Volume 253,
Issue 13,
2015
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あゆみ 母子感染Update
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医学のあゆみ 253巻13号, 1201-1207 (2015);
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◎厚生労働科学研究による母子感染の全国調査によって,2011 年のわが国における妊婦健診での感染症スクリーニングの実施状況,および母子感染発生の現況が明らかとなった.妊婦健診において風疹,梅毒,ヒト免疫不全ウイルス(HIV),ヒトT 細胞白血病ウイルス1 型(HTLV-1),B 型肝炎ウイルス(HBV),C 型肝炎ウイルス(HCV)の感染スクリーニングについては99%以上の実施率であったのに対して,サイトメガロウイルス(CMV)(4.5%)とトキソプラズマ(48.5%)の感染スクリーニングの実施率は低かった.分娩,死産,流産および人工中絶を含めた先天性感染数は,CMV 34 人,トキソプラズマ1 人,風疹4 人,梅毒5 人,新生児ヘルペスは8 人であった.そしてParbo ウイルスB19 がもっとも多く69 人で,うち49 人(71.0%)が流死産の妊娠帰結であった.Parbo ウイルスB19 感染による胎児水腫や腔水症の11 人に胎児治療が行われた.胎児輸血の3 人が無症候性の先天性感染児を正期出産したが,残り8 人(72.7%)はすべて流死産に至った.先天性Parbo ウイルスB19 感染数は予想以上に多く,流行時には注意が必要である.予想される先天性感染数に比べて,CMV やトキソプラズマの診断症例が少ない理由として,母子感染の予防対策や検査・診断法がいまだ確立されていないためと推察された.
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医学のあゆみ 253巻13号, 1209-1213 (2015);
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◎風疹は幼少期に感染またはワクチン接種により抗体を保持している場合が多いが,成人で風疹抗体をもたない世代があり,そのため日本では風疹が周期的に大流行している.風疹抗体をもたない妊婦が妊娠初期に初感染すると,先天性心疾患,白内障,難聴の三徴を示す先天性風疹症候群(CRS)の児が出生する場合がある.風疹感染の診断は,発疹などの症状のほか,風疹患者との接触歴や風疹抗体価の測定により評価する.妊娠20 週以降では感染してもCRS は発生しない.風疹はワクチンにより根絶可能な感染症であり,日本における抜本的な政策が期待される.
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医学のあゆみ 253巻13号, 1215-1219 (2015);
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◎サイトメガロウイルス(CMV)の先天性感染により,わが国で毎年1,000 人の乳幼児に難聴などの障害が起こると推計されている.一方で妊婦のCMV 抗体保有率は低下してきており,妊娠中の初感染リスクは高まっている.妊婦がCMV 感染しても典型的症状がなく,一般的に初感染の診断に用いられるIgM 抗体の正診率が低いため,IgG avidity 検査により初感染時期を推定する試みが行われている.羊水中のCMV-DNA を証明することで,胎児感染を正確に診断することができるが,胎児感染予防・治療法は研究中で確立された方法はなく,ルーチンの妊婦CMV 抗体スクリーニングは現時点では推奨されていない.しかし,感染児に対する抗ウイルス薬投与で児の障害を軽減できる可能性が示唆されており,妊婦と新生児のスクリーニングを組み合わせることで,より効果的に母体感染予防啓発を行い先天性感染を減少させ,さらに感染児に対する早期医療介入を行うことで,児の障害発生を減少させる試みが続けられている.
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医学のあゆみ 253巻13号, 1221-1225 (2015);
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◎成人T 細胞白血病(ATL)は,異常T 細胞の増殖によって生じる.ATL は西日本,とくに九州に多発するため,以前は九州地区における風土病のように考えられた時期もあった.その後,キャリアの分布が東京などの都市部に拡散してきたことから,現在では妊婦における抗体検査が全国的に行われている.原因ウイルスはHTLV-1 であり,いったん発症するとその予後はきわめて不良である.おもな感染経路は母乳による母子感染と考えられている.すなわち,母子感染の予防は児の将来的なATL 発症のみならず,感染連鎖の悪循環を断ち切るという意味からも重要である1).長崎県においては1987 年以降,28 万人以上の妊婦を対象に抗体検査を行い,8,400 人以上のキャリアを検出した.キャリアには母乳感染の可能性について説明し,希望者には母乳停止による介入試験を実施した.その結果,約1,500 人の小児のキャリア化が阻止され,将来のATL 発症が75 人程度防止されたと考えられる.さらには本事業の開始以前に出生した母親のHTLV-1 抗体保有率1.46%は,その後に出生した母親の0.64%へと明らかな減少が認められている.本稿では,ATL とその原因であるHTLV-1 母子感染について解説するが,とくに長崎県で続けてきた母子感染防止研究事業の成果,最近著者らが取り入れた新しい検査法,および母子感染の母乳以外の感染経路についても解説する.
