Volume 253,
Issue 6,
2015
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あゆみ 嗅覚の脳神経科学の最前線
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医学のあゆみ 253巻6号, 471-471 (2015);
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医学のあゆみ 253巻6号, 473-479 (2015);
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◎匂いの知覚は,空気中の匂い分子が鼻腔の嗅上皮にある嗅覚受容体(OR)に結合することによりはじまる.ヒトゲノム中にはOR 機能遺伝子が約400 個もあり,活性化されたOR の組合せが複雑な匂いの知覚を生み出す.特定の匂いを感知できない嗅盲の存在は,OR 遺伝子の多型によってある程度説明できる.OR は嗅上皮以外のさまざまな組織でも発現しており,精子の化学走性などの機能に関与している.OR 遺伝子数は生物種間で大きく異なり,その数はマウスで約1,100 個,ゾウでは約2,000 個にも及ぶ.また,OR 遺伝子ファミリーの特徴として,進化の過程における遺伝子の重複・欠失が頻繁に起こっていることがあげられる.その進化的な“個性”を調べることによって,OR の多様な機能に対する示唆を与えることができるかもしれない.
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医学のあゆみ 253巻6号, 481-486 (2015);
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◎通常,大人の脳では新しい神経細胞が生まれることはないが,嗅覚系ではつねに新しい神経細胞が神経回路に組み込まれている.大人でも“新生”している嗅覚系の神経細胞は,嗅上皮の嗅細胞と嗅球の抑制性神経細胞である.前者は神経回路を維持して匂いを安定して知覚するために重要であり,後者は神経回路を可塑的に変化させて,状況に応じて匂いに基づく情動・行動反応を変えていくために重要であると考えられる.それぞれの新生を調節する機構も近年理解が進んでおり,脳が神経回路を維持・改変する機構の理解に結びついてきている.また,新しい神経細胞によって加齢や疾患による神経系の障害を予防・回復させるという臨床への応用が期待されている.
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医学のあゆみ 253巻6号, 487-492 (2015);
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◎匂いは嗅神経細胞に発現する嗅覚受容体に受容され,嗅球を経て高次嗅覚中枢を活性化することによって記憶の形成や適応的な行動を引き起こす.哺乳類の高度な匂い識別能力は,嗅上皮から嗅球への精緻な神経回路によって支えられている.過去10 年の遺伝学的研究により,個々の嗅神経細胞が嗅覚受容体の種類に対応して嗅球に“匂い地図”をつくりだす分子・細胞基盤が明らかになってきた.また,近年のイメージング・トレーシング技術の向上により,嗅球は単に情報を高次中枢へ受動的に伝達するのではなく,匂い情報の記憶や出力制御に積極的な役割を果たしていることがわかってきた.嗅球で演算された匂い情報は僧帽細胞の軸索により嗅覚皮質へと伝達される.それぞれの嗅覚皮質領域は僧帽細胞から受け取る入力パターンに違いがあり,嗅覚学習や匂いによる忌避・誘引行動の制御において異なる機能を担っていることが考えられる.本稿では,これら嗅覚系の神経科学におけるホットトピックを概説したい.
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医学のあゆみ 253巻6号, 493-497 (2015);
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◎匂い分子受容体遺伝子が発見されて以来,嗅覚研究はめざましい発展を遂げている.とくに,匂い分子受容体を含む嗅細胞から嗅球にかけて,形態や機能に関する理解は著しく進歩した.一方で,匂い情報が脳内でどのように処理され,知覚が形成されるのかについては,まだ十分な理解が得られていない.脳機能イメージングは非侵襲に脳活動を計測でき,さらに現在では計測法や解析法が成熟しつつあるため,脳内情報処理メカニズムの解明に重要な役割を果たしている.しかし,嗅覚機能の精度の高い計測法はいぜんとして発展途上にあり,現在においても脳機能イメージングの利用は限定的である.本稿では,嗅覚研究における脳機能イメージングの現状を解説し,脳機能イメージングのなかでも利用の多い機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によって明らかになった嗅覚脳内情報処理機構について紹介する.
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医学のあゆみ 253巻6号, 499-502 (2015);
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◎アロマセラピーで用いられるエッセンシャルオイルには,さまざまな薬理作用のあることが知られている.これらの作用機構のひとつとして嗅覚経路があげられる.すなわち,香り成分が嗅上皮に達し,そこから嗅球に至る.やがてその情報は大脳辺縁系を経て視床下部に伝えられ,自律神経系,内分泌系,免疫系に影響を及ぼす.エッセンシャルオイルはリラクセーションを誘導し,抗不安作用を発現する結果,睡眠改善をもたらす.実際に,不眠症の患者に用いることもできる.また,エッセンシャルオイルの香りは認知機能の改善をはかることもできることから,認知症の予防や治療効果にも期待できる.エッセンシャルオイルを用いるアロマセラピーはリラクセーション誘導,抗不安作用,不眠の改善や,認知機能改善をももたらすことから,ストレスの多い現代社会あるいは高齢化社会においては有用な役割を果たすものと期待される.
