Volume 253,
Issue 11,
2015
-
あゆみ リポ多糖とその受容体のフロンティア
-
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1071-1071 (2015);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1073-1076 (2015);
View Description
Hide Description
◎グラム陰性菌外膜のリポ多糖(LPS)およびその末端糖脂質部分構造であるリピドA は,強い免疫活性化作用を示すものが多く知られている.その活性構造解明,自然免疫受容体による認識,多様な生物活性の解析のため,種々のLPS 部分構造について純粋な化合物の化学合成が行われてきた.とくに,広く類似の骨格構造をもち,自然免疫受容体TLR4/MD-2 によって認識されて免疫活性物質として働くリピドA 部位について,さまざまな合成法の開発が行われ,自然界から純粋な形で単離することが困難な種々のリピドA についても合成的に得ることが可能になっている.本稿では,最近開発された手法として,共通の糖骨格含有鍵中間体を用い,さまざまの構造を網羅的に合成するための方法を紹介する.また,脂肪酸の構造あるいはリン酸化部位の修飾基の差異をもつ網羅的な寄生菌由来のリピドA 合成への展開例を紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1077-1080 (2015);
View Description
Hide Description
◎リポ多糖(LPS)受容体であるTLR4/MD-2 は,グラム陰性細菌の外膜に存在するリガンドをLBP,CD14を経て認識し,活性化される.LPS は生体において多彩な免疫応答誘導を引き起こすことが可能で,炎症性サイトカイン産生,Ⅰ型インターフェロン(IFN)産生誘導,T 細胞共刺激分子の発現誘導,さらには抗原反応を増強するアジュバント活性を有している.このような多岐にわたるリガンド応答はシグナル伝達経路の違いにもよるが,近年の活性化プラットホームという概念から,それぞれの応答はそれぞれ適切な“場所”による活性化が重要であることが明らかとなってきている.本稿では,TLR4/MD-2 の活性化プラットホームを紹介するとともに,最近,低炎症性リガンドとして報告されており実際にワクチンアジュバント成分として臨床応用されているMonophosphoryl lipid A(MPL)のリガンド特性を引き出す特徴的な認識機構について概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1081-1086 (2015);
View Description
Hide Description
◎リポ多糖(LPS)はグラム陰性細菌の外膜の主構成成分であり,エンドトキシンの化学的本体である.このLPS を目印としてわれわれの体内に存在する自然免疫細胞は,侵入した感染グラム陰性細菌を感知し,免疫監視機構の活性化を誘導する.感染菌が産生するLPS が体内に過剰に存在するようになると,全身性敗血症の病因になることが古くから指摘されている.LPS センサーとしてのToll 様受容体4(TLR4;おもに細胞表面に局在)の発見が2011 年,ノーベル生理学・医学賞の対象になったことは記憶に新しい.TLR4 を欠損するマウスが,LPS 投与による致死性敗血症に対して完全抵抗性を示したことから,TLR4 による細胞外LPS の認識がLPS 致死性敗血症の主因であることが疑われることはなかった.一方,細胞内での感染細菌を認識する宿主の生体防御機構の解析から,感染したグラム陰性細菌が細胞内で産生するLPS がカスパーゼ11 とよばれるプロテアーゼをTLR4 非依存的に活性化することがあらたに発見された.さらに,この細胞内カスパーゼ経路,および細胞表面上のTLR4 の細胞内・外の2 つのLPS の認識機構が,LPS 致死性敗血症の誘導に重要であることが示された(タッグチームLPS 認識モデル).このあらたなLPS 認識モデルは,長らく主流であったTLR4 の観点を中心としたLPS 研究に進化的起点を加えるものである.
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1087-1091 (2015);
View Description
Hide Description
◎ピロトーシス(pyroptosis)はカスパーゼ-1 依存的なプログラム細胞死であり,炎症性サイトカインの放出を伴うことから,敗血症における過剰な炎症反応への関与が注目されている.また,真核細胞が産生するデフェンシンやcathelicidin ファミリーの抗菌ペプチドは,生体を微生物感染から守るために働いている.著者らは最近,ヒトcathelicidin であるLL-37 が敗血症において,ピロトーシスやアポトーシスなどの宿主細胞の細胞死を抑制することによって敗血症の病態を改善することを見出した.今後,LL-37 のような抗菌ペプチドをもとに,宿主細胞の細胞死を制御することによって,敗血症の治療に応用可能な物質の開発が期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1093-1097 (2015);
View Description
Hide Description
◎ Guillain-Barré 症候群(GBS)およびMiller Fischer 症候群(MFS)は,感染症が引き金となり発症する自己免疫性神経疾患である.GBS,MFS とCampylobacter jejuni 感染との疫学的関係が証明されており,GBS ではIgG 抗GM1,抗GD1a 抗体が,MFS ではIgG 抗GQ1b 抗体が高頻度に検出される.C. jejuni 菌体表面に発現しているリポオリゴ糖とヒト末梢神経ガングリオシドとの間に分子相同性が存在し,その共通抗原は糖鎖であることが証明されている.リポオリゴ糖が自己免疫性神経疾患の発症に重要な役割を果たしている.