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医学のあゆみ 253巻13号, 1227-1231 (2015);
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◎妊娠中のトキソプラズマ初感染によって,先天性トキソプラズマ症を発症する可能性がある.初感染成立時期によって胎児感染率,先天性感染症の重症度が異なるために,感染成立時期を推定することは非常に重要で,一般的には,トキソプラズマ特異的IgG・IgM 測定が用いられる.しかし,トキソプラズマIgM にはpersistentIgM がありうるため,妊婦に過度の不安を与える危険性がある.そのため,補助的検査としてトキソプラズマIgG avidity 検査や羊水中トキソプラズマDNA PCR 検査が用いられる.Avidity index 低値かつ羊水PCR 陽性は先天性感染のハイリスクである.トキソプラズマ抗体測定,avidity 検査,羊水PCR 検査を用いた妊婦スクリーニング,および先天性感染発生あるいは先天性感染症発症のリスクに合わせた治療を行うことで,先天性トキソプラズマ症の発症や重症化を抑制できる可能性がある.
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医学のあゆみ 253巻13号, 1233-1238 (2015);
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◎梅毒は性感染症のひとつである.妊婦が感染した場合は,いずれも病期であっても胎児に経胎盤的に感染しうる.早期梅毒の未治療妊婦においては最大40%が流・早産になる.感染率は第1,2 期が60~100%とされている.検査は非トレポネーマ検査とトレポネーマ検査を組み合わせて行う.妊婦が梅毒と診断された場合は上記リスクを鑑み,抗菌薬投与が推奨される.薬剤は非妊婦と同様,妊娠中どの時期であってもペニシリン系薬で,アレルギーを有する場合でも基本的には脱感作を行ってでも投与が推奨されるが,代替薬としてはアセチルスピラマイシンが選択される.推奨される治療期間の投与完結が必要で,その後も出産まで血清学的検査を行うことが望ましい.先天梅毒の疑いまたは確定児,および第1,2 期梅毒の症例のケア時は治療後24 時間までは接触予防策が推奨される.
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医学のあゆみ 253巻13号, 1239-1243 (2015);
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◎新生児ヘルペスは,分娩時に産道に感染している単純ヘルペスウイルスウイルス(HSV)1型と2型に接触することにより発症する.抗ウイルス剤が開発された今日でも,新生児ヘルペスを発症すると約30%が死亡し,死に至らないまでも重篤な後遺症を残すことがある.その原因である母体の性器ヘルペスはHSV-1,HSV-2のどちらの感染によっても発症することがあり,女性の外陰,子宮頸部,腟壁といった産道に感染病巣ができる.妊婦における性器ヘルペスの管理においてもっとも重要な点は新生児ヘルペスの発症予防である.本稿では,産婦人科の立場から,母子感染のリスク,新生児ヘルペスの重症度との関連,そしてその予防をめざした妊婦管理を概説する.
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医学のあゆみ 253巻13号, 1245-1249 (2015);
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◎伝染性紅斑はパルボウイルスB19(PVB19)感染のおもな症状である.妊娠中のPVB19 初感染によって胎児水腫や胎児死亡をきたすことがある.“全国産科施設を対象とした妊婦感染症スクリーニングと先天性感染の実態調査”を行った2011 年は,4 年ぶりの伝染性紅斑流行年であった.回答を得た全国1,990 施設(総分娩数788,673 件)において先天性PVB19 感染を69 人に認め,その71%が流死産となっていた.そして先天性感染例の54%に子どもを主とする家族の伝染性紅斑発症を認めた.また,感染が妊娠早期であるほど,胎児水腫が高率に発生していた.分娩例17 人(症候性3,無症候性14)の転帰は,新生児死亡2,生存15(後遺症なし14,後遺症あり1)であった.妊娠予定の女性に対して,妊娠中のPVB19 感染リスクに関する啓発と教育が必要である.
