Volume 255,
Issue 8,
2015
-
あゆみ 肺移植の現状と課題
-
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 795-795 (2015);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 797-800 (2015);
View Description
Hide Description
◎肺移植は終末期肺疾患に対する有効な治療法として確立しており,これまで欧米先進国を中心に47,000 例を超す手術が報告されている.国際登録における肺移植実施数は2000 年代から増加傾向が続いており,2009 年以降は年間3,000 例を超す移植手術が行われている.わが国においても初の生体肺葉移植および脳死肺移植がそれぞれ1998 年,2000 年に行われ,2014 年末までに脳死肺移植実施数は238 例(脳死片肺移植127 例,脳死両側肺移植111 例),生体肺葉移植実施数は165 例(両側生体肺葉移植136 例,片側生体肺葉移植29 例)となった.国際登録による脳死肺移植後5 年生存率が約53%であるのに対し,わが国における脳死および生体肺移植後の5 年生存率はそれぞれ約72%であり,これまでのところ国際登録の成績を上まわっている.
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 801-804 (2015);
View Description
Hide Description
◎脳死肺移植を希望する患者は,脳死肺移植実施施設または地域の肺移植適応検討会で移植適応と判定された後,中央肺移植適応検討委員会で最終的な移植適応判定を受け,日本臓器移植ネットワークに肺移植レシピエントとして登録される.肺移植までの待機期間中に約4 割が原病死している.待機中死亡には疾患群間で差があり予後不良疾患群の救済には日本版Lung Allocation Score(LAS;「サイドメモ」参照)の作成が望ましいが,現在作業は中断し疾患群の再編を行ったところである.また,移植関係学会合同委員会から,各臓器の中央評価委員会(肺移植の場合,肺・心肺移植関連学会協議会)への権限の委譲が決められたが,その経済的基盤や責任のあり方に関して,経済的・法的位置づけの明確化が必要である.
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 805-808 (2015);
View Description
Hide Description
◎わが国では肺移植待機患者数に比べて脳死下臓器提供数が限られているために,マージナルドナーの利用率を向上させる努力が移植関係機関に求められている.そこで,臓器提供施設において提供予定の肺の状況を評価し,その機能を維持または改善させて肺提供へと橋渡しをすることを目的に,2011 年に肺移植医によるメディカルコンサルタント制度が設立され,肺移植認定医療機関から複数名の呼吸器外科医が選定され,日本臓器移植ネットワークに登録された.肺メディカルコンサルタントの業務は,臓器提供施設での胸部診察,X線・CT などの画像評価,気管支鏡検査による無気肺・肺炎や気道内感染状況の確認,喀痰細菌検査結果に応じた抗生剤選定などの感染制御や人工呼吸器設定に関するアドバイスなどである.このようなシステムは日本独自の制度であり,欧米に比べて高い脳死下肺提供率の維持に貢献している.
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 809-813 (2015);
View Description
Hide Description
◎現在も世界的にドナーの不足が深刻な問題となっており,標準である脳死肺移植に加え,そのあらたな供給源として心停止後のドナー(DCD)から臓器提供を受け移植を行う心停止後肺移植(DCD 肺移植)が再評価されている.DCD 移植の問題点として,心停止後の温虚血によるグラフト臓器の障害があげられるが,肺はDCD 移植には比較的有利な臓器とされ,臨床でも脳死肺移植に匹敵する良好な成績が報告されてきている.また,DCD 肺移植を行うにあたり重要となるグラフト肺の適切な評価や保存,reconditioning を目的とした新しい肺保存システムであるex vivo lung perfusion(EVLP)の臨床応用も進んでいる.DCD 肺移植は臓器不足解消の一手として今後も世界的に広まっていくことが予想され,わが国でもDCD 肺移植の実現に向けて作業部会が発足している.
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 814-817 (2015);
View Description
Hide Description
◎脳死ドナー問題から,日本の肺移植は生体肺移植ではじまった.現在でも脳死ドナー不足から,日本の肺移植の約40%は生体肺移植として行われている.生体肺移植では通常2 人のドナーが,それぞれの右あるいは左下葉を提供し,レシピエントの両肺として移植する.レシピエントが大人,とくに男性の場合には,移植肺のアンダーサイズが問題となる.これに対する対策として,自己肺温存術式と反転移植がある.その両者を組み合わせることも可能である.レシピエントが小さい小児あるいは幼児の場合には,大人の下葉はオーバーサイズとなる.これに対する対策として片肺葉移植,反対側の肺摘除,グラフトのダウンサイズ,delayed chestclosure,中葉移植,がある.2008 年6 月~2015 年9 月に京都大学で実施した生体肺移植は61 例であるが,上記の新しい特殊術式は25 例(41%)であった.その5 年生存率は74%と良好であった.特殊術式を駆使することにより,これまでは生体肺移植の適応外と考えられていた患者を救命することが可能となった.
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 818-823 (2015);
View Description
Hide Description
◎肺移植の術後管理は,通常の呼吸器外科術後管理に比較してたいへん複雑である.体外循環を併用する高侵襲の手術であり,移植肺は術後早期にはprimary graft dysfunction(PGD)の状態にあり,一酸化窒素療法やextracorporeal membrane oxygenation(ECMO)が使用されることもある.また,免疫抑制剤の導入や免疫抑制下の感染予防も重要であり,このような状況下で気管支吻合部の安定した治癒をはからなければならない.また,通常臨床では経験しないサイトメガロウイルス感染やカリニ肺炎などの予防も重要である.移植肺はつねに拒絶反応や,いまだ原因が明確ではない移植肺機能不全の危険にさらされており,術後早期においては急性拒絶,慢性期にあっては慢性移植肺機能不全(CLAD)の発生にも注意が必要である.また,長期の免疫抑制は posttransplant lymphoproliferative disorde(r PTLD)とよばれる B 細胞リンパ腫をしばしば発生させ,これ以外にも大腸癌や肺癌などさまざまな癌腫の発生も助長する.まさに,外科だけでなく呼吸器内科,免疫学,病理学,生化学,感染症学など領域を超えたチーム力が必要な領域といえる.本稿では,肺移植の術後管理と合併症に関して,著者らのプロトコールを紹介しながら解説する.
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 824-827 (2015);
View Description
Hide Description
◎肺移植は肺が外界と接触するため,抗原性が高く拒絶反応が他の臓器移植より起こりやすい特徴がある.それにより免役抑制剤も強化され,感染症も起こりやすい状況となるため,長期にわたる両者の鑑別および対策が重要である.急性拒絶反応は血管系への反応が主であり,経気管支肺生検により診断されるが,リスクを考慮して臨床的に診断・治療がなされることが多い.慢性拒絶反応は国際的には慢性移植肺機能不全(CLAD)とよばれるようになり,主として細気管支がターゲットとなり,最大の予後規定因子であるが,従来の閉塞性細気管支炎症候群(BOS)に加え,拘束性障害をきたすrestrictive allograft syndrome(RAS)という分類が加わり,概念が変わりつつある.治療法はいまだ確立したものはなく,今後の大きな課題である.臨床研究に加え,病態解明および治療法に結びつくtranslational study が求められる.
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 828-832 (2015);
View Description
Hide Description
◎肺移植では,拒絶反応を防止するために免疫抑制剤を内服する必要がある一方で,移植肺は免疫能の低下により感染しやすい状態にあり,さらに気道を通して外気と交通しているため常に感染症のリスクにもさらされている.肺移植後の長期生存をめざすには,この拒絶と感染をいかに予防・治療することが非常に重要となってくる.使用される免疫抑制剤は,カルシニューリン阻害薬(CNI),代謝拮抗薬,ステロイド(PSL),の3 種類である.これらは生涯にわたり内服が必要で,かつ特徴的な副作用があるため,他診療科の協力を得ながら全身的なフォローを行う必要がある.感染症を防ぐには,ドナー喀痰や術後に得られた検体からもっとも適した抗菌薬の選択を行うことが基本となる.真菌やウイルスなどの感染予防は投与量や期間に関する明確なエビデンスは存在せず,施設ごとの方針で投与されていることが多いのが現状である.本稿では,肺移植後の免疫抑制剤と感染症に関する知見を,わが国と欧米のデータを比較しながら報告する.
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 833-836 (2015);
View Description
Hide Description
◎国際肺移植レジストリーの報告では年々,肺移植後の長期予後の改善が認められている.これは周術期管理の向上に負う部分も多く,移植後遠隔期のグラフト肺(移植された肺)機能低下(いわゆる慢性拒絶とされてきた)の病態はいぜん完全には解明されていない.移植肺の機能低下は種々の原因に基づくことがわかってきたが,総称として使用されてきた“慢性拒絶”に代わり,chronic lung allograft dysfunction(CLAD)が使われることが多くなっている.CLAD にはbronchiolitis obliterans syndrome(BOS),restrictive allograft syndrome(RAS),その他,可逆的な肺機能低下を認める病態も含まれる.現状ではCLAD の原因となりうる要因(急性拒絶,細菌・ウイルス肺炎,抗体関連拒絶,逆流性食道炎に起因する不顕性誤嚥など)の予防が肝要である.長期予後のさらなる改善には,CLAD をきたす病態解明の進展が望まれる.
-
連載
-
-
補完代替医療とエビデンス 19
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 843-849 (2015);
View Description
Hide Description
◎質の高いシステマティックレビュー(SR)の代表として,コクランレビュー(CR)が知られている.2015年2月に,コクランの新しいwebsite,Cochrane.org が誕生した.Cochrane.org の大きな特徴のひとつは,CR の日本語訳のサブセットが作成され,そこからCR 抄録の日本語訳を閲覧・検索できるようになったことである.日本国内では,補完代替医療(CAM)の領域に特化したCR の翻訳は,厚生労働省のfund による「“統合医療”に係わる情報発信等推進事業」(eJIM)によって行われている.Cochrane.org でCAM 領域のCR を検索する際に,“Health Topics”と“Cochrane Group Topics”の両方にあるCAM 関連のtopics が有用と考えられる.CR 以外のSR の収集に,DARE とPubMed の検索,また臨床試験についてPubMed とCENTRAL の検索が有用である.PubMed ではCAM 領域のものを特定するためのCAM on PubMed 検索戦略もあり,その活用が期待される.
-
フォーラム
-
-
生物学的人口学の最近のトピック 5
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 851-854 (2015);
View Description
Hide Description
-
近代医学を築いた人々 46
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 855-855 (2015);
View Description
Hide Description
-
ノーベル化学賞2015
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 857-859 (2015);
View Description
Hide Description
-
TOPICS
-
-
再生医学
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 837-839 (2015);
View Description
Hide Description
-
腎臓内科学
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 839-840 (2015);
View Description
Hide Description
-
臨床検査医学
-
Source:
医学のあゆみ 255巻8号, 841-842 (2015);
View Description
Hide Description