医学のあゆみ

Volume 257, Issue 1, 2016
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【4月第1土曜特集】 がん放射線療法Update 2016
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- 最前線の研究治療
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放射線治療により誘導される抗腫瘍免疫と“免疫放射線療法”
257巻1号(2016);View Description
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◎抗腫瘍免疫は,癌患者における治療反応性と予後を決定する重要な因子である.近年の研究では放射線治療においても放射線治療により腫瘍特異的な免疫反応が惹起され,その免疫反応が治療効果にも寄与していることが報告されている.しかし,放射線により誘導される抗腫瘍免疫については,いまだ詳細は明らかとなっていない.そこで著者らは,放射線により誘導される抗腫瘍免疫に関して検討を行い,化学放射線治療を受けた食道癌患者で腫瘍特異的なT 細胞が誘導されること,さらに,マウスの移植腫瘍モデルにおいて抗腫瘍免疫は放射線治療の効果を決定する重要な因子であること,免疫チェックポイントの遮断によりこの抗腫瘍免疫を増強することができることなどを示してきた.本稿では,放射線治療により誘導される抗腫瘍免疫の,その誘導されるメカニズムと新しい治療(免疫放射線療法)への応用の可能性について議論する. -
ホウ素中性子捕捉療法―原子炉から加速器へ
257巻1号(2016);View Description
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◎ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は,ホウ素と中性子の原子核反応によって生じるα線を用いた癌細胞特異的な放射線治療である.従来は原子炉でしか中性子照射を行うことができず,適応可能な病態および実施可能件数がきわめて限られる実験的な治療でしかなかったが,近年,高電流の安定した加速器が開発可能となったことによって,中性子源として病院設置可能な加速器を用いたBNCT システムの研究開発が進み,集学的治療における治療モダリティのひとつとしての普及が期待されている.原子炉では膠芽腫,悪性黒色腫,進行再発頭頸部癌などに対してBNCT が適応され,良好な成績が報告されてきた.加速器による世界初のBNCT システムがわが国で開発され,世界に先がけて治験がはじまっている.国内外でも多数の加速器BNCT 計画が進行中あるいは準備中であり,病院設置型加速器によるBNCT の普及と治療適応の拡大が今後見込まれる. -
強度変調陽子線治療
257巻1号(2016);View Description
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◎陽子線は体内の特定の深さでエネルギーを放出し,それより深い部分には影響を及ぼさないという理想的な物理的特性をもつため,従来のX 線よりも腫瘍に対する線量集中性に優れている.従来の陽子線治療は照射野形成に物理的介在物を要する散乱体法が用いられていたが,近年はプログラムで照射野形成を行うスキャニング法が実臨床に適用されはじめている.スキャニング法の特性として照射野内で陽子線の強弱をつけることができるため,病巣に線量を集中すると同時に隣接する正常臓器の線量低減を実現する強度変調陽子線治療(IMPT)が可能となり,根治性・安全性の高い治療となることが期待されている.一方で陽子線治療は体内臓器の位置や大きさなどの変化による影響を受けやすく,治療に際してはこれらの不確定性が治療に及ぼす影響の検討や臓器移動への対策が必要である.また,治療計画や検証に必要な人的・物的な医療資源の確保も今後の課題である. -
重粒子線治療
257巻1号(2016);View Description
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◎重粒子線治療は,良好な線量分布に加え高い生物学的効果を示し,従来X 線抵抗性と考えられていた腫瘍に対しても優れた局所制御率が報告されている.現在,治療施設は世界各国に10 施設存在し,わが国では5 施設と世界最多の数を誇っており,その治療技術や開発において指導的役割を果たしている.これまで,重粒子線治療の有効性は単施設による報告に限られていたが,近年多施設共同前向き試験の準備が進み,より高いエビデンスの創生が期待される.また,あらたな粒子線治療技術としてスキャンニング照射法,回転ガントリーが研究・開発され,より高精度で自由度の高い治療ができるようになってきている.本稿では,重粒子線治療の概要,これまでに報告されている臨床成績,ならびに今後の展望について概説する. -
