Volume 256,
Issue 8,
2016
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あゆみ ユビキチン系の破綻と疾患
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医学のあゆみ 256巻8号, 853-853 (2016);
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医学のあゆみ 256巻8号, 855-860 (2016);
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◎ユビキチン修飾系は,多くの場合,数珠状に結合したポリユビキチン鎖を基質蛋白質に付加することで,蛋白質機能を制御するシステムである.これまではユビキチン分子のリジン残基を介してポリユビキチン鎖が形成されると考えられてきたが,著者らのグループはまったく異なる結合様式の直鎖状ポリユビキチン鎖を特異的に合成する新規ユビキチンリガーゼ・LUBAC を同定し,LUBAC および直鎖状ポリユビキチン鎖の生理学的意義を解析している.これまでの研究でLUBAC は,古典的NF-κB 経路の活性化や,サイトカイン刺激によって誘導されるプログラム細胞死の制御,自然免疫や獲得免疫における免疫応答の制御など,生命現象を多岐にわたって制御していることがわかってきた.本稿では,直鎖状ポリユビキチン鎖による炎症・免疫反応の制御について概説する.
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医学のあゆみ 256巻8号, 861-867 (2016);
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◎細胞膜蛋白質のユビキチン化は,その蛋白質をリソソームに輸送するシグナル(荷札)として働く.ユビキチン化は可逆的な修飾であり,脱ユビキチン化酵素によって拮抗される.最近,患者ゲノムの網羅的解析により細胞膜蛋白質のリソソーム輸送の調節にかかわる脱ユビキチン化酵素AMSH とUSP8 について,AMSH の機能喪失型変異が小頭症-毛細血管異形成症を,USP8 の機能獲得型変異がCushing 病を引き起こすことが発見された.小頭症-毛細血管異形成症は,AMSH の機能不全によるMAP キナーゼ経路などのシグナル過剰と細胞内蛋白質凝集体の蓄積,Cushing 病は過剰な脱ユビキチン化活性を獲得した変異USP8 がEGF 受容体のダウンレギュレーションを阻害してその下流シグナルを過剰発信することが原因であることが明らかとなった.これらの知見はユビキチン化による細胞膜蛋白質のリソソーム分解の調節の生理的重要性を実証するものである.
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医学のあゆみ 256巻8号, 868-873 (2016);
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◎分子標的治療の開発により癌の予後は飛躍的に改善し,かつては急激な経過をたどった癌でも現在では完治が期待できる例まで認められるようになった.それに加えて遺伝子発現や体細胞変異の網羅的な解析によってそれぞれの癌の生物学的特性を知り,より効果的な分子標的治療を選択できるチャンスが広がりつつある.現在,癌に対する分子標的の主役はチロシンキナーゼであるが,今後は他の酵素や細胞内経路を標的とした治療も臨床に登場してくるものと思われる.そのなかで,ユビキチン系はキナーゼと同等に広範な細胞内経路を制御しており,癌治療の標的として期待されている.本稿では,最近注目されているテーマを中心に癌におけるユビキチン系の異常とユビキチン経路の構成因子を標的とした治療について概説する.
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医学のあゆみ 256巻8号, 874-879 (2016);
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◎古くからミトコンドリア品質の低下がパーキンソン病の発症に関与することが示唆されていたが,その実体は不明であった.近年,遺伝性劣性パーキンソン病の原因遺伝子産物PINK1 とParkin の機能解析から“パーキンソン病の発症を抑えるミトコンドリア品質管理機構”の実体が急速に明らかにされつつある.PINK1 は,プロテインキナーゼ,Parkin は基質にユビキチンを付加するユビキチン連結酵素(E3)である.興味深いことに,ユビキチンはParkin によって異常なミトコンドリアに付加される“分解タグ”としての機能だけではなく,ミトコンドリアが異常であることを伝える“シグナル伝達系の構成因子”としても重要な役割を担っていることが明らかになった.本稿では,ミトコンドリアの品質管理を介してパーキンソン病と闘うユビキチンシステムの概略を紹介したい.
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医学のあゆみ 256巻8号, 880-884 (2016);
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◎ユビキチン化,リン酸化,アセチル化といった翻訳後修飾は,高次生命現象やヒトの疾患に深くかかわっている.近年になって,病原細菌やウイルスの感染において翻訳後修飾が重要な役割を果たすことが明らかになってきた.とくに,病原細菌がコードする蛋白質(病原因子)のなかには,宿主のユビキチン修飾を制御する分子やユビキチン修飾関連酵素として働く分子が同定されている.これらの病原因子は感染に応答して発動される宿主免疫反応やシグナル伝達経路をハイジャックし,感染を成立させる.一方,ユビキチン様蛋白質(UBL)による修飾はウイルス感染に対する宿主の感染防御システムとして働くことが知られているが,病原細菌の感染におけるUBL の役割についてはほとんど調べられていなかった.本稿では,腸管病原細菌の感染を成立させるために制御されるUBL の新しい知見について概説する.