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1099-1103 (2015);
View Description
Hide Description
◎ TLR4/MD-2 とリポ多糖の認識機構や,それによってもたらされる生物学的応答反応の研究には,長い歴史がある.一方,内因性蛋白質がTLR4/MD-2 のリガンドとして機能していることが見出されたのは比較的最近のことであり,その研究は発展途上にあるといえる.内因性蛋白質であるS100A8,SAA3,HMGB1,バイグリカンはTLR4/MD-2 に直接結合し,炎症様の反応を惹起する(自然炎症).この炎症様反応は癌細胞の転移に重要な役割を果たしており,遠隔臓器において転移前土壌形成を促進していることが,著者らを含むいくつかの研究グループによって明らかにされている.本稿では,TLR4/MD-2 蛋白質内因性リガンドの分子構造,制御機構,生理機能などの基本事項について,著者らの研究室で得られた知見および実験データを交えて述べる.
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1105-1108 (2015);
View Description
Hide Description
◎ TLR4/MD-2 は外来性の病原体糖脂質パターンを認識する受容体として発見され,詳細な研究がなされてきた.一方,感染症の対極の疾患ととらえることもできるnoncommunicable diseases(NCD)の臨床的・基礎的研究の進歩により,NCD において慢性の炎症が重要な役割を果たすことが明らかになり,慢性の炎症を惹起するひとつの分子機序として,脂質内因性リガンドによるパターン認識受容体(PRR)の活性化が着目されている.本稿では,NCD のなかでもとくに肥満のパンデミックに伴い注目されている循環器疾患,2 型糖尿病における脂質内因性リガンドによるTLR4/MD2 シグナルの活性化と炎症誘導について,最近の研究を概説する.
-
連載
-
-
iPS 細胞研究最前線―疾患モデルから臓器再生まで 25
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1113-1119 (2015);
View Description
Hide Description
◎近年,重症拡張型心筋症に対し心臓移植や人工心臓など,いわゆる置換型治療が積極的に行われてきたが,ドナー不足や合併症など課題も多い.一方,最近心機能回復戦略として再生型治療の研究が盛んに行われ,自己細胞による臨床応用が開始されている.著者らは,温度感応性培養皿を用いた細胞シート工学の技術により細胞間接合を保持した細胞シート作製技術を開発し,心筋再生治療の臨床研究を開始した.さらに,iPS 細胞を用いた心血管再生治療も期待され,iPS 細胞の樹立をきっかけとして世界中で幹細胞研究が活性化され,iPS細胞を用いた心血管再生医療が現実的なものとなると思われる.さらに,疾患別iPS 細胞の樹立も盛んに行われるに至っており,近い将来,自己細胞移植や組織工学的技術を駆使することにより心臓移植や人工心臓治療とともに再生治療によって重症心不全治療体系が確立されるであろう.
-
補完代替医療とエビデンス 4
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1121-1125 (2015);
View Description
Hide Description
◎日本医療機能評価機構のEBM 医療情報事業(Minds)のホームページに収載されているエビデンスに基づく診療ガイドライン(CPG)のなかから,補完代替医療(CAM)に関する記述を検索した.CAM の記載があったCPG の数は,がん領域:3 件,筋・骨・関節領域:4 件,腎・泌尿器領域:2 件,その他:2 件であり,特定の領域に集中しており,それらの疾患に対する通常医療への不満の反映であるとも考えられた.今後はこれら領域のCPG だけではなく,あらゆる領域のCPG においてCAM に関する情報の有無を調べ,推奨/非推奨にかかわらず,CPG 中に何らかの情報を記載すべきであると考えられる.
-
フォーラム
-
-
第79 回日本循環器学会学術集会レポート 1
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1127-1128 (2015);
View Description
Hide Description
◎冠動脈疾患に対するインターベンションがはじまって30 年以上が経過し,いまや弁膜症,先天性心疾患,心筋症など構造的心疾患(structuralheart disease:SHD)がインターベンションの対象として着目されるようになり,大動脈弁狭窄症(aortic stenosis:AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(t r a n s c a t h e t e r a o r t i c v a l v ereplacement:TAVR)は,世界中で急速に普及した.MitraClip を用いた経カテーテル僧帽弁修復術については, 一次性の僧帽弁閉鎖不全(mitralregurgitation:MR)のみならず,心不全に伴う機能性MR に対する治療としても期待されている.また,非弁膜症性心房細動に対する経皮的左心耳閉鎖術も抗凝固療法にかわる治療法として最近,着目されている.これらのSHD に対する低侵襲治療をより効果的に行うためには,適応決定から実施,術後管理に至るまで,各専門家から構成されるハートチームによる取組みが必要である.本シンポジウムでは,欧州から二人のエキスパートをお招きし,今後のSHD インターベンションの方向性に関する議論が行われた.
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1129-1130 (2015);
View Description
Hide Description
-
TOPICS
-
-
生理学
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1109-1110 (2015);
View Description
Hide Description
-
麻酔科学
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1110-1111 (2015);
View Description
Hide Description
-
臨床検査医学
-
Source:
医学のあゆみ 253巻11号, 1111-1112 (2015);
View Description
Hide Description