分子標的薬と放射線治療
257巻1号(2016);View Description
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◎多くの局所進行がんにて標準治療と位置づけられている化学放射線治療は,高い治療効果の反面,有害事象も強い.対して分子標的薬は,正常細胞には影響せずにがん細胞だけに標準を合わせる治療法として,安全で高い効果が期待されている.固形がんでは上皮成長因子受容体と血管内皮細胞増殖因子を標的にした薬剤が多い.分子標的薬と(化学)放射線治療との併用治療は,両標的をおもな対象に,頭頸部がん,非小細胞肺がん,食道がん,悪性神経膠腫などで第三相臨床試験が行われてきた.しかし生存への寄与を示したのは,局所進行頭頸部がんを対象に,放射線治療単独に対して上皮成長因子受容体阻害薬であるcetuximab の上乗せ効果を示したBonner 試験のみである.血管内皮細胞増殖因子を標的とした分子標的薬の有害事象として,消化管出血や消化管穿孔がある.腹部への放射線治療時にこれらと併用することで消化管障害が増す可能性が指摘されており,注意を払う必要がある. - 放射線治療技術の進歩
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各種IMRT テクニックと新しい放射線治療機器
257巻1号(2016);View Description
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◎強度変調放射線治療(IMRT)とは,腫瘍の形状が複雑で腫瘍に近接した箇所に放射線に弱い臓器が含まれる場合,従来の治療計画手法では正常組織の耐容線量を超えずに腫瘍に線量を集中させることが難しくなるため,それを克服するために照射野内の線量強度に強弱をつけて照射を行う放射線治療技術である.現在おもなIMRT の方法としては,①治療装置のガントリーを固定させて照射野内のマルチリーフコリメータを移動させて行う方法,②VMAT 方式とよばれガントリーも回転させながらマルチリーフコリメータを移動させて行う方法,③TomoTherapy とよばれ,ガントリーも回転させながら内部にあるバイナリーコリメータを開閉させて行う方法,そして,④リニアックの開口部に補償フィルターという重金属をおいて物理的に線量強度を減弱させ強度変調ビームをつくりだす方法,がある.本稿ではそれらIMRT の技術と,IMRT を実践している代表的な新しい放射線治療機器の特徴について紹介する. -
動くがん病巣に対する放射線治療―呼吸性移動によるものを中心に
257巻1号(2016);View Description
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◎計算機・放射線治療装置の高度化により,がん病巣を含む照射ターゲットにはより高線量を照射し,周囲の正常組織の線量を下げることが可能になった.一方,照射ターゲットの設定の際に問題になるのが体内でのがん病巣の動きである.そのおもな原因として臓器・がん病巣の呼吸性移動があげられ,さまざまな呼吸性移動対策が考案され,実用化されてきている.最初のうちは呼吸を浅くするなどの方法しかなく,照射位置精度や再現性に問題があった.しかし,近年では画像診断技術との融合によりがん病巣や臓器の位置や動きをリアルタイムに取得・解析できるようになり,時間因子を放射線治療に反映した四次元放射線治療という新しい呼吸性移動対策法が開発され,がん病巣の呼吸性移動は克服されつつある. -
画像誘導小線源治療(IGBT)―個別化治療への進化
257巻1号(2016);View Description
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◎現在,小線源治療は子宮頸癌,前立腺癌,頭頸部癌,乳癌術後の加速部分照射,一部の食道癌や気管癌などで行われている.線量処方の方法として従来行われてきたのは任意の点(あるいは最小標的線量など)への処方であるが,現代ではMRI などの画像情報で腫瘍や危険臓器の位置・体積を三次元的に同定することが一般的となり,画像誘導小線源治療(IGBT)が発展してきている.子宮頸癌では欧米で示された線量投与法のガイドラインをもとに,わが国でも急速な発展をみせているが,わが国独自の照射スケジュールによるガイドライン作成が求められており,現在複数の研究が進行中である.さらに,IGBT は難治性・再発症例への治療の可能性を拓く方法としても期待されている. - 疾患別治療成績:ここまで治るようになった! 機能温存と生存率向上