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医学のあゆみ 256巻8号, 885-889 (2016);
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◎リボソームは細胞内での蛋白質合成装置であり,遺伝子に内包された遺伝情報を蛋白質に変換する.また,リボソームの生合成は細胞の最大のエネルギー消費反応であるため,細胞増殖と密接に相関している.リボソーム蛋白質の機能欠損に起因するリボソーム病(ribosomopathy)の発症機構として,遊離のリボソーム蛋白質の上昇に依存した抗アポトーシス因子であるp53 のユビキチン化を介した発現制御が明らかになっている.遊離のリボソーム蛋白質であるRpl5 やRpl11 がp53 のユビキチン化酵素であるMDM2 を阻害する結果,p53が安定化され,細胞増殖の停止を引き起こす.リボソーム蛋白質遺伝子内変異により完成されたリボソームの活性が異常となった場合に,異常な蛋白質を産生する可能性がある.このような危険を回避するため,異常リボソームは品質管理機構によって認識され,迅速に分解される.この品質管理機構においてリボソームのユビキチン化が重要な機能を果たしている.また,蛋白合成(翻訳)の伸長反応が阻害された場合に,合成途上の新生ポリペプチド鎖がプロテアソーム(proteasome)で迅速に分解される新しい品質管理機構が発見され,蛋白質合成制段階での新しい遺伝子発現制御の一端が明らかになりつつある.本稿では,リボソーム病発症メカニズムと遺伝子発現の品質管理システムにおけるユビキチン化の機能を紹介したい.
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医学のあゆみ 256巻8号, 891-895 (2016);
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◎いまから60 年ほど前に催眠鎮静剤として開発されたサリドマイドは,深刻な催奇性を有することで知られるが,近年になりいくつかの難病への改善効果を有することが判明し,ふたたび脚光を浴びるようになった.また,サリドマイドをもとに免疫調節薬(immunomodulatory drugs:IMiDs)が開発され,その優れた抗癌作用は医薬関係者から大きな注目を集めている.しかし,サリドマイド・IMiDs の標的因子であるセレブロン(cereblon:CRBN)は著者らが2010 年に発見するまで不明であった.現在ではセレブロンは結合化合物(サリドマイド・IMiDs ら)に応じて基質認識を変換させるユニークな属性をもつユビキチンリガーゼとして機能することが判明している.本稿ではセレブロンについて,その発見から最新の知見まで紹介しながら,その興味深い機能について解説していきたい.
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医学のあゆみ 256巻8号, 896-902 (2016);
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◎ユビキチン・プロテアソームは,ユビキチン鎖が付加された蛋白質をプロテアソームで選択的に分解するシステムである.一方,オートファジーでは二重膜のオートファゴソームが細胞質成分を取り囲んだ後,リソソームと融合することでその内容物を分解へ導いている.両者はまったく異なる分解様式であるにもかかわらず,オートファジーで選択的に分解される基質もまた,ユビキチン化を受けることは興味深い事実である.重要なことは,選択的オートファジーの基質のユビキチン化はオートファゴソームへの取込みだけでなく,ストレス応答シグナルの役割も果たすことであり,その破綻は癌をはじめとする重篤疾患に関与している.
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医学のあゆみ 256巻8号, 903-907 (2016);
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◎ユビキチン-プロテアソーム系は,細胞周期の制御や蛋白質の品質管理に重要な役割を果たしているため,その破綻は癌や神経変性疾患などの疾病を引き起こす.また,ユビキチン化にかかわる遺伝子の異常に由来する遺伝性疾病もさまざまなものが報告されている.ユビキチン化はリン酸化についで多い蛋白質の翻訳後修飾であり,ヒト遺伝子にコードされるおよそ40%の蛋白質がこの修飾を受ける.どの蛋白質がユビキチン化を受けるのか,その制御を行っているのがユビキチンリガーゼである.しかし,ユビキチンリガーゼとその基質の対応がついている例はごくわずかである.ユビキチンリガーゼの基質を同定することは,さまざまな疾病にかかわるユビキチンシステムを理解するうえで必要不可欠である.本稿では,著者らが開発したユビキチン鎖結合蛋白質TR-TUBE 発現系を利用したユビキチンリガーゼの網羅的スクリーニングの方法について紹介する.
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医学のあゆみ 256巻8号, 908-912 (2016);
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◎プロテアソームは,真核生物に高度に保存された巨大な蛋白質分解酵素複合体である.ユビキチン化蛋白質を選択的に除去することで細胞周期,シグナル伝達,品質管理をはじめとする細胞内のさまざまな生命現象に必須の役割を果たしている.近年,プロテアソームと癌,神経変性,老化などヒト疾患とのかかわりの報告があいついでおり,プロテアソームはさまざまな疾患の治療標的としての可能性を秘めている.すなわち,プロテアソーム機能の阻害は癌治療に有効であることはすでに確立されており,プロテアソーム機能の亢進は神経変性,老化の抑制に有用であることが期待される.プロテアソームの作動機構および病態生理における役割の理解がプロテアソームを標的とした新しい治療戦略に不可欠である.
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連載
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医学教育の現在―現状と課題 5
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医学のあゆみ 256巻8号, 919-923 (2016);
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◎おもに欧米の医学部教育で取り入れられている診療参加型実習は,日本国内でも急速に普及しつつある.真の診療参加型実習では,医学生はチーム医療の一員として積極的に診療に参加することが求められる.また,大学病院だけでは一般的な疾患を経験することができないため,学外臨床実習の重要性も指摘されている.これらの変化に伴い,臨床実習期間は各大学で延長されてきているが,適切な評価法の導入や教員の負担軽減などさまざまな課題も残されている.その解決策として,診療科から独立した教育専門組織と統括責任者による体系立った実施体制の構築がもっとも重要である.
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フォーラム
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近代医学を築いた人々 49
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医学のあゆみ 256巻8号, 925-925 (2016);
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医学のあゆみ 256巻8号, 927-929 (2016);
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TOPICS
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 256巻8号, 913-914 (2016);
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血液内科学
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医学のあゆみ 256巻8号, 914-915 (2016);
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臨床検査医学
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医学のあゆみ 256巻8号, 916-918 (2016);
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