Volume 255,
Issue 3,
2015
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あゆみ 細胞外小胞によるバイオマーカーの進展
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医学のあゆみ 255巻3号, 193-197 (2015);
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◎現在,細胞が分泌する小さな粒子が,生命科学の分野に大きな衝撃を与えている.それら粒子はエクソソーム(exosome)といわれることもあれば,マイクロベシクル(microvesicle)といわれることもあり,一応,呼び名ごとに粒子の定義づけもされているが,現在は細胞外小胞(extracellular vesicles:EVs)という名前で統一されようとしている.細胞はEVs にメッセージとして,mRNA,microRNA などの核酸や蛋白質を詰め込み,同種異種にかかわらず,他の細胞へ供給する.受け取った細胞はEVs に詰め込まれたメッセージをひもとき,それに反応する.このような細胞間コミュニケーションがつねに行われていることが明らかとなり,EVs はさまざまな生命現象に関与していることがわかってきた.また,これら細胞間コミュニケーションを理解することで,いままで原因がわからなかった疾患メカニズムの解明に役立つことが予想される.本稿ではいくつかの例をあげ,EVs がもたらす生命現象について解説する.
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医学のあゆみ 255巻3号, 198-202 (2015);
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◎肺がんはわが国において,罹患数も死亡数も年々著しい増加傾向を示している.この肺がん罹患数,死亡数を減少に転じさせるためには,喫煙対策や新規分子標的治療薬の開発はもちろん,治療可能な段階,さらには前がん病変を検出できる新規早期診断バイオマーカーの開発が急務である.本稿では,体液中を循環する微小分泌小胞エクソソームを利用した最新の肺がん診断バイオマーカー開発の実例を紹介する.がん細胞が分泌するエクソソームには,産生元がん細胞のさまざまな分子情報(核酸,蛋白質,代謝物など)が豊富に含まれているため,これらを血中などから複合的に検出することによって,これまでの体液性バイオマーカー(CEA など)では読み取ることのできなかったがんの存在,分子病理学的性質が,低侵襲な検査法で診断できる可能性を秘めている.
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医学のあゆみ 255巻3号, 203-208 (2015);
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◎呼吸器はガス交換を目的に発達した器官であり,上皮・内皮などの各種細胞により構築されている.多種の細胞が密接に存在する器官であることから,細胞間の情報伝達が正常時の恒常性の維持,および疾患時の病態形成に重要な役割を担っている.近年,細胞より分泌される細胞外小胞があらたな細胞間コミュニケーションツールとして注目を集めており,呼吸器疾患における動態・病態への関与についての報告が増えている.マイクロパーティクルは細胞膜より由来する細胞外小胞であるが,炎症刺激やアポトーシスにより血中に放出される内皮由来マイクロパーティクルが慢性閉塞性肺疾患の有望な病態マーカーとなる可能性が報告されている.一方,細胞内のエンドソームに由来する細胞外小胞エクソソームは,近年の解析系の進歩によりエクソソームの表面抗原や内部のmicroRNA は細胞のおかれた環境により変化することが判明してきており,細胞・病態特異的なエクソソームは呼吸器疾患のあらたな病態マーカーとしての可能性が期待されている.
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医学のあゆみ 255巻3号, 209-213 (2015);
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◎ 2004 年にはじめて尿中細胞外小胞(UEVs)が発見されてから,その生理的あるいは病的意義について注目が集まっている.尿はほとんど侵襲なく採取できる臨床検体であり,新しい尿バイオマーカーの開発が望まれているが,UEVs がそのひとつのソースとして有望視されている.これまでに適正な尿の採取法や保存法,UEVs の精製法が検討されている.すでに3,000 種類を超える蛋白質がUEVs から同定され,腎・尿路系疾患の病態および局在診断に有用である可能性が指摘されている.たとえば,メガリンは近位尿細管上皮細胞に発現するエンドサイトーシス受容体であるが,UEVs にも搭載されて尿中に検出される.その排泄量の測定が,糖尿病性腎症やIgA 腎症などの新規バイオマーカーとして有用である可能性が示されている.今後,UEVsに内包されるmicroRNA などの解析を含め,さらなる検討が期待される.
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医学のあゆみ 255巻3号, 214-220 (2015);
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◎加齢に伴いリスクが高くなる神経疾患は,高齢化が進む日本において目を背けることができない疾患のひとつとなっている.とくに,認知症は疾患の発症までに10 年以上かかることから,症状が現れる前の超早期に発見して早期に疾患の進行を遅らせることが可能な治療薬を投与することが重要と考えられている.したがって,早期診断が可能なバイオマーカーの探索,進行しても治癒が可能となる治療薬の開発を行うことはとても重要な課題となっている.バイオマーカー探索に関し,近年,新しいリソースとして細胞外小胞が注目されている.そこで本稿では,細胞外小胞(「サイドメモ1」参照),circulating microRNA(体液循環マイクロRNA;「サイドメモ2」参照),を用いた神経疾患診断の現状について述べる.