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悪性神経膠腫に対する強度変調放射線治療(IMRT)
257巻1号(2016);View Description
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◎悪性神経膠腫は成人の原発性頭蓋内悪性腫瘍のなかでももっとも頻度が高い.浸潤性が高く,MRI T2 強調像で描出される浮腫や造影T1 強調像で描出される造影病変よりも広範囲に腫瘍細胞が認められるのが特徴であり,手術による微視的な腫瘍の除去は困難である.そのため術後の照射に経口抗癌剤のテモゾロマイドを併用した化学放射線治療が現在の標準治療である.放射線治療での照射範囲は全脳から腫瘍周囲への三次元原体照射(3DCRT),そして本稿のテーマである強度変調放射線治療(IMRT)へと標的の縮小と治療の高精度化が進んでいる.本稿では実際の症例と仮想的なIMRT の治療計画を図示しながら,IMRT によって腫瘍の形状に沿った線量分布が得られ,正常脳への線量を低減できることを解説する. -
HPV 関連中咽頭癌―QOL 向上をめざした治療へ
257巻1号(2016);View Description
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◎中咽頭癌ではヒトパピローマウイルス(HPV)の関与が知られており,近年,欧米のみならずわが国にてもHPV 関連中咽頭癌は増加にある.HPV 関連中咽頭癌は従来の喫煙や飲酒に伴う頭頸部癌とは病理組織学的にも異なり,放射線や化学療法への反応性も良好であり,HPV 因子は頭頸部癌治療において強力な予後因子であることが報告されている1-6).頭頸部癌治療は手術,放射線治療,化学療法を組み合わせた治療を行うが,いずれも利点・欠点を伴い,副作用も異なる.癌治療において当然,治癒が最大の目標であるが,頭頸部領域など重要な臓器・機能が集中している領域においてはとくに副作用や合併症を軽減することは重要な課題である.HPV 関連中咽頭癌は予後良好な疾患群であり,その長期生存を考えるとき,よりQOL(Quality of Life)を重視した治療法選択が望まれる.実際は,頭頸部癌においてHPV 因子と喫煙・飲酒などの発癌因子は混在しており,また遺伝子レベルにおいてはさらに複雑にリンクしている.HPV 関連腫瘍の適切な選別を行い,それに対し最適な個別化治療を行うことが理想である.本稿では,それらに対する知見をまとめる. -
早期乳癌に対する加速乳房部分照射(APBI)―安全で利便性の高い照射の開発に向けて
257巻1号(2016);View Description
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◎早期乳癌に対する乳房温存療法の術後照射の期間を短くするため,加速乳房部分照射(APBI)の研究が進められている.小線源治療,術中照射法,外部照射法などの方法があるが,いずれの治療法にも利点と欠点がある.現時点の臨床研究の多くは,早期例,切除断端陰性例,閉経後の患者などを対象に行っている.とくに,外部照射法は特殊な機器を用意することなく多くの施設で実施可能であると考えられるが,肺毒性,乳房の萎縮などの有害事象が経験されており,慎重な対応が必要である.日本の臨床現場で対応可能な照射技術の開発と長期経過観察を行い,安全性を確認していくことが重要である. -
肺癌に対する体幹部定位照射
257巻1号(2016);View Description
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◎肺癌に対する体幹部定位照射は,1990 年代後半からおもに手術困難な症例に対して臨床応用が開始され,現在までにさまざまな臨床試験が行われている.国内で実施されたJCOG0403 では,Nagata らが2015 年に手術可能例と手術不能例で3 年局所制御率が85%と87%であり,3 年,5 年全生存率が可能例で75%,54%,また不能例で60%,43%と報告した.また,その他の国内外の報告によっても生物学的効果線量が100 Gy 以上である場合は良好な局所制御効果が期待できると考えられている.体幹部定位照射では固定精度を保つための患者固定法や呼吸性移動対策の開発,ターゲットへの線量集中と正常組織の照射容積の縮小を目的とした三次元治療計画の高精度化などの技術的進歩を重ねており,今後もさらなる発展と臨床応用が期待される. -
頸部食道癌に対するIMRT―IMRT の応用で何が変わるか?
