Volume 252,
Issue 9,
2015
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あゆみ 食物アレルギー―研究と臨床の最新情報
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医学のあゆみ 252巻9号, 913-913 (2015);
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医学のあゆみ 252巻9号, 917-921 (2015);
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◎アレルギー疾患を含め多くのcommondiseaseのゲノム解析において,ゲノムワイド関連解析(GWAS)が数多く行われてきた.現在では特定の遺伝子群や,アレル頻度の人種差に対応したさまざまなカスタムアレイが開発されつつある.食物アレルギーにおいては,ピーナッツアレルギーにおけるFilaggrin(FLG)遺伝子の変異や,食物アレルギーの関連疾患と考えられる好酸球性食道炎のGWASの報告が重要と思われる.これまでに技術的に困難であったrarevariantの解析やSNP以外の遺伝子多型や変異についても今後,食物アレルギーの遺伝的解析に応用されることが望まれる.
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医学のあゆみ 252巻9号, 923-926 (2015);
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◎本稿では,著者らが行った学童期大規模疫学調査(ASK スタディ)の解析をもとに,食物アレルギーの発症機序を考察する.食物アレルギーと誕生季節の関連では,乳児期湿疹や乳児期食物アレルギーは秋冬生まれに多かった.多変量解析の結果,秋冬生まれに食物アレルギーが多いのは,生後早期の皮膚バリアが障害される結果,食物経皮感作が促進されることが原因と推察できた.とくに秋冬生まれは乳児期早期からの湿疹予防が,食物アレルギー予防のために重要かもしれない.食物アレルギーと出生順位の関連では,後に生まれるほどアレルギーになりにくいという出生順位効果が顕著にみられた.本効果の機序として衛生仮説と胎内環境説があるが,さらに検討が必要である.また,低出生体重児は学童期の食物アレルギー有症率が有意に低かった.低出生体重にみられる胎内環境変化は,免疫系に対してはアレルギー反応を抑える方向に働くのかもしれない.これらの出生直後や胎生期の環境要因が食物アレルギー発症に与える影響について,さらに研究が進むことを期待したい.
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医学のあゆみ 252巻9号, 927-931 (2015);
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◎食物アレルギーを起こす原因物質となる抗原はおもに食物に含まれる蛋白質であり,アレルゲンとよばれる.遺伝子工学,構造生物学,情報生物学などの研究分野の技術を利用しながら,食物のアレルゲンについて分子レベルでの解析が進展してきた.そしてアレルゲン分子(アレルゲンコンポーネント)と臨床との相関についても明らかになってきている.アレルゲンコンポーネントは真の感作源の同定,症状の誘発のリスクマーカー,および臨床診断の正確性の向上などにおいて有用とされる.このようなアレルゲンコンポーネントを利用した診断はcomponent-resolved diagnostics(CRD)などとよばれ,将来の日常診療に役立つ技術として期待される.
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医学のあゆみ 252巻9号, 932-937 (2015);
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◎食物アレルゲン特異的IgE抗体検査は,抗体価と経口負荷試験における陽性的中率の関係がプロバビリティーカーブとして示されている.さらに,陽性的中率は患者の年齢や既往歴,さらに抗体価の年次推移など臨床的な背景を含めて変動するものであり,それらを総合的に判断して誘発症状のリスクを推測することになる.小麦のω-5グリアジン,ピーナッツのArah2などコンポーネント特異的IgE 抗体検査は,一定のcutoff値以上で高い陽性的中率が期待できる.皮膚プリックテストや好塩基球ヒスタミン遊離試験は,生体反応を検出するという点で診断により直結した検査といえるが,実施時の注意や検査原理をよく理解して結果を解釈する必要がある.いずれにしろこれらは診断の補助手段であり,詳細な問診や経口負荷試験によって摂取時の誘発症状を確認することが,食物アレルギーの確定診断に必須の要素となる.
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医学のあゆみ 252巻9号, 938-944 (2015);
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◎食物アレルギーの治療・管理の基本は,正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去である.食物アレルギーの診断および耐性獲得の確認には,食物経口負荷試験(OFC)を行うのが望ましいとされるが,OFCを施行可能な体制をつくるためには,人員配置,負荷試験食の作製など準備すべきことが多い.本稿では,OFCの目的・方法を各国のガイドラインをもとに解説する.具体的なOFCの方法については選択基準や施行時期,負荷試験の準備の方法に関して述べる.OFCにより誘発される症状へは重症度に応じて対応することが望ましく,その重症度に応じた対応方法について解説する.OFCを行った後の指導法については,OFCの結果に基づいた栄養食事指導を含めて解説する.
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医学のあゆみ 252巻9号, 945-950 (2015);
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◎食物アレルギーに対する経口免疫療法(OIT)では,多くの症例で症状誘発の閾値を上昇させることができる.治療反応性は症例の重症度や抗原によって異なり,牛乳アレルギーでは治療に難渋する.一方,治療による誘発症状はほとんどの症例で経験し,患者の重症度にかかわらずまれにアドレナリン自己注射薬を必要とすることがあるため,症状誘発時の対応についてかならず準備が必要である.解決すべき問題点として,好酸球性腸炎の合併や管理不要となる耐性化判断の目安がないことなどが指摘されているため,現時点での一般診療化は勧められない.舌下免疫療法(SLIT),経皮免疫療法(EPIT),抗IgE モノクローナル抗体を用いた治療など新しい治療も試みられており,今後は患者の重症度に応じたOITによる治療成果が期待される.