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連載
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補完代替医療とエビデンス 6
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医学のあゆみ 253巻13号, 1257-1262 (2015);
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◎医学・医療において治療法の有効性を検証するゴールデンスタンダードは,ランダム化比較試験である.しかし,補完代替療法,とくに手技を伴う施術・療法に関してはその特異性から臨床試験の実施に困難が伴い,検証そのものがあまり行われていないことが多い.さらに,補完代替療法のなかには理論的背景や作用メカニズムの考えが現代科学からかけ離れている場合もあり,その療法に対する理解の妨げになっているケースもある.しかし近年,症状マネジメントや生活の質(QOL)をエンドポイントとした臨床研究の結果が報告されつつある.本稿では,厚生労働省が開始した「統合医療」に係る情報発信等推進事業において作成された“「統合医療」情報発信サイト”に掲載された内容も参考にしながら,補完代替療法のうち各種施術・療法について概要と安全性・有効性について紹介する.また,日本の医療制度や利用実態に合わせ,問題点や今後の課題についても触れたい.
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速報
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医学のあゆみ 253巻13号, 1263-1264 (2015);
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フォーラム
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第79 回日本循環器学会学術集会レポート 3
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医学のあゆみ 253巻13号, 1265-1266 (2015);
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◎ CT・MRI・PET などさまざまな心血管画像モダリティの進歩とともにそれらのデジタル情報を一元的に扱う画像解析技術が急速に進化しており,20世紀には想像もできなかったような心血管構造や機能の詳細な描写・把握が実現しつつある.これら画像解析技術は個々の疾患診断のみならず,冠動脈形成術,経管的弁形成術,あるいは不整脈に対するアブレーション治療などの成功率を上げ,合併症を低減するための情報も提供しており,新しいタイプの心血管治療センターを形成する基盤にもなってきている.本プレナリーセッションでは,モダリティを超えた新しい形態での画像情報の提供やそれに基づく高度治療の進展を取りあげ,きたるべきIT に支えられた循環器医療のあり方についての知見を提供することをめざした.事実,スタンフォード大学からMichael V. McConnell 先生を招聘し,構造と機能との融合やその検証についての最新情報が高いレベルで討論された.
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続・逆システム学の窓 10
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医学のあゆみ 253巻13号, 1268-1273 (2015);
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・手術できない肺がん,または再発,転移の肺がんは,がん死亡のもっとも多い原因である.世界では百数十万人がこの進行肺がんで死亡している.そのようななか,これまでの制がん剤では困難だった,切れ味いい治療効果を示す分子標的薬が登場してきた.EGF 受容体キナーゼを阻害するイレッサ(R) にはじまり,ALK 変異にはザーコリ(R) が有効であるとされ,がんの増殖を進めているドライバー変異への治療の有効性が明らかとなった.しかし,ドライバーを薬で抑えても数カ月で耐性が出てしまうことから,進行肺がんにはすでに多数の変異があり,ひとつの亜株を退治しても別の亜株が増えてくるか,あるいは耐性変異が誘導されてしまう可能性もある.・薬による治療の前にバイオプシー検査を行うことで,エクソンDNA の解読とmRNA やmiRNA の発現量の変異を網羅的にみることができる.これらのゲノム,トランスクリプトーム情報をもとに,治療薬も単一でなく,数種の分子標的薬を用いていく考え方がうまれてきた.化学療法の経験が蓄積されてくるにつれ,複数のゲノム変異を想定して治療を系統的に行うことが,がん治療のスタンダードになりつつある.現状ではバイオプシーとゲノム診断が肺がん治療の鍵であるものの,安全なバイオプシーを可能にする医療技術や,バイオプシーに頼らない血中のDNA やがん細胞での診断の開発も注目を集めている.
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医学のあゆみ 253巻13号, 1274-1275 (2015);
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医学のあゆみ 253巻13号, 1276-1277 (2015);
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TOPICS
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 253巻13号, 1251-1252 (2015);
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癌・腫瘍学
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医学のあゆみ 253巻13号, 1252-1253 (2015);
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歯学
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医学のあゆみ 253巻13号, 1254-1255 (2015);
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