257巻1号(2016);View Description
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◎頸部食道癌は比較的まれな疾患であり,予後不良な疾患と考えられている.進行癌で発見される場合が多いが,胸部食道癌に比較し浸潤範囲が限局していることが多く,手術中心に治療が行われる場合が多い.放射線治療の適応は,手術困難な局所進行例,臨床的背景により手術困難な症例,切除可能であるが喉頭温存が困難で患者が喉頭温存を希望する症例,と考えられ,予備機能が十分であれば化学放射線療法が標準治療のひとつである.限定した症例数での後方視的な放射線治療成績が報告されているが,化学放射線療法の有効性については十分なエビデンスが乏しいのが現状である.従来の三次元放射線治療では,脊髄線量規準を守り十分な線量投与を行うためには技術的限界があり,治療効果は十分でなかった.IMRT を行うことで物理的な線量分布が向上し治療効果の改善やより安全な放射線治療を投与することが可能になり,治療成績の向上が期待される. -
肝細胞癌に対する体幹部定位放射線治療(SBRT)―肝細胞癌に対する根治治療のひとつの選択肢として
257巻1号(2016);View Description
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◎体幹部定位放射線治療(SBRT)は病巣に対して高精度かつピンポイントに照射する技術であり,1 回大線量で少数分割で短期間に行われる.すでに手術非適応の早期非小細胞癌患者における標準治療となっており,やや遅れて肝細胞癌でも高い局所制御率と安全性が示されている.いずれも標的病巣の局所制御率は90%を超える成績が示されている.早期肝細胞癌に対する根治治療は肝切除,移植,穿刺治療とされているが,いずれの治療にも弱点があり,孤立性肝細胞癌であってもかならずしもそれらの治療が適応となるとは限らない.SBRT はその欠点を補填する特徴をもった治療である.穿刺治療困難な横隔膜直下や肝中枢領域でも安全に治療可能であり,無痛・無血の治療として高齢者にも適応となる.放射線治療医は今後,前向き試験にてその有用性を実証すると同時に,実臨床では肝臓専門医と連携をとり,体幹部定位放射線治療の利点を理解してもらうよう努めていきたい. -
直腸癌に対する術前化学放射線治療
257巻1号(2016);View Description
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◎下部直腸癌はその他の直腸癌や結腸癌と比べて局所再発率が高く,局所再発は疼痛や膀胱直腸障害などの症状を引き起こし,患者の生活の質を下げる.下部進行直腸癌に対する術前(化学)放射線治療は局所再発の低減を目的に行われる.さらに,肛門管直上までの直腸間膜をすべて切除する直腸間膜全切除(TME)の導入により,局所再発率は有意に低減した.術前照射とTME により局所再発率は5%程度と低くなったが,遠隔転移を30%程度に認めた臨床試験もあり,今後の課題と考えられた.そのため現在は化学療法を含めた集学的治療法が模索されている.一方,術前照射により肛門機能低下が増加するため,ヨーロッパのガイドラインではcT3N0 の再発リスクの少ない症例に対して術前照射の省略を許容している.MRI 所見など各症例の再発リスクや照射による有害事象の可能性などさまざまな観点から,症例ごとに適切な治療法を検討する必要がある. -
肛門管扁平上皮癌に対する根治的化学放射線療法
257巻1号(2016);View Description
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◎肛門管扁平上皮癌は放射線感受性が比較的高いため,従来の外科手術(腹会陰式直腸切断+人工肛門造設)から根治目的での化学放射線療法の治療開発が行われるようになった.根治的化学放射線療法は外科手術と同等の生存期間を示し,高い局所制御により,手術を施行した場合の永久人工肛門を回避し,肛門温存をはかることができるため,QOL の観点からも標準治療として確立している.希少疾患でありながら,海外で併用化学療法,放射線治療の総線量,導入化学療法,追加化学療法などに関する複数のランダム化比較試験が施行され,根治的化学放射線療法の治療レジメンのエビデンスが確立している.さらなる治療成績向上のため,併用化学療法による有効性の向上,強度変調放射線治療(IMRT)による急性期および遅発性有害事象の軽減などを目的とした治療開発が行われている.日本においても多施設共同臨床試験が行われるようになり,今後,有効性と安全性のデータが示される予定である. -
子宮頸癌に対する放射線治療
257巻1号(2016);View Description