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医学のあゆみ 255巻3号, 221-225 (2015);
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◎内在性non-coding RNA のひとつであるマイクロRNA(miRNA)は,細胞内で遺伝子発現制御因子として機能し,その機能破綻が“がん”の発生と深く関連している.近年,miRNA が細胞から細胞外へと放出(分泌)されることが明らかとなって以降,細胞外miRNA(extracellular miRNAs:Ex-miRNA)の機能と臨床への応用に関する研究が盛んに行われている.実際に,細胞外小胞に内包されてがん細胞から分泌されるmiRNA は,正常細胞から分泌されるものと異なるプロファイルを有する.本稿では,大腸がん患者血清中のエクソソーム画分に特異的に濃縮されてくるmiRNAs を利用した早期大腸がん診断バイオマーカー,および診断法の実現に関して論議したい.
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医学のあゆみ 255巻3号, 226-230 (2015);
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◎肝細胞がん(HCC)は高率に再発・転移を起こす予後不良のがんであり,その発症予測や早期発見は喫緊の課題である.手術適応決定や術後補助化学療法の是非の決定のために,術後再発の正確かつ早期の診断に寄与する真のマーカーが求められている.がん患者の末梢血中に認められる血中遊離マイクロRNA(miRNA)は血液中での安定性が高くバイオマーカーとして有望視されてきた.最近は血中の細胞外分泌小胞であるエクソソーム内にmiRNA が内包され,組織間の情報伝達や多様な細胞プロセスを制御していることがわかってきており,がんの早期診断だけでなく予後予測や治療標的などに有用と考えられている.本稿では,HCC における血中miRNAに関する最近の知見について概説し,その診断や治療での臨床的な意義に重点をおいて論じる.
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医学のあゆみ 255巻3号, 231-235 (2015);
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◎肝細胞癌は5 年生存率が40~50%と予後が悪く,早期発見が重要である.肝発癌の母体として,慢性的な炎症状態の継続による肝線維化があり,肝線維化が進行した肝硬変は年率8%で発癌するなど,発癌に対する高リスク群である.肝発癌予防策として治療可能な肝炎の段階でのコントロールが重要であり,そのために肝線維化の評価が必要である.現在の肝線維化診断のゴールドスタンダードは肝生検であるが,侵襲を伴うため反復検査は難しく,組織診断も病理医間で差が出ることがある.これら問題の解決に向け,血清を利用した肝疾患の診断マーカー作成が試みられており,著者らはとくに血清中エクソソームに含まれるmiRNA 発現に注目している.エクソソーム中のmiRNA は安定しており,検査方法も簡便である.また,採取に侵襲が少ないため手軽に検査ができることから,治療効果の確認にも利用できる.本稿では,血清中エクソソームのmiRNAを使用した診断マーカーの実用の可能性について考察したい.
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連載
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補完代替医療とエビデンス 16
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医学のあゆみ 255巻3号, 243-247 (2015);
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◎消費者に健康食品と認識されている製品の実態は,きわめて多種多様である.その有効性の根拠は,ほとんどが非臨床試験によるものである.臨床試験があっても,それは品質の確かな原材料で実施された結果であり,粗悪な原材料を用いた製品,あるいは複数の原材料から構成された製品の有効性の根拠になるとはいえない.錠剤・カプセル・粉末状の製品は医薬品と誤認されやすいが,健康食品はあくまで食品として製造されており,医療に利用できるほどの品質は確保できていない.利用者は,健康に不安をもっている人,基礎疾患をもっている人,医薬品を併用している人,と想定されるが,それらの対象者を考慮した安全性確保はできていない.信頼できる製品でも,現状では効果的には利用されていない.従来の特定保健用食品や栄養機能食品に加えたあらたな機能性表示食品の導入は,医療関係者が適切な医療を実施するうえで大きな障害になる可能性がある.健康食品が適切な医療実施の障害とならず,医療費削減に貢献できるようにするには,品質の確かな製品の提供,科学的根拠に基づく製品表示,その表示の解釈と医薬品との明確な区別が,消費者に理解できる取組みが必要である.
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輝く 日本人による発見と新規開発 21
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医学のあゆみ 255巻3号, 249-252 (2015);
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フォーラム
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近代医学を築いた人々 45
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医学のあゆみ 255巻3号, 253-253 (2015);
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書評
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医学のあゆみ 255巻3号, 254-254 (2015);
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TOPICS
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消化器内科学
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医学のあゆみ 255巻3号, 237-238 (2015);
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耳鼻咽喉科学
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医学のあゆみ 255巻3号, 238-240 (2015);
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社会医学
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医学のあゆみ 255巻3号, 241-242 (2015);
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