Volume 253,
Issue 4,
2015
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あゆみ がん治療における妊孕性温存の最前線
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医学のあゆみ 253巻4号, 273-273 (2015);
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医学のあゆみ 253巻4号, 275-281 (2015);
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◎がん診療と妊孕性温存の両立をめざす“Oncofertility(がん・生殖医療)”の重要性が認識され,卵子や卵巣の凍結保存は重要な妊孕性温存技術のひとつとしてわが国でもガイドラインが策定され,普及しつつある.卵子凍結保存ではすでに数千例の出産が得られ,アロマターゼ阻害剤の併用や“ランダムスタート法”などさまざまな排卵誘発法が工夫されているが,がん・生殖医療による妊娠・出産例はまだ少数にすぎない.卵巣組織凍結保存でも緩慢凍結法やガラス化凍結保存法によってすでに35 名以上の生児が得られているが,移植後の生着率の改善や移植卵巣に残存する腫瘍細胞(MRD)の検出など解決すべき問題も多い.化学療法に対する卵巣保護作用を期待してGn-RH アナログ製剤による偽閉経療法も行われてきたが,その有効性に対するエビデンスも確立していない.さまざまな卵巣保護療法や卵子幹細胞・体外培養などの応用技術も研究されているが,母児の予後などを含め,検討すべき問題をみすえた長期的な取組みが重要である.
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医学のあゆみ 253巻4号, 283-288 (2015);
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◎集学的治療によりがん患者の治癒率は飛躍的に向上した.これに伴い,生活の質(QOL)向上のために妊孕性温存の重要性が増している.このなかで,男性がん患者に対する妊孕性温存に関して性機能温存と精子温存の2 つの面から解説した.性機能温存は手術法の改良に負うところが大きいが,逆行性射精の場合は膀胱精子を回収し,loss of emission の場合は精巣精子を採取して顕微授精を行うことにより挙児は可能となる.精子温存は精子形成開始以降で射精が可能であれば,抗がん科学療法や放射線治療開始前に精子凍結保存するのが望ましい.精子形成開始前の場合は現時点では研究的であるが,精巣組織を凍結保存し,これの体外培養による精子作出の試みがなされており,今後の研究の進歩が期待されている.
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医学のあゆみ 253巻4号, 289-294 (2015);
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◎血液腫瘍は再生産年齢の若年者にもしばしば発症する悪性腫瘍であり,化学療法や放射線治療による性腺障害が問題となる.造血器腫瘍に対する通常の化学療法後は性腺機能回復がみられることも多いが,造血幹細胞移植の前処置は性腺機能に不可逆的な障害を及ぼす.妊孕性の維持のために男性患者は精子の凍結保存が可能である.しかし,化学療法後は良質な精子を数多く得ることが困難であり,可能なかぎり初回の化学療法を行う前に精子を採取する.女性患者も卵子を採取して受精卵あるいは未受精卵として凍結保存することができるが,急性白血病患者では化学療法の合間に良質な卵子を得ることは難しい.移植前の全身放射線照射時に卵巣を金属片で遮蔽すると移植後早期に卵巣機能が高頻度に回復するが,造血器腫瘍の再発率が増加しないかについては多数例の長期観察が必要である.
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医学のあゆみ 253巻4号, 295-298 (2015);
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◎乳がんは日本人女性においてもっとも罹患率の高い悪性腫瘍であり,罹患数,死亡者数とも増加の一途をたどっている.他の悪性腫瘍と比較して乳がん治療後の生存率は高く,がんに対する治療とともに生活や人生を考慮したサバイバーシップへの取組みが重要となっている.乳がんは30 歳代から40 歳代の女性も多く罹患し,この年代の女性に特有の結婚,出産,妊娠などのライフイベントにも十分考慮する必要がある.一方,女性の社会進出につれて晩婚化・晩産化が進み,30 歳代で出産する女性が増えているが,女性の年齢とともに卵子の数・質が低下し妊娠の可能性も低くなる.このような時期にがんの治療を受けることは,妊娠の年齢が遅れること,およびがん治療による卵巣機能への影響によって妊娠率の低下することになる.したがって,“がんになっても子どもが欲しい”という患者の思いにこたえるべく,がん患者の妊孕性保持が注目されるようになってきた.そこで乳がんと妊孕性温存について,その現況について解説する.
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医学のあゆみ 253巻4号, 299-302 (2015);
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◎小児がんの特徴はその種類と治療の多様性である.近年,治療予後の改善に伴い,小児がん経験者(CCS)が増加している.原病による侵襲や治療に起因する直接的または間接的な障害である晩期合併症(晩期障害)には内分泌学的異常が多く,とりわけ性腺機能異常と妊孕性低下は深刻な問題である.小児期に治療を受けた患者では思春期にかけて性腺機能異常が表面化する可能性があり,成人してから妊孕性低下に直面する.適切な内分泌学的評価とホルモン治療がまず必要であるが,がんの治療開始前の妊孕性温存療法を小児においても今後積極的に考えていくべきである.この問題への取組みには小児腫瘍医,小児内分泌医,産婦人科医,泌尿器科医,生殖医療医,精神神経科医,看護師,臨床心理士などからなる“ がん・生殖医療” のためのネットワーク構築が必要である.
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医学のあゆみ 253巻4号, 303-306 (2015);
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◎生殖年齢女性における子宮内膜症の罹患率は10%程度と報告されており,日常臨床においてもっとも頻繁に遭遇する疾患のひとつである.病変部位としては子宮内膜症性卵巣囊胞がもっとも多い.子宮内膜症性卵巣囊胞を有する患者において病変の存在そのものが,さらに治療としての切除術も卵巣機能の低下を介して妊孕性の低下に寄与する可能性がある.そのうえ月経を有する間は完治することがなく,術後も高率に再発する.慢性疾患である子宮内膜症の治療方針を考えるうえで,卵巣機能温存は重要な課題である.子宮内膜症は良性疾患であるが,重症患者に対する反復手術は卵巣機能の廃絶をもたらす懸念があり,がん患者に対する妊孕性温存と同様の治療戦略が選択肢として考えられる.