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◎子宮頸癌に対する放射線治療は外部照射と腔内照射の組合せで行われており,近年シスプラチン同時併用の化学放射線治療が標準治療となってきている.さらに,同時併用する化学療法として,シスプラチンとパクリタキセルを用いたあらたな臨床試験により良好な成績が報告されており,さらなる治療成績の向上が期待されている.また腔内照射の分野では,従来行われていた二次元画像による腔内照射に替わって日本で開発されたCT やMRI を用いた三次元画像誘導腔内照射が,ヨーロッパのグループを中心に世界的に広く行われるようになってきた.一部の先行施設からの報告では,従来の二次元腔内照射では十分な局所制御が得られなかった巨大腫瘍などを中心に治療成績の改善が示されてきており,日本での標準化が期待される.また,強度変調放射線治療や重粒子線治療などは臨床試験を中心にさまざまな取組みが行われており,さらなる治療成績の向上と有害事象の軽減が期待される. -
前立腺癌に対する小線源療法
257巻1号(2016);View Description
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◎前立腺癌の根治治療には手術療法と放射線療法とがあり,放射線療法は外照射と小線源療法とに分類される.小線源療法にはさらに,弱い線源を永久的に前立腺に埋め込む低線量率小線源療法と,強い線源を一時的に挿入する高線量率組織内照射とがある.歴史的に低線量率小線源療法は低リスク前立腺癌に対する標準治療のひとつと位置づけられ,手術や外照射と同等の治療成績とされてきた.近年,中-高リスク前立腺癌に対しても外照射併用などの工夫により標準治療とみなされはじめており,一部には小線源療法は外照射よりも生化学的制御率が高いという報告も出はじめている.高線量率組織内照射はより均一な線量分布や前立腺被膜外への治療可能性などの利点をもち,理論上さらに優れた成績が得られる可能性がある.小線源療法は本質的に線量集中性が高く,周囲正常組織の被曝を最小限にしつつ癌組織に高い線量を与えられる照射法である.医療コストも安価で治療期間も短い本治療法は,今後さらなる普及が期待される. -
悪性リンパ腫のISRT
257巻1号(2016);View Description
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◎近年,薬物療法と画像診断能および放射線治療技術の進歩に伴い,放射線治療の線量と照射野を適正化して,効果を維持しつつ有害事象を減らすための国際的な指針づくりがなされている.2013 年にInternationalLymphoma Radiation Oncology Group(ILROG)は,放射線治療のあらたな概念であるinvolved site radiationtherapy(ISRT)のガイドラインを発表した.薬物療法後の地固めとして放射線治療を行う場合のISRT の標的は治療開始前の腫瘍床であり,限局期低悪性度リンパ腫に放射線治療が単独で行われる場合の標的は,それよりいくぶん広めのマージンを設定する.いずれの場合でも従来に比べISRT の照射体積が小さくなるため,有害事象の低減が可能となる.悪性リンパ腫診療において放射線治療を適切に利用しやすくすることで,あらたな治療成績向上のエビデンスが生まれることが期待される. -
Oligometastases に対する放射線治療
257巻1号(2016);View Description
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◎Oligometastases は原発巣の制御/非制御にかかわらず,とくに転移巣個数の規定のない概念であった.その後,Niibe らによって細分化が提起され,oligo-recurrence とsync-oligometastasis,unclassified oligometastasisに分類されている.また,転移巣個数が5 個まで規定された.原発が制御されており,無病期間が6カ月以上経過して再発してきたoligo-recurrence は良好な予後が望める状態である.脳転移のほか,肺や肝へのoligo-recurrence に対し,近年発達してきた放射線治療技術により,いわゆるピンポイント照射(定位放射線治療)を行うことにより手術療法に匹敵するような治療成績が得られるようになってきている.局所治療のみでなく,全身療法を併用することがさらに有効と思われるが,まだoligometastases という概念は新しいために,さまざまな不明な点も多く,今後のいっそうの研究が期待される分野である.
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