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医学のあゆみ 252巻9号, 951-956 (2015);
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◎食物アレルギーの原因となる食品は多彩で,食物アレルギーの対応では個々の患者で原因食品を同定することがきわめて重要となる.しかし,原因食物検索はかならずしも容易ではなく,思わぬところに原因があることがある.加水分解コムギを含有する石鹸を使用して,加水分解コムギに経皮・経粘膜感作され,経口摂取した小麦に交差反応してアレルギーを発症した事例,マダニ咬傷によりマダニの糖鎖成分に感作され,同様の糖鎖を含有する食肉やセツキシマブに対するアレルギーを発症した事例,クラゲ刺傷によりポリγグルタミン酸に感作され,ポリγグルタミン酸を含む納豆にアレルギーを発症した事例が最近報告されたが,これらはそのよい事例である.本稿では,これらの奇怪なアレルギー事例の病態を解析した研究を紹介する.
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医学のあゆみ 252巻9号, 957-961 (2015);
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◎近年,“(旧)茶のしずく石鹸”という洗顔石鹸を使用することによって,その添加成分であった“グルパール19S”という製品名の加水分解コムギに対して経皮経粘膜的に感作され,その結果,経口小麦アレルギーを発症するという疾患の流行が社会問題になっている.この石鹸で大きな被害が引き起こされた原因として,石鹸の販売量が多く,かつグルパール19Sの分子量が大きく,製品中での濃度も高かったことがあげられている.さらに,酸加熱処理によるグルテン蛋白の脱アミド化により,感作性が増強されていた可能性が指摘されている.本稿では,この問題の概要,当該疾患の臨床的特徴,グルパール19Sの抗原性に関する最新の知見について概説する.
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連載
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iPS細胞研究最前線-疾患モデルから臓器再生まで 16
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医学のあゆみ 252巻9号, 969-975 (2015);
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◎骨格筋疾患には有効な治療法が確立されていない難病が多くあり,新規治療薬の開発に向け患者由来iPS細胞を活用した研究が期待されている.その実現のため著者らは,高効率できわめて再現性高くiPS細胞を骨格筋へ分化誘導させる方法を確立し,三好型ミオパチーの膜修復異常という病態再現に成功した.Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)に対してはエクソンスキッピング製剤の開発が進んでいるが,この治療法は遺伝子変異特異的であるため適応患者が限られている.著者らはDMDに共通の初期病態モデルを構築し,多くの患者を対象にできる治療薬の開発を進めている.また,顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーや筋強直性ジストロフィーにおいては未分化状態で原因遺伝子が発現していることから,未分化iPS細胞を用いての疾患モデル作製が報告されている.今後,スクリーニングに適した病態再現系を構築することで,多くの筋疾患に対するあらたな薬剤の開発につながるものと期待できる.
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フォーラム
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続・逆システム学の窓 7
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医学のあゆみ 252巻9号, 977-981 (2015);
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・わが国の肝臓がんによる死亡者は,年間3万人あまりである.その3/4以上は慢性のC型肝炎ウイルス保因者であり,肝臓がん予防にはウイルスの除去が重要と考えられてきた.従来はインターフェロンとウイルス増殖阻害剤がおもに用いられてきたが,わが国に多いタイプのC型肝炎はインターフェロンで根治しにくく,使用中は減少しても治療終了後に再燃することが多く,発熱,全身倦怠や,血小板減少に加えてうつ症状の副作用も問題であった.・一般に慢性感染症の原因微生物の除去は,単剤では耐性菌の出現により再燃しやすく,根治が難しい.一方,複数の薬を1日何回も複雑に分けると飲みにくく,飲み忘れや効果不足になりやすく耐性菌を生むことが多い.結核では抗結核剤を第三者の前で服薬確認する方式が大きな成果をあげている.・C型肝炎ウイルスは10個の蛋白質をコードするRNAウイルスであるが,そのうちのNS5B 蛋白質のRNA ポリメラーゼ阻害剤と,まだ機能はわかっていないNS5A 蛋白質に結合する増殖阻害剤の合剤“ハーボニ”が,1日1回12週間の服用で90%以上の患者の血液中からのウイルス消失をもたらす画期的な効果をあげた.・ハーボニはひとり分1,000万円を超える薬価で,アメリカで年2兆円の売上が予測され,発売元のGilead Sciences社の株価は急上昇している.しかしその創薬の過程をみると,NS5A阻害剤レジパスビルはBristol-Myers社の開発したBMS790052とそっくりの構造であり,NS5B阻害剤ゾバルディは開発したPharmasset社を1兆1千億円で買収して得たものである.かつてブッシュ政権の国防長官をつとめたラムズフェルド氏が会長を務めたこともあるGilead社の政治力とマネーゲームがみえてくる.
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医学のあゆみ 252巻9号, 983-984 (2015);
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医学のあゆみ 252巻9号, 985-988 (2015);
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 252巻9号, 963-964 (2015);
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血液内科学
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医学のあゆみ 252巻9号, 964-966 (2015);
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耳鼻咽喉科学
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医学のあゆみ 252巻9号, 966-967 (2015);
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