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医学のあゆみ 253巻6号, 503-507 (2015);
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◎生物は感覚を研ぎ澄ませて外界の情報を受け取り,それによって行動を変えたり必要な体内環境をつくりだしたりする.外界からの情報に応じて生体がつくりだす物質として知られているものとしてホルモンがあげられる.ホルモンは,体内外からの情報に応じて体内の特定の組織で生産され,血液を介して他の部位に運ばれ,同一個体内の標的組織の機能を制御する生理活性物質である.五感のひとつである嗅覚刺激によっても体内のホルモンが変化することは古くから知られている.近年,それとは逆に,体内のホルモン変化が匂いの感受性に影響を与える可能性も示唆されている.嗅覚は食物認識,生殖行動の誘発,個体識別などに利用され,個体生存と種の保存のために必要不可欠な情報を生体内へ伝える.そのため,体内のホルモン状況に応じて匂い感受性を変えるというのは理にかなっている.本稿では,これまでに報告されてきたホルモンと嗅覚感覚の関連性の知見について,そのメカニズムを交えながら紹介する.
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医学のあゆみ 253巻6号, 509-513 (2015);
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◎嗅覚異常は,①嗅覚低下ならびに嗅覚脱失をきたす量的異常と,②異嗅症,嗅覚過敏ならびに嗅盲に代表される質的異常とに分けられる.病院,医院を受診する患者の大部分は量的異常であり,質的異常は単独で発生することは少ない.嗅覚障害を障害部位別に分類すると,呼吸性嗅覚障害,嗅粘膜性嗅覚障害,末梢神経性嗅覚障害,中枢性嗅覚障害とに分けられ,末梢から中枢に向かうほど予後は不良である.嗅覚障害の原因としてもっとも多いのは慢性副鼻腔炎であり,近年は好酸球性副鼻腔炎の発生が高くなっている.ついで感冒後嗅覚障害,外傷性嗅覚障害と続く.原因不明の嗅覚障害のなかには加齢に伴う低下も含まれており,リスクファクターとしては男性,喫煙,鼻副鼻腔疾患,動脈硬化などがあげられている.嗅覚障害の臨床の発展には基礎的研究の発展が不可欠であり,基礎と臨床,両者のクロストークが重要である.
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医学のあゆみ 253巻6号, 515-521 (2015);
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◎動物は,自らが発する匂いである“体臭“を個体情報のシグナルとして積極的に活用している.体臭は体表に放出される分泌物そのものに加えて,細菌や遺伝子などさまざまな要因が加わり形成される.しかし,病気にかかり身体が通常とは異なる生理状態に陥ると,体臭に顕著な変化が表れる.高度医療技術が発達した現代において,いわゆる“病気の匂い”が再注目されている背景には,疾病特異的な匂いが同定されれば非侵襲かつ簡便な疾患バイオマーカーとしての利用が可能であること,さらには匂いの産生メカニズム解明により病態の理解が進むであろうという期待がある(図1).本稿では疾病特異的な体臭の変化について,具体例や分析手法を織り交ぜながら最新の知見を紹介するとともに,“病気の匂い”が罹患回避のシグナルとして機能している可能性についても言及する.
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連載
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補完代替医療とエビデンス 1
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医学のあゆみ 253巻6号, 528-533 (2015);
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◎サプリメント・健康食品をはじめとした補完代替医療は,国民・患者に広く利用されている.しかし,その安全性・有効性に関する科学的検証はほとんど行われていないのが現状である.また,海外に比べて補完代替医療に関する法的整備,研究助成についても十分とはいいがたい.しかし,遅れ馳せながら近年,わが国においても厚生労働省をはじめ公的機関において補完代替医療に関する研究が開始されてきている.さらに,複数の学術団体が設立され,研究活動を行っている.そこで本稿では,わが国における補完代替医療の利用実態について概説し,中央省庁,学術団体における取組みを紹介するとともに,今後の課題について述べる.
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輝く 日本人による発見と新規開発 16
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医学のあゆみ 253巻6号, 535-536 (2015);
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フォーラム
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医学のあゆみ 253巻6号, 537-538 (2015);
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TOPICS
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細胞生物学
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医学のあゆみ 253巻6号, 523-524 (2015);
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医用工学・医療情報学
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医学のあゆみ 253巻6号, 524-525 (2015);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 253巻6号, 525-526 (2015);
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