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医学のあゆみ 253巻4号, 307-311 (2015);
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◎若年がん患者においては,治療による妊孕性の低下という問題に直面する場合がある.がん治療と妊孕性に関してはそれを専門として扱う施設や医療従事者が異なるため,患者に最適な提案を迅速に提供することを困難にしている.がん治療と生殖医療の進歩によってがん・生殖医療の重要性はますます増加しており,国内外でも治療前の情報提供,適切な妊孕性温存の提供の必要性が認識されるようになってきている.欧米のFertiPROTEKT,Oncofertility Consortium,国内では日本がん・生殖医療研究会(JSFP)が,若年がん患者の妊孕性にかかわる支援を目的として,他職種の医療従事者(healthcare provider)との連携の構築を試みている.本稿ではこれらの紹介に加えて,JSFP の指導のもと,2013 年2 月から開設した岐阜県でのがん・生殖医療ネットワーク(岐阜モデル)の現状と課題についても言及したい.
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【ayumi TOPICS】
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医学のあゆみ 253巻4号, 313-314 (2015);
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がんとの診断を受けて間もない若年患者は,がんと診断されたことを受け入れるだけでも困難な状態にある場合が多く,治療後の挙児についてまで考えが及ばない状況にある.そのようななかで,がん治療に伴う妊孕性喪失の可能性を説明されると,がん治療への意思決定さえ揺らぐ女性患者もいる.その一方で,治療開始前にのみ適応される妊孕性対策があることも事実である.この時期には患者の治療への受け入れに寄り添いながら,診断後できるかぎり早いタイミングで情報を与えていくことが重要となる.アメリカの40 歳以下の乳がん患者に対して行われた大規模な調査1)では,68%の女性が治療前に医師と妊孕性について相談しており,24%が治療選択に妊孕性の問題が影響したと報告している.清水ら2)は,乳腺外科医の68%が乳がん患者と妊孕性に関して話すことについて肯定的な姿勢であったものの,日常的に生殖医療へ紹介している医師は30%程度であることを指摘している.
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医学のあゆみ 253巻4号, 315-316 (2015);
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古くからがんは死に対するおそれを喚起することが知られているが,今日の若年がん患者(研究によって定義が異なるが,多くは生殖年齢と重なる10代後半~40代前半をさす)は2つの側面から人生の危機に直面している.ひとつはがんそのものが生死にかかわること,もうひとつは生き延びられたときに発生しうる不妊の可能性に対するおそれである1).
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連載
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iPS 細胞研究最前線―疾患モデルから臓器再生まで 22
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医学のあゆみ 253巻4号, 322-328 (2015);
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◎細胞シート工学は,自家体細胞を用いた再生医療として国内外で数多くの疾患に対する実用化が進められている.また,より機能的かつ根本治療を可能にするための代替組織・臓器創生に向け,血管網を付与した三次元組織構築が着実に進められている.一方,iPS 細胞技術は細胞種・細胞数における再生医療の課題を解決できる優れた技術であり,さらに三次元浮遊攪拌懸濁培養による大量培養技術開発によりヒト三次元組織構築も現実となってきた.細胞シート工学とiPS 細胞技術の有機的な連携はさらなる再生医療の適応の拡大や再生医療製品の生産量向上を実現し,再生医療がより多くの疾患や障害をもつ方々へ届く医療へ発展することに大きな期待が寄せられている.
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フォーラム
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続・逆システム学の窓 9
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医学のあゆみ 253巻4号, 329-333 (2015);
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・イオンチャネルやギャップジャンクションの遺伝的な異常がある人をはじめ,高齢者では非常に高い頻度で心房細動が起こる.日本でも患者数は百万人を超えると推定され,欧米のみならず中国,韓国の集計でも80 歳代では5%を超える高い頻度になっている.心房細動があると動悸により生活の質を大幅に悪化させる.心房の細胞がばらばらに毎分300 以上収縮して働かなくなり,血栓ができやすくなり,心不全や高血圧,糖尿病などのリスクがあると脳梗塞が増えてくる.・動悸自体をおさえる治療として,心臓カテーテルにより頻脈のもとになる肺静脈周辺の細胞を焼却するアブレーションが広がっている.機器の進歩により病巣が正確にとらえられ,安全性が大きく向上してきた.一方,使い勝手の悪いワーファリンに代わる新規抗凝固剤が登場し,心房細動に伴う脳梗塞を半減させることが可能となった.コクランレビューではアブレーションを奨励する根拠はないとしている.・アブレーション治療の意義として,生活の質を大きく低下させる動悸の発作自体をなくすことと,薬を飲み続ける治療は持続が難しく,脳梗塞の予防にも確実性が高いことがある.またアブレーションが推奨される大きな理由は,機器の改善により安全性が向上したことが大きい.一方,アブレーションを推進した場合に予想されるコスト構造をみると,1 年当り500 億円の負担のうち病院収入は140 億円,360 億円は外資の機器製造会社へ行くことになる.
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医学のあゆみ 253巻4号, 334-335 (2015);
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医学のあゆみ 253巻4号, 336-342 (2015);
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 253巻4号, 317-318 (2015);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 253巻4号, 318-319 (2015);
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輸血学
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医学のあゆみ 253巻4号, 319-321 (2015);
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