Volume 253,
Issue 12,
2015
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あゆみ 理論生物学−数理科学の医学への応用
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医学のあゆみ 253巻12号, 1133-1134 (2015);
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医学のあゆみ 253巻12号, 1135-1140 (2015);
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◎個体発生過程において,組織は時空間的に制御された変形を繰り返すことで最終的な形態を獲得する.この組織形態形成を理解するためには,力を出す主体としての細胞の挙動を観察し,細胞内の分子の働きを組織全体の形状変化を促進する機械的な力に結びつける必要がある.しかし,現状では生体組織における力の測定手法は確立されていない.そこで著者らは,細胞に作用する力の釣り合い方程式を考慮し,ベイズ統計学の枠組みを適用することで,細胞の画像データから目にみえない“力”を推定する手法を開発した.この力推定法は組織全体にわたって単一細胞スケールの解像度で力を定量できるので,化学情報(分子の活性や細胞内局在)と物理情報(力,応力)を直接比較することを可能にする.本稿では,力推定法の“データに潜む重要情報を引き出す技術”というデータ科学的な側面に重きをおいて,その原理と妥当性の検証について説明する.
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医学のあゆみ 253巻12号, 1141-1146 (2015);
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◎生体内の化学反応は連鎖的につながり,ネットワークを形成することが知られている.このシステムのダイナミクスを理解する目的で,反応をつかさどる酵素に操作的攪乱を与え,化学物質の濃度変化を測定する実験がなされはじめている.しかしそうした摂動実験の結果は,直感的理解が困難だと考えられてきた.これに対して著者らは,化学反応ネットワークの構造だけから摂動に対するシステムの応答を定性的に予測する数理理論を構築した.さまざまな仮想的ネットワークに対して解析を行った結果,化学反応系の応答はネットワークの形と摂動を与える箇所に依存して大きく変化し,特徴的な振る舞いを示すとわかった.さらに解析を進め,ネットワークの形と摂動応答パターンを結びつける“一般則”を発見した.現在,この理論を中心代謝系ネットワークに適用する共同研究を進めている.中心代謝系のネットワークには未知の反応や制御が存在する可能性が高い.実験と著者らの理論を比較することで,未知の制御の予測と検証を行い,実際の化学反応系を解明できると期待している.
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医学のあゆみ 253巻12号, 1147-1151 (2015);
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◎細胞の応答や機能は,細胞内の生化学反応系の振る舞いにより制御されている.近年の分子生物学の発展により細胞内反応系を構築する化学種(蛋白質)が同定され,膨大な数の化学種が複雑なネットワークを構築していることが明らかとなった.このような反応系の振る舞いの破綻は疾病に結びつくため,この機序を理解することは非常に重要である.計算機シミュレーションは大規模かつ複雑なネットワークの振る舞いを理解するのに適しており,生化学反応系の計算機シミュレーションは古くより行われてきた.本稿では,細胞内反応系をシミュレーションするための数理的枠組み,従来のシミュレーション技法,そして最先端のシミュレーション技法である一分子粒度計算について著者らの研究を交えて解説し,その有用性や今後の展望について考察する.
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医学のあゆみ 253巻12号, 1153-1157 (2015);
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◎動物は不確定な環境のなかをしなやかにタフに動きまわることができるが,これと同じことができるロボットをつくることは難しい.ロボットには固着性のロボットと移動ロボットの2 通りがある.前者は典型的には工場で働くロボットアームなどで,ほぼ完全にわかっている安定した環境下で働くため,環境との相互作用を外乱とみなす現代制御理論の枠組みと相性がよく,優れたパフォーマンスを誇っている.ところが,後者は未知の環境に突っ込んでいくため,環境との相互作用を外乱で片づけるわけにはいかず,また目標軌道を精密に定めること自体も難しい.それゆえ,従来の制御理論のスキームではうまくいかないのである.移動ロボットの制御には新しい方策が必要であり,著者らはそれを動物から学ぼうとしている.またそれを学ぶ過程で,動物がいかにして運動とその制御を行っているかを理解することをめざしている.本稿では,そのなかでも自律分散制御という部分にスポットを当てた研究を紹介する.
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医学のあゆみ 253巻12号, 1159-1165 (2015);
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◎多細胞生物における細胞の増殖は高度に制御されている.古典的なMAP キナーゼであるERK は,細胞の増殖や分化,癌化に深く関与していることが知られている.しかし,ERK 分子の活性のどのような動態が細胞増殖機能に結びついているのか1 細胞レベルで直接的には検証されていなかった.著者らは螢光共鳴エネルギー移動FRET の原理に基づくバイオセンサーを用いて,ERK 分子の活性を生きた細胞で長期間観察した.その結果,ERK 分子が確率的に活性化する発火現象と隣の細胞に活性が伝わる伝搬現象を発見した.興味深いことに,ERK 活性の度合い(振幅)ではなく発火頻度(周波数)によって細胞増殖速度が制御されていることを光遺伝学的な手法により明らかにした.さらに,ERK 活性の多細胞動態を記述する定量的な数理モデルも構築した.本研究から,細胞はERK の入力情報をFM(周波数変調)システムにより処理し,増殖速度という表現型として出力していることが明らかとなった.
