Volume 252,
Issue 7,
2015
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あゆみ 分子標的薬耐性メカニズムと対策
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医学のあゆみ 252巻7号, 773-775 (2015);
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医学のあゆみ 252巻7号, 777-781 (2015);
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◎慢性骨髄性白血病(CML)の予後は,ABLチロシンキナーゼ阻害剤メシル酸イマチニブの出現によって劇的に改善した.しかし,イマチニブに耐性を示す症例も少なからず存在し,ABLキナーゼドメインの点突然変異など,その耐性機序が明らかとなってきた.イマチニブ耐性機序を克服するために,第二,第三世代ABL チロシンキナーゼ阻害剤が開発された.しかし,いまだすべての問題が解決したわけではない.
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医学のあゆみ 252巻7号, 783-787 (2015);
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◎EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)は2002年にゲフィチニブがわが国で承認された後,すでに10年以上の使用経験が得られている.EGFR-TKIの登場は,固形がんにおける分子標的治療の幕開けとなった一方,1~2年後にほぼ全例が耐性を獲得することから,耐性機序の解明に多くの努力がなされてきた.現在,耐性化の原因としてはおもに,①二次性変異(ゲートキーパー変異),②バイパス経路の活性化,③標的下流の活性化,④その他の原因,が知られている.これらの原因のなかでは二次性変異がもっとも頻度が高く,変異EGFR選択的阻害剤が早期臨床試験で良好な成績を示すことから,今後臨床応用されるものと期待される.一方で,同一腫瘍のなかにも複数の耐性機序が認められることから,不均一性を示す耐性化腫瘍に対し有効な治療法を開発することが今後の課題である.
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医学のあゆみ 252巻7号, 789-795 (2015);
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◎未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)は,2007年にSodaらによって同定されたあらたな肺癌の原因遺伝子であり,非小細胞肺癌症例の原因遺伝子の5%前後を占めている.ALK融合遺伝子陽性肺癌に対してcrizotinib が著効することが示され,また標準化学療法に対する優越性も証明された.また,alectinibやceritinibなどの次世代ALK阻害剤も,ALK融合遺伝子陽性肺癌に対して高い奏効率を示すことが証明された.しかし,多くの症例で耐性を獲得することが知られており,耐性獲得機序として,ALK遺伝子の二次変異,ALK遺伝子のcopy number gain やbypass track による耐性獲得(EGFR,K-ras,KIT,MET やIGF-1R など)がこれまでに報告されている.また,耐性獲得例に対する治療戦略として,次世代ALK阻害剤,bypass track に対する阻害剤の使用やHSP90阻害剤などが有望であると考えられる.しかし,すべての耐性獲得機序が解明されているわけではなく,耐性獲得機序の解明とそれを克服する治療戦略の検討が今後の重要課題である.
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医学のあゆみ 252巻7号, 797-802 (2015);
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◎ROS1はALKと相同性の高いチロシンキナーゼであり,ALKと同様に近年,肺がんをはじめとしてさまざまながんにおいて融合遺伝子が発見された.ROS1チロシンキナーゼ阻害薬としてALK阻害薬Crizotinibが有効であることが明らかにされ,現在臨床試験が進められており,phaseⅠの結果からは非常に高い奏効と1年以上の無増悪生存期間(PFS)が報告された.しかし,他のチロシンキナーゼ阻害薬でみられたようにROS1融合遺伝子陽性肺がんにおいてもCrizotinib 耐性が生じ,腫瘍の再発が起こることが確認されている.最初にみつかったCrizotinib耐性となったROS1融合陽性肺がん症例では,ROS1のキナーゼ領域内のG2032R変異がみつかっている.この変異はALKの各種ALK阻害薬耐性を引き起こすG1202R変異と相同であり,solvent frontとよばれる領域に存在する.このG2032R変異型ROS1に対しても有効な阻害薬として最近,Foretinib,Cabozantinibが有効であることが培養細胞株レベルで示されており,なかでもCabozantinibは甲状腺がんの治療薬としてアメリカにおいて承認されており,今後のさらなる検討が期待される.
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医学のあゆみ 252巻7号, 803-808 (2015);
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◎進行・再発した消化管間質腫瘍(GIST)の治療薬には,KIT阻害剤であるイマチニブ,スニチニブ,レゴラフェニブ,の3剤がある.それぞれの薬剤に対する耐性は造影CT で臨床診断されることが多い.GISTの薬剤耐性は,①治療開始時からその薬剤に感受性を示さず,6カ月以内に病変が進行する一次耐性と,②一度は腫瘍縮小などの治療効果を示した後,再増大する二次耐性,に分けられる.その分子メカニズムとしては,どちらにもGIST 細胞のもつ遺伝子変異が関連し,一次耐性の主原因はGISTが発生時よりもっている遺伝子変異であり,二次耐性の主原因は上記薬剤の治療中に生じたと考えられるKIT あるいはPDGFRA遺伝子の二次遺伝子変異である.今後,進行・再発GIST患者の予後改善には,遺伝子情報などを参照しながら個々の症例ごとに最適な薬剤を選択し,有害事象をコントロールし,3剤を使い切ることが重要である.
