Volume 254,
Issue 12,
2015
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あゆみ プロスタグランジンと炎症
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医学のあゆみ 254巻12号, 1089-1089 (2015);
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医学のあゆみ 254巻12号, 1091-1096 (2015);
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◎急性炎症のおもな症状は,局所における発赤,熱感,浮腫,疼痛,さらには中枢を介した発熱や視床下部-下垂体前葉-副腎皮質系応答なども含まれる.アスピリンに代表される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は,これらの炎症症状を鎮めることから,これら症状はプロスタグランジン(PG)の作用として説明できると考えられてきた.実際,PG 受容体欠損マウスや受容体選択的薬物を用いた解析によって,各症状にかかわるPGやその受容体,作用機序が明らかとなった.その結果,急性炎症の各症状を発現する末梢や中枢の部位において,PG は共通の作用様式ではなく,部位ごとに異なる受容体・作用機序を介して,さまざまな作用を発揮していることがわかった.本稿では,急性炎症の各症状にかかわるPG 受容体とその分子機構について概説し,NSAIDs 作用との相関について考察する.
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医学のあゆみ 254巻12号, 1097-1102 (2015);
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◎慢性炎症は,慢性経過をたどる癌や血管病,代謝異常症など種々の疾患において共通の病態形成基盤であることが近年の検討より明らかとなってきた.慢性炎症は,急性炎症反応が単に時間的に継続したものではなく,質的な差異がある現象であると考えられている.近年の検討より,炎症の慢性化に急性炎症の仲介因子として認知されてきたプロスタグランジン経路が寄与することが明らかとなった.プロスタグランジン経路は,炎症の慢性化過程においてプロスタグランジン産生酵素シクロオキシゲナーゼ誘導を介して正のフィードバック経路を形成し,炎症反応の遷延化や増幅をもたらす.また同経路は,他のサイトカインと協調的に機能し炎症局所に存在するサイトカインにより惹起された炎症反応を増幅する.さらに,細胞遊走因子の誘導を介し炎症部位への炎症細胞浸潤を促進することにより,炎症反応を増悪させるとともに炎症局所で炎症反応を担う細胞種を変化させ,炎症の質的変容をもたらす.これら複数の機構により,プロスタグランジン経路は炎症慢性化を制御する.そのため,同経路は慢性炎症を制御する主要な経路のひとつであると考えられる.それゆえ,さまざまな社会的に重要な疾患の創薬標的ともなりうる.
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医学のあゆみ 254巻12号, 1103-1108 (2015);
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◎抗原刺激はT 細胞を活性化し,これらのTh1,Th2,Th17 細胞などヘルパーT 細胞サブセットへの分化を促す.この分化は特異的なサイトカイン環境で決定される.生じたTh サブセットはそもそも外来性病原体への防御に働くが,その活性化が制御できなくなった場合はさまざまな免疫炎症病態を引き起こす.プロスタグランジン(PG)は免疫調節能をもつ脂質生理活性物質である.実際,ゲノムワイド関連解析(GWAS)で,PG の受容体のひとつEP4 遺伝子がさまざまなヒトの自己免疫疾患の感受性遺伝子として同定されている.このことはPGE2-EP4 経路がこれら病気での共通の病態形成因子として働くことを意味している.最近の研究で,PGE2がナイーブT 細胞からTh1 細胞への分化やTh17 細胞の増幅に働き,免疫炎症を促進していることがいくつかの自己免疫病マウスモデルで示されている.これらの場合,PGE2はインターロイキン(IL)-12,IL-23やインターフェロン(IF)-γなどこれに関与するサイトカインの受容体を誘導することで,それぞれのサイトカインに働きを増幅して作用を発揮する.これらの結果は,これに関与するPGE2の受容体の自己免疫疾患やその他の免疫炎症の薬物標的としての可能性を示唆するものである.
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医学のあゆみ 254巻12号, 1109-1114 (2015);
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◎リンパ管,リンパ組織は,血管とともに生体内の恒常性の維持や免疫応答など生理的に重要な役割を担っているだけでなく,炎症や悪性腫瘍の転移などの病態の進展にも関与している.慢性増殖性炎症モデルにおける肉芽生成に伴って認められるリンパ管新生は,シクロオキシゲナーゼ(COX)-2 由来のプロスタグランジン(PG)で増強するが,“ファイブロブラスト”およびマクロファージでのPGE2のEP3/EP4 受容体を介したシグナリングが重要であることが判明した.また,癌のリンパ節転移をいかに抑制するかは,癌患者予後を考えるときに吃緊の課題である.多くの腫瘍で,転移前段階(premetastatic phase)において,何らかの分子機構によって特定の器官により転移しやすい傾向があることが広く知られており,この転移を助長する状況(premetastaticniche)を形成することで転移を促進することが血行性転移の過程で報告されている.肺癌リンパ節転移モデルにおいて癌のリンパ節転移に先立って,COX-2 由来のPG がリンパ組織の可塑性を制御し,niche 形成に役割をもっていることが判明した.病態時のリンパ管新生,リンパ組織の可塑性を制御するPG研究の成果は,多くの難治性の疾患治療に進展をもたらすことが期待される.
