまった.症例の集積,手技の簡便化と長期予後の確認がまたれる.
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小腸内視鏡治療の最前線
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医学のあゆみ 250巻10号, 955-959 (2014);
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◎通常の内視鏡では困難であった深部小腸の内視鏡診断は,今世紀に入りカプセル内視鏡とバルーン内視鏡が登場したことで大きく進歩した.とくに,バルーン内視鏡においては良好な操作性を保ったまま深部小腸まで到達し,鉗子口も備えるため,内視鏡処置も可能にした.その後,内視鏡本体とともに処置具も改良され,胃や大腸で行われる内視鏡治療手技のほとんどが深部小腸でも可能になった.小腸出血に対する止血術,小腸ポリープに対するポリペクトミー,小腸狭窄に対するバルーン拡張術や,術後再建腸管を有する胆膵疾患に対するERCP にもバルーン内視鏡が応用され,良好な成績が示されつつある.
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大腸内視鏡治療の最前線
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医学のあゆみ 250巻10号, 963-968 (2014);
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◎大きな大腸腫瘍の多くはいわゆる側方発育型腫瘍(LST)でその多くが腺腫主体であるとともに,保険診療上も内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の適応は早期大腸癌であり,ESD は腺腫主体の良性病変に対する標準的治療法とはされていない.大腸腫瘍の内視鏡治療においては,正確な術前診断のもとでのESD と内視鏡的粘膜切除術(EMR)の棲み分けが重要である.
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医学のあゆみ 250巻10号, 969-975 (2014);
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◎大腸内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)も保険適用され,径2~5 cm の早期癌が対象となった.一括切除が必要,かつ通常EMR が困難な病変で,原則拡大観察にてnon-invasive pattern であることが条件となる.当院ではJet B ナイフとIT ナイフナノをメインデバイスに,CO2送気とST フードショートタイプを必須として,安全なESD が可能となっている.それでも線維化例や再発など治療困難例は存在し,それらの対策としてはトラクション法がkey となる.当院では治療困難例の割合が多いにもかかわらず,穿孔率も1~2%に低下し,もっとも重篤な偶発症である緊急手術例に関しても0.2%(2/1,000)ときわめてまれである.最近は海外においてもESD デバイスが開発されるようになり,大腸ESD が世界的に普及し,一人でも多くの患者が低侵襲性治療の恩恵を受けることができることを切に願う.
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医学のあゆみ 250巻10号, 976-982 (2014);
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◎大腸狭窄に対するステント,自己拡張型金属ステント(SEMS)治療が,世界に遅れてわが国でも2012 年から保険収載のうえで使用可能となった.現在のわが国での適応は,悪性狭窄の緩和治療および外科手術前の処置(bridge to surgery:BTS)である.緩和治療では短い入院期間での狭窄の解除と人工肛門の回避が,またBTS では緊急手術に比較して入院期間の短さ,合併症率や人工肛門造設率,死亡率の低下などが期待できると広く報告されている.悪性大腸狭窄の患者に対するステント治療は,穿孔や逸脱などの偶発症の予防に留意すれば,短期的には間違いなく予後を著明に改善する.ただし長期的な予後に関しては現時点で明らかに悪化させるとのエビデンスはないが,今後の研究がまたれる.大腸ステント安全手技研究会で全国規模の前向き研究が進行中である.
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胆膵内視鏡治療の最前線
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医学のあゆみ 250巻10号, 985-990 (2014);
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◎超音波内視鏡(EUS)はこれまでも胆膵疾患の画像診断法として重要な位置を占めてきた.さらに最近になり,超音波診断機器の改良のみならず,新しい機能として,image-enhanced EUS ともいえる,血流の詳細な評価が可能な造影EUS(contrast-enhanced EUS)や腫瘤の硬さを評価するelastography も出てきている.EUS は膵癌や膵囊胞性腫瘍などの膵疾患において,その有用性が報告されている.とくに膵癌に対しては超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)による病理学的診断が有用であり,わが国でも広く行われるようになっている.また,EUS-FNA の技術を応用した画像診断法も開発されるなど,著しい進歩を認めている.胆膵疾患に対するEUS は診断のみならず,ERCP にかわるドレナージなど治療の面でも今後もますます重要な役割を果たすことが期待される.
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医学のあゆみ 250巻10号, 991-996 (2014);
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◎膵・胆道領域は,超音波内視鏡によって胃・十二指腸から明瞭に描出ができ,穿刺アプローチも近接して行える.このためさまざまな超音波内視鏡(EUS)ガイド下の治療手技が近年開発されている.膵仮性囊胞・感染性膵壊死に対するドレナージ・壊死巣除去術はすでにその有効性が広く認識され,胆道ドレナージ・腹腔神経叢ブロックも多くの施設からその有用性が報告されている.さらに,放射線照射のための位置合わせマーカー(fiducial)や放射線小線源の埋め込み,腫瘍性囊胞に対するエタノール・抗腫瘍薬による化学的焼灼療法,膵癌・インスリノーマに対する各種抗腫瘍薬の注入,ラジオ波焼灼療法も臨床応用され,こうした治療に対する期待が近年急速に高まっている.