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医学のあゆみ 252巻7号, 809-813 (2015);
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◎ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)は,全乳癌の約15~20%に過剰発現が認められている.HER2 陽性乳癌は予後不良のフェノタイプとされてきたが,近年の抗HER2 療法の登場により治療成績は飛躍的に向上した.しかし,一部のHER2 陽性転移再発乳癌患者はトラスツズマブに不応性であり,また効果を認めた症例においてもその約半数が1年以内に耐性を獲得することが知られている.耐性メカニズムの究明とその克服は,HER2陽性乳癌治療にとって重要な課題となっている.本稿では,現在確認されている抗HER2療法耐性の機序と今後の展望について述べる.
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医学のあゆみ 252巻7号, 814-818 (2015);
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◎がんの増殖には血管新生が必須であるため,これを標的とした血管新生阻害剤の臨床応用が進んでおり,すでにそのいくつかは実臨床で良好な効果を発揮している.しかし,その効果は限定的で,これらの薬剤に対する耐性現象が臨床現場で問題となっている.現時点ではヒトがん組織における血管新生阻害剤耐性メカニズムの多くは不明であるが,マウスモデルによる検討から,①低酸素環境下でがん細胞の悪性度が増し,代わりとなる他の血管新生促進因子が産生される,②骨髄由来細胞や線維芽細胞など,宿主由来細胞が集積し血管再構築にかかわる,③がん幹細胞様細胞が血管内皮細胞に分化し血管を再構築する,④周皮細胞(pericytes)が腫瘍血管を保護する,などの機序が報告されている.さらに最近,著者らは肺癌・悪性胸膜中皮腫の抗血管内皮増殖因子(VEGF)抗体治療耐性にかかわるあらたな細胞として,線維細胞(fibrocyte)を同定した.今後,血管新生阻害剤耐性克服に向けたさらなるメカニズムの解明,バイオマーカーの開発が望まれる.
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連続対談 vol.2
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医学のあゆみ 252巻7号, 830-834 (2015);
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この対談では,“ 研究者のキャリア/スキル論” 第一人者の島岡 要氏が,医師あるいは研究者の肩書きに“ スラッシュ” を介して,第2・第3の付加価値を加えていく生き方を実践されている方をゲストに迎えてお話を伺い,そのキャリアスタイルの魅力を探っていきます.
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連載
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iPS 細胞研究最前線―疾患モデルから臓器再生まで 14
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医学のあゆみ 252巻7号, 824-828 (2015);
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◎筋萎縮性側索硬化症(ALS)やAlzheimer病といった神経疾患の患者のinduced pluripotent stem cel(l iPS細胞)を樹立し,疾患解析を行うという研究手法が確立されつつある.患者由来のiPS 細胞を用いて,より精度の高い研究をめざすなかで,いくつかの課題が明らかになってきた.コントロール細胞としてどのような細胞を用いるのかという点や,樹立したiPS細胞におけるクローン間のばらつきが存在しうるという点は検討を要する重要な課題と考えられる.近年,あらたな技術を用いて患者iPS細胞の有する変異遺伝子を改変し,遺伝子背景が一致したコントロールiPS細胞(isogenic control iPS 細胞)を作製することが可能になり,課題の克服が進められつつある.本稿では,このような遺伝子改変技術を用いた神経疾患iPS細胞の研究について述べる.
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フォーラム
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パリから見えるこの世界 37
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医学のあゆみ 252巻7号, 835-839 (2015);
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続・逆システム学の窓 6
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医学のあゆみ 252巻7号, 841-845 (2015);
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・がんのなかには慢性の微生物感染が引き金となって起こるものがあり,病原微生物を除去することによりがん化のプロセスを止められる可能性がある.21 世紀に入り,胃がんと肝がんでそれが現実になろうとしている.胃がんはヘリコバクター・ピロリ菌の除菌が本格的に取り組まれ,肝がんではC 型肝炎ウイルスの経口薬での除去が本格的に開始されようとしている.・しかし,感染者にがんが多いという疫学的な関連は示されているものの,慢性感染症による発がんの分子メカニズムの実態はまだよくわかっておらず,一度,がん,とくに再発や転移を伴う進行がんになると治療法も限界がある.また,がんの感染症予防による治療に対して,とくに医療費との関連で論争が起こりつつあり,その検証を求める議論もある.・そこで,今回と次回の2 回にわたって,胃がんや肝がんの微生物による発がんメカニズムはどれほどわかってきているのか,微生物の除去はどの程度確実でどのような副作用があるのか,除菌できなかったときに再度試みるメリットはどの程度あるのか,注意深くデータをみていく.・慢性感染のなかで,微生物に寄生されながら,ヒトが,いわば共生してきた歴史から一部の微生物と手を切る時代への転換にどう踏みきるべきか,検証すべき時がきている.
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TOPICS
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 252巻7号, 819-820 (2015);
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免疫学
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医学のあゆみ 252巻7号, 820-821 (2015);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 252巻7号, 822-823 (2015);
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