Volume 256,
Issue 6,
2016
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【2月第1土曜特集】 不整脈を科学する
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医学のあゆみ 256巻6号, 635-635 (2016);
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突然死を識る・治す
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医学のあゆみ 256巻6号, 639-646 (2016);
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◎先天性QT 延長症候群(LQTS)は,心筋イオンチャネルをコードする遺伝子の異常によって心室再分極過程が延長し,心電図のQT 時間延長,torsade de pointes(TdP)とよばれる特徴的な波形の心室頻拍をきたす遺伝性の不整脈である.学童期から若年成人期にかけて発症することが多く,心臓に構造異常がないのに運動(とくに水泳)や目覚まし時計のアラームなどがきっかけとなって失神や突然死をきたすことがある.しかし,通常の心電図で診断可能なことが多く,適切な生活管理やβ遮断薬の投与でほとんどの突然死は予防することができるため,遺伝子型や年齢に応じたリスク因子を見極めることが重要である.心停止・突然死のリスク因子は年齢によって異なるが,心停止の既往,QTc≧500 msec,β遮断薬投与下での失神・Tdp,心停止・突然死の家族歴,特定の遺伝子型,胎児期~乳児期発症などである.また,乳児突然死症候群(SIDS)を含め,予測されなかった原因不明の突然死例を対象に死亡後の遺伝子検査(molecular autopsy)を行うと,その10~20%からLQTS 関連の遺伝子変異が検出されるため,両者の関係が注目されている.
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医学のあゆみ 256巻6号, 647-651 (2016);
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◎ QT 短縮症候群(SQTS)は,12 誘導心電図上の著しく短いQT 時間と心室細動(VF)による突然死を特徴とする遺伝性不整脈である.心電図上,はじめて記載されたのは21 世紀になってからであり,比較的最近発見された病気である.基礎心疾患を認めず,突然死の家族歴があり,心房細動(AF)を高率に合併する.また,乳幼児突然死症候群(SIDS)の一因と考えられている.イオンチャネル病の一種で,これまでK チャネルやCaチャネルの異常が報告されている.治療の第一選択は植込み型除細動器(ICD)であり,補助療法としてキニジン内服が有効である.発症頻度の低い疾患であり,その病像もまだ不明な点が多く,今後のさらなる症例の蓄積による病態の解明が期待される.
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医学のあゆみ 256巻6号, 653-659 (2016);
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◎カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)は,運動や情動の変化,あるいはカテコラミン投与で,二方向性あるいは多形性の心室頻拍が誘発され,心室細動に移行して,失神,突然死を起こす致死的不整脈のひとつである.原因遺伝子としてリアノジン受容体(RyR2),カルセクエストリン2(CASQ2),カルモジュリン(CaM),トリアジン(TRDN)などの異常が報告されている.これらの異常により筋小胞体から大量のCa2+放出が起こり,トリガードアクティビティーを機序とする心室頻拍が起こるとされている.薬剤投与を行わなかった場合,きわめて不良である.薬剤としてはフレカイニド,プロパフェノン,カルベジロールなどの有効性が報告されており,左交感神経節切除,カテーテルアブレーションなどの非薬物療法の報告もある.
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医学のあゆみ 256巻6号, 661-667 (2016);
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◎ Brugada 症候群は明らかな器質的心疾患を認めず,非発作時の心電図で右側胸部誘導(V1-V3)に特徴的なST 上昇(coved 型あるいはsaddle-back 型,type 1~3 に分類)を認め,QT 延長を伴わず突然心室細動(VF)を発症する疾患群である.通常肋間および上位肋間での右側胸部誘導において自然発生あるいは薬物誘発性のtype 1 心電図のみがBrugada 型心電図と診断される.男性に多く,40~50 歳での発症が多い.VF の多くは夜間安静時あるいは就寝中に発症し,副交感神経活動亢進が関与していることが報告されている.15~30%の症例に突然死の家族歴を認める.また,15~20%の症例で細胞膜のNa チャネルなどの遺伝子異常を認める.心肺停止やVF の既往例では予後が不良であり植込み型除細動器(ICD)の植込みが必要である.失神例,無症候例は日本循環器学会のガイドラインに沿ってICD の適応を決定するが,電気生理検査でのVF の誘発性は予後予測因子としては否定的な結論が多く,電気生理検査でのVF の誘発は必要最小限に留めるべきである.