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医学のあゆみ 253巻12号, 1167-1172 (2015);
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◎神経細胞樹状突起上に多数存在する“スパイン”は他の神経細胞からシナプス結合によって情報を受け取る区画である.個々のスパインの大きさはだいたい0.1 μm3程度と非常に小さく,反応の“揺らぎ”が非常に大きい.このような揺らぎの大きさは情報伝達という観点では一見不利であると考えられる.それにもかかわらず,なぜスパインはこのように小さいのであろうか? 今回は,小脳Purkinje 細胞のスパインにおいて小脳学習の肝となる2 種類の入力間隔依存的な応答を示す実験と,この実験に対して確率論的シミュレーションと相互情報量による解析について紹介する.また,これらの結果から得られた,情報伝達効率や入力揺らぎに対するロバスト性に着目し,スパインの小ささの利点について考察する.
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医学のあゆみ 253巻12号, 1173-1177 (2015);
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◎生物は不思議な形をしている.生物の形づくりを,数学を用いて理解しようという試みは古くから行われてきた.さまざまなモデルが提唱されてきたが,実験的に証明されるまでには長い時間がかかる.いろんな仮説が出現しては消え,ポイントポイントで人材が出現するおかげでなんとか進んでいるようにみえる.本稿では,手の骨格の周期構造形成を例にとって,発生生物学および応用数学の古典的なテーマがどのように発展して行ったか概説する.
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連載
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補完代替医療とエビデンス 5
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医学のあゆみ 253巻12号, 1183-1188 (2015);
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◎“統合医療”とは,西洋医学に基づいた通常医療と補完代替医療や伝統医学などとを組み合わせて行う医療とされている.平成24 年に厚生労働省は“「統合医療」のあり方に関する検討会”を開催し,“これまでの議論の整理について”と題した資料を公開した.その資料において統合医療に関する今後の具体的取組のひとつとして,統合医療の科学的知見についてインターネットなどを介して提供する仕組みづくりが取りあげられた.その提言を受け,平成25 年度より厚生労働省の「統合医療」に係る情報発信等推進事業が開始され,著者らが中心となり,“「統合医療」情報発信サイト”を作成した.本稿では,当該サイトの概略について紹介する.
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輝く 日本人による発見と新規開発 17
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医学のあゆみ 253巻12号, 1189-1193 (2015);
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◎多発性硬化症(MS)は,脳や視神経それに脊髄などに散在性の病変が生じ,多様な神経症候が再発と寛解を示しながら進行する脱髄疾患である.診断は臨床的に病変の時間的・空間的多発性をもってなさざるをえないため,MS にはさまざまな病態と疾患が含まれる可能性がある.従来から主に視神経と脊髄に病変を繰り返す疾患はわが国ではMS と考え,視神経脊髄型MS(OSMS)とよんできた.しかし,欧米においては視神経脊髄炎(NMO)としてMS の類縁疾患として考えられてきた.すなわち,MS,OSMS,およびNMO の疾患概念は混乱していた.そうしたなか2004 年に,MS 患者には検出されないが,NMO 患者とOSMS 患者にのみ認められる血清NMO-IgG 抗体が発見されるに及び,“NMO とOSMS は同じ疾患である.しかしMS とは異なる”考えが示唆された.その後,NMO-IgG の対応抗原がアストロサイトに局在する水チャネルのアクアポリン4(AQP4)であることが明らかにされた.さらに,興味深いことには免疫組織化学的検索にてNMO の病態は脱髄ではなく,AQP4 やGFAP の欠損を伴うアストロサイト傷害であることが示された.また,急性期のNMO患者の髄液では著明なGFAP の増加も認められ,アストロサイトが広範に傷害されていることが生化学的にも示された.加えて実験的に患者血清のAQP4 抗体によるアストロサイト傷害の病原性が再現できることから,NMO は脱髄疾患ではなく抗AQP4 抗体をるとの疾患概念が提唱された.これらの発見により,いままで混乱していたNMO の診断や病態の理解が進む介するアストロサイト傷害の疾患(アストロサイトパチー)であとともに,本疾患に特化した新たな治療法も開発されつつある.
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フォーラム
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近代医学を築いた人々 41
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医学のあゆみ 253巻12号, 1195-1195 (2015);
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第79回日本循環器学会学術集会レポート 2
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医学のあゆみ 253巻12号, 1197-1198 (2015);
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◎肺高血圧症のニース分類では障害部位に基づいて,肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial症,呼吸器疾患による肺高血圧症,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonaryhypertension:CTEPH),その他の原因不明な複合式要因による肺高血圧症,の5 つに分類されている.PAH は,プロスタサイクリン経路,一酸化窒素合成経路,エンドセリン経路の薬剤で加療されており,CTEPH に対しては,抗凝固療法や可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬に加え,外科的治療が前提ではあるものの,わが国では肺動脈バルーン拡張術も施行されており,良好な成績を収めている.これらはいずれも肺動脈そのものの異常に起因する疾患である.一方で,かならずしも肺動脈の異常には起因しない肺高血圧症も存在する.左心不全に伴う肺高血圧症では,基本的には左心不全の治療が原則であるが,いわゆる“out of proportion”とよばれる,器質的あるいは機能的肺動脈病変を合併する病態が混在している.近年,肺高血圧領域はすばらしい進歩を遂げている.本シンポジウムでは,これら肺高血圧症に関する最新情報を中心に討論が行われた.
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TOPICS
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免疫学
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医学のあゆみ 253巻12号, 1179-1180 (2015);
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移植・人工臓器
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医学のあゆみ 253巻12号, 1180-1181 (2015);
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皮膚科学
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医学のあゆみ 253巻12号, 1181-1182 (2015);
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