Volume 253,
Issue 7,
2015
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あゆみ てんかんの遺伝学的診断
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医学のあゆみ 253巻7号, 541-541 (2015);
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医学のあゆみ 253巻7号, 543-547 (2015);
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◎マイクロアレイによる網羅的なゲノムコピー数解析の手法であるアレイCGH 法により,これまで知られていなかった微細な染色体構造異常によるてんかん患者の診断が可能となり,患者の情報を集積することにより,あらたなてんかん関連遺伝子が明らかになってきた.たった1 例の貴重な症例の微細欠失を同定することにより,未知の遺伝子の臨床症状との関連を明らかにすることも可能である.とくにてんかん脳症など,重度知的障害を合併する孤発例に対して,de novo のコピー数変異を同定することで,これまでにいくつかの責任遺伝子が同定されてきた.一方,これまでまったく知られていなかった微細なゲノム重複がてんかんの原因となっていることも明らかになってきた.知的障害や脳形成障害を合併しているようなてんかん症例では,アレイCGH 法による網羅的なゲノムコピー数解析の有用性が高いと考えられる.
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医学のあゆみ 253巻7号, 549-554 (2015);
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◎近年の次世代シークエンサーを利用した網羅的遺伝子解析によって,てんかんの遺伝要因が急速に解明されてきた.遺伝子変異同定による個別化医療の試みがすでにはじまっており,てんかんの遺伝子解析(DNA 分子診断)は今後ますますその重要性を増すと考えられる.網羅的遺伝子解析のなかでも,ハイブリダイゼーションによって標的DNA 配列を選別する,ターゲットキャプチャおよび全エクソーム解析では,変異の検出のみならずシークエンスリードの厚みの情報に基づいてコピー数異常の検出が可能であり,包括的な遺伝子検査としての有用性が高い.すでに海外では全エクソーム解析やターゲットシークエンス解析(ターゲットキャプチャなどの標的遺伝子を絞った解析)が臨床応用されているが,わが国においても次世代シークエンサーを使った網羅的遺伝子解析によって多くの患者の分子診断が可能になり,管理・治療方針の決定に役立つことを期待したい.
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医学のあゆみ 253巻7号, 555-560 (2015);
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◎新生児・乳児期は脳の興奮性が高く痙攣を起こしやすい.大脳の発達に応じて発作や脳波が変化し,それらの特徴によっててんかんは複数の疾患に分類される.多くは予後良好であるが,知能や運動に影響を与えるてんかん性脳症の原因遺伝子が最近数年間で数多く同定された.大田原症候群,早期ミオクロニー脳症,West症候群(点頭てんかん)など,新生児・乳児期発症てんかん性の原因遺伝子の同定によって,てんかんの分子病態が介在ニューロン,シナプス伝達,細胞骨格,細胞内信号伝達,膜表面蛋白質の結合,膜輸送など多様であることが明らかにされている.良性てんかんで同定されていたイオンチャネルの遺伝子がてんかん性脳症の原因遺伝子でもあることが判明し,臨床診断と分子診断の併用が求められる.
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医学のあゆみ 253巻7号, 561-567 (2015);
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◎ドラベ(Dravet)症候群は,“てんかんの分子診断”でもっともインパクトのある“てんかん”である.Dravet症候群はてんかんの分子病態研究の中心をなし,世界中で多くのてんかん研究者が研究している“てんかん”である.そのため,日々新しく,多くの知見が発表され,Dravet 症候群の研究により“てんかんの分子病態”が切り開かれたといっても過言でない.現在ではDravet 症候群といえばかならずSCN1A 遺伝子が登場する.SCN1A 遺伝子は電位依存性ナトリウムイオンチャネル(Nav1.1)のα1 サブユニットをコードする遺伝子である.2001 年にDravet 症候群でのSCN1A 遺伝子変異の報告を契機に,現在では1,000 を超える変異が同定されている.Dravet 症候群の半数はSCN1A 変異が同定されるため,遺伝子診断としても有用である.しかし,SCN1A 遺伝子変異はDravet 症候群とは診断できないてんかんや他の神経疾患でもみられ,SCN1A 遺伝子のスペクトラムは広いことがわかっている.近年,Dravet 症候群と類似したてんかんで,GABRG2,CHD2,GABRA1,STXBP1 といった遺伝子の変異が報告されている.
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医学のあゆみ 253巻7号, 569-572 (2015);
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◎てんかんは人口の0.4~0.9%が罹患するもっとも頻度が高い神経疾患群で,ニューロンの過剰興奮によりさまざまな反復性の発作症状を引き起こす.分子生物学の発展とともに,てんかんの病態のひとつに中枢神経系における遺伝子異常の関与が注目され,多くの原因遺伝子の同定,変異導入てんかんモデル動物の解析からiPS 細胞を用いた分子病態研究まで,その発症機構を明らかにする試みがなされてきている.新生児期から老る特徴的なてんかん群が知られている.本稿では,新生児期・乳児期に発症する良性てんかんについて分子生物学的観点からその原因遺伝子および最近の知見,診断・治療への応用と限界について概説する.
