Volume 256,
Issue 11,
2016
-
あゆみ せん妄の予防と対策
-
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1119-1119 (2016);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1122-1125 (2016);
View Description
Hide Description
◎せん妄は日常臨床で頻繁にみられる症候群であり,また身体予後悪化の独立した危険因子のひとつで,いったん発症すると持続して身体予後や医療経済的予後,さらには認知機能に悪影響を及ぼすことが明らかになっている.日常臨床でのせん妄発見率は低いことから,せん妄の発見には評価尺度を使用するなどの積極的な発見方法をとる必要がある.本稿では,わが国の臨床現場で使用可能な尺度を念頭におきつつ,CAM(ConfusionAssessment Method)やMDAS(Memorial Delirium Assessment Scale),DRS-R-98(Delirium RatingScale Revised 98),NEECHAM Confusion Scale などの評価尺度の長所や短所,適応について検討した.一方,臨床研究では逆翻訳を経て信頼性や妥当性を検討したせん妄の日本語版尺度を使用することが望ましい.現状ではこのような日本語版評価尺度は少なく,臨床研究に使用可能な日本語版尺度のさらなる作成が期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1126-1130 (2016);
View Description
Hide Description
◎せん妄の危険因子としてはよく直接因子,誘発因子,準備因子11)という用語が知られている.せん妄の発症予測因子(予防介入の必要度の把握)については修正可能な要因と修正不可能な要因とに分類するほうが臨床的と思われる.それぞれの因子はその英語の頭文字を取って覚えやすいように“END ACUTE BRAIN FAILURE”とよばれている.電解質異常/脱水(Electrolyte imbalance and dehydration),神経障害(Neurologicaldisorder/injury),低栄養状態〔Deficiencies(nutritional)〕,年齢と性別(Age & Gender),認知機能(Cognition),薬物毒性/離脱〔U-Tox(intoxication & withdrawal)〕,外傷(Trauma),内分泌異常(Endocrinedisturbance),精神疾患(Behavioral-Psychiatric),薬物/他の中毒物質(Rx and other toxinsAnemia),貧血/低酸素(Anemia, anoxia, hypoxia),感染(Infectious),疼痛〔Noxious stimul(i Pain)〕,臓器不全〔Failure(organ)〕,疾患重症度〔Apache score(severity of illness)〕,頭蓋内病変(Intracranial processes),睡眠覚醒リズム(Light,sleep and Circadian Rhythm),尿毒症/代謝異常(Uremia and other Metabolic Disorder),身体拘束(Restraints),緊急入院(Emergence delirium),がそれである.とくに薬物については抗コリン作用が強いほどせん妄のリスクが高いことが知られている.予防については入院患者の危機予測を念頭に“入院前に把握しておきたい危険因子”と“入院後でもせん妄予防のために介入したい因子”について把握することが重要である2,8).
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1131-1135 (2016);
View Description
Hide Description
◎せん妄は,意識レベルの変化,注意力の低下を特徴とする一過性の器質性障害である.せん妄は身体疾患の経過全体を通して生じうること,死亡率の上昇や合併症の増加と関連があり,効果的な介入方法が検討されている.せん妄への介入は,薬物療法と非薬物療法の2 つのアプローチがある.非薬物療法的アプローチはせん妄の背景因子を調整することにより,せん妄の発症を予防する試みである.高齢者病棟での介入試験を中心に比較試験が行われ,メタアナリシスも報告されている.メタアナリシスから非薬物療法的アプローチはせん妄の発症を予防し,転倒を予防する効果が認められた.今後,複合的な介入のうち,どのような介入がより効果的なのか,介入の一般化がどこまで可能なのか,検討が望まれる.
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1136-1139 (2016);
View Description
Hide Description
◎薬物療法によるせん妄予防に関する国際水準のランダム化臨床試験に基づくエビデンスは,2005 年以降に蓄積されてきた.これまで,コリンエステラーゼ阻害薬は無効であること,抗精神病薬は有効であることが明らかにされた.しかし,抗精神病薬は副作用リスクを勘案すると予防向きの薬剤ではない.そのようななかで2010 年以降,メラトニンおよびそのアゴニストによるせん妄予防効果が実証された.重篤な副作用がないメラトニン・アゴニストは予防向きの薬剤でもあるため,せん妄臨床の治療から予防へのパラダイムシフトが期待されている.
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1140-1144 (2016);
View Description
Hide Description
◎せん妄はDSM-5 の診断基準によると,病歴,身体疾患,臨床検査所見から,その障害が他の医学的疾患,物質中毒または離脱,または毒物への曝露,または複数の要因による直接的な生理学的結果により引き起こされたという証拠がある,とされている.よって治療の原則は原因の検索と除去であり,薬物療法はあくまでも対症療法である.使用する薬剤は有効性や副作用の面から非定型抗精神病薬の頻度が増えているが,その使い分けはドパミンをはじめとした神経伝達物質の受容体への親和性や薬物動態などの薬理特性を考慮して行う.また,薬剤はできるかぎり単剤投与を目標とし,漫然と投与しつづけることがないよう定期的な観察を行い,改善が得られたら速やかに減量・中止することが重要である.