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医学のあゆみ 254巻12号, 1115-1120 (2015);
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◎疾病に伴う身体的ストレスや,社会や環境から受ける心理的ストレスは,不安やうつなど負情動を誘導し,精神疾患のリスク因子ともなる.遺伝子欠損マウスや阻害薬を用いた研究から,疾病ストレスに加え,心理的ストレスにおけるPGE 受容体EP1 の役割が解明されてきた.急性の社会・環境ストレスではEP1 がドパミン系を抑制して衝動性を制御し,社会行動や断崖回避など適切な行動を促す.マウスうつ病モデルとされる反復社会挫折ストレスでは,ミクログリアに選択的に発現するPG 合成酵素COX1 を介してPGE2が産生され,EP1 を介して前頭前皮質に投射するドパミン細胞を抑制して社会的忌避行動などの情動変化を促す.一方,線条体ではPGE2-EP1 系はドパミン受容体シグナルを増強し,EP1 によるドパミン細胞の抑制と拮抗して線条体のドパミン機能を維持する.以上の研究から,心理的なストレスによる情動制御にはPGE2-EP1 系によるドパミン系制御が重要であることが示された.今後PGE2-EP1 系に着目したストレス検出・維持機構の解明と,精神疾患創薬の可能性が期待される.
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医学のあゆみ 254巻12号, 1121-1125 (2015);
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◎12-ヒドロキシヘプタデカトリエン酸(12-HHT)は,血液凝固時にシクロオキシゲナーゼ(COX)およびトロンボキサンA2合成酵素(TxA2S)依存的にトロンボキサンA2 (TxA2)とともに産生される酸化脂肪酸である.これまで,12-HHT はTxA2合成時の単なる副産物であり,生理活性をもたないと考えられてきた.一方著者らは,小腸抽出物を材料に低親和性ロイコトリエンB4受容体-BLT2 の生体内リガンドを探索したところ,12-HHT がBLT2 の高親和性リガンドとして機能することを見出した.今回,COX 阻害剤であるアスピリンの投与やBLT2 遺伝子欠損マウスを用いた研究から,12-HHT には皮膚角化細胞の移動を亢進させ,創傷治癒を促進する働きがあることを明らかにした.また,長年原因不明であったアスピリンによる皮膚の創傷治癒の遅延という副作用が,12-HHT の産生低下により引き起こされていることを明らかにした.
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医学のあゆみ 254巻12号, 1127-1130 (2015);
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◎生体内には多くの種類の脂肪酸が存在し,その質の違いや代謝バランスの変化がさまざまな炎症・代謝性疾患の背後に潜む重要な要素であることが示唆されている.なかでもエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などω-3 脂肪酸が体内で活性代謝物に変換され,抗炎症作用を発揮することが注目されている.これら内因性の炎症制御性物質を包括的にとらえ,その生成機構や作用機構を分子レベルで明らかにすることは,炎症を基盤病態とするさまざまな疾患の病態解明および治療法の開発につながる可能性がある.
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連載
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補完代替医療とエビデンス 13
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医学のあゆみ 254巻12号, 1136-1140 (2015);
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◎ランダム化並行群間比較試験(RCT)は,治療法や健康増進のエビデンス構築にあたりゴールド・スタンダードとして広く認識されている.これらの試験の報告の質を改善させるため,チェックリスト“CONSORT2010”が開発されている.しかし非薬物療法評価試験においては,介入方法の特性から詳細な項目が必要であり,“非薬物療法試験のためのCONSORT 声明拡張版”が開発され,それに準拠した報告が必要である.さらに,それでも統合医療などの分野では介入方法が特異的であることが多いことから,これからはそれらゴールド・スタンダードのチェックリストに加えて,介入方法独自のオリジナル・チェックリストが必要である.その開発・活用は,研究の実施予定者,読者(研究者),編集者・査読者の助けとなるであろう.
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輝く 日本人による発見と新規開発 20
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医学のあゆみ 254巻12号, 1141-1143 (2015);
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フォーラム
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生物学的人口学の最近のトピック 3
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医学のあゆみ 254巻12号, 1145-1147 (2015);
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近代医学を築いた人々 44
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医学のあゆみ 254巻12号, 1149-1149 (2015);
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TOPICS
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糖尿病・内分泌代謝学
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医学のあゆみ 254巻12号, 1131-1132 (2015);
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一般外科学
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医学のあゆみ 254巻12号, 1132-1133 (2015);
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公衆衛生
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医学のあゆみ 254巻12号, 1134-1135 (2015);
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