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医学のあゆみ 253巻7号, 573-577 (2015);
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◎PCDH19 は,接着分子プロトカドヘリン19 をコードするX 染色体上の遺伝子で,その異常により女性はてんかんや知的障害を呈するが,男性は健常であり,きわめて特徴的な発症様式を示す.てんかんは乳幼児期に発症し,発熱・感染症などを契機に頑固な発作群発を反復し,難治に経過する.発作ははじめ高頻度であるが,徐々に減少し,思春期以降に寛解する例が多い.臨床的特徴から本症を疑いPCDH19 解析を行い診断する.これまで報告された遺伝子異常は配列異常と染色体微細欠失であり,著者らは前者をサンガー法で,後者をMLPA 法とFISH 法を組み合わせ解析してきたが,今後は次世代シークエンサーによる効率的な解析方法が主流になると思われる.本症の配列異常の大半が細胞外領域をコードするエクソン1 に集中しており,PCDH19 を介した細胞間相互作用の障害が発症と関連すると推測されるが,その病態はいまだ不明であり,今後の研究成果がまたれる.
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医学のあゆみ 253巻7号, 579-583 (2015);
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◎家族性のてんかんを中心に,焦点性てんかんの分子診断,遺伝学的背景について述べる.常染色体優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)はアセチルコリン受容体サブユニット(CHRNA4,CHRNB2,CHRNA2),K チャネル(KCNT1),DEPDC5 遺伝子の変異が報告されている.多様な焦点を示す家族性焦点性てんかん(FFEVF)ではDEPDC5 遺伝子の変異が報告されている.聴覚徴候を有する常染色体優性てんかん(ADEAF)ではLGI1遺伝子の変異が報告されている.中心側頭部に棘波を示す良性小児てんかん(BECTS)は複雑な遺伝学的背景をもち,その一部でいくつかの候補遺伝子が報告されている.このように,焦点性てんかんではイオンチャネル以外の遺伝子にも変異を認め,これらの遺伝子はシナプス伝達や脳の発達に関与していることが示唆されている.とくにDEPDC5 遺伝子はmTOR 系の抑制に関与し,その変異は幅広い焦点性てんかんと関連している.
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医学のあゆみ 253巻7号, 584-588 (2015);
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◎進行性ミオクローヌスてんかん(PME)はてんかん,ミオクローヌス,認知症や失調を含む進行性の神経症状を主徴とする遺伝性神経系症候群である.PME の臨床像をとる疾患は神経セロイドリポフスチン症(NCL)などのリソソーム関連疾患,脊髄小脳変性症(SCD)のひとつである歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA),ミトコンドリア脳筋症に分類される赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群(MERRF)などきわめて多彩であり,その疾患異質性と疾患それぞれの表現型異質性からPME の原因疾患にたどり着くことはしばしば困難である.近年のエクソーム解析を含む分子遺伝学の進歩により,PME に対するあらたな責任遺伝子が同定されるようになった.正確なPME 診断のためには,従来の疾患特異的な検査所見に加え,必要に応じ適切なタイミングで遺伝学的検査を考慮することが重要である.
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連載
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iPS細胞研究最前線―疾患モデルから臓器再生まで 23
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医学のあゆみ 253巻7号, 594-598 (2015);
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◎著者らは,ヒトiPS細胞由来の肝内胚葉細胞を材料として,血管内皮細胞と間葉系細胞との共培養によるヒト器官原基(human iPS-derived liver bud:hiPSC-LB)の人為的創出法を開発した.そしてヒト器官原基移植(organ bud transplantation)が有効な治療手法となることを明らかにした.すなわち,iPS細胞から三次元的なヒト臓器の芽を創出し,それらを移植するという独自の手法により患者の体内において機能的な“臓器”を育てていただくというあらたな治療手法を開発した.臓器不全症を対象としてヒト器官原基移植というあらたな治療概念を提唱できるものと期待される.
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補完代替医療とエビデンス 2
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医学のあゆみ 253巻7号, 599-604 (2015);
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◎アメリカは西洋医学だけではなく補完代替医療の分野でも世界をリードしている.国立衛生研究所には国立補完代替医療センターが設立され,さまざまな施術・療法の科学的検証に努めている.しかし当初,新規の治療法の開発が期待されたものの臨床試験の結果は思わしくなく,近年,補完代替医療に関する研究の方向性を“病気の治療”から“症状のマネジメント”へ転換を余儀なくされる.だが,その成果はめざましく,有効性が証明された補完代替医療を通常医療に取り入れる統合医療という概念も生まれつつある.また,アメリカの医科大学においても補完代替医療に関する教育・研究が行われ,さらに,それらを実践・提供するセンターも数多く設立されている.そこで本稿では,アメリカの補完代替医療の歴史的・社会的背景と研究の現状について紹介する.
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フォーラム
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近代医学を築いた人々 40
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医学のあゆみ 253巻7号, 605-605 (2015);
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医学のあゆみ 253巻7号, 607-608 (2015);
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TOPICS
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 253巻7号, 589-590 (2015);
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免疫学
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医学のあゆみ 253巻7号, 590-591 (2015);
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社会医学
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医学のあゆみ 253巻7号, 591-593 (2015);
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