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1145-1150 (2016);
View Description
Hide Description
◎せん妄の治療においては患者の病態を個別に考慮する必要がある.具体的には,直接原因とされる身体疾患と,準備因子となるせん妄発症以前からの併存疾患,せん妄発症後に生じた身体合併症,である.せん妄に対する薬物療法では抗精神病薬が中心となるが,過鎮静,錐体外路症状,痙攣閾値の低下,心室性不整脈などが起こりうる.呼吸循環動態が不安定な患者,誤嚥のリスクの高い患者,パーキンソン病患者,電解質異常を伴う心疾患患者などでは細心の注意を要する.速やかな鎮静を要する場合には,ベンゾジアゼピン系薬剤の注射剤での併用が必要となることがある.内服ができない患者では個別の病態によらずハロペリドールの注射剤が第一選択となる場合がほとんどである.身体疾患に対する薬物療法とせん妄治療薬とによる薬物相互作用にも十分注意を払わなければならない.
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1151-1154 (2016);
View Description
Hide Description
◎アルコール離脱症状の治療にはベンゾジアゼピン系薬剤が使用されてきた.しかし,身体疾患治療現場では,離脱症状は軽度であることが多い.介入がなくても2~7 日で自然に軽快することが多い.また,身体疾患治療現場で薬物介入が必要なアルコール離脱症例は,5~20%程度と見積もられている.したがって,不必要なベンゾジアゼピン系薬剤による離脱症状予防・治療により,鎮静,転倒,呼吸抑制,せん妄などの好ましくない状況の危険性が高まる.しかし,臨床的に大きな問題となる振戦せん妄に至る症例は離脱症状を認める症例の5~10%存在し,その予防は臨床上非常に重要である.現在,多くの抗痙攣薬でアルコール離脱症状治療研究が行われている.抗痙攣薬ではカルバマゼピンとガバペンチンが現在のところ効果が確認されている薬剤である.ベンゾジアゼピン系薬剤の使用が好ましくない場合に選択肢としての薬剤となるばかりでなく,今後のアルコール離脱治療の中心薬剤となる可能性がある.今後のさらなる臨床研究がまたれる.
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1155-1158 (2016);
View Description
Hide Description
◎せん妄は一過性の症状ではなく,臨床的にも医療経済的にも予後を悪化させる.医療経済面では,在院日数の長期化,人件費の増加,施設への入所増加などで医療消費が高額となる.年間医療費は糖尿病や転倒などよりも高額であることも指摘されている.現在までのところ,せん妄が発症してしまった症例に対しての薬物・非薬物による介入では臨床的・医療経済的なアウトカム改善を示唆する高いエビデンスは存在していない.せん妄の薬物での予防による臨床的・医療経済的なアウトカム改善効果は可能性は示唆されているものの,高いエビデンスがあるとはいえない.現在,老齢患者に対する非薬物療法的予防が臨床的・医療経済的に効果があることが示されている.今後の老齢化の進展に伴い,医療経済面からもせん妄予防に積極的に取り組むべきである.
-
連載
-
-
医学教育の現在―現状と課題 7
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1165-1172 (2016);
View Description
Hide Description
◎医師国家試験は医師法第9 条を根拠法とし,毎年1 回3 日間で実施される.多肢選択形式の問題が500 題出題され,合格基準は,必修問題が80%の絶対評価,一般問題と臨床実地問題が相対評価である.合格率は約90%である.問題点・課題としては,①現在の出題形式と評価基準で,医師にしてよい受験者とすべきでない受験者を適切に判別できているのかを検証する必要がある.②資格試験にもかかわらず相対評価を用いていることに対する批判があるが,問題の難易度の調整は難しいので,当面はやむをえないと考える.③現在の国家試験では技能を評価できていないので,OSCE を導入すべきであるとの意見があるが,信頼性の保証と必要な人員の確保に問題があり,まだ検討中の段階である.④国家試験が臨床実習の充実と卒後の臨床研修へのシームレスな移行を阻害しているという意見があり,将来的には分野別評価を受けて教育の質を保証された医学部・医科大学が責任をもって学生を評価することにより国家試験を廃止する方向に進むのが最良であると考える.
-
速報
-
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1173-1174 (2016);
View Description
Hide Description
-
フォーラム
-
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1175-1177 (2016);
View Description
Hide Description
-
パリから見えるこの世界 42
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1179-1183 (2016);
View Description
Hide Description
-
TOPICS
-
-
神経内科学
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1159-1160 (2016);
View Description
Hide Description
-
腎臓内科学
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1161-1162 (2016);
View Description
Hide Description
-
輸血学
-
Source:
医学のあゆみ 256巻11号, 1162-1163 (2016);
View Description
Hide Description