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医学のあゆみ 256巻6号, 668-674 (2016);
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◎早期再分極パターンは以前より若年者に多い正常亜型とされていたが,J 波を伴う特発性心室細動の報告以来,さまざまな心疾患で不整脈発生を予測する可能性が報告されている.遺伝性J 波症候群は器質的な心疾患を有さず30~40 歳ごろに夜間・早朝の心室細動をきたすもので,これまでにさまざまな遺伝子変異が報告されている.Brugada 症候群との類似性もあり,病態的に共通した因子があると考えられている.リスク評価としてはJ 波高や12 誘導心電図での分布領域,ST 部分の形態が重要で,Brugada 証拠群やQT 短縮症候群の合併,J 波変動などがリスク因子として報告されている.プログラム刺激などの進取的検査はリスク評価には用いられない.治療は植込み型除細動器での突然死予防が必要で,発作予防のためにキニジンが有効である.
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医学のあゆみ 256巻6号, 675-684 (2016);
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◎ Purkinje 起源心室細動(VF)とは,Purkinje ネットワークにおけるリエントリーやPurkinje 線維からの異常自動能・撃発活動を機序とするVF で,カテーテルアブレーション(CA)で抑制されることから,近年注目されている.CA 効果の機序に関しては,VF 発生のトリガーとなる心室期外収縮(VPC)を抑制させるためなのか,あるいはPurkinje ネットワークに対する基質の修飾によるものなのかなど,いまだ不明な点も多いが,その可能性はVF ストーム時のbail-out 治療としても大きな意味をもつ.
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医学のあゆみ 256巻6号, 685-690 (2016);
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◎急性冠症候群に対する冠動脈バイパス術(CABG)や経皮的冠動脈形成術は標準治療として確立されているが,慢性完全閉塞(CTO)を含めた完全血行再建の必要性については議論の分かれるところである.本稿では,はじめにCTO 病変に対するCABG 後に発症した心室細動のストーム例を呈示し,後半ではその予測因子について文献的考察を行った.単施設前向き研究の多変量解析からは,側副血行路を伴わないCTO 病変に対する血行再建が唯一の独立した予測因子であることが示されている.そのような症例に遭遇した際は,術後の心室性不整脈の発症に十分留意する必要がある.発症機序に関しては未解明な点も多いが,本稿で紹介するようなアブレーション成功例の蓄積がその解明につながるものと期待される.
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医学のあゆみ 256巻6号, 691-696 (2016);
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◎器質的心疾患のなかでも心臓サルコイドーシスで発生する不整脈は,徐脈性・頻脈性不整脈の両者があることが特徴で,不整脈の発生をきっかけとして病気が発見されることもまれではない.突然死につながる重症な不整脈が多く,治療は薬物だけでは不十分でありペースメーカー,植込み型除細動器(ICD),カテーテルアブレーションなどの非薬物治療を要するため,症例に応じた適切な対応が重要である.
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医学のあゆみ 256巻6号, 697-704 (2016);
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◎不整脈原性右室心筋症(ARVC)では右室優位に心筋が線維化脂肪組織に置換され,ポンプ機能の低下とともに,心室細動・心室頻拍の不整脈基盤が形成される.ARVC 発症の背景には,デスモゾームに関連した遺伝子異常があることも知られるようになった.2010 年に改定診断基準が発表され,より広く,より早期の症例もARVC と診断されるようになった.ARVC の臨床像は多彩で,無症候の症例,心室性不整脈を発症する症例,心不全症状を呈する症例などがみられる.心電図検査での伝導と再分極異常,画像検査による右室の機能異常・構造変化のなかにはARVC に特徴的な所見がある.重症不整脈の多くはリエントリーを機序として発症し,突然死の予防には抗不整脈薬,カテーテルアブレーション,植込みデバイスを駆使したハイブリッド治療が行われる.
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医学のあゆみ 256巻6号, 705-712 (2016);
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◎心臓突然死の多くは,心室細動や心室頻拍などの致死性心室性不整脈によって生じる.そのため心臓突然死を未然に防ぐには,このような不整脈の発現を事前に予知し,植込み型除細動器(ICD)などの治療法を前もって講じることが重要である.以前は心エコーなどの画像診断で計測される左室駆出率と電気生理学的検査による心室性不整脈の誘発性を考慮して,その適応を判断することが多かった.しかし近年になって,非侵襲的に測定される心電学的検査指標も前述した検査法と同等あるいはそれ以上に有用であることが示されるようになった.加算平均心電図で測定する心室レイトポテンシャル(LP),運動負荷法で評価するT 波オルタナンス(TWA),Holter 心電図を用いて測定する心拍変動指標,心拍タービュランス(HRT),QT 間隔指標,QT/RR関係指標などがそれに相当する.これらの指標は,その特徴のみならず,検査の進め方や測定方法,また有用とされる疾患も個々で微妙に異なるため,理解して活用する必要がある.
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医学のあゆみ 256巻6号, 713-718 (2016);
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◎院外心肺停止の一因となる心室頻拍・心室細動は死亡に至る危険性の高い不整脈であり,一刻も早く停止させることが重要である.電気的除細動では停止しない難治性の患者に対し欧米ではアミオダロン静注薬が広く普及しているが,わが国にはニフェカラントも存在し,さらにリドカインを選択する医師も少なくない.臨床場面ではこれらの薬剤の使用経験が積み重ねられ,あらたなエビデンスが明らかとなってきているが,それぞれの薬理効果について十分に認識されているとはいいがたい.SOS-KANTO 2012 study の結果から,リドカインは心肺蘇生の第一選択薬として好ましくなく,ニフェカラントあるいはアミオダロンの使用が望ましい.しかし,臨床の現場で汎用されているアミオダロン300 mg の急速投与はアウトカムを低下させる可能性が示唆され,アミオダロンの至適投与方法について今後さらに検討する必要がある.
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心房細動を識る・治す
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医学のあゆみ 256巻6号, 721-726 (2016);
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◎心房細動の発症,持続,慢性化に“炎症”が関与することは明らかである.そしてメタボリック症候群(MS)は生体に持続的な炎症をもたらす代表的な病態である.新潟で行われた疫学調査で,MS を有すると心房細動の新規発症が1.74 倍増加することが判明した.著者らは実験的アプローチで肥満,慢性腎臓病(CKD),脾摘,糖尿病モデルを作成し,これらの病態で心房の炎症性線維化および心房細動易誘発性が生じるメカニズムを検討した.肥満モデルでは,脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインのひとつであるレプチンがアンジオテンシンⅡによって惹起される炎症性線維化シグナルに必須であった.CKD(5/6 腎摘)モデルでは,ウレミックトキシンのひとつであるインドキシル硫酸が酸化ストレスを介して炎症を惹起した.高血圧モデルに脾摘出を行うと血中インターロイキン10 濃度が低下し,慢性期に心房線維化が惹起された.血糖変動モデルでは心房線維化の惹起に活性酸素種の発現亢進が関与していると考えられた.
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医学のあゆみ 256巻6号, 727-736 (2016);
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◎心房細動(AF)に対するアップストリーム治療とは,AF 発症にかかわる因子を修飾するなどによって心房リモデリングを抑制し,発症や再発の予防をめざした治療法である.これまでさまざまなアップストリーム治療の候補になりうるAF に関連する標的分子について研究が進められ,レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬,スタチン,ω-3 系多価不飽和脂肪酸など,心房リモデリング抑制およびAF 発症抑制に有効な可能性のある治療薬が報告されている.AF の高リスク保有者に対しては,アップストリーム治療を考慮に入れつつ治療を選択することが望ましいと考えられる.現在,炎症,酸化ストレス,心房線維化,カルシウム(Ca)ハンドリングなど,心房リモデリングの形成過程にかかわる因子をターゲットとしたあらたな治療法の研究・開発も進められており,今後あらたなアップストリーム治療の選択肢が増えて,AF を積極的に予防する時代がくることが期待される.
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医学のあゆみ 256巻6号, 737-741 (2016);
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◎心房細動は心不全・高血圧などの心血管疾患に合併する不整脈とのとらえ方が一般的で,遺伝性は少ないと考えられてきた.家族性心房細動など遺伝性を示すものもあるが,それは心房細動のごく一部とのとらえ方が一般的であった.ところが,親が心房細動を有する場合,子どもが心房細動を発症する確率が高いことなどの臨床データから,最近では心房細動の発症にも遺伝的な要因が関与することが示唆されている.心房細動のようなコモン疾患の遺伝性の解析には全ゲノム関連解析(GWAS)が使われる.心房細動でも2007 年に最初のGWAS が行われ,4q25 に存在する1 塩基多型(SNP)が心房細動の発症と関連することが報告された.その後多くのGWAS が行われ,いまでは10 以上のSNPs が心房細動発症と関連することが明らかとなっている.本稿では,心房細動の遺伝的リスクとこれを用いた個別化医療の可能性について解説する.
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医学のあゆみ 256巻6号, 742-748 (2016);
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◎高齢者の増加とともに非弁膜症性心房細動(NVAF)症例が増加し,わが国では約100 万人と推定されている.それに伴う脳梗塞は重症で予後不良であることから,その予防はきわめて重要である.NVAF 患者では脳梗塞発症のリスク評価を行い,抗凝固療法の適否を決める.そのリスク評価方法として,CHADS2スコア(0~6 点)やCHA2DS2-VASc スコア(0~9 点)が用いられる.前者は高リスク症例(2 点以上)の抽出に適した簡易な方法である.後者はより詳しい評価を行い,本スコアが0 点であれば脳梗塞のリスクはきわめて低く,抗凝固療法を行わないことを考慮できることから,低リスクの症例の選択に有用である.抗凝固薬を選択する場合,ワルファリンと比較して管理が容易で有効性と安全性が高い非ビタミンK 拮抗経口抗凝固薬(NOAC)をまず考慮し,NOAC が投与できない場合にワルファリンを考慮する.各NOAC の特性と患者背景を考慮して各NOAC の使い分けを行う.
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医学のあゆみ 256巻6号, 749-754 (2016);
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◎バルーンカテーテルは手技がシンプルで均一である.接触する心筋組織を広範囲かつ均一な深度で,一度にアブレーションすることが可能であるため,肺静脈の一括隔離が可能である.そのため,手技・透視時間が短縮できる.従来の高周波通電では電極先端温度以上に組織内温度が上昇し,血栓形成や心タンポナーデの原因となるが,バルーンカテーテルでは血栓形成や隣接臓器への障害が非常に少ない.横隔神経麻痺の発生率が若干高いが,横隔膜ペーシングが予防に有用である.心タンポナーデ,脳梗塞,食道障害の発生率はきわめて低く,肺静脈の再伝導が少ないのも利点である.中長期における有効性は80%以上と高いことが報告されている.現時点でバルーンカテーテルは,薬剤抵抗性再発性症候性の発作性心房細動に対する適応で承認されている.今後,バルーンアブレーションは発作性心房細動の第一選択治療になることが期待される.
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医学のあゆみ 256巻6号, 755-759 (2016);
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◎肺静脈起源の心房性期外収縮が発作性心房細動のトリガーになることが報告されて以来,肺静脈隔離術は心房細動アブレーションの治療戦略の中心となった.その後,肺静脈のみではなくその前庭部も含む,より広範囲の隔離,すなわち肺静脈前庭部隔離術のほうが肺静脈個別隔離術より治療成功率が高く,合併症のひとつである肺静脈狭窄症も少ないことが報告された.発作性心房細動に対するその高い有効性から心房細動アブレーションの適応はさらに広がり,持続性心房細動に対しても同様の肺静脈前庭部隔離術が行われるようになった.現在では肺静脈隔離術は心房細動のタイプを問わず,心房細動アブレーション治療において中心的な役割を果たしている.本稿では,心房細動アブレーションにおける肺静脈隔離術の意義を概説する.
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医学のあゆみ 256巻6号, 761-766 (2016);
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◎心房細動は進行性の疾患であり,その進行度や病態に応じた治療が必要となる不整脈である.根治が見込めない,機序の複雑なこの不整脈治療の扉を開いたのは肺静脈隔離術ではあるが,進行度の強い心房細動に対しては肺静脈隔離術のみでは満足のいく結果が得られなかった.そんななか,肺静脈以外の心房細動カテーテル治療法として考案されたもののひとつに左房線状アブレーションがある.当初,肺静脈隔離術に加えることで発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションの有効性を向上させたことが報告されたが,その後,持続性心房細動に対してこの線状アブレーションを加えることで術後成績が向上したことが示され,現在では持続性心房細動アブレーションのひとつの方法として確立されている.また,心房細動アブレーション後に認められる術後心房頻拍の治療にもこの線状アブレーション法は欠かすことができない.
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医学のあゆみ 256巻6号, 767-772 (2016);
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◎現在主流となっている同側広範囲肺静脈電気的隔離術は,持続性,慢性心房細動に対してはその効果にも限界がある.非発作性心房細動など,心房全体に変性の進んだ心房細動の基質の修飾目的としておもに線状アブレーション,CFAE アブレーションが使われているが,成績も施設によって異なる.また,心房細動における心外膜側心房自律神経節の関与や心房細動の周波数解析,rotor マッピングなど心房細動維持の機序に対する新しい概念も報告され,さまざまなアプローチの組合せが施行されている.Dominant frequency(DF)アブレーションは,リアルタイムな周波数解析により心房細動基質を同定し同部位を焼灼する方法である.肺静脈隔離により心房細動基質を半分程度に減少させ,症例に応じたhigh-DF 部を同定する.これにより症例に応じた有効焼灼が可能となり,焼灼部位を減少させることにより術後心房頻拍の発生率を低下することが可能となる.
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医学のあゆみ 256巻6号, 773-777 (2016);
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◎長期持続性心房細動に対してカテーテルアブレーションでの治療戦略はいまだ確立されておらず,カテーテルアブレーションの成功率は低い.長期持続性心房細動において,心房における線維化などの構造的リモデリングとともに自律神経のリモデリングは心房細動の持続に大きな役割を果たしている.この内因性自律神経節(GP)は高頻度刺激で場所を知ることができ,アブレーションによりGP の反応を消失させることが可能であり,長期持続性心房細動に対するGP アブレーションの果たす役割が期待されている.本稿ではGP アブレーションの概要を説明し,当院で良好な成績を報告しているGP アブレーションに加え肺静脈隔離をまず行い,その反応により患者ごとにアブレーション方法をテーラーメイドするGPPVI based approachについて概説する.
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医学のあゆみ 256巻6号, 778-785 (2016);
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◎心房細動に対する肺静脈前庭部隔離術(PVAI)は最重要な治療戦略として認識され,発作性心房細動ではPVAI 単独で良好な治療成績が示されている.一方,持続性心房細動(Pers AF)ではPVAI 単独では治療効果が不十分とされ,左房本体に存在すると考えられる心房細動の基質を破壊する目的で長年にわたり左房線状通電やCFAE アブレーションが追加されてきた.ところが,最近発表されたSTAR AF Ⅱ trial により,従来の基質アブレーションはPVAI 以上に慢性期の成績を改善させないことが明らかとなった.そのなかで,PersAF に対する新しい基質アブレーションとして,ローターを可視化して存在部位を同定し,これを焼灼するローターアブレーションが提唱されている.ローターとは心房細動を維持している渦巻き型興奮(スパイラルリエントリー)のことであり,心房線維化部位およびその境界部はローターの好発部位であるとの報告もある.現在臨床応用されているローターマッピングにはFIRM とCardioInsite があり,ともにPers AF アブレーションに有用であると報告されている.一方で問題点も指摘されており,改善すべき点は多いと思われる.しかし,これらの問題が克服できれば,Pers AF に対するアブレーションの成績を向上させるだけではなく,心房細動の機序を解明する意味でも意義深く,研究の進展が期待される.