Volume 252,
Issue 1,
2015
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【1月第1土曜特集】 ヒト免疫学の新機軸
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医学のあゆみ 252巻1号, 1-1 (2015);
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ゲノム解析
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医学のあゆみ 252巻1号, 5-9 (2015);
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◎原発性免疫不全症(PID)は,免疫系に発現する遺伝子の先天異常が原因で発症する疾患群で,感染症に対する抵抗力減弱を中心症状とし,免疫調節の異常によるアレルギー・自己免疫の発症や免疫学的監視機構の障害による発癌が高頻度で合併する.遺伝子改変マウスの解析が免疫系遺伝子の生体内機能を明らかにしてきたように,PID は“Experiment of nature”としてヒト免疫系遺伝子の生体内機能を明らかにすることに貢献してきた.最近の遺伝学の進歩により,これまでに原因が明らかにされていないPID 患児の全エクソンシークエンス,全ゲノムシークエンスが可能になり,PID 研究はあらたな時代に突入した.今後も新規の原因遺伝子がつぎつぎと同定されると予想され,PID研究のヒト免疫学研究への貢献がますます大きくなることが期待される.
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医学のあゆみ 252巻1号, 11-16 (2015);
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◎自己炎症性疾患は,自然免疫関連遺伝子の異常に伴う炎症を主病態とする疾患群である.疾患特異的なバイオマーカーが乏しいため,診断において遺伝子検査が重要な位置を占める.この15年間で,約20の原因遺伝子が同定されてきた.近年,次世代シークエンサーに代表される遺伝子解析技術の進歩により,より少ない症例の疾患の原因遺伝子同定が可能となってきた.それに伴って機能解析による変異遺伝子と表現型の関連性の証明が,より重要な意味をもってきている.また,次世代シークエンサーの臨床への応用として,潜在性体細胞モザイクの検討,自己炎症性疾患原因遺伝子のパネル解析が可能となった.これらの技術開発は自己炎症性疾患の診断における正確性の向上・効率化に寄与するだけでなく,原因不明の炎症病態を示す患者の絞り込みや,さらなる新規遺伝子探索の一助となっている.
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医学のあゆみ 252巻1号, 17-24 (2015);
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◎大規模ヒトゲノム解析の実施を通じて,ありふれた疾患(common disease)のひとつである自己免疫疾患においても,感受性遺伝子が数多く同定される時代となった.ゲノム解析の成果を多彩な生物学的・医学的データベースと横断的に統合することにより,新しい疾患病態の解明やドラッグリポジショニングを含む新規創薬が可能となってきている.また,長らく解明されていなかったMHC領域における発症リスクについても,HLA imputation法の適用による網羅的解析が可能となり,複数の感受性HLA 遺伝子多型が同定されている.本稿では,自己免疫疾患における大規模ヒトゲノム解析の現状について説明したい.
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医学のあゆみ 252巻1号, 25-31 (2015);
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◎ゲノム情報の基盤整備やジェノタイピング技術の向上により,アレルギー疾患も含め多くのcommon diseaseのゲノム解析において,ゲノムワイド関連解析(GWAS)が数多く取り組まれてきた.気管支喘息の17q21 領域のように,これまでアレルギー疾患との関連が報告されていなかった関連領域がいくつも同定され,アレルギー疾患の病態にどのように関与するか機能的解析が進められている.また,種々のアレルギー疾患において共通するゲノム領域が同定され,アレルギー疾患に共通する遺伝要因として注目されている.数多くの有力な関連領域が同定され,アレルギー疾患の病態のより深い理解に貢献した一方で,missing heritabilityのような未解決の問題も残されている.
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医学のあゆみ 252巻1号, 33-38 (2015);
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◎遺伝子改変技術の導入により,動物モデルにおける免疫システムの理解は飛躍的な進展を遂げたのに対し,これまでのヒト免疫システムの理解は十分なものとはいえない.外来抗原への反応性やさまざまな免疫疾患への感受性を規定しているものとして,ヒト免疫機能の個人間での多様性が考えられるが,その背景にはヒトゲノム配列の多様性が存在している.次世代シークエンシング技術の登場によってゲノム,エピゲノム,トランスクリプトームを統合的に解析することが可能となり,ヒト免疫研究にも変革がもたらされている.すなわち,RNA-seq,ChIP-seq,eQTL 解析などの技術を組み合わせることによって,ゲノム配列の多様性によってもたらされるエピゲノム変化・発現変化を網羅的に解析できるようになり,疾患感受性多型が疾患につながるメカニズムを包括的に解析可能な時代となったのである.
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リンパ球解析
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医学のあゆみ 252巻1号, 41-46 (2015);
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◎ヒト末梢血リンパ球を解析するためには現在,フローサイトメトリー(FCM)が基礎的手技となっている.ただ,細胞表面マーカーを基準にした分類を行うにあたり,現時点では各細胞サブセットの定義が国際的に標準化されているわけではない.Human Immunology Project Consortium(HIPC)は,ヒト細胞サブセット分類の標準化を目標として検討を進めているアメリカのプロジェクトである.本稿では,HIPC の提言をもとに厚生労働省研究班で作成したヒト末梢血単核球(PBMC)解析マニュアルの話題を中心に,ヒトリンパ球の実際の解析について解説する.
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医学のあゆみ 252巻1号, 48-54 (2015);
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◎サイトメトリーの進歩により,現時点では18~22色,20~24パラメータの解析が可能になっている.細胞内外の多種の抗原を測定することにより詳細な免疫担当細胞亜群解析が可能になり,さまざまな分化段階のB 細胞,多様なT 細胞亜群,NK 細胞,樹状細胞などについて,精度の高いデータを得ることができる.リンパ組織には多種類の免疫細胞が混在し,サイトメトリーは免疫能解析,病態解析に必須の手法となっている.多パラメータ解析により,幹細胞の性質を有するT 細胞やinnate lymphoid cells などあらたな細胞集団の特性が明らかになった.さらに,細胞内リン酸化蛋白測定や細胞の螢光バーコーディング手法などにより付加的情報も得ることができる.核酸を染色することにより,細胞周期や細胞の生死・老化,微生物感染についての情報も獲得できる.多色解析においてはその特性を理解し,螢光色素や抗体の選択,コンペンセーション,適切な情報抽出などが重要になる.
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医学のあゆみ 252巻1号, 55-60 (2015);
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◎ヘルパーT細胞は,外来微生物に対する免疫応答の場で司令細胞として生体を防御をするが,逆にその分化の異常や過剰な活性化が自己免疫疾患やアレルギーなどの病態を引き起こす.近年の精力的な基礎研究により,あらたなヘルパーT細胞が同定されるとともに,それぞれのサブセットの間には可塑性・多様性が存在することが明らかになってきた.ヒトを対象とした免疫サブセット研究により,ヘルパーT細胞の分化と機能はマウスとヒトで異なることも指摘されている.ヘルパーT細胞の多様性が多くの免疫疾患の発症や遷延化にかかわることから,今後,ヒトにおけるヘルパーT細胞サブセットの多様性のメカニズムが解明されることによって,免疫疾患の本質的な病態の理解と免疫異常の是正をめざした病態制御ヘの進展が期待される.
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医学のあゆみ 252巻1号, 61-68 (2015);
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◎濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞は,抗原特異的な抗体反応の誘導に中心的な役割を果たすCD4+T 細胞である.正常な抗体反応の誘導には適正なTfh 細胞による反応が必要であり,過剰でも不足でも問題を引き起こす.Tfh 反応が過剰になると自己抗体産生による膠原病を引き起こす一方,Tfh 反応が不足すると感染症やワクチンにおける抗体反応の低下や欠失の原因となる.したがって,ヒトにおけるTfh 細胞の分化メカニズム,Tfh細胞の機能の解明はこれらの病態の解明に必須である.Tfh 細胞は二次リンパ組織内に存在するが,ヒト末梢血内に存在するCXCR5+ヘルパーT 細胞とリンパ組織内Tfh 細胞との関係が最近の研究で徐々に明らかになってきた.現在では末梢血CXCR5+ヘルパーT 細胞は,血液内に存在するTfh 細胞(あるいはそれに関連した細胞)のメモリー細胞であると広く認識されるようになった.さらに末梢血メモリーTfh 細胞は,表現系や機能の異なるいくつものサブセットで構成されていることが明らかになった.本稿では,Tfh 細胞の概説の後,ヒト末梢血でみられるメモリーTfh 細胞がどのようなサブセットで構成されているか,その解析がどのようにヒトでの病態の解析に役立つかを中心に解説したい.
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医学のあゆみ 252巻1号, 69-74 (2015);
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◎制御性T 細胞(Treg)は免疫応答を負にコントロールしているT 細胞で,自己免疫疾患をはじめ移植免疫,アレルギー反応,がん免疫など,さまざまな免疫応答において重要な役割を果たしていることが明らかになってきている.Treg は1995 年にCD4およびCD25を発現している細胞のなかに,免疫応答を負に制御するT細胞が存在していることから発見され,2001 年にはヒトでも同様の細胞が同定された.しかし,Treg のマスター遺伝子として同定されたForkhead boxP3(Foxp3)が,ヒトではナイーブT 細胞の活性化によっても誘導されることが明らかになり,ヒトTreg の定義が混乱している.著者らはCD4,FoxP3(CD25)およびCD45RAを同時に染色することにより,ヒトTregをより明確に定義できることを明らかにした.本稿ではこの定義を用いたTregの解析,とりわけがん免疫におけるTreg の解析について述べたい.
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医学のあゆみ 252巻1号, 75-80 (2015);
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◎免疫記憶は再侵入してきた抗原を効率よく排除する,生体内免疫システムの中枢である.免疫記憶を形成する細胞群の司令塔として働く細胞がメモリーCD4T(Th)細胞である.免疫記憶の要として機能している一方で,メモリーTh 細胞は喘息などの慢性炎症をはじめとした慢性炎症疾患の病因となりうる.著者らはメモリーTh 細胞のなかでも疾患の原因となる細胞群を病原性(pathogenic)メモリーTh 細胞と名づけている.また,近年の報告から,メモリーTh細胞は比較的単一な集団であるエフェクターTh 細胞と比べ,機能や局在などからさまざまな亜集団(heterogeneity)に分類されることがわかってきている.本稿では慢性アレルギー疾患と関連の深いPathogenic メモリーTh2細胞に焦点をあて,その機能や特徴について概説したい.
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治療に関する解析
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医学のあゆみ 252巻1号, 83-87 (2015);
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◎関節リウマチ(RA)の病態には多くの炎症性サイトカインが関与している.サイトカインのなかでも中心的な役割を果たすTNF-α,IL-6,IL-1βなどに関する研究が進み,これらの血中濃度が疾患活動性を反映したり関節破壊進行や薬剤有効性の予測因子であるなど,臨床的に有用であることがわかってきた.実際の臨床現場で汎用するためにはハードルがあるが,今後さらなる研究が進み,RA 病型分類やテーラーメイド治療が実現されることが期待される.
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医学のあゆみ 252巻1号, 89-95 (2015);
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◎多くの自己免疫疾患では免疫抑制療法による病勢コントロールが行われてきたが,寛解導入および維持が困難な難治性病態を呈する症例が認められる.自己免疫疾患の病態解明の進展に加えて遺伝子工学技術の進歩を背景として生物学的製剤の開発が進められ,病態に則した特異性の高い治療が可能となりつつある.関節リウマチ(RA)では生物学的製剤の登場により多くの例で寛解導入・維持が可能となっており,RA 以外の自己免疫疾患においても生物学的製剤による特異的治療が可能となり,治療選択肢が広がることが期待される.
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医学のあゆみ 252巻1号, 97-104 (2015);
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◎ワクチンは歴史上もっとも成功した医療技術であり,現在もさまざまな感染症の発症や重症化を防いでいる.一方で,HIV や結核,マラリアをはじめ,多くの重要な感染病原体に対するワクチンがいまだ開発されていない現状を打破すべく,ワクチン開発研究はあらたなイノベーションの時代を迎えようとしている.その鍵となる技術のひとつがアジュバントである.アジュバントは古くから知られているが,その自然免疫応答の活性化がワクチンの十分な効果を発揮するために必須であることが示されて以来,多くのあらたなアジュバントの開発やメカニズムが知られるようになった.そのため,より有効で,安全なアジュバントの分子設計が可能になりつつある.加えて新規のデリバリーシステム・抗原発現様式など,さまざまな技術を用いた新しいワクチンの開発も積極的に行われている.これからのワクチンは感染症のみならず,がんやアレルギー,さらには神経変性疾患や生活習慣病などの疾患を予防・治療できる可能性を有している.
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医学のあゆみ 252巻1号, 105-110 (2015);
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◎最近,免疫チェックポイント阻害療法とT 細胞養子免疫療法の2つのがん免疫療法で,進行がんに対しても明確な持続的な治療効果が示され,がん免疫療法は標準がん治療として確立された.一方,まだ効果が認められないがん種や患者も多く,今後,治療効果を予測して効果が期待できる症例を選択するバイオマーカーの同定,治療効果が期待できない症例を効果が得られるように変える方法も含めた,抗腫瘍T 細胞応答に重要な複数のポイントを制御する複合免疫療法による治療効果の改善,さらに患者の免疫状態評価に基づいた個別化がん免疫療法の開発が期待されている.そのためには,免疫介入臨床試験における体系的な免疫応答解析,各種システム生物学的手法,in vivo イメージング法と組み合わせたヒト化マウス技術,iPS細胞技術などの新技術を駆使したヒトがん免疫応答の解明が重要である.
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医学のあゆみ 252巻1号, 111-115 (2015);
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◎代表的な免疫性神経疾患である多発性硬化症(MS)は臨床・MRI 画像所見・治療反応性などにおいて多様性が顕著である.しかし近年,抗アクアポリン4抗体の上昇を伴う視神経脊髄炎(NMO)がMS から分離された.さらに,NMOが除外されたMS症例についても治療薬に対して反応性の異なるグループが含まれ,古典的診断基準による“広義のMS”は免疫病態・遺伝素因・環境要因の異なるorphan diseaseの集合体または疾患スペクトラムである可能性が強くなってきた.このようなヘテロな患者集団に対して単一薬剤で対応することは困難であり,バイオマーカーで規定される個々の免疫病態に即した治療の実践が究極の目標になっている.その一里塚ともいえる研究として,NMO患者血液試料を用いた病態解析に基づいた抗IL-6受容体抗体の探索的導入について紹介する.
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医学のあゆみ 252巻1号, 117-122 (2015);
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◎関節リウマチ(RA)などの自己免疫疾患の治療は,生物学的製剤が導入されて画期的な変革をもたらした.しかし,生物学的製剤は点滴か注射での使用に限定され,同様の有効性を有する内服可能な低分子量化合物を用いた分子標的薬の開発が注目される.自己免疫疾患では多様なシグナル伝達経路の活性化が病態形成に関与し,それらは治療標的としてのポテンシャルを有する.低分子量化合物ならば特定の立体構造の構成が可能で,細胞内シグナル伝達分子にピタッとはまって阻害することも可能となる.現在,RAを対象としてリンパ球のシグナル伝達に重要な役割を担うチロシンキナーゼJAKを標的とした経口分子標的薬トファシチニブの市販に引き続き,多数のキナーゼ阻害薬の治験が進行している.しかし,長期安全性は重要な課題であり,十分な議論とエビデンスの蓄積が必要である.安全性の高い分子標的薬の開発が進展すれば,難治性自己免疫疾患にあらたな治療革命をもたらすものと期待される.
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あたらしいアプローチ
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医学のあゆみ 252巻1号, 125-131 (2015);
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◎さまざまな遺伝子組換えマウスを用いて,免疫学は20 世紀後半に飛躍的な発展を遂げた.マウスを用いた免疫学を基盤に,ヒトの免疫システムを理解し,現在の医療で克服困難な疾患の克服をめざすことが望まれる.著者らはヒト造血幹細胞を免疫不全マウスに移植することで,造血・免疫系ヒト化マウスを作製した.ヒト化マウスは,ヒト免疫が造血幹細胞からいかに体内で再構築されるかだけでなく,再構築された後のヒト免疫細胞による機能のin vivoでの解析も可能とした.一方,xenograft であるヒト化マウスでは,ヒト細胞がマウス環境で分化・成熟するために,環境からのシグナルが免疫細胞に正しく伝わらないリガンド・受容体の結合もある.そのため,環境をヒト化した新しいヒト化マウスを開発することで,よりヒト免疫に近い状態を再現し,human immunologyの発展に貢献すべく研究を進めている.
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医学のあゆみ 252巻1号, 133-138 (2015);
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炎症性腸疾患は腸管免疫の異常により発症すると考えられており,その病因・病態解析が進められている.炎症性腸疾患症例のゲノム全領域関連解析(GWAS)により,疾患特異的な遺伝子の解析が進んでいる.ヒトの腸管免疫を理解する一手法として腸管から各細胞を単離して機能を解析する方法があるが,手技上の問題,個体差などによりマウスの解析と比較すると,いまだ解析は発展途上である.しかし近年,腸管の免疫系細胞の機能解析が進み,マウスで解析された各細胞のカウンターパートの探索が進んでいる.CD103+樹状細胞,CD14+マクロファージ,Th17 細胞を誘導するCD14+CD163low細胞などがヒト腸管より単離され解析されている.また,腸内細菌と腸管免疫に関する研究が進み,偽膜性腸炎や潰瘍性大腸炎に対して糞便移植による治療が試みられている.本稿では著者らの最近の知見と,現在のヒト腸管免疫の知見を概説する.
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医学のあゆみ 252巻1号, 139-143 (2015);
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◎MHCテトラマーはエピトープとMHC分子の結合体を四量体化し螢光標識することで作成され,抗原特異的T 細胞を直接検出することができる.CD4 陽性T 細胞は抗原特異的免疫応答に関して重要な役割を担っており,抗原特異的CD4陽性T細胞の解析は疾患の病因・病態の解明に欠かせない.MHC classⅡテトラマーによるヒト疾患における抗原特異的T 細胞の解析は,アレルギー,セリアック病,多発性硬化症(MS),関節リウマチ(RA)などの疾患で行われている.テトラマーによる新規エピトープの検索,テトラマー陽性細胞の表現型解析による疾患の病態解明,テトラマー陽性細胞のT 細胞受容体の解析,治療前後でのテトラマー陽性細胞の変化の解析などの研究が,テトラマーを用いてヒト疾患を対象に行われている.一方で,研究室間でのテトラマー技術の標準化は今後の課題である.