Volume 251,
Issue 10,
2014
-
【12月第1土曜特集】 臨床プロテオミクス
-
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 909-909 (2014);
View Description
Hide Description
-
プロテオーム解析による疾患研究
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 913-917 (2014);
View Description
Hide Description
◎プロテオミクス・テストは高いプロフィタビリティー(患者にとってコスト負担が少なく,医療機関にとってもよいプロフィット)をもたらし,さらにMS-based テストは確定診断を提供できる.著者らは,肺腺癌,大細胞神経内分泌性肺癌,その他の大細胞癌,小細胞癌,およびGGO肺癌(AIS,MIA,LPIA)など,多様な肺癌サブタイプおよびステージ関連プロテオーム解析を行い,各サブタイプに有意な発現タンパク質群(バイオマーカー候補)を見出している.精度の高いバイオマーカーを抽出するには,質の高い臨床試料を用いた解析が不可欠である.最先端バイオバンクの導入・標準化と,高度化されたプロテオーム・バイオインフォマティクス(多種類のタンパク質データベースの活用と同定正度の高い検索システム)および次世代臨床MSbasedプロテオーム解析システムを統合した解析プラットフォームの確立がDx/CDx研究開発において今後重要となろう.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 919-923 (2014);
View Description
Hide Description
◎質量分析技術の臨床検査応用が臨床化学,臨床微生物の分野で加速している.そのなかでもプロテオミクスの臨床応用として実用化され,すでに臨床現場で活用されているのが細菌・真菌の菌体のプロテオーム解析による迅速同定である.本法の普及により臨床細菌検査に大きなパラダイムシフトが起きている.本法は従来法に比べて迅速かつ低コストである点に特徴があるが,同定率は100%ではなく,菌体の前処理における工夫とデータベースのさらなる充実が必要である.当初はコロニー形成をみてからの利用であったが,血液培養陽性ボトルや細菌性髄膜炎における髄液検体からの直接同定も可能である.今後はstrain typing や抗菌薬に対する感受性・耐性の判定への応用が期待されている.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 925-931 (2014);
View Description
Hide Description
◎以前,2008年に「ゲノミクス,プロテオミクス,そしてグライコミクスの時代へ」というタイトルで本誌に総説を掲載させていただいた.今回のタイトルには,グライコミクスから1 段階進んだグライコプロテオミクスを最後に据えている.また,本誌の2014年5月号(249 巻8号)にも著者の企画による「グライコプロテオミクス」を刊行した.プロテオーム解析では糖鎖は検出されない,グライコーム解析ではタンパク質部分の情報を失ってしまう.糖タンパク質をトップダウンで解析してはじめて機能分子としての糖タンパク質の全貌がみえてくる.したがって,本稿ではグライコプロテオミクスとは何かを基本的に理解していただいて,現時点でどこまで技術が進んだのか,それを生物学および医療に応用する際の問題点は何か,今後に必要とされる技術開発は何か,の順に概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 933-938 (2014);
View Description
Hide Description
◎腎臓病のうち,もっとも患者数の多いのは慢性腎臓病(CKD)である.これが進行すると透析医療や腎移植を受けることを余儀なくされるが,この病気の病因や病態形成の分子機構はほとんど不明なため,特異的治療法はないのが現状である.しかし,この病気の進行には,高血圧,糖尿病,肥満などの生活習慣病が関係していることが明らかなため,生活習慣病の阻止をめざした取組みや治療がなされている.近年,全タンパク質(プロテオーム)を網羅的に研究する科学,プロテオミクスが急速に進歩して病気の解析やバイオマーカーの探索への応用が期待を集めている.本稿では,プロテオミクスを応用して慢性腎臓病の腎組織や患者尿を解析することにより病因や病態の解析やバイオマーカーを探索しようとする研究の一端を紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 939-947 (2014);
View Description
Hide Description
◎病態サンプルを用いて,病態マーカーや創薬の標的となる細胞内異常シグナルネットワークを検索するには,ゲノム解析やmRNA 発現解析,タンパク質の発現解析や特異的翻訳後修飾/相互作用解析などのさまざまな分子解析結果を統合的に総合評価することによってはじめて可能となると考えられる.本稿では,プロテオーム解析とトランスクリプトーム解析による分子発現差異解析を融合的に行い,同時解析データ情報を統合マイニングすることによって膨大な情報から特異的活性化分子群を抽出し,生物学的機能検証を組み合わせて統合的に病態分子メカニズムを解析する方法論を紹介する.とくに脳神経系腫瘍にかかわるRas シグナルの制御因子NF1 遺伝子の欠損によるNF1 病態モデルを用い,新規の神経系分化異常と悪性腫瘍発生にかかわる活性化シグナルを見出した例を紹介し,このような融合的解析が,いかに病態メカニズム解明や標的薬剤開発などへの情報取得法として,重要であるかについて概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 949-952 (2014);
View Description
Hide Description
◎本稿では,著者らが行う肉腫を対象としたプロテオーム解析を紹介する.著者らの肉腫研究は,肉腫のそれぞれの組織型に対応するタンパク質が存在し鑑別診断に有用である可能性を示すところからはじまり,肉腫症例を組織型・治療奏効性・予後などで層別化して腫瘍のプロテオームを比較解析することでバイオマーカーや創薬標的を同定するところまできた.一例を紹介すると,消化管間質腫瘍ではフェチン,骨肉腫ではペロキシレドキシン2,Ewing’s 肉腫ではヌクレオホスミンなどを予後予測または治療奏効性予測バイオマーカーとして同定した.また,プロテオームとトランスクリプトームのデータを統合的に解析することで,消化管間質腫瘍ではPML を予後予測バイオマーカーとして同定した.組織学的に多様性に富む肉腫の研究テーマは尽きることがなく,プロテオーム解析の技術はこれからも進み,ゲノムとプロテオームのデータの統合がはかられるようになるであろう.プロテオーム解析は研究者の創意工夫によるところが大きく,これからも楽しみな研究分野である.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 953-957 (2014);
View Description
Hide Description
◎従来は自己抗体というと,自己免疫疾患やがんでは産生されるが,それ以外の疾患や健常人では存在しないと考えられていた.ところが近年になって抗体測定技術が著しく進歩した結果,実はほとんどのタンパク質に対して多かれ少なかれ自己抗体が出現することがわかってきた.これらは偶発的に出現したとは考えにくく,おそらくは過去の病歴を反映していると推定される.そこで本稿では,抗体マーカーの網羅的スクリーニング方法,および抗体マーカーの有用性について解説する.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 958-962 (2014);
View Description
Hide Description
◎リウマチ性疾患はいまだ病因や詳細な病態が不明であり,診断や治療に苦慮する例が多い.プロテオーム解析により関節リウマチの関節滑膜におけるアネキシン7(Anx7)のリン酸化の亢進が判明し,これはIL-8 などの炎症性ケモカインの分泌を上昇させており,関節炎を増悪させる可能性を示した.抗Anx7 抗体はモデル動物の関節炎を改善した.全身性エリテマトーデスや混合性結合組織病で自己抗体の標的となるU1-snRNP ではこれらの疾患で特異的にU1-68k のリン酸化が低下していることが示され,スプライシング機能の異常につながることが示唆された.Behcet 病や顕微鏡的多発血管炎ではバイオマーカー候補となる蛋白質が検出され,それらの性状により未知の病態が明らかにされている.蛋白質の網羅的な定量解析および翻訳後修飾や断片化の解析によりリウマチ性疾患の病因・病態が解明され,新しい時代の診断・治療法が確立されることが期待される.
-
疾患研究に応用されるプロテオーム解析
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 965-969 (2014);
View Description
Hide Description
◎プロテオミクス手法を用いて,リン酸化や糖鎖修飾に代表されるタンパク質の多様な翻訳後修飾を解析する技術は,近年めざましい進歩を続けている.これらの技術を疾患サンプルの解析に応用することにより,ゲノム情報や遺伝子・タンパク質の発現量の変化に着目したこれまでの解析ではみえてこなかった,疾患特異的なタンパク質の“質的な変化”をとらえることも可能となってきている.本稿では,代表的なタンパク質翻訳後修飾について,おもな機能と関連が報告されている疾患の例,さらにプロテオミクス手法を用いた解析技術の概要について述べる.また,翻訳後修飾プロテオーム解析技術の応用例として,著者らが卵巣がん組織由来の細胞株を用いて,がん組織型特異的なリン酸化タンパク質の網羅的な検出とリン酸化レベルの検証を行った研究について紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 970-974 (2014);
View Description
Hide Description
◎最近のプロテオミクス技術のめざましい進歩により,新しい疾患バイオマーカーの発見および実用化が現実のものとなりつつある.もっとも大きな進歩は,質量分析計を用いてタンパク質が正確に定量することができるようになったことである.著者らは最先端のプロテオミクス技術を駆使し,ヒト臨床検体を用いた大規模なバイオマーカー探索を行い,種々の疾患の新規バイオマーカータンパク質の同定を行ってきた.その代表例のひとつとして,大腸癌組織中の膜タンパク質の網羅的解析およびSRM/MRM 法を用いた検証により,44 種類の新規大腸癌バイオマーカー候補を発見した.また,同様のSRM/MRM法を用いて血漿中に数pg/mLという超微量の濃度で存在するAlzheimer 病サロゲートバイオマーカーペプチドAPL1βの定量に成功した.質量分析計を用いたタンパク質定量法は,ELISAに代表される従来のタンパク質定量法に比べて特異性が高く,安価で,ほぼすべてのタンパク質の大規模な測定が可能であることから,近い将来疾病診断法の主流になると期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 975-979 (2014);
View Description
Hide Description
◎エクソソームは体内のあらゆる細胞から分泌される直径40~100 nm の脂質二重膜小胞である.癌細胞由来のエクソソームはタンパク質や核酸を輸送して遠隔転移や血管新生などに深く寄与していることが明らかとなり,新しい機序の診断法,治療法,ドラッグデリバリーシステム開発に大きな期待が寄せられている.とくに診断の分野では,オリジナルがん細胞の分子情報がコピーされたエクソソームを血中から検出するリキッドバイオプシー法の開発が盛んに行われている.本稿では,疾患とエクソソームの関連に対する最新の知見や,プロテオーム解析に必要な各種エクソソーム精製技術の特徴と注意点,さらに近年創設された国際細胞外小胞学会(ISEV)など世界的なエクソソーム研究の進展についても概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 980-983 (2014);
View Description
Hide Description
◎ Global Human Proteome Project が掲げるプロテオーム研究戦略として,質量分析基盤,抗体基盤,データベース・バイオインフォマティクス基盤プロテオミクスが位置づけられている.なかでも抗体基盤プロテオミクスは,疾患の原因究明や個別化医療に向けたバイオマーカー探索において有用であると報告されている.しかし,バイオマーカー候補タンパク質を多数検体で迅速に検証するための技術基盤はいまだ整備されておらず,探索から検証にかけて律速である問題も明らかになっている.そこで本稿では,創薬標的・バイオマーカー探索から検証までをスムースにつなげるプラットフォームとして,著者らが行っている質量分析基盤と抗体基盤の両プロテオミクスを融合したアレイ基盤プロテオミクス解析について紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 984-988 (2014);
View Description
Hide Description
◎タンパク質は身体の大部分を構成し,代謝,増殖・分化,情報の伝達・制御といった生体反応の大半をつかさどっている.この総体であるプロテオームを解析することの重要性は周知のものであり,その解析手法の開発には大きな期待がもたれていた.著者らはプロテオーム情報を医学・生物学の分野で直接応用できるシステムとして2DICAL(2 Dimensional Image Converted Analysis of Liquid Chromatography and Mass Spectrometry)を開発し,膵がん患者血漿の解析から水酸化プロリンαフィブリノゲンをがん患者で上昇するバイオマーカーとして同定した.2DICAL を用いたプロテオーム解析対象は,培養細胞,臨床標本(生検材料,手術材料),ホルマリンパラフィン切片,免疫沈降(IP)産物など多岐にわたり,さまざまな医学・生物学の場面での応用が可能となっている.本稿では,2DICAL を用いて開発してきた疾患バイオマーカーについて概説し,2DICAL のさらなる応用を論じる.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 989-993 (2014);
View Description
Hide Description
◎血液は全身を循環しており,体の状態を反映しているとともに組織・臓器間の情報伝達ネットワークの媒体として機能している.したがって,そのなかに存在するタンパク質を詳細に分析することは,生命の理解,病気の診断・治療にとって非常に重要である.にもかかわらず,血清・血漿中のタンパク質分析は組織,臓器に比べて非常に難しい点が多く,いまだに十分な情報が得られているとはいい難い.しかし,こうしたなか,質量分析技術をはじめとしたプロテオーム解析技術は近年著しい進歩を遂げており,複雑な生体試料に正面から対峙できる性能をもちつつある.本稿では,最初に血清・血漿のプロテオームについて概観し,これらの詳細で正確な分析を実現するために重要なサンプル調製法(血清・血漿の前処理技術)について,その基本的な考え方とともに概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 995-998 (2014);
View Description
Hide Description
◎分子量10 万以上の高分子量タンパク質は,難溶性タンパク質や膜タンパク質などと同様にその解析が困難であることから,疾患プロテオミクスにおけるひとつのフロンティアであるといえる.がん遺伝子の発現制御にかかわるさまざまな転写因子や,筋ジストロフィー症の原因タンパク質として知られるジストロフィンやフィラミン,甲状腺ホルモンの前駆体として知られるチログロブリンなどはいずれも高分子量タンパク質であるため,通常の二次元電気泳動法ではなかなか解析が困難であった.著者らが開発・改良してきたアガロース二次元電気泳動法(アガロース2-DE)は高分子量タンパク質を解析できるので,これまでに大腸がんや肺がん,食道がんや肝がんなどで,診断マーカーの探索に利用され,多くのマーカー候補タンパク質の解析に貢献してきた.本稿ではまず,アガロース2-DE の特長を紹介するとともに,最近,著者らが行っている応用例についても触れる.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 999-1003 (2014);
View Description
Hide Description
◎逆相タンパクアレイ(RPPA)は細胞溶解液をマイクロアレイ上に集積し,特異的抗体でタンパクを定量的に検出する技術である.アッセイ当りのサンプル必要量はWestern blot の約10,000 分の1 と少なく,定量的な検出が可能であることから,アプリケーションは幅広い.また,サンプルをアレイ化することで,他のタンパク解析技術では難しい数千以上の検体を同一条件上で処理できる.本稿では,がん研究におけるRPPA の応用例を紹介しながらその特徴について述べる.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 1005-1009 (2014);
View Description
Hide Description
◎本稿では,細胞などの生体試料に内在的なタンパク質分解の実態を解析できるPROTOMAP 法(ProteinTopography and Migration Analysis Platform)の概要と,この方法を利用してヒト肝がんの再発予測マーカーを探索した著者らの研究を紹介する.外科的に摘出した肝がん組織を早期に再発が認められた症例とそれ以外の症例に分類し,対照試料とあわせてPROTOMAP 法で解析して得られた約8,500 種類のタンパク質からなる“ペプトグラフ”を比較することで,早期再発症例の肝がん組織では尿素サイクルや解毒代謝などの肝機能にかかわる酵素群が顕著に減少していること,さらには多くのリン酸化タンパク質,とりわけ細胞内のシグナル伝達系を調節するSTAT1 やδ-catenin などの因子が特異的な限定分解を受けていることを見出した.PROTOMAP 法はタンパク質分解が関与するさまざまな生命現象やその異常の解析,さらには疾病の早期診断や進行の予知あるいは創薬のためのあらたなバイオマーカーの探索に有用である.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 1011-1016 (2014);
View Description
Hide Description
◎ ―研究には,“新しい試料”,“新しい手法”そして“新しい装置”が必要である― 著者は2004 年より3 年間,本稿で紹介する“新しい手法(イメージング質量分析,以下IMS)”を基礎とした“新しい装置(質量顕微鏡)”の開発に携わった.現在,国立がん研究センターでは質量顕微鏡の臨床応用を行っているが,新しい測定手法で得られたデータから新しい知見を得るためには,それを正しく評価し判断するための標準手法の開発とその再現性が重要である.IMS では侵襲的な組織採取が必要となるが,対象の分子を直接組織内から検出し,画像化するため,医薬品開発研究と臨床応用の点で非常に大きな期待を集めている.一方で,医薬品開発の迅速化への鍵となるには標準手法を早急に構築し(GLP 準拠を視野に)真に利用可能な技術へと仕上げなければならない.本稿では,この新規分子イメージング手法のひとつであるIMS の概要と手法標準化における問題点を述べた後,将来展望としてタンパク質の可視化について解説したい.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 1017-1021 (2014);
View Description
Hide Description
◎ペプチドホルモンや神経ペプチドに代表される生理活性ペプチドは細胞間シグナル伝達分子の一種で,前駆体タンパク質の特異的な切断や翻訳後修飾(プロセシング)を経てつくりだされる.さまざまな疾病が生理活性ペプチドの情報伝達系の異常と関連していることから,創薬のターゲットとして注目を集めてきている.実際に,ペプチドの作用を外因的に制御する目的で,ペプチド自身,受容体の拮抗薬,あるいはペプチドを分解するプロテアーゼの阻害薬などが開発されて実用化されている.新しい生理活性ペプチドの発見は創薬までの長い過程の最初の第一歩であり,各方面に波及効果をもたらす.本稿では,質量分析を活用した生理活性ペプチド探索の新しいアプローチとのその実例について紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 1023-1028 (2014);
View Description
Hide Description
◎抗体はリンパ球B細胞から産生される生体防御の中心を担う分子であり,外来性の異物を認識し体内から排除するための機能をもっている.とくに,抗体のもつ結合特異性を利用して古くから基礎生物学の分野でタンパク質を認識するためのツールとしての利用されており,タンパク質の検出・定量に大きな役割を果たしてきた.これら抗体は,疾患の発症原因の解明から疾患の診断,さらには治療をも実現するさまざまな分野に応用されているが,これらを多種類のタンパク質の発現や性質を網羅的に解析する,いわゆるプロテオミクスの分野でも有効活用しようとする試みがなされている.現在,ライブラリ化された抗体をプロテオミクスに応用した“抗体プロテオミクス技術”の開発が進んでおり,それらを有効活用することで,疾患バイオマーカーの開発のためのアプローチについて最新の知見を述べる.
-
Source:
医学のあゆみ 251巻10号, 1029-1034 (2014);
View Description
Hide Description
◎バイオマーカー探索のため,多数の患者の組織・体液を試料としてプロテオーム解析するのではなく,疾患由来の細胞株の数種を使用して得られた結果を総合し,臨床に敷衍する方策がある.著者らは独自に開発した網羅的定量プロテオーム解析法(FD-LC-MS/MS 法)を用いて,細胞内で発現し,あるいは細胞外へ分泌されたタンパク質を検出・同定・定量し,バイオマーカー探索を行った.本稿では,細胞株としてヒト大腸がん細胞株,ヒト乳がん細胞株,およびヒト肝細胞株を利用して細胞内発現タンパク質,およびヒト肝細胞培養液中への分泌タンパク質の網羅定量解析を行い,バイオマーカー候補タンパク質,および細胞内タンパク質ネットワークを